2024年7月、キーワードマーケティングでは、PRの考え方を応用して、低予算で検索キーワードのバリエーションや検索ボリューム自体を増やすことができるマーケティング手法「検索創出型マーケティング(SCM)」を発表しました。
「検索創出型マーケティング(Search Creation Marketing、通称SCM)」とは、第三者による客観的な情報発信によって、コンバージョンにつながる検索流入を直接的に創出する手法です。もちろん、第三者による客観的な情報発信を完全にコントロールすることはできません。しかし、PRや広報の現場で当たり前に行われている手法を応用することによって、ある程度のコントロールが可能になるのです。
本記事では、運用型広告のプロフェッショナルであるキーワードマーケティングと、アジアNo.1* のPR会社であるベクトルの知見や実績をかけ合わせることによって生まれた「検索創出型マーケティング(SCM)」について、リリースに至った背景や、具体的な取り組みや事例について解説します。
* Global Top 250 PR Agency Rankings2024(PRovoke)より
目次
モノやサービスを売る、問い合わせいただく場合、お客様のニーズが顕在化している検索行動に対してリーチするのがいちばん効率の良い手段となります。
若い世代を中心に検索をしなくなっているとも言われていますが、先日発表された「日本の広告費」においても、検索連動型広告は未だにインターネット広告の4割を占めており、市場が伸び続けていることが示されていました。つまり、検索広告は未だ重要であり、活用する企業も増え続けているということです。
しかし、2021年にインターネット広告費が四マスの広告費を抜き、「インターネットがマス化した」と言われるようになり久しいですが、マス化の功罪といえる状況に悩まされる企業も少なくありません。
このグラフは、弊社で広告運用をしている全アカウントの検索広告の平均クリック単価の推移です。もちろん入札方式にも影響を受ける数字ではありますが、全アカウント(広告取扱高で約95億円)の平均値となりますので、市場における競争率が高まっていることを一定示しています。
このように、検索広告は未だにいちばん効率よく顧客獲得できる方法と言える一方で、顧客獲得につながるキーワードはそのバリエーションや検索ボリュームはそれほど多くなく、ある程度の広告費を投下するとすぐに頭打ちになるという大きな制約を抱えています。
この制約を解決できるのが PR であり、マーケティングに戦略的組み込むのが「検索創出型マーケティング(SCM)」です。
「検索創出型マーケティング(Search Creation Marketing)」とは、第三者による客観的な情報発信によって、コンバージョンにつながる検索流入を直接的に創出する手法です。
具体的には、PR による客観的な情報発信によってビジネスインパクトのあるキーワードでの検索を生み出し、検索広告の制約である「検索数やバリエーションの頭打ち」を解消することができます。
また、マス向けの認知広告に比べると、非常に安いコストで検索数を伸ばすことが期待できるため、大企業だけでなく、中小企業の方々にもぜひチャレンジいただきたい施策です。
一方で、PRは広告に比べると不確実性の高い施策であり狙い通りの結果を生み出すことが難しい施策ではあります。しかし、ポイントを押さえることで確率を上げることは可能で、実際に弊社で先行実施した事例ではすべての施策(ご予算規模は60万円~200万円)において、サーチリフト効果(対象キーワードの検索数増加)を定量的に観測することに成功しています。
先行事例の一部をご紹介します。これらの施策が非常に低価格(50万円~/回)で実現できる可能性があるのが、SCM の特徴のひとつです。
数億円規模でマス広告を実施しても検索ボリュームが変化しないケースもあるなか、なぜ上記の例は比較的安いコストで検索を伸ばすことができるのでしょうか。
以下のような発言を比較した時、あなたはどちらの言葉を信用するでしょうか。
多くの人が直感的に「右」を選ぶのではないでしょうか。それぞれを言い換えると左の発言は広告(一人称)で、右の発言はPR(三人称)と考えることができます。
このように、第三者による客観的な情報発信を人は信用しやすく、好意や信頼のある検索流入を生み出すことができるのです。
また、第三者による情報発信において「編集権がどちらにあるのか」という点も重要です。例えば、先日私が出演した PIVOT で主に話しているのは SCM の提供側である私自身でした。上の図解での「一人称(広告)メッセージ」に見えますが、実はこの映像には 「第三者による編集視点」が入っています。
私がどんなに伝えたいことがあっても、MC の方が進行をコントロールし、PIVOT のトンマナやレギュレーションに沿った形で編集され、言いたいことを言いたいように取り上げてもらうことはできません。
私の発言の「価値」を編集側が判断し、コンテンツとして完成させるわけです。そうして出来上がった映像は私自身が語り編集したものに比べれば、客観的な視点を持ってまとめられるため、純粋な口コミには劣るものの、一定の信用をもって受け取ってもらうことができます。
実際私の出演回では、どうしてもお話したかった具体事例の話がバッサリとカットされてしまいましたが(笑)、もし具体事例のシーンが残っていたらより宣伝っぽさが強まり、視聴者からも反発が出たと感じており素晴らしい編集判断だったと思います。
このように、第三者による客観的な情報発信(またはそれに準ずる第三者が編集権をもつコンテンツ)を活用することでコスパ良く認知が取れ、検索数も増える可能性があります。
マスメディアを使い膨大な広告を予算をかける前に、まずは数十万円から数百万円から始められる SCM を検討いただきたいと考えています。
SCM の基本形は、PR (もしくは客観性を持つコンテンツ)と運用型広告の組み合わせです。
弊社での先行事例としては以下のような組み合わせで実施をいたしました。
キーワードマーケティングでは、SCM における PR を広く捉えており、以下のようなメニューおよび費用感でご提示が可能となっています。
内容を見ていただいてもわかる通り、各施策はインハウスで実行することも可能です。次の章では、SCM の具体的な進め方について解説していきます。
検索創出型マーケティング(SCM)はすべての企業で取り組むことが可能です。工夫次第ですが、自社で実施すれば広告費のみで実現することも可能です。メディアとの関係構築等に時間がかかったり、PR 独特の作法を手探りで学びつつ進めていくことになるため不確実性もいくらか高まりますが、以下の手順を参考にぜひ取り組んでみてください。
本記事では、新たなサービスで認知を獲得していくことを想定したケースで、具体的に SCM 施策を進めていく場合の取り組みを順を追ってご説明します。
検索創出型マーケティング(SCM)の肝は検索行動を生み出し、好意ある文脈でのサイト訪問を生み出すことです。認知とひと言で言っても、社名を認知させたいのか、サービス名なのか、はたまたキャンペーンで使っているキャッチフレーズを認知させたいのかを明確にしましょう。
すでに広告やオーガニック流入でコンバージョンが取れているキーワードを広めていくