デザイナーにクリエイティブの制作を依頼したけど、意図通り納品されずにがっかりした経験はありませんか?「どうして希望通りの内容になっていないのか・・・」と理由を考えても分からず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
依頼したものが希望通り納品されれば、工数を削減してほかの業務に時間を使うことができます。さらに、デザイナーはクリエイティブ制作のプロなので、本来は広告運用者が制作したクリエイティブよりも高いクオリティで納品されるはずです。
この記事では、広告運用者がデザイナーに発注して失敗する理由や、意図した通りに高いクオリティでクリエイティブが納品される方法を解説します。
私は年間80件以上クリエイティブ制作の依頼をデザイナーにしますが、今までの失敗した原因を振り返ってみると主に5つの原因に分類できました。
第一の原因として、発注後に全てデザイナー任せにしてしまって、勝手によいものが納品されるだろうと待ちの姿勢になってしまうことです。クリエイティブ制作のプロなので、過度に期待して、発注後に何もアクションを取らないと失敗につながることがあります。
デザイナーはクリエイティブ制作のプロですが、超能力者ではないので発注者側の前提や実現したいことを伝えないと形にすることができません。デザイナーが自分の依頼内容をきちんと理解できていない可能性もあるので、発注後もデザイナー任せにせず、方向性や分かりづらい部分は適宜確認しましょう。
2つ目は、発注者が依頼するクリエイティブで何を実現させたいか決まっていないことが挙げられます。クリエイティブ制作の目的は、コンバージョン数を増やすことや、コンバージョン単価を削減したり、 ROAS を増やしていったりすることだと思います。
しかし、依頼するときに「コンバージョン数を増やしたい」や「ROAS を上げたい」といってもデザイナーは運用型広告の運用をしていないため、クリエイティブ制作で具体的に何をすればコンバージョン数が増えるのか、 ROAS が上がるのか分かりません。
そのため、依頼するときは、発注者(広告運用者)が目的を達成するために、クリエイティブの何をどのように変更するかまで、きちんと言語化して伝える必要があります。
発注者がデザイナーに何をどこまで任せるのか明確でない場合も、希望通りのクリエイティブが納品されないことがあります。
広告運用者は成果を出して目標を達成することが目的ですが、デザイナーはよいクリエイティブを制作し、発注者から依頼されたものを納品することが目的です。そのため、お互いの目的がずれないように責任範囲を明確にしておくことが重要です。クリエイティブに必ず入れてほしい要素があれば先に共有しましょう。
例えばセミナー広告であれば、登壇者の画像や開催日時と、参加費用が無料であることは必ずいれてほしいなど、運用結果を左右する重要な事項は発注者から必ず伝えましょう。
意図通りのクリエイティブが納品されない原因の4つ目に挙げるのが、段階を踏まずに納品してもらっていることです。その結果、修正の時間が増えたり、最悪の場合一から作り直したりすることにもつながります。
そのため、初案としてクリエイティブを共有してもらい、コミュニケーションを取りながら、徐々に完成品まで持っていくことが重要です。
Web 広告のクリエイティブを制作する場合、1つのクリエイティブで複数のサイズを用意することが多いと思います。初めての依頼でいきなり全クリエイティブ、全サイズで納品してもらうと、そのクリエイティブが想定していたものと違うと、全て修正する必要があります。工数削減を考えても、初案から段階的に進めることをおすすめします。
最後は、発注者とクリエイティブを承認している人とのコミュニケーション不足による問題です。上司やディレクターの承認がないとクライアントに提案ができない場合は、デザイナーに依頼する前に方針のすり合わせをしておきましょう。
これを実施していないと、デザイナーと発注者間では満足いくものができたとしても、承認がおりずに、完成後に大きな修正や一から作り直すことになる可能性があります。また、想定していた納期を超えてしまったり、外注したりしている場合は、追加で費用が掛かってしまうこともあります。
それでは、どうすれば希望のクリエイティブを納品してもらえるようになるのでしょうか。11のコツをもとに解説していきます。
ディレクターや上司などの承認がなければクライアントへの提案や配信ができない場合、デザイナーに依頼する前に方針のすり合わせをすることが重要です。
特に、制作の意図やターゲット、クリエイティブのデザインイメージなど、クリエイティブが完成した後に修正が難しい点は先に合意を取りましょう。
