2020年度より順次 Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(以下、YDN)が、Yahoo!ディスプレイ広告(運用型)(以下、YDA)に移行することになりました。
参考:ディスプレイ広告(YDN)の提供終了とディスプレイ広告(運用型)への移行について│Yahoo!広告 API
2021年春には YDN の提供が終了し、YDA へ一括変換されます。ただし、一部の広告は YDN から YDA へ設定内容をそのまま変換できないものもあります。YDA とは何なのか、YDN と何が変わるのか、移行にどんな作業が必要なのかを理解し、早めに YDA への移行を完了させましょう。
上記の公式ページではリニューアル後の呼び方が「運用型」となっていますが、この記事ではYDNと比較して「YDA」と表記します。
Yahoo! JAPAN が提供する3つの広告プロダクト、「スポンサードサーチ」「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク」「Yahoo!プレミアム広告」が統合され、「Yahoo!広告」に名称を変更するという発表がありました。そのリニューアルの第1弾として、YDA の提供が開始されています。
簡単に言えば、YDN のリニューアルバージョンです。ディスプレイ広告という基本的な機能はもちろん変わりません。ただし、管理画面が大きく変わったり、一部機能の変更・廃止・追加がありました。
では、具体的に YDN から何が変わるのかを紹介していきます。主に変わるのは以下になります。それぞれ詳しく説明していきます。
まず、管理画面が大きく変わりました。一番左にキャンペーン・広告グループの一覧、その隣にターゲティングなどのタブが並んでおり、Google 広告の管理画面に近い形になった印象です。
また、管理画面上の機能の面もいくつか変更されています。機能面での主な変更点は以下の通りです。
管理画面の表示は、右上の「新画面を利用」のオンオフを行うことで新旧を切り替えることができます。ただし将来的に旧管理画面は廃止される可能性が高いので、今のうちに新管理画面に触れて慣れておくことをおすすめします。
「キャンペーンの目的」の設定が必須になり、設定した目的を最大化するように最適化され配信される仕様に変わります。各目的の最適化ポイント(何を最大化するか)は以下の通りです。
今までは一律でクリック数が最大化されることが目的になっていたため、広告の品質を決める要素は一律で予測クリック率が大きく影響していました(動画広告の場合は「課金が発生した動画再生率」)。
YDA 運用型では、広告の品質を決める要素は「目的ごとに最適な予測アクション率」が大きく影響するようになります。
例えばキャンペーン目的を「コンバージョン」にした場合、コンバージョン獲得を基準にした予測アクション率の高い広告が品質が高いと判断されやすくなり、キャンペーンの中で表示される広告として勝ちやすくなります。
簡単に言えば、これまではコンバージョンは獲得しやすいものの予測クリック率が低くあまりキャンペーン内で勝っていなかった広告が、YDA 運用型の「コンバージョン」目的のキャンペーンでは勝ちやすくなるというイメージです。
このように、キャンペーン目的が最大化されるように品質が判断され、オークションランクが計算されるので、設定した目的に関するアクション数を最大化することが可能になりました。
YDN ではインフィード、ブランドパネルなど広告掲載方式別にキャンペーンを分けるという仕様でしたが、YDA では分ける必要がなくなりました。
1つのキャンペーンで、インフィードの広告枠にもブランドパネルの広告枠にも配信できるようになっています。ただし、代わりにキャンペーン作成時に「キャンペーンの目的」の選択が必須となり、この目的別にキャンペーンを分けることが推奨となっています。
この部分については「YDA に適したキャンペーン構造」の項目で詳しく説明します。
インタレストカテゴリーの機能は廃止になり、YDA では使用することはできません。代わりにオーディエンスカテゴリーという類似機能が使用できます。
オーディエンスカテゴリ-の説明はインタレストカテゴリーとほとんど変わらず、特定のカテゴリーに興味・関心を持ったユーザーに対して広告を配信できるターゲティング機能です。オーディエンスカテゴリーは「興味関心」「購買意向」「属性・ライフイベント」の3つのグループに分かれています。
あるカテゴリーに定期的に興味を示しているユーザー(該当カテゴリーを閲覧する、関連キーワードを検索するなど)をターゲティングできます。まだ具体的なアクションは検討していないが興味を示している潜在顧客に対してアプローチすることができる機能です。
あるカテゴリーの商品の購入・申し込みを検討しているユーザー(該当カテゴリーの商品を検索する、カートに入れるなど)をターゲティングできます。具体的なアクションを検討しているユーザーに対してアプローチすることができる機能です。
性別・年齢以外の属性(家族構成・学歴・職業など)や、結婚・引っ越しなど頻度の少ないライフイベントを検討しているユーザー層へのターゲティングが可能になります。
既存機能のいくつかの仕様が変わり、性能がアップしました。
