職種に限らずとも新卒や未経験の社員が入社したときに必ずおこなうであろう「研修」。もちろん最初から OJT を通してバリバリとスキルを身に付けてもらう教育の仕方もありますが、設立からある程度年数が経ち、社内ナレッジが溜まっているのであれば、体系的に学んでもらってから業務へ移行するほうがスムーズかと思います。
とは言え、お客様の前に出して問題ないレベルまで教育するには、どんな方法で進めればいいのか分かりづらいと思います。Twitter を見ていると、ナレッジの共有や社内研修に関してのつぶやきも見られます。
運用型広告の社内研修をやっているが前提知識を合わせるのが難しい。
— 神宮/広告運用│SO Technologies (@haji28290) March 15, 2021
・キーワードと検索語句
・キャンペーンと広告グループ
・広告ランクと品質スコア
すぐに説明できるけど、相手がどこまで理解しているのか認識しておく必要がある。その辺りは準備してたはずだったがまさかここまで難しいとは。
そこで今回は、実際の研修内容を5つにわけ、弊社の新入社員がひとり立ちしていくまでの過程を解説します。
運用型広告の主担当として案件を持つためにはさまざまなスキルが必要です。運用についての知識はもちろん、キーワードマーケティングではクライアントとのやり取りも運用担当者がおこなうため、ひとり立ちには対人スキルも必要不可欠となります。
単純な広告運用だけができればいいということではないので、まずは社会人として人前に立つためのスキルから学びます。そこから広告入稿やレポート作成、実際の運用、最適化に必要なスキルを身に付けていきます。大きく分けると以下の5つのステップに分類されます。
弊社では、入社後に社会人として基本的なスキルの研修をおこない、配属され、その後 OJT とステップにわけた広告運用に関する研修を通して、一人前の運用者になれるような教育体制をとっています。
広告運用者として運用に関するスキルはもちろん必要ですが、社内外の人と関わる「社会人」である以上、最低限のビジネスマナーも身につけなくてはいけません。そのため弊社では、4月から5月にかけて社会人スキルを身に付けていってもらいます。
挨拶やビジネスメールの研修、Web 会議での所作においても研修をおこないます。ここではその一部を抜粋して紹介します。
社会人として身につけるべきスキルはさまざまありますが、その中の1つに「挨拶」があります。挨拶は社会人以前に人として大切なことですが、仕事に集中するあまり声が小さくなってしまったり、マスクの影響もあって相手まで届かなかったりすることも少なくありません。
いざというときに相手に声が届かないことを防ぐため、普段から意識して習慣化できるよう研修の場を設けています。
社会人として、敬語を正しく使えるかも重要なスキルです。社外の方に対する敬語も、電話か対面かで微妙に異なります。
間違いやすい敬語をはじめ、さまざまなシーンを想定した敬語の使い方を身に付けてもらいます。敬語の使い方は一般常識なので、弊社独自のメソッドはありません。そのため、社内の負担削減や研修内容の統一のために外部の通信研修を導入しています。
参考:敬語力アップ | 通信研修 | 産業能率大学 総合研究所
社会人は「ビジネスメールの作成」もできなければいけません。社内外問わず活用するビジネスメールの、基本的な書き方やメールの型、定型表現を覚えてもらいます。
敬語の使い方同様、数多くある研修を全て自社でおこなうことは、管理部や人事部の大きな負担になります。また、研修内容のブレを防ぐためにも外部の通信研修を利用しています。
参考:ビジネス文書入門 | 通信研修 | 産業能率大学 総合研究所
数値分析の集計やデータの入稿、お客様への提案資料の作成の際に使う Excel や Word、PowerPoint の基本を学ぶために、マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)の試験を研修で取り入れています。
基本を学んでから、必要に応じて個人で関数を学んだり、PowerPoint での魅せ方などをほかの研修で身に付けます。
社会人の基本的なスキルとして、Web 会議での所作を伝える研修もあります。
「この人反応がうすいけどうまく伝わってないのかな…?」と心配になった経験は、皆さんもあるのではないでしょうか。
弊社では「普段より大げさなくらい相槌を打つこと」や「こまめに返事をすること」といった Web 会議特有の気を付けるべきポイントを社内でマニュアル化しています。細かいことですが、意識的におこなわないとできないことでもありますよね。
社会人としての基本的なスキルを身に付けてもらった後にチームへの配属があり、そこからは先輩のもとで OJT を通して知識をつけていきます。並行して、「広告入稿に関するタスク」の研修をおこなっています。
「広告入稿に関するタスク」の研修では、媒体ごとの細かい用語の違いを覚えることや、広告の入稿規定を知る機会でもあります。
なお、弊社にはオペレーション専任の佐賀支社があるため、ひとり立ち後は基本的に全てのオペレーション作業(入稿作業やレポート作成など)を佐賀に依頼しますが、新入社員は、業務理解のために一連の作業を覚えてもらうようにしています。
媒体によって言い方の違うターゲティングなどの名称や意味の理解はもちろんのこと、広告アカウントの構造(キャンペーンや広告グループ、キーワード)などを理解してもらいます。
ただ、やみくもに言葉を覚えても意味はないので、使われるシーンや目的の理解も兼ねて、Google 広告の認定資格を受けてもらっています。
試験は検索広告とディスプレイ広告、ショッピング広告、動画広告の4つを受けてもらいます。アプリ広告と測定の試験は、任意で受けてもらっています。アプリ広告は、実務で覚えてもらうのと、測定に関しては別で分析研修として設けているのでこのタイミングではおこなっていません。
Google広告認定資格とは?傾向・難易度・おすすめの受験順番と勉強方法をご紹介
広告運用に関わる人であれば持っておいて損のない資格「Google広告認定資格」の概要とおすすめの受験順番、勉強方法をご紹介いたします。
Google 広告の認定資格と同じ時期に Web マーケティングに関する研修も受けてもらいます。Web マーケティングに関する研修は以下の8つで構成されています。
リスティング広告やディスプレイ広告、リマーケティング・リターゲティングなどのコンバージョン獲得のために必ずおこなうメニューやターゲティング方法はもちろん、広告運用する上で避けては通れない Google Analytics や SEO に関する知識も、研修の中で身に付けてもらいます。
広告媒体の管理画面は必ず毎日触るものなので、「どこから」、「なにが」確認できるのかを知っておかないといけません。
入稿した広告の審査状況や使用した広告費、コンバージョンが取れた検索語句など、広告配信では管理画面からさまざまな情報を読み取らなければいけません。
そのため、弊社ではすべての媒体とは言わないまでも、Google や Yahoo!、Facebook などの比較的すぐに触る機会がある媒体は、どこから何が確認できるのか、どの指標をよく使うのかなどを研修で教えています。
広告管理画面の操作方法以外にも、Google とYahoo! のエディター操作方法、CSV データの作成・入稿方法を学ぶ研修もあります。
管理画面からでも広告入稿作業は可能ですが、入稿数が多くなる場合は時間がかかりすぎてしまいます。さらには、管理画面で操作すると、すぐに本番環境に反映されるので、ミスがそのまま成果に反映してしまうこともあります。
それを解消するための手段として、Google と Yahoo!広告のエディターの基本的な操作方法、CSVデータの作成などを研修で覚えてもらっています。
広告運用の世界では、お客様へ毎月の運用結果や新規施策の結果を報告をするために、レポート作成スキルも必要です。
正確で適切なデータを出せているか、伝わる資料(構成、デザイン)になっているかのどちらもクリアするために複数の研修にわけて教育しています。
広告別のレポート、地域別のレポートなど、欲しいデータにあわせて必要なレポートをダウンロードする方法も教えています。
欲しい情報を必要な分だけダウンロードするには、どのページからダウンロードできるのか、どうすれば抜き出せるのかなどを覚えてもらいます。
運用者がよく使う関数をはじめとした Excel の操作方法を覚えてもらいます。社会人スキルの1つとしてマイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)の試験を受けてもらっていますが、それとは別に、日別のデータを出す方法、キャンペーン別のデータを出す方法など、より実践的な操作方法を身に付ける研修になっています。
ピボットテーブルや VLOOKUP 関数など、運用者が日々の業務で使うことが多い Excel の機能をマスターしてもらいます。
レポーティングスキルの研修の中には、伝わりやすい資料が、どんな構成で、どんなデータを出せば良いのかを学ぶものもあります。「なぜ伝わりやすい資料作成が必要なのか」から説明し、どのようにしたらクライアントに伝わりやすくなるのかを学んでもらいます。
弊社では月次報告時に使用する資料のテンプレートを準備していて、報告に不可欠な数字やおおよその資料の流れはテンプレートを使えば作成できるようになっています。
