滝井です。
インターネット広告が登場して20年あまりが経ち、人々の生活の中にも浸透してきました。
24時間365日休みなく動き続けるインターネット広告は、いつでも広告の修正や変更が可能なので、ほとんどの企業で活用がされています。
そのため一部の代理店や広告運用者の方から、広告の入稿などの依頼が土日、夜間問わず来て生活のリズムを崩してしまったという話をお聞きします。
働き過ぎが原因で体調を崩したら、通常できたはずの仕事ができず成果をあげることができなくなってしまいます。この記事ではそんな環境を作らずに、クライアントワークを円滑に進めるために作るべき「サービスメニュー」の作成方法や運用の仕方を自社の事例をもとに解説します。
以下は、キーワードマーケティングのサービスメニューです。リンク先のスプレッドシートからマイドライブに保存をして、参考にしてみてください。
一企業の経営者として、どのようにして解決へ導いたかを課題が生まれた背景から振り返っていきたいと思います。
広告運用の仕事はこれまで、残業の多いブラックな仕事と言われることが多くありました。その理由は主に以下の3つが挙げられます。
ネット広告の大きな特徴として、基本的には24時間365日ずっと出続けることが挙げられます。
テレビ CM であれば、キャンペーン期間が長くあったとしても、24時間 CM が流れ続けるなんてことはないですよね。
新聞広告や電車の中づり広告も、日にちの指定があったり、長くても数か月の掲載期間というものがあり、ずっと広告が出続けるなんてことは少ないわけです。
一方で、ネット広告は基本的には1度設定してしまえば、停止しない限り24時間ずっと動き続けます。その広告がクリックやコンバージョンを毎日生んでくれる場合は、更に予算を掛け露出の機会を増やすでしょう。
こういった性質上、土日祝日関係なく1日も休止することなく広告を出し続ける方も多いでしょう。
インハウスであれ、運用代行であれ、広告運用の仕事を担当するということは、この24時間出続ける広告がきちんと稼働しているかどうかを常に気にしなければいけないわけですね。
24時間出っぱなしの広告といえば、屋外看板や駅看板なんかの広告はそうとも言えます。ところがネット広告がそれらと根本的に違うところは、Google 広告や Yahoo!広告などの管理画面が動いている限り、いつでも修正変更が可能という点です。
看板を「今日中に文言を修正してつけなおしてくれ」なんて依頼されることはないですが、ネット広告の場合は可能なので、夜間や土日祝日にも仕事を依頼されたり、仕事をせざるを得ない状況になりがちなんですね。
インターネット広告は、24時間動き続け、いつでも修正変更が可能な広告なので、「広告のパフォーマンスを上げるための変更や追加をどこまでやればよいか」という終わりや区切りが基本的にはありません。
もしも「この1週間は広告を動かすことができない」といった制約条件があれば、しっかり考え抜いた広告を入稿した後は、その1週間はじっくり腰を据えて分析ができますが、そういった条件があるのは稀かと思います。
いつでもどこでもパソコンさえあれば広告の変更や追加ができるというメリットは、言い換えれば、仕事の終わりが存在せず、つい残業や土日祝日に仕事をしてしまってストレスを抱えてしまうデメリットにもなり得るわけです。
これら3つの問題はクライアントへ提供するサービスの内容と期日をまとめた「サービスメニュー」を作成することで解決することができます。
サービスメニューを顧客や決裁者に見せて合意を得ることで、これまで困っていた上記の問題が起こらず、円滑にクライアントワークを進めることができるのです。
ここからは具体的なサービスメニューの例があると分かりやすいと思うので、広告運用の代行業をおこなう弊社の事例をもとに説明していきます。以下はキーワードマーケティングがクライアントに公開しているサービスメニューの一例です。
キーワードマーケティングで提供しているサービスが、どれくらいの納期か、営業時間は何時から何時までか、土日対応はするのかといったことをまとめたものです。
このようなメニューをしっかり定義して、発注者に合意を得ることができれば、24時間動き続け、いつでも変更や追加が可能で、区切りや終わりのないネット広告の仕事でも、基準となる区切りをはっきりとつけることができます。
対応可能な営業時間の他、広告の追加までにどれだけの期間が必要なのかなどの約束事として明確になっていれば、「なるはやでお願いします」といった依頼でも、事前に取り決めた期間があるので、余裕を持って対処でき、無理な残業をしなくてもよくなります。
土日祝日に仕事は基本おこなわないが、例外として対応するケースも明確にしておけば、しっかり休みを取り、メリハリをつけて仕事ができます。24時間動き続ける広告だとしても、自分たちは 24時間動き続ける必要はないのです。
実際、弊社でサービスメニューを作成し、クライアントへ合意を得てからは、夜間や土日祝日の連絡がほとんどなくなり、計画的に業務を進めることができ、残業時間が大幅に減りました。
残業時間を10時間以下に大幅削減しながら、売上・利益ともに過去最高を実現。組織の基礎体力づくりに専念した3年間。
キーマケ「丸わかり」メディアキーマップ
ネット広告の担当者がサービスメニューを作成する際には、以下のような要点がありますので注力してみるとよいでしょう。
サービスメニューを作る際に以下の2点を明確にしておくことはとても重要です。
これを記載するだけで、運用代行のクライアントからの夜間や休日の連絡がとても少なくなります。
キーワードマーケティングでは、「平日9:30~18:30の勤務時間以外は対応をお断りする」とはっきり記載しています。もちろん設定ミスの場合などの例外も設けています。
当たり前ですが、広告と違って人は24時間365日ずっと働くことはできないので、営業時間や稼働しない曜日をもって「区切りがある」ことを顧客や決裁者を含めたチーム全体に共有することが大切なんですよね。
どのような業務内容に、どれくらいの時間がかかるのかを明確化しておくと、「今日中になんとかしてくれ」といった無理な依頼が来なくなります。また、本来時間がかかる作業なのに、依頼する側の認識不足で仕事が遅いと誤解されることもなくなります。
キーワードマーケティングでは、広告を配信するためのキーワード追加なら中1日、タグの調査(トラブル時など)には中4日といった感じで納期を明確化しています。
タグの調査はそもそも何が影響しているのかが分からないことが多く、1日や2日ですぐに判明することが難しいこともあります。しかし中4日あれば、少なくとも何らかのコメントを出すことはできます。
このように納期をはっきり書くことで、依頼する側もいつまでに返事が来るのかが分かり安心でき、業務を受ける側も、無理な残業をすることなく、落ち着いて対処することができるようになります。
新規の商品サービスに対するバナー広告の納品や新媒体でのシミュレーション作成などは2日から3日でできるようなものではありません。
では、一体どれくらいの日数が必要なのかという点は、時間がかかるのは確かですが、議論があるところでしょう。弊社では、シミュレーションの作成は、中9日必要だということを明記しています。
これは顧客や意思決定者は全く分からないことも多いので、はっきりさせることで業務時間のコントロールがしやすくなるだけでなく、人間関係の悪化を防ぐこともできます。
無理な仕事の依頼が来た時には、「サービスメニューでこの期間をいただくことになっているのですみません」とはっきり断ることができるからですね。
お互いに決めたルールであれば、守って当然です。顧客だから、社内の偉い人だからと無理に仕事を受ける必要がなくなります。
ではここからサービスメニューの作り方を紹介したいと思います。以下のステップで作成するとスムーズに出来上がると思うので是非挑戦してみてください。
まずは業務内容を洗い出して、とにかく箇条書きでリスト化していきます。
この時、すべてを網羅しようとすると取り掛かりが重くなってしまうので、「ここ最近2週間くらいで依頼された事項」を抜き出すところからはじめるとやりやすいでしょう。そして、業務が発生したら都度、そのリストに追加していきましょう。
下記は、実際にキーワードマーケティングの社内で、「最近依頼された事項をリストアップしよう」と全員に告知して、集まったものです。大小あれど広告関連のことはもちろん、Web マーケティング全般の課題や悩みがあります。
この程度の内容でも、実は十分にサービスメニューは機能します。なぜなら、日常的に頻繁に発生する仕事こそ、納期を明確にすることで計画性が生まれ、仕事が効率化していくからです。
実際にサービスメニューに入れるかどうかは別に議論し、クライアントに渡すために抽象化してまとめたり、整理して形にしていきます。
大事なのは、あまり構えずにとにかく上記のようにまず事実を集めて、そこから取捨選択するステップに進むことです。
ある程度リスト化が進んだら「時間のかからないもの」と「時間のかかるもの」に2分します。ここは難しく考えずに、「すぐできる」or「調査やプランニングがいるからすぐできない」といった感覚で分けてよいでしょう。
先ほどのものを「時間のかからないもの」と「時間のかかるもの」に分けてみたのが以下のとおりです。
一から納期は何日にするかを最初から考え出すときりがないので、「すぐできる」ものをまず抜粋し、中1日などに設定します。
残りの項目は、中5日以内(一週間)とそれ以上でさらに区分けします。中10日以上かかる仕事というのはそれほど多くはないということはこのあたりで判明してきます。
最終的には、納期をどれくらいにするかは会社であれば社長、最高意思決定者が決めた方が良いですが、たいていの場合、サービス意識が強すぎて早い納期を設定しすぎることが多いので、期限はきっちり確保する方向で考えた方が無難です。
無理なスケジューリングで仕事をすると、運用型広告は配信ミスなどの事故につながり、実損が発生してしまうことにもなりかねませんので、予防という意味でもサービスメニューは役に立ちます。
ここまででサービスメニューの内容と納期が固まったので、最後にクライアントに渡す形に成形します。一例として弊社で作成したものを再度掲載するので、作成の際はぜひ参考にしてください。
サービスメニューを作成しただけでは、もちろんその効果は発揮されません。作ったあとの運用は簡単ですが、クライアントに出すタイミングと例外対応のみ気をつけましょう。運用のポイントもまとめてみました。
運用代行であれば新規顧客に向けて、インハウス運用であれば決裁権をもつ上司(上司が変更になった場合も含む)に向けて、サービスメニューを出して、あらかじめ合意を得る必要があります。
しかし、人間関係が全く築き上がってない状況で、「これらの業務に関しては、これぐらいの納期が必要になります」といったサービスメニューという名の「お断り事項」の了解をもらうのは難しいところもあるでしょう。
なので、ミーティングを数回、少なくとも3回くらいはおこなってお互いの仕事のやり方や広告配信の背景をある程度理解し合った上で提出するとよいでしょう。
サービスメニューを提出し、決裁者や上司に合意を取れたら、メニューの書いてある通りに仕事をしていくことが大切です。
サービス精神を発揮しすぎたり良かれと思って、納品を極端に早めてばかりいると、サービスメニューの存在意義がなくなり、有名無実化してしまいます。
例外対応が横行してしまうと、基準となる納期よりも早くすることが当たり前になり、結果的に残業や土日対応の常態化が進んでしまいます。生産性が下がることで決裁者の不利益につながってしまうので注意しましょう。
キーワードマーケティングは2018年からこのサービスメニューを確立して、クライアントに協力いただくことで、残業時間半分以下となり、平均でも10時間以内に収まり続けています。業界水準としてはかなり少ない方だと思われます。
大切なことは、業務時間を単純に減らすということではなく、区切りをつけることで、生産性アップ、成果が上がりやすくなっているかという視点であり、その仕組みをクライアントや上司と一緒になって作っていくことだと思っています。
広告運用の仕事は専門性も高く、仕事内容が理解されにくい点もあることから、クライアントワークや上司への説明に四苦八苦することも多いでしょう。
しかし、ともに理解し合いながら、お互いがプロとして仕事がしやすくなる環境を作りあげていくことには多大な価値があります。サービスメニューの作成は、比較的簡単に始められることなので、是非多くの方に取り組んでみてもらいたいです。
代表取締役会長
2003年、Googleアドワーズが日本でサービスを開始した直後より、検索キーワード広告とランディングページの実践・研究を行い、その成功理論を書籍『1億稼ぐ検索キーワードの見つけ方』で発表、5万部以上のベストセラーとなる。 キーワードマーケティングでは、設立時から延べ千社以上のアカウントを診断およびコンサルティングしており、現在は上場会社や成長率の高いベンチャー企業に対する広告運用代理事業を拡大している。
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