コンバージョン獲得を目的に顕在層をターゲットとして配信する広告は、いずれ頭打ちになることがあります。コンバージョン獲得を目的とすると、ニーズが顕在化している顧客層の刈り取りをおこなっていくことになるため、刈り取り尽くすとコンバージョンを獲得できなくなってしまうからです。
そのような状況で次に狙うべきは、準顕在層と呼ばれる、商品やサービスの購入ニーズは持っているものの、まだ検索や情報収集などの行動を起こしていないユーザーです。
準顕在層はニーズが顕在化しつつある状態のため、アプローチによってコンバージョン獲得できるチャンスがあります。したがって、短期的な売上貢献の施策を実施するのであれば、準顕在層への広告配信を検討するべきでしょう。
ニーズ | 行動 | |
---|---|---|
顕在層 | ◎ | ◎ |
準顕在層 | ◯ | △ |
潜在層 | △ | ☓ |
そこで今回は、準顕在層へアプローチ可能な配信手法である「類似ターゲティング」について解説します。この記事を通して、認知施策の前に類似ターゲティングを実施することを検討してもらえればと思います。
また2023年8月以降、Google 広告においては類似ターゲティング(類似セグメントを使用した配信)のサポートがなくなりました。同機能のアップデートについては本記事で解説しますが、従来からの変更点や背景は公式ヘルプを参考にしてください。
参考:オーディエンス ターゲティングに関する変更: Google 広告の類似ユーザー機能(別称「類似セグメント」)がサポートされなくなります | Google 広告 ヘルプ
類似ターゲティングとは、広告主が用意する任意のオーディエンスリストをもとに、広告媒体側が似ていると判断したユーザーをリスト化し、広告を配信するターゲティング手法です。
例えば、一度サイトに訪問したユーザーのリストを用意すれば、類似していると判断される類似オーディエンスを作成でき、そのリストに対して広告を配信できます。
リスト作成は作業手順を覚えてしまえば簡単で、もととなるリストがあれば30秒ほどで作成できます。ターゲティング設定も通常の設定通り、該当のキャンペーンや広告グループにオーディエンスの紐づけをすれば完了です。
類似オーディエンス(類似したユーザーリスト)は、各媒体が所有するデータと広告主が用意するオーディエンスリストをもとに作成されます。
例えば、Yahoo! 広告でリマーケティングリストをもとに類似オーディエンスを作成する場合、媒体(Yahoo!)が Yahoo! JAPAN 内におけるユーザーの行動履歴などを解析して、Web 上で行動パターンや閲覧履歴が類似しているユーザーを抽出してリスト化しています。
具体的な解析方法や抽出方法は明らかにされていませんが、広告媒体を運営している各企業に蓄積された、あらゆるユーザーデータを分析したうえで抽出されるオーディエンスのため、精度はそれなりに高くなっています。
類似ターゲティングを使うメリットの1つ目は、コンバージョンに繋がりやすいことです。類似ターゲティングは準顕在層に配信できるため、コンバージョン確度が比較的高く、成果に繋がりやすいです。
2つ目のメリットは、新規顧客の獲得に繋がる点です。類似ターゲティングは基本的に新規ユーザーを対象とするため、まだ自社と取引がないユーザーの獲得が見込めます。費用対効果を下げずに新規顧客の獲得を狙いたい場合は、類似ターゲティングを実施してみましょう。
類似ターゲティングにはデメリットも2つあります。
1つ目は、もととなるオーディエンスリストの対象者が少ないと配信量が少なくなる点です。類似オーディエンスリストは、コンバージョンユーザーやサイト訪問ユーザーなどのもととなるリストを参考に、媒体が自動で類似ユーザーを抽出して作成します。
つまり、もととなるリストに蓄積されたユーザー数が少なければ、作成する類似オーディエンスリストのユーザー数も少なくなってしまいます。その結果、媒体が指定する最低リストサイズを満たせず、配信できなくなることもあります。
Yahoo! 広告では、もととなるリストが過去28日間でユーザーサイズ(ユーザー数)100人を超えていないと、類似ユーザーデータが蓄積されません。
Meta 広告では、ユーザーサイズが1カ国あたり少なくとも100人必要だとヘルプページに明記されています。その他の媒体の基準は明らかにされていませんが、Yahoo! と Meta の場合は類似オーディエンスのもととなるリストのサイズ条件を確認しておきましょう。
