上司やお客様から「ビュースルーコンバージョンは、コンバージョンと同様に評価すべきなのか?」と聞かれた時に、皆さんであればどのように答えるでしょうか?的確で納得感のある回答をすぐにするのは正直難しいですよね。
単純にコンバージョンと同様な評価はできなければ、カウント条件も媒体によって異なるので、一緒くたにすべきではないとは思います。
ただ、コンバージョンでは見えない広告の価値を評価できる指標でもあるので、まったく取り扱わないのはもったいないです。
この記事では、ビュースルーコンバージョンの仕組みや各媒体でのカウント条件と、評価の考え方、どんなシーンで役に立つのかを紹介します。
ビュースルーコンバージョンとは、画像/動画広告が表示されたが、クリックや課金対象までの視聴をしなかったユーザーが、その後別の方法でサイトを訪問し、コンバージョン(購入や契約や資料請求など)した時に計上される指標です。ディスプレイ広告や SNS 広告で用いられ、検索広告では使われません。
一般的に Google や Yahoo! の管理画面の「コンバージョン」という指標は、ビュースルーコンバージョンに対して「クリックスルーコンバージョン」と呼ばれます。
クリックスルーコンバージョンは、広告をクリックしたユーザーがそのままコンバージョンした数/一定期間内にコンバージョンした数です。一定期間内は計測ツールの条件にもよります。クリックスルーコンバージョンは、広告をクリックしているので、直接的な影響があると考えられます。
一方、広告をクリックしていないビュースルーコンバージョンは、評価が難しいですが、複数の広告でビュースルーコンバージョンが発生している場合は、それぞれの貢献度であれば確認することは可能です。
Google 広告と Yahoo!広告、Facebook 広告でビュースルーコンバージョンにおける「ビューの定義」が少し異なるので、以下の表にまとめました。Google と Yahoo! の仕様はほとんど同じですが、Google のみ計測期間を変更できる点に違いがあります。
媒体 | ビュー発生の定義 | 計測期間 | 備考 |
---|---|---|---|
広告の50%以上が、ディスプレイ広告では1秒以上、動画広告では2秒以上表示された場合 | 1日間 | 計測期間は1日から30日の中で変更可能 | |
Yahoo! | 広告の50%以上の範囲が1秒以上連続して表示された場合 | 1日間 | 計測期間は変更不可 |
広告の1%以上の範囲が表示された場合 | 1日間 | 計測期間は変更不可 |
わかりやすくするために、3つのパターンに分けて考えてみましょう。いずれも最終的にコンバージョンが発生している前提で説明します。
2つ(複数)のインプレッションが発生している場合は、コンバージョン直前のインプレッションがあった広告をビュースルーコンバージョンとして計上します。
例えば、あるユーザーが1月1日と1月3日に広告を見て、クリックせずに別の方法でサイトに流入して、1月4日にコンバージョンしたとします。その場合、コンバージョン直前の広告(1月3日に見た広告)が「ビュースルーコンバージョン」としてカウントされます。
1つの広告はインプレッションのみ、もう1つの広告ではクリックがある場合は、クリックスルーコンバージョンが優先してカウントされます。そのため、ビュースルーコンバージョンはカウントされません。
例えば、あるユーザーが1月1日に広告を見て、1月3日に別の広告をクリックし、その後別の方法でサイトに流入して1月4日にコンバージョンしたとします。
その場合、コンバージョン直前のクリックした広告が「クリックスルーコンバージョン」としてカウントされ、最初に見ただけ広告は「ビュースルーコンバージョン」としてカウントされません。
複数の広告でインプレッションがあり、クリックしたのは別の広告の場合、クリックスルーコンバージョンが優先して計上され、コンバージョン直前に見た広告があったとしても、ビュースルーコンバージョンは計上されません。
例えば、あるユーザーが、コンバージョン前に複数回広告を見てから、1月3日に見た広告をクリックして、コンバージョンしたとします。
その場合、1月3日のクリックした広告が「クリックスルーコンバージョン」としてカウントされ、クリック前・後は問わずに、複数回見た広告は「ビュースルーコンバージョン」としてカウントされません。
Facebook では2021年1月19日にクリックスルーコンバージョンとビュースルーコンバージョンの計測期間についての変更がありました。
この変更により、Google、Yahoo! と Facebook で、ビュースルーコンバージョンの仕様が以下のように異なっています。
Facebook では、広告セットを作成する際に、コンバージョン列で集計する数や、最適化に使用するコンバージョンにビュースルーコンバージョンを含むかどうかを選択します。
広告セット設定の「最適化と配信」の「アトリビューション設定」の項目から設定することができます。ここで「クリック後または広告の表示後」の設定を選ぶと、ビュースルーを含むコンバージョンがこの広告セットで使用され、コンバージョン列に計上されます。
ただし、先ほど説明した通り、ビュースルーコンバージョンとクリックスルーコンバージョンを分けて見ることはできません。また、広告セットで使用するコンバージョンにビュースルーを含めるかどうかは、広告セットの公開後には変更することができないので注意が必要です。
ビュースルーコンバージョンもクリックスルーコンバージョンと同じく、コンバージョンに至った数を表している数値です。しかし、ビュースルーコンバージョンとクリックスルーコンバージョンと同等に評価すべきではありません。
それは、ビュースルーコンバージョンがカウントされた広告のインプレッションが本当にコンバージョンに貢献していたかが不明確だからです。
クリックスルーコンバージョンは、ユーザーが広告を見て、意図的にクリックしているので、広告がコンバージョンに貢献していると考えるのが妥当でしょう。
