ビジネスの場で使われる「戦略」と「戦術」ですが、それぞれの業界や商品・サービスで何が最適かを考えて行動に落とし込むのが良いでしょう。
例えば、弊社のような広告運用代理店の場合、長期的な視点でのお客様の目的の達成方法を考える「戦略」と、その戦略をもとに具体的な媒体やターゲティング、広告クリエイティブを考える「戦術」を用いて日々の業務に取り組みます。
戦略のない広告配信は、目的に適した施策なのか判断がつかず、予算や自社資源を有効活用できないまま戦術を実施することに繋がります。
今回の記事では「戦略」と「戦術」の一般的な意味から、マーケティングにおける意味、運用型広告において必要な理由と具体的に決めることまでを紹介します。
運用型広告の仕事に戦略から取り組むとき、まず理解すべきは戦略と戦術の違いです。戦略と戦術を実践する上で、言葉の違いを最初に確認しておきましょう。戦略は頭を使って長期的な計画立てることを指す一方、戦術は戦略を達成するための手を動かす具体的な方法を意味します。
戦略は、何かをするときの方針、進むべき方向性です。元々、戦略という言葉は軍事目的で使われていましたが、時を経て戦略はビジネスの文脈でも使われるようになりました。経営戦略、マーケティング戦略、営業戦略など、どれも設定した、目標を達成するために戦略を立てます。
企業には、商品、サービスを提供して売上や利益をあげる目的と、そして目的に沿った目標があります。目標を達成するためには、企業が目指す方針、計画の決定が必要です。そのために立てるのが戦略です。
戦術は、戦略に沿って取り組む具体的な施策や方法です。大局的な戦略と比べて、戦術はより具体的なことです。広告でいうと、キーワードを決めたり、広告文に入れるメッセージを決める仕事は戦術にあたります。
運用型広告の施策でできることは多いですが、戦略がないまま戦術を考えても効果的な広告配信ができません。戦略が決まると、戦術にあたるターゲティングや広告文のアイデアが出やすくなります。戦略がないと効果のある戦術が考えられないのです。
方針を示す戦略は、誰が見ても解釈がわかれないよう、明文化することが大事です。
戦略から戦術を考えたら、全てを実践する必要はありません。運用型広告ではやれることが無数にあるので、「何を捨てて、どこに集中するのか?」を明確にする「選択と集中」の視点で考えましょう。
具体的には、掲載する媒体や広告予算や人的リソースをどこに集中させるかです。
運用型広告の戦略を決めるときには必ず3つのことを決めなければなりません。
戦略を立てるには、まず「誰に広告を出すか」を決めます。誰に広告を出すかを決めるときには、属性データ(性別や職業、所属など)でセグメント分けをしてターゲット選定したり、商品やサービスの典型的なユーザー像をたてるペルソナの設定で決めます。ペルソナは仮想で設定するものなので、実在する必要はありません。
ターゲットとペルソナどちらかに正解はありませんが、迷ったら実在するターゲットから決めるとよいでしょう。なぜならターゲットは、顧客ニーズから決めるのが基本だからです。
まずは顧客のニーズ(悩みや不安、求めているもの)をもとにして、ターゲットを言語化していきます。言語化出来たら、それが自社の商品やサービスを使ってもらいたい人と合致しているかを考えます。
合致していれば、そこからどんなキーワードで広告を出すか、どんな見出しや説明文の広告が良いかを考えてみます。考えてもアイデアが出ない場合は、ターゲットが明確になっていない可能性が高いです。アイデアを出すときは、もちろん最低限の広告に関する知識も必要ですが、それ以上にターゲットを明確に定める必要があります。
ターゲットは狭めすぎず、広げすぎず、既存顧客と比較して考えてみると良いでしょう。
「誰に広告を出すか」が決まったら、次は自社がもっている商品・サービスの何を届けるかを決めます。取り扱っている商品やサービスの全てを幅広く広告の対象にしようとすると、中途半端な成果にしかならないので、必ず広告を配信するものは絞りましょう。
先に決めたターゲットが、商品やサービスを使用して有用だと感じてくれるものを広告で配信しましょう。自信がある商品やサービスなので「全て!」と言いたくなる気持ちもわかりますが、「ターゲットの抱える悩みや不安、求めていることを解決できるのはどの自社の商品やサービスか」を考えてみると自然と絞れるかもしれません。
最後に決めるのは、どの広告媒体で、ターゲットに自社の商品やサービスの広告を配信するかです。広告媒体の選定には、先に決めたターゲットと商品やサービスをもとに考えます。
ターゲットがよく使う検索エンジンや SNS、Web サイトを洗い出します。各媒体が提供している属性データや、ターゲット層の一次情報をもとにどんなWeb サイトをよく見るか調べましょう。
例えば、Yahoo! ではメディアの特徴やユーザー属性などをまとめた資料を提供しています。以下のユーザーのデータからは、性別による差はほぼないものの、40歳から64歳までのユーザーが5割弱を占めているのがわかります。
また、総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、世代別の SNS の利用率もまとめれているので、これらをもとに媒体選定をしましょう。
媒体によって広告が表示される場所や、利用できる機能などが異なるため、媒体の選定をする上で、媒体の仕様を知ることも大事です。
戦術は、広告を出す目標を達成するために実際におこなう具体的な手段で、主にキーワード、ターゲティング、広告文(広告クリエイティブ)などを決めます。
戦略で決めた広告媒体が Google や Yahoo!、Microsoft(Bing)などであれば、検索広告が使えるので、戦術として、まずは「キーワード」を何にするか考えます。
誰に向けて自社の何を広告で配信するかを戦略で決めたので、そのターゲットが調べるであろうキーワードで広告配信をするように設定しましょう。
具体的には、ターゲットの悩みや欲求、興味関心などから、どのような検索をしそうかをイメージすると良いです。
ターゲティングは、地域、ユーザー属性(年齢、性別)、デバイス、興味関心(スポーツ、旅行、美容など)などから設定できます。戦略で決めたターゲットに届けるためには、どんなターゲティングで、広告を配信する人を絞り込めば良いのかを考えてみましょう。
以下は Google 広告と Yahoo! 広告で使えるターゲティング機能(広告を絞り込みできる機能)の一覧です。
媒体 | ターゲティング |
---|---|
Google 広告 | 性別、年齢、世帯収入、子供の有無、地域、デバイス、広告のスケジュール、オーディエンスセグメント、キーワード、トピック、プレースメント |
Yahoo! 広告 | 曜日・時間帯、デバイス、地域、性別、年齢、オーディエンスカテゴリー、オーディエンスリスト、サーチキーワード、サイトカテゴリー、プレイスメント、コンテンツキーワード |
広告を出したい人の特徴にあわせてターゲティングを設定しましょう。
例えば、広告を出したい人が東京在住の女性で、趣味が旅行の場合、地域と性別、趣味に関するターゲティングを活用し、対象を絞った広告配信を考えます。
Google 広告を利用する場合、地域を「東京都」に、性別は「女性」に限定し、そしてオーディエンスセグメントで「旅行」を設定して広告を配信します。このように広告を出したい人に合わせて、複数あるターゲティング設定を組み合わせて配信することでコンバージョンの可能性を高められます。
よりターゲットを絞った配信もできますが、絞りすぎると広告が見られる可能性が低くなってしまうので、バランスも重要です。
広告文には、さまざまな言葉(メッセージ)を入れたり、広告の形式によっては画像や動画などの要素を含めることもできます。広告文を決めるときにイメージするのは、戦略で決めたターゲットです。
例えば、ターゲットが「水漏れに困っている人」の場合、水漏れを早く修理したいので、広告に「最短30分で駆けつけます」のようなメッセージが効果的だと考えられます。広告を出したい人の悩みや欲求、興味関心に答える広告の作成を目指しましょう。
そして、広告文を作るときに合わせて意識したいのは、戦略で決めた商品やサービスです。商品やサービスが提供できる強みや特徴を、広告を出したい人の悩みや欲求にあわせて広告文を考えましょう。
運用型広告でできる「キーワード」や「ターゲティング」、「広告文」などの設定を、目標を達成するために適した設定にする場合、広告を出す方向性となる戦略が必要です。戦略があるからこそ、具体的な手段やアクションをイメージできます。
広告を出すときは、目標を設定し、目標に向けた戦略を立てることが重要です。そして、戦略に沿った広告の施策を考え、実行することを目指しましょう。
運用型広告の戦略で決める3つのこと「広告を出す人(ターゲット)」、「商品、サービス」、「広告媒体」を決め、キーワードやターゲティング、広告文などの戦術を決めることに挑戦してみてください!
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執行役員/インハウス支援室長
全国400社以上の研究会員の運用型広告・マーケティングコンサルティングを担当。養成講座では500人以上を教育。コンサル・講師・執筆業から、広告運用代行、ホームページ制作、システム開発まで担当。自社ビジネス成長のための製品開発、販売をする実践家でもある。自他ともに認める変わり者。徳島県出身。
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