参考:オーディエンスリストとは|Yahoo! 広告
参考:類似オーディエンスについて|Meta ビジネスヘルプセンター
2つ目のデメリットは、もととなるリストの質によって成果が左右される可能性がある点です。
類似オーディエンスは、媒体がもととなるリストを参照して、自動で類似ユーザーを抽出してリストを作成します。そのため、もととなるリストに含まれるユーザーデータが異なれば、抽出されるユーザーも変化します。
例えば、サイト訪問ユーザーのリストをもとにすると、サイト訪問する確度が高いと判断されたユーザーで構成された類似オーディエンスリストが作成されます。ほかにも、コンバージョンユーザーのリストをもとにすると、コンバージョン確度が高いと判断されたユーザーで構成された類似オーディエンスリストが作成されます。
配信目的に沿っていない類似オーディエンスリストを使用しても、成果の向上は見込めません。そのため、サイト流入優先ならサイト訪問ユーザーリスト、コンバージョン優先ならコンバージョンユーザーリストというように、目的に合わせたオーディエンスリストを適切に使用することで、成果へのよい影響が期待できます。
類似ターゲティングに使用する類似オーディエンスリストの名称や設定手順は、媒体によって微妙に異なります。以下は、各媒体における類似オーディエンスリストの名称を表形式で一覧化したものです。
媒体名 | オーディエンスリスト名 |
---|---|
現状なし(旧:類似セグメント) | |
Yahoo! | 類似ユーザー |
Meta | 類似オーディエンス |
LINE | 類似オーディエンス |
X(旧 Twitter) | なし* |
ここからは、各媒体における類似オーディエンスリストの作成からターゲティング設定の流れを、管理画面の画像を用いて解説します。
Google 広告において、類似ターゲティングの際に用いる類似オーディエンスリストは「類似セグメント」といいます。従来の類似セグメントは、検索やディスプレイ、デマンドジェネレーション(旧:ファインド)、動画キャンペーンでターゲティング設定できましたが、2023年8月のアップデートで最適化されたターゲティングへと自動的に切り替えられました。
また、公式ヘルプや管理画面には類似セグメントを今後削除する旨の記載があり、オーディエンスリスト画面でも作成できないようです。
しかし、2023年10月にファインドキャンペーンがデマンドジェネレーションキャンペーンにアップデートされることに伴い、公式ヘルプにも類似セグメントが使用可能になることを示唆する文言が記載されています。
独自のオーディエンス セグメント(類似セグメントなど)をターゲットに設定できるため、オーディエンスをカスタマイズできます。
引用元:デマンド ジェネレーション キャンペーン(ベータ版)について | Google 広告ヘルプ
類似セグメントに関する公式ヘルプは更新されていないようですが、再び独自で類似セグメントを作成できるようになるかもしれません。
参考:類似セグメントを使用してオーディエンスを増やす | Google 広告ヘルプ
Yahoo! 広告における類似オーディエンスリストは「類似ユーザー」という名称で、ディスプレイ広告のみで使用できます。
検索広告経由で取得したユーザーデータは使用できず、ディスプレイ広告で蓄積されたサイト訪問ユーザーやアプリユーザー、顧客データ、Yahoo! Audience Discovery のオーディエンス情報をもとに類似ユーザーを作成できます。
Yahoo! Audience Discovery とは、Yahoo! JAPAN のデータから作成された独自のセグメントを用いて、広告出稿やターゲティング配信ができるサービスの総称です。一部のアカウントのみに提供されるサービスですが、利用できないアカウントでも、公開されたセグメントを使用してオーディエンスリストを作成できます。詳細は以下のヘルプページをご覧ください。
参考:Yahoo! Audience Discovery のデータを利用してオーディエンスリストを作成する | Yahoo! 広告ヘルプ
ここからは、Yahoo! 広告の類似ユーザーの設定方法を説明します。今回は、コンバージョン獲得範囲を広げる目的で類似ターゲティングを配信すると仮定し、コンバージョンユーザーリストの類似ユーザーを作成する手順を解説します。