一方ビュースルーコンバージョンは、本当にユーザーが広告を見ているかすら判断できません。ユーザーがサイト内の広告以外のところを見ていても、広告が画面に表示されていれば「ビューの定義」に基づきカウントされ、最終的にコンバージョンに至ればビュースルーコンバージョンとしてカウントされます。
あるいは、広告を見ていたとしても、そのことは忘れていて別の理由でコンバージョンするケースも考えられます。つまり、本当に広告表示がコンバージョン獲得につながったのか判断できないという不明確さがあります。
もちろん、広告が印象に残っていて、他の方法でサイトを訪れ、コンバージョンに至ったユーザーも多少はいると思いますが、すべてのビュースルーコンバージョンがそうとは考えにくいです。
例えば100件のビュースルーコンバージョンのうち、何件が広告を見てコンバージョンした数なのかを確認する手段はないので、成果指標のコンバージョンとして評価するのが難しいのです。
このように、実際の広告の成果があいまいなままビュースルーコンバージョンもコンバージョンとして評価してしまうと、広告の過剰評価になったり、実際の問い合わせや購入数との乖離の原因になったりするので、ビュースルーコンバージョンは成果指標のコンバージョンに含めないケースがほとんどです。
ただし、ビュースルーコンバージョンはクリックスルーコンバージョンでは見えない広告の価値を評価できる指標でもあるので、有効に活用できるシーンもあります。どのような時に役に立つかご紹介します。
動画広告は静止画の広告に比べてクリックが発生しにくい反面、広告を見せることでユーザーに伝えられる情報が多く、よりビュースルーコンバージョンが発生しやすい広告形式です。
動画広告では、クリックスルーコンバージョンと合わせてビュースルーコンバージョンも広告評価の参考にすることで、コンバージョン獲得に貢献している広告をより正確に評価することができます。
例えば、あるアカウントで2種類の動画を使って動画広告を配信しているとします。広告 A はクリックスルーコンバージョンが多く発生しており、目標 CPA を達成しているので、良好な成果であると判断できます。
一方、広告 B は広告 A と同程度の視聴回数があるものの、クリックスルーコンバージョンがほとんど発生しておらず、成果の悪い広告のように見えます。
視聴回数 | クリックスルーコンバージョン | |
---|---|---|
広告 A | 720回 | 12件 |
広告 B | 714回 | 1件 |
クリックスルーコンバージョンのデータだけ見れば、広告 B の配信を停止し、広告 A のみで配信を続けるのが良いように思えます。
ただし、ビュースルーコンバージョンを確認してみると、ビュースルーコンバージョンは広告 B のほうが多く、広告 A の10倍近く獲得できていました。
視聴回数 | クリックスルーコンバージョン | ビュースルーコンバージョン | |
---|---|---|---|
広告 A | 720回 | 12件 | 3件 |
広告 B | 714回 | 1件 | 32件 |
この場合、広告 B の動画を見せることで、その後の多くのコンバージョン獲得に貢献している可能性があります。
ビュースルーコンバージョンの獲得状況を加味して、広告 B も停止せずに配信継続すると判断した結果、その後も広告 B はビュースルーでコンバージョン獲得に貢献し、機会損失を防ぐことができます。
ちなみに、Google の動画広告ではデフォルトでコンバージョン列にエンゲージビューコンバージョン(スキップ可能なインストリーム広告を10秒以上視聴して、別の経路でコンバージョンに至った数)も含まれる仕様になっています。
管理画面の「分類」から「コンバージョン>広告イベントタイプ」を選択することで、クリックスルーコンバージョンとエンゲージビューコンバージョンを分けて確認することができます。
コンバージョン数が少ないアカウントでは、1件のコンバージョン数で CPA やコンバージョン率が大きく変わってしまうため、キャンペーンや広告の評価が難しくなってしまいます。
評価するのに十分なコンバージョン数を獲得するまで待っていると、時間もお金もかかりすぎるという課題はよくあります。
ビュースルーコンバージョンはコンバージョンより数が多くなる傾向があるので、ビュースルーコンバージョンを参考にすれば、クリックスルーコンバージョンよりも信頼性の高いデータ量で評価・調整をすることができます。
このように、コンバージョン数が少ないアカウントで、スピーディーにかつ精度高く運用するために役立つ指標です。
最後に、ビュースルーコンバージョンを管理画面上で確認する方法を説明します。
管理画面の「表示項目」をクリックし、「表示項目の変更」を選択します。
「コンバージョン」の項目を開き、「ビュースルーコンバージョン」にチェックを入れて「適用」をクリックします。
管理画面の表に「ビュースルーコンバージョン」の数値が表示されます。
管理画面の「表示項目」をクリックし、「表示項目を編集」を選択します。
検索窓で「ビュー」と検索し、「ビュースルーコンバージョン数」にチェックを入れて「適用」をクリックします。
管理画面の表に「ビュースルーコンバージョン」の数値が表示されます。
基本的に広告の成果の対象とすることはあまりないですが、広告を評価するときに参考にすることで運用の一助となる指標です。うまく活用して、より精度の高い広告評価・広告運用に役立てましょう。
広告事業部 マネージャー
2015年4月に新卒として入社。2019年にマネージャーに昇格。広告運用の仕事をメインに、現在はサイト改善提案やブログ執筆にも力を入れている。数値をもとにしたサイト改善提案が得意。趣味は動画を見ること、ゲームをすること。
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