YDN では過去30日間で15件以上のコンバージョンがないと自動入札を設定することができませんでしたが、YDA ではこの制限がなくなり、コンバージョンが0件でも自動入札を設定できるようになりました(ただし、より良い掲載結果を得るにはより多くのコンバージョンを獲得した状態で利用することが推奨されています)。
また、自動入札の学習状況のステータス(学習中・学習完了)が確認できるようになりました。
YDN のフリークエンシーキャップはインプレッション基準でしたが、YDA ではビューアブル(視認範囲)基準になりました。インプレッション基準とビューアブル基準でどう変わるのか、具体例を交えて説明します。
インプレッションはその広告がユーザーに見られていない(スクロールしないと見えないところに表示された)としてもインプレッション1としてカウントされます。
例えばインプレッション基準のフリークエンシーキャップを1日50回と設定し50回表示されたとき、そのうち40回はユーザーが見えないところに表示されたインプレッションである可能性もあります。
ビューアブルインプレッションは、広告の50%以上の範囲が1秒以上連続して表示された場合に1カウントされます。
例えばビューアブル基準のフリークエンシーキャップを1日50回と設定した場合、ユーザーの見えないところに表示されたインプレッションはカウントされず、ユーザーが広告を目にしたインプレッションが50回になるまで配信されます。
上記で説明した通り配信アルゴリズムが変わるので、YDA で成果を最大化するためには、新しい配信アルゴリズムに適したキャンペーン構造にする必要があります。
先ほども説明した通り、選べるキャンペーン目的と最適化ポイントは以下の通りです。キャンペーン作成の際にはキャンペーン目的の設定が必須となり、あとから変更することはできません。
サイトへの流入を増やしたいなら「サイト誘導」、ウェブサイト上のコンバージョン数を増やしたいなら「コンバージョン」というように、そのキャンペーンの目的に合わせて選びます。そしてターゲットリストごとに広告グループを作成し、各形式の広告を追加していきます。
ここからは YDN のキャンペーン構造を YDA に適したキャンペーン構造に再構築する際の例を説明します。
以下の例では、黄色いセルのサーチターゲティング、リターゲティングはコンバージョン獲得を目的としたキャンペーンで、掲載方式別に分かれています。YDA ではこのキャンペーンを1つの「コンバージョン」というキャンペーンに統合し、キャンペーン目的で「コンバージョン」を選択します。
ただし、YDA ではダイナミック広告は「商品リスト訴求」というキャンペーン目的でしか配信できないため、YDN の「リターゲティング_動的」のキャンペーンだけは YDA の「商品リスト訴求」というキャンペーンに分けています。
また、基本的に掲載方式で広告グループを分ける必要はありませんが、ブランドパネル広告を配信する場合はプレイスメントの指定が必要なため、ブランドパネルだけ広告グループを分けています。
YDA でブランドパネル広告を配信する設定についてはの説明は「PC ブランドパネル広告の変換方法」の項目で詳しく解説します。
緑のセルの3つのキャンペーンはサイトへの流入増加を目的としたキャンペーンです。これも YDA では「サイト誘導」という1つのキャンペーンに統合し、キャンペーン目的で「サイト誘導」を選択します。
目的ごとの課金ポイントと選択できる入札戦略・広告タイプは、目的に適したもののみになっています。
例えば「サイト誘導」目的のキャンペーンで目標単価指定の入札戦略は選択することができません。先ほども説明した通りキャンペーン目的はあとから変更することができないので、以下の情報をよく確認してから設定しましょう。
ここからは YDA への移行手順を説明していきます。複雑な手順ではありませんが、そのままでは引き継がれない設定などもあるので、よく確認しておきましょう。
YDA キャンペーンの作成方法は大きく分けると2つ、「既存のキャンペーンを変換する方法」と「新規でキャンペーンを作る方法」があります。
既存の YDN のキャンペーンを変換する方法は、配信していたキャンペーンの実績が引き継がれ学習が働きやすくなるので、推奨されています。
ただし、キャンペーンを変換する場合、YDN キャンペーンの設定に戻すことはできません。そのため、変換する方法の中でも YDN のキャンペーンを残しつつ YDA キャンペーンの作成ができる方法も含め4つの方法を紹介します。
2は実績が引き継がれ YDA キャンペーンの学習が働きやすくなるというメリットがありますが、YDN キャンペーンの配信実績を残すことはできません(設定を保持できるのみ)。
3は YDN キャンペーンの設定も配信実績も残すことができますが、YDA キャンペーンに実績が引き継がれないので学習に時間がかかり、成果が悪化する可能性があります。
YDA の公式ページでは以下のようにまとめられています。最も工数をかけずに YDA へ完全移行する場合は1、保険のために YDN キャンペーンを残しておきたい場合は2か3と考えると良いかと思います。
YDN キャンペーンを残しておく場合、YDA キャンペーンでの配信を開始したらYDN キャンペーンは停止しましょう。並行配信すると以下のようなリスクがあります。
Yahoo! からアナウンスされている通り、2021年春には YDN キャンペーンは YDA キャンペーンに一斉変換されます。それまでに YDA に完全移行できるように、YDA で成果の出やすい配信設定を重視しましょう。