まずは、広告アカウント画面の右上にある「ツール」から「オーディエンスリスト」を開きます。
オーディエンスリスト画面で「オーディエンスリストを作成」から「類似ユーザー」を選択します。
次に、作成するリストの詳細を入力します。セグメント名は「CV 類似」に設定し、もとにするオーディエンスリストは「CV ユーザーリスト」を選択します。
類似ユーザーの拡張範囲は、類似度をどこまで広げるか指定する項目です。数字が大きくなるほど配信範囲が広がることになり、類似度は低くなります。
まずは類似度が高く、コンバージョン確度が高い層から獲得を狙っていくのが定石のため、今回は目盛りを1に設定します。
また、今後類似ユーザーリストを複数作成する可能性がある場合は、リストごとの類似度が分かるよう、リスト名の末尾に「_1%」などと追記しておくと管理しやすくなります。すべて設定できたら「作成」をクリックして完了です。
顧客データをもとにオーディエンスリストを作成する手順も、CV 類似ユーザーリストを作成した手順と同様です。まずオーディエンスリスト画面で顧客データをアップロードし、類似ユーザーリストを作成する手順に沿ってリストを作成します。
以下の図はテストアカウントのためリストサイズが表示されていませんが、作成するときにもとにしたリストサイズが十分であれば、一定の時間が経過するとリストサイズが表示されるようになります。
あとは任意のキャンペーンや広告グループのターゲットに設定すれば、ターゲティング配信ができるようになります。
Yahoo! では「もととなるリストのユーザー数が過去28日間で100人を超えていないと、類似ユーザーが蓄積されない」という基準があるため、類似ターゲティング配信を実装する時点でリストサイズが基準を満たしているか必ず確認しましょう。
リターゲティング配信を実施する目的で、配信開始前にサイト訪問ユーザーリストを作成するケースは多いですが、コンバージョンユーザーリストなど類似ターゲティングで使用する可能性があるリストも作成しておくとよいでしょう。
Meta 広告における類似オーディエンスリストは「類似オーディエンス」と呼びます。類似オーディエンスリストを作成してターゲティングに使用するという点で、機能はほかの媒体と共通しています。
Meta 広告は配信先である Facebook が実名登録の SNS のため、実在するユーザーと類似したユーザーに広告が配信されます。そのため、高いターゲティング精度が期待できます。
例えば、過去3か月以内にコンバージョンしたユーザーのリストをもとに類似オーディエンスを作成すると、コンバージョン確度が高いと判断されたユーザーをリスト化できます。
ここからは、コンバージョンユーザーリストの類似オーディエンスリストの作り方を説明します。まず、広告アカウント画面左側のハンバーガーメニューから「オーディエンス」を開きます。
オーディエンス一覧画面で「オーディエンスを作成」から「類似オーディエンス」を選択します。
表示されるポップアップ画面で、対象とするターゲットユーザーを詳しく設定していきます。まず「類似オーディエンスのソース」では、もととなるオーディエンスリストを選択しましょう。今回は「CV ユーザー(Purchase)」と検索して出てくるリストを選択します。
「ターゲット地域を選択」では特定の国や州、日本では都道府県や市区町村単位などで配信地域を選択します。
「オーディエンスサイズを選択」は、類似している度合いとリストサイズを指定する項目です。今回は、配信範囲をやや広げて「3%」の目盛りに合わせます。数値を上げると配信範囲は広がります。
ポップアップの下部には作成されるリスト名と推定リーチ数が表示されるため、意図したリストや類似度が正しく選択されているか確認して、「オーディエンスを作成」をクリックすれば完了です。
電話番号やメールアドレスの顧客データをもとにリストを作成する場合は、もととなるデータがオーディエンス画面にアップロードされていることを確認して、コンバージョンユーザーリストの類似オーディエンスリストを作成する手順で進めます。
また、Meta 広告では一度に作成するリスト数を変更することもできます。複数個の類似オーディエンスを作成したい場合は、類似オーディエンス作成画面の「オーディエンスサイズを選択」で、項目名の下にある数字を選択できる部分(類似オーディエンスの数)の数字を変更しましょう。