また制作費用が高額になる場合は、ディレクターや上司とのミーティングにデザイナーにも同席してもらいましょう。方針のすり合わせをおこなうと、発注者が受け身にならず、効率よく作業を進められます。あくまでも提案内容は、発注者自身が考えてから承認者の指示を受けるようにしましょう。
次にクリエイティブの制作背景を伝えることも重要です。作業の指示だけでは意図が伝わらず、期待したものと異なるものがあがってくるかもしれないので、制作に至った背景や理由を共有しましょう。デザイナーも目的を理解して取り組むことで、同じ方向を向いて作業できます。
例えばコンバージョンを増やしたい場合でも、ただ増やしたいわけではなく、クライアントからテスト依頼があったことを共有したり、イベントやセミナー広告を依頼する際は、実施するイベントやセミナー自体の背景などを説明します。クリエイティブの依頼に至るまでの背景や理由を知ってもらうことで、デザインのトンマナや使用する素材などの判断材料になります。
初めて依頼するデザイナーや、発注経験のないサービスの場合は、制作背景や目的、参考素材をどれだけ集めて依頼しても、テキストだけでは伝わりづらいです。そのため、社内外問わずオンラインでもいいので、対面でミーティングすることがおすすめです。
例えば、青色を基調でお願いする場合、「暗いイメージにしたいからなのか」や「企業カラーが青だからなのか」、「明るい青か、それとも紺色に近い暗い青か」など、デザイナーは迷うかもしれません。
そのため、初めて依頼する場合は15分〜30分ほどのオンラインミーティングでも問題ないので、対面でデザイナーからの質問を受ける時間を設けましょう。
クリエイティブの制作背景を伝えたうえで、さらにそのクリエイティブで実現したいことを伝えることも重要です。コンバージョン単価を下げることがクリエイティブ制作の目的の場合、デザイナーが理解できる言葉でできる限り具体的に伝えます。その際、自分が考えていることや事実も含めて説明すると、何を実現したいかが伝わりやすくなります。
例えば、「現在配信しているクリエイティブは30代をターゲットとしているのに、実際に購入しているのは20代の方が多いので、30代に興味を持ってもらえるクリエイティブにしたい」や「画像からイラストに変更して成功した事例があるので、現在配信中の画像をイラストのクリエイティブに変更したい」など、何をこのクリエイティブで実現したいかをデザイナーに伝えます。
依頼する際は、デザイナーにどこまで自由に制作してもらうのかを決めておくのも大切です。どこまで任せるかを共有しておくことで、発注者が希望していたイメージのクリエイティブを納品してもらえる確率が高くなります。特に、配信中のクリエイティブ改善ではなく、新しくクリエイティブを制作してもらう場合に重要です。
デザイナーがどこまでアレンジしていいのかを明確にしないと、納品物が発注者のイメージと大きくずれてしまいます。最低でも下記の4つは、依頼するときにデザイナーに任せるのか、発注者が指定するのかを伝えましょう。
さらに、自分が想定しているイメージに近づけてほしいときは、キャッチコピーやロゴのデザインの共有、配色が複数ある場合は、どれを使うか指定をしておくとより完成イメージに近づきます。
もし自分が思い描く完成イメージがあれば、複数共有しましょう。クリエイティブは口頭での説明が難しく、つい「いい感じに」や「~ようなイメージです」と伝えてしまいがちですが、具体的なイメージを例にすると明確に伝わり、デザイナーさんもアレンジの仕方を考えられるようになります。
そのため、可能であれば複数のイメージを共有しましょう。以下にクリエイティブの参考イメージを収集できるサービスを紹介するのでまずはここから探してみましょう。
Pinterest は、Web 広告だけではなくチラシ広告なども一度に見ることができます。クリエイティブを一度に沢山見たいときにおすすめのサイトです。クリエイティブのジャンル、広告の形式と関係なく調べたい場合は Pinterest を使うといいでしょう。
Meta 広告ライブラリでは、Meta 広告で配信実績のあるクリエイティブを見ることができます。
Meta 広告用のクリエイティブ制作の参考イメージはもちろんですが、サービス名や企業名で検索してもヒットするので特定のサービスや企業のクリエイティブが見たい場合にもおすすめです。
Bannnner.com は、検索できるカテゴリー(業種や用途)が多いため参考にしたいクリエイティブがすぐに検索できます。また、クオリティが高いクリエイティブが多いので安心して探すことができます。