YDN キャンペーンを YDA キャンペーンに変換する方法は以下の2つです。
詳しい作業手順は Yahoo! 公式ヘルプをご確認ください。
1のほうが簡単な作業なので、基本的には1で変換することをおすすめします。変換するキャンペーン数が膨大で、かつキャンペーンごとにキャンペーンの目的・入札戦略・入札価格や入札戦略の目標値が複雑に変わる場合は、2での変換を検討しましょう。
キャンペーンの変換を行っただけでは引き継がれない設定や、YDA キャンペーンでは利用できない設定がいくつかあります。意図しない配信にならないようにしっかりと確認しておきましょう。
内容 | 詳細 | 対処方法 |
---|---|---|
広告単位の入札価格削除 | 広告単位の入札価格は削除され、広告グループの入札価格が適用されます。 | 必要であれば広告グループの入札価格を見直しましょう |
インタレストカテゴリーをオーディエンスカテゴリーに自動変換 | インタレストカテゴリーの設定が解除され、類似するオーディエンスカテゴリーが自動設定されます。自動で設定されるのは、あくまで類似するオーディエンスカテゴリーのため、もとのインタレストカテゴリーと完全には一致しません。類似するカテゴリーがない場合、オーディエンスカテゴリーは「設定なし」となります。 | 変換後にどのようなオーディエンスカテゴリーが設定されているか確認しましょう。分類が「興味関心」か「購買移行」かで配信傾向が変わる可能性があるので、その点も確認しましょう。 |
フリークエンシーキャップの解除 | フリークエンシーキャップは「設定なし」になります。 | 新しい機能の「ビューアブルベースのフリークエンシーキャップ」を使用しましょう。表示回数カウントの基準値が変わっているので、必要であればキャップの回数を変更しましょう。 |
「テキスト(タイトル15・説明文33)」の広告、アニメーション GIF の広告の削除 | 「テキスト(タイトル15・説明文33)」、アニメーション GIF の広告は廃止となるため、削除されます。 | 「テキスト広告」(従来の「テキストタイトル 15 、 説明文 19-19)を使用しましょう。また、各広告グループに配信可能な広告が含まれているか確認しましょう。 |
画像自動付与の利用不可 | 画像自動付与は利用できなくなります。 | 代わりにレスポンシブ広告を入稿しましょう。 |
広告グループ単位の入札戦略の利用不可 | キャンペーンの入札戦略とその配下の広告グループの入札戦略が異なる場合、キャンペーンの変換ができません。また、YDA では広告グループ単位の入札戦略は設定できません。 | 入札戦略によってキャンペーンを分けることを検討しましょう。 |
携帯キャリアのターゲティング不可 | 「docomo」「KDDI」などのキャリアのターゲティング設定ができなくなります。 | キャリアを限定しない広告配信を検討しましょう。 |
YDN の PC ブランドパネル広告のキャンペーンを変換する場合、変換時または変換後にプレイスメントリストを設定する必要があります。この設定を行わないと、PC ブランドパネル以外の広告枠にも広告が配信されてしまうので注意しましょう。設定手順は以下の通りです。
※PC ブランドパネル(動的ディスプレイ広告)は、上記のプレイスメント指定をしても、PC ブランドパネル広告枠にだけ配信することはできなくなります(「toppage.yahoo.co.jp」の面の中で他の枠にも配信されます)。
YDN から YDA に移行してみて、操作性や機能面の変化をどのように感じたか、弊社の社員にアンケートを取ってみました。
結果は、操作性や機能面の変化を感じなかった人が40%、良くなったと感じた人が33%、良くなった面と悪くなった面の両方があると感じた人が26%で、悪くなったと回答した人はいませんでした。
良くなった点では、管理画面が使いやすくなった、分析しやすくなったという意見が目立ちました。グラフや分割機能は、管理画面上で手早く分析するときに重宝しますよね。また、掲載方式別にキャンペーンを分ける必要がなくなったのでキャンペーン数が少なくなり、管理がしやすくなったという声もありました。
悪くなった点では、レポート機能が使いにくいという意見が圧倒的に多かったです。新管理画面ではテンプレートを作成してからでないとレポートを作成できなかったり、テンプレートの編集画面ではプレビューを表示してからでないとダウンロードできなかったりといった部分が具体例として上がっていました。レポート機能の拡充予定はすでにアナウンスされているので、今後に期待したいですね。
YDA の Yahoo! 公式サイトの情報では、YDN と比較してコンバージョン率・コンバージョン単価が改善していると掲載されています。
この通りの成果を得るためには、YDA に移行することで何が変わるのかを理解し、適した設定とキャンペーン構造で配信することが重要です。YDA で刷新された機能のパフォーマンスを最大限引き出せるように、仕組みを理解して運用していきましょう。
広告事業部 マネージャー
2015年4月に新卒として入社。2019年にマネージャーに昇格。広告運用の仕事をメインに、現在はサイト改善提案やブログ執筆にも力を入れている。数値をもとにしたサイト改善提案が得意。趣味は動画を見ること、ゲームをすること。
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