例えば、「類似オーディエンスの数」を3にすると、下のパーセンテージが表示されているバーに編集点が4つ出てきます。編集点をそれぞれ調整し、0%~3%、3%~4%、4%~5%で設定すると以下のようになり、配信範囲の異なる3種類のリストが作成されます。
LINE 広告における類似オーディエンスリストは「類似オーディエンス」と呼びます。そして、類似オーディエンスリストを使用して配信することを「類似配信」と呼びます。
ほかの媒体と同じように類似オーディエンスリストを作成できることはもちろん、LINE 公式アカウントの友だちをもとにした類似オーディエンスを作成できる点が特徴です。広告管理画面上で公式アカウントの友だち、もしくはブロック中の友だちをリスト化できるため、そのリストをもとにした類似オーディエンスリストを作ることができます。
また、類似度設定の項目で「自動」を選択することで、最適なオーディエンスサイズに自動で調整してくれる仕様も特徴的です。それでは、ここからオーディエンスリストの作成方法を解説します。
まずは、広告アカウント画面の「MENU」から「オーディエンス」を開きます。次にオーディエンス一覧画面で「オーディエンス作成」から「類似オーディエンス」を選択します。
表示された画面で、作成するリストの詳細を入力していきます。今回は、公式アカウントの友だちリストをもとにした類似オーディエンスの作成を想定して解説します。
「オーディエンスソース」はもととなるリストを指定する項目のため、真ん中の「オーディエンスソースを選択してください」をクリックし、表示されるソース一覧から「LINE 公式アカウントの友だちオーディエンス」を選択して「完了」をクリックします。
オーディエンスサイズは自動か手動のどちらかを設定できますが、手動で設定する方が意図したリストを作成できるため、今回は「手動」でオーディエンスサイズを「1%」に指定します。最後に「保存」をクリックすれば完了です。
また、電話番号やメールアドレスリストをもとにした類似オーディエンスも作成できます。類似オーディエンス作成画面のオーディエンスソースで該当のリストを選択し、サイズを指定することで作成が可能です。
ほかにも、LINE 広告で使用できるオーディエンスは豊富で、類似オーディエンスを含めて全部で9つあります。
それぞれのリストをもとに類似オーディエンスを作成できるため、配信中のターゲティングでコンバージョンの伸び悩みを感じたら類似配信を検討してみましょう。
X(旧 Twitter)には、リストを作成せず類似オーディエンスに配信できる「オーディエンスの拡張」という機能がありましたが、アップデートによって「最適化ターゲティング」に置き換えられました。「最適化ターゲティング」は類似ターゲティングと同様の機能で、ターゲットに類似しているユーザーに配信されます。
従来の機能にあった「オーディエンスの拡張」、アップデート版の「最適化ターゲティング」の詳細は、以下の記事をご覧ください。
参考:オーディエンスの拡張 | X ビジネス
参考:Optimized Targeting | X ビジネス
最適化ターゲティングの設定は、広告グループの詳細画面下部にある「ターゲティングを最適化」のトグルをオンにすることで設定できます。
顕在層向けのリスティング広告やリマーケティング・リターゲティングが頭打ちになったからといって、徐々に配信範囲を広げるイメージで潜在層にアプローチしても、思ったような反応が得られないことがほとんどです。潜在層から顧客への引き上げは至難の業で、予算を消化し切ってしまう可能性が高いでしょう。
顕在層に近い見込み顧客から囲い込み、コンバージョンを促進する方が Web 広告の成果を向上させていく堅実なやり方といえます。現在リスティング広告を配信しているのであれば、類似度が高い類似オーディエンスへの配信から取り組んで、成果を積み上げていきましょう。
マーケティング
2019年4月に新卒で入社後、研修を経て運用チームに配属。toB、toC等の案件を担当した後、セールスチームに異動となる。趣味はお笑いと観賞(研究?)と謎解き。特に好きな芸人は東京03とバナナマン。
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