注意点としては純広告やイメージ広告の掲載が多いので、レスポンシブバナーを制作するときはレイアウトなどが参考になりうるか判断をしてからデザイナーに提示しましょう。自分で判断できないときはデザイナーに相談することもおすすめです。
バナー広場は、SNSバナー、サイト内掲載バナーなどの広告タイプや、使用されているカラーでも検索できるため、細かくカテゴライズして検索したい場合におすすめのサイトです。
いつまでに初案がほしいのか、サイズ展開が完了した最終納品がほしいのかなどの期日は明確にしましょう。納期によってどれくらいの数、どれくらいのクオリティで納品できるか変わるので、いつまでに納品してほしいのか明確に伝えましょう。
ここでのポイントは、まずは希望を伝えることです。変に遠慮をして、自分なりに余裕を持った期日を設定しても、デザイナーに取っては余裕過ぎたり、反対に厳しい日程である可能性があるからです。希望を伝えて、可能であれば進めてもらい、厳しそうであれば話し合って日程を決めましょう。
制作に必要なロゴや使ってほしい画像は、できる限り制作に入る前に揃えて渡しておくとスムーズに納品されます。
また制作前に揃えることができない場合は、いつまでに渡すことができるかを伝えておきましょう。これを忘れてしまうと別の素材を使用したクリエイティブが納品されてしまい修正作業が発生します。
特に画像を入れ替える作業は、レイアウトを大きく変更しないといけなくなるので十分気を付けましょう。
発注者のイメージ通りに制作してほしいときは、ラフ案を共有するとイメージと相違ないものが納品されます。ラフ案とは、完成イメージを共有するために手書きや図形などでイメージを大まかに共有するものを指します。
チャットやメールでやり取りする場合は、紙にスケッチしてしまうと共有しにくいので、 Google スライドや PowerPoint を使用して制作するのもいいでしょう。
ラフ案の共有には注意点もあります。ラフ案は発注者のイメージを強く伝えることができるためデザイナーは忠実に守ろうとしてくれる傾向があります。そのため、新しい案をデザイナーに作ってほしい場合は、おすすめの方法ではありません。あくまでも忠実に自分のイメージした通りに作ってほしい場合に、ラフ案を使用するのがおすすめです。
修正の工数を削減するためにも、段階的に進め、まずは初案を提出してもらいましょう。全てのデザインパターンで全てのサイズを一度に納品してもらうと、そのクリエイティブで変更や直しが必要になった場合、修正時間が膨大になります。
効率よく作業を進められるように、初案から修正案、納品といったステップを踏むのがおすすめです。修正工数も比較的おさえられるので、トータルの時間も少なくて済みます。デザイナーと感覚が合うまでは、丁寧に順を追って、毎回提出されたものに対してフィードバックをするのがよいでしょう。
デザイナーのリソースや納期によっても変わりますが、可能であれば複数提案してもらうようにしましょう。
1つの依頼に対して1つの案を納品してもらうよりも2つ、3つ提案してもらう方がイメージに近いクリエイティブが納品される確率が高くなります。そのため、まずはデザイナーに相談して複数提案してもらえるか確認しましょう。
これまでクリエイティブ発注の失敗原因や成功のポイントを解説してきました。その内容をもとに発注するとき、まずは下記のフォーマットを使って依頼してみましょう。今までの依頼よりも希望通りに納品される確率がぐっと上がると思います。
〇〇さま向けクリエイティブ発注書
・LP/サイトURL:
・制作背景:
・制作の目的/実現したいこと:
・クリエイティブに必ず入れてほしい項目:
・レイアウト(デザイナーからの提案あり/なし):
・配色(デザイナーからの提案あり/なし):
・イラストや画像(デザイナーからの提案あり/なし):
・素材の提供有無:
・参考イメージの有無:
・制作サイズ:
・納品形式:
・希望納期:初案と最終納品
この記事をここまで読んでいただいた方もおそらく広告運用がメインの業務だと思います。私たちはデザイナーではないし、デザインの専門知識が豊富にあるわけではないので、どうすれば希望通りのクリエイティブが納品されるか考えて改善していくのは難しいです。
しかし、今できなくても数をこなせば必ずいつかよい依頼ができ、希望通りのクリエイティブが納品されるようになります。デザイナーの協力を得ながら少しずつ頑張りましょう!
広告運用 コンサルタント
大阪の広告代理店で1年ほど勤務し、2021年1月に広告事業部に中途入社。SNS広告の運用が好き。趣味は読書とアウトドア好きな友達に連れて行ってもらうキャンプ。
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