伝わりやすさの次は、見やすさを意識した研修もおこなっています。言っている内容や伝えたいことは同じでも、デザインに統一感のある資料と、そうでない資料だと与える印象はガラッと変わります。
デザイン四原則(近接と整列、対比、反復)を伝え、見やすい資料の基本を研修で学びます。
OJT 期間中やひとり立ちしてすぐの新卒や中途入社のメンバーには、お客様との合意目標が達成されていて成果が安定している案件から担当してもらいます。したがって、安定した案件を運用する上で必要なことを学ぶ研修を受けてもらいます。
まずは、使用する広告費のペースや CPA などが目標に対してどうなっているのかを管理するスキルから学びます。
いくら安定していても、1か月間の配信中に成果が悪くなることや、予定した予算ペースよりも、早くまたは遅く広告費を使用してしまうこともあります。
月末に慌てて配信を減らしたり増やしたりすることがないよう、消化した予算と月末まで、きちんと予算どおりに配信できるかを把握する必要があります。
具体的には、どれくらいの頻度で確認したらいいのか、どの指標を見たらいいのか、なぜ見ないといけないのかなどを知ることができます。
次に広告費を使いすぎていたり、成果が良化・悪化したりしたときの調整方法を学びます。予算や成果を監視して、成果が悪くなっている場合や配信ペースが思ったようにいかない場合には調整が必要です。
1ヶ月を通してずっと成果がよかったとしても、月によって日数が違ったり、土日と平日で配信量が違ったりするため、1ヶ月なにも調整しないということは、基本的にありません。どのように調整をおこなえばいいのか、パターンごとに研修で学びます。
会社・チームで働く上で、広告の入稿作業の依頼なども必要なので、仕事の依頼方法も研修を通して学びます。
弊社ではオペレーション業務(レポート作成や入稿作業など)専任部隊が佐賀にあります。その佐賀支社や部下、部署以外のメンバーに仕事依頼する方法も丁寧に教えています。
広告運用は配信しただけでは終わりません。成果が悪化したときはもちろん、改善したときもなぜよくなったのか、いつからよくなったのかを理解して、クライアントに説明する必要があります。
経験がある広告運用者であれば、なんとなくあたりをつけて原因を突き止めることもできるかもしれません。しかし、それでは運用者によって分析のレベルに差が出てしまいます。
経験則に頼った分析ではなく、どのような手順で分析をおこなえばいいのかを学ぶことができる研修を用意しています。
OJT で安定した案件の監視・調整ができるようになると、今度はまだ成果が安定していない案件の最適化や、新しく始める案件の構築に携わります。ステップ5までくると、ある程度は運用型広告の知識がついているので、それを前提にアカウント構築やタグ設置、データフィードの作成方法を学びます。
最近は部分一致キーワードや自動入札導入の影響で、推奨のアカウント構造が変わってきています。キーワードの収集方法など、まずはキーワードマーケティング内での一般的なアカウントやキャンペーン構造を学びます。
ガイドラインやルールがあることで、担当者変更があったり、上司や部下のアカウントを確認する場合でも混乱が少なくなります。
一通りの研修を終えるころには、より専門的な知識も付けてもらいます。その1つが、EC サイトなど多品種商材の運用をするときに必須となるデータフィード広告について学ぶ研修です。そもそもデータフィードとはなんなのか、どんなメリットがあるのかなどを知ることができます。
入社後すぐ、配属前、配属後、ひとり立ち後、その人の置かれている環境によって必要なスキルは異なります。
他の代理店で働いた経験のある中途入社のメンバーは口をそろえて「研修が多い」と言いますが、ネガティブな意見ではなくポジティブなものだと思っています。というのも、ありがたいことに面接やカジュアル面談などで、弊社の研修制度が整っている点を評価して、志望してくださる方も多くいるからです。手厚い研修体制が志望動機になっているのは素直に嬉しく、誇らしく思います。
人によっては、入稿スキルから始めるのもよし、安定している案件の運用スキルから学ぶのも良いでしょう。ステップごとになにが必要なのかを考え教えてあげると、新卒や中途入社のメンバーも遅れずについてきてくれるでしょう。もしよければ記事で伝えたような弊社の研修内容を参考にしてください。
広告運用 コンサルタント
2016年12月に九州の佐賀支社に入社。市役所でアルバイトしてたのに、気が付いたら広告運用を始めて、気が付いたら東京にいた人。新しい施策考えるのがすき、広告作成はもっとすき。絵心皆無のクリエイティブ担当。すきなものはカロリーと寝ること。
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