新年度が始まって数ヶ月は研修まっさかりだと思います。Web マーケティング業界であれば、Google 広告や Yahoo! 広告に代表される運用型広告がどんなものかを教えるのは、なかなか難しいものですよね。
ただでさえ、各媒体の仕組みやメニューの豊富さで複雑になっている上に、広告クリエイティブの作り方に関しては独特の世界観があり、難しさを余計に感じることでしょう。
キーワードマーケティングでは、新卒など未経験者へ対しての研修制度を構築して8年目になります。そのため、どの順番で説明すると運用型広告を理解してもらえるかというノウハウはかなり溜まってきています。
最大のポイントは、運用型広告がオフラインを含めた広告全体の中で、どこに立ち位置があるのかというのを示してあげることでしょう。
この記事では、特にブランド認知を目的としたテレビ CM などの広告と、今すぐ客を獲得するための運用型広告の違いにフォーカスしながら、初心者に対してどのように伝えれば、2つの違いが分かるかを解説します。
初心者に対しては、運用型広告の話にいきなり入るのではなく、まず認知向けのマス広告との違いから説明するのがおすすめです。
インターネット広告である運用型広告も近年、広告のシェアを伸ばしているものの、「広告とはこういうもの」という思い込みが誰しもあり、この誤解を解いていく必要があるんですね。
デジタルネイティブといわれる世代であっても、ほとんどの人にとって広告とはテレビ CM や屋外看板、電車内中吊り広告のことをイメージする方が多いでしょう。
ネット広告は2020年にはほぼ4大マス(テレビ CM、新聞、雑誌、ラジオ)広告と並ぶほどの躍進を続けていますが、それでも広告費全体からすればまだ36.2%であり、1/3ほどしか目にする機会がないともいえます。残りの2/3のほうが広告としてのイメージを持ちやすいのは当然でしょう。
さらには、運用型広告は元々検索広告から始まったものですが、基本的には媒体のコンテンツに自然に挿入されるものであり、そもそも広告として認知されにくい側面もあります(もちろんそうではない広告もあります)。
多くの人にとって「広告=テレビ CM などのオフライン広告」という思い込みというかイメージがあるので、まず「これらとは全く違うものだ」ということをしっかり頭に入れてもらうことが大事になります。
4大マス広告のうちのテレビ CM を例にすれば、その目的は、「認知をしてもらう」「ブランド名を覚えてもらう」に尽きます。
リビングのソファに寝転んでテレビをぼんやり見てる人に、わずかな時間でアピールするのが認知目的のマス広告です。
なんとかイメージだけでも記憶に残してもらわないと意味がないので、具体的なメリットではなく、わかりやすいインパクトのある抽象メッセージを繰り返し訴求することになります。
リポビタン D の「ファイト、一発!」とか、かっぱえびせんの「やめられない止まらない、カルビーかっぱえびせん」などは分かりやすい良い例ですよね。
一方で運用型広告の目的は、多くの場合「直接のコンバージョン獲得」になります。広告を見たらクリックしてもらい、サイトで問い合わせや購入などのアクションをしてもらいたいわけです。
そもそも認知向けマス広告と運用型広告は、目的が違うので、その訴求方法やクリエイティブの在り方、考え方も根本的に違うわけです。
ここの線引きをあいまいにしてしまうと、運用型広告に認知向けマス広告のような抽象的なキャッチコピーをいれて、全く成果があがらないといったことが発生してしまうので注意が必要です。
目的以外にも違いが大きく2つあります。それは広告を見るシチュエーションと広告を見た後にお客さんに期待するアクションです。この2つも具体例を挙げて解説いたします。
認知向けマス広告は、基本的に一瞬で過ぎ去ってしまうシチュエーションで見る広告です。テレビをぼんやり見ている時の CM、駅を歩いている時の構内広告などが例に挙げられます。よっぽどのことがない限り、じっくりこのような広告を見ることはないのではないでしょうか。
このような状況で見てもらう広告なので、複雑な話をしても伝わりません。
「リポビタン D は、1本中にタウリン1000mg とイノシトール、ビタミン B 群などを配合し、主成分のタウリンは「含硫アミノ酸」という栄養成分の一種です。これは体の各組織に存在していてこれを補給するから体にいいんです」
このようなメッセージを CM で言っても伝わらないので、「ファイト!一発!」というキャッチーなフレーズで広告を出しているのです。
対して、ネット上の運用型広告は違います。
特にスマホは個人で常に持ち歩いている媒体なので、広告が表示された時に、じっくり見ることも可能で、大事な情報だと思ったら保存することもできます。
それどころか、Twitter 広告や Facebook 広告などでは、広告をユーザーがシェアしてくれることもあります。「広告が一瞬で過ぎ去らない」のが認知向けマス広告と比較したときに、運用型広告の大きな特徴の1つといえます。
最も大きな違いは、お客さんに期待するアクションです。
認知向けマス広告は一瞬で過ぎ去ってしまう広告なので、広告を見た後すぐにお客さんに問い合わせや資料請求などをしてもらうことが困難です。
なのでユーザーの「記憶に残る」、「印象に残る」ことが広告を見た後に期待するアクションになります。
運用型広告はこれとは対極にあります。じっくり見ることができる広告なので、クリックしてサイトに来てもらい、購入や予約といった広告主にとっては売上につながりやすいアクションを期待するわけです。
認知向けマス広告の最大の利点は、数百万規模の人に一度にメッセージを届けることができることです。
例えば、新宿駅の1日の利用者数は340万人を超えます。これだけの規模で「新宿駅を使う人」というターゲットに対して、訴求できるわけですね。以下は屋外広告の一例をまとめたものです。
スポット名称 | 掲載期間 | 掲載料 | 配信時間/面 |
---|---|---|---|
新宿アルタビジョン | 1週間 | 120万円 | 15秒×4回/1 1時間あたり56回/日 |
渋谷ハチコーボード4.00m×20.00m(※1) | 1週間 | 800万円 | 1面 |
渋谷ハーフジャックミニ(※2) | 1週間 | 150万円 | 18枚 |
一方で運用型広告は、「広告を見た後にすぐに反応してくれるお客さんが一定確率で存在する」のが魅力的です。認知向けマス広告ではあまり期待できない運用型広告ならではの強みでもあります。
前提条件が全く違うので、クリエイティブの表現方法も大きく変わります。認知向けマス広告は目的が認知であり、一瞬で過ぎ去ってしまう広告なので、メッセージを抽象的なイメージでぎゅっと凝縮して伝えなければいけません。
一方で運用型広告はコンバージョン獲得(できる限り今すぐ)が目的になるので、抽象的なイメージを伝えても意味がなく、ターゲットにあった具体的なメリットや事実を伝える必要があるわけです。
運用型広告でも、コンバージョン獲得以外を目的として、ディスプレイ広告や SNS 広告で抽象的なメッセージのクリエイティブを使う場合があります。
例えば、認知を目的としてターゲットを狭く設定せずに年齢や男女などの基本属性のみのターゲティングとして、分かりやすい抽象メッセージのみのシンプルなバナーを、クリエイティブとして広告展開する場合などです。
実際に放映されていたテレビ CM をもとに説明していきます。
2020年上半期にとても売れた日本車は、トヨタのライズです。認知を目的とした広告のキャッチコピーは「サプライズと出会おう。」です。抽象的でイメージ全開のクリエイティブですね。
CM は親子の絆や密ではない意外な場所に外出することは実は楽しい、といったコロナ禍ならではのユーザーの心に刺さるメッセージでとても良い広告でした。認知を目的として、印象に残すことに成功しそうな優れたクリエイティブですね。
さて、このトヨタライズの認知広告を、今すぐ客を獲得するための運用型広告のクリエイティブに変換するとどのようになるでしょうか。
この場合、広告目的はユーザーの印象に残ることではなく、できる限り今すぐ「試乗予約」「見積シミュレーション」などのアクションを取ってもらいたいわけですね。
なので欲求のレベルは高い状況であると仮定し、具体的なメリットや事実をメッセージとして淡々と伝える必要があります。
例えば、トヨタライズの検索広告文を作成するなら下記のようになるでしょう。想定としては検索キーワードは「SUV」、ターゲットはお子さんのいる男性で、すでに買い替え検討をかなり進めている人です。
テキストだけで「サプライズと出会おう。」といったことを訴求しても何も伝わらないので、以下のようなターゲットに対して具体的なメリットを提示してあげるわけですね。
認知向けの広告と運用型広告は目的が全く違います。シーンによっての使い分けが大事なので、自社の目的にあった広告を選択することがポイントですよね。
テレビ CM という最も想起しやすい広告と、ネットの運用型広告の違いを理解できれば、新人でも運用者として見当違いな広告文を作るようなことがなくなります。是非ご参考にしてください。
代表取締役会長
2003年、Googleアドワーズが日本でサービスを開始した直後より、検索キーワード広告とランディングページの実践・研究を行い、その成功理論を書籍『1億稼ぐ検索キーワードの見つけ方』で発表、5万部以上のベストセラーとなる。 キーワードマーケティングでは、設立時から延べ千社以上のアカウントを診断およびコンサルティングしており、現在は上場会社や成長率の高いベンチャー企業に対する広告運用代理事業を拡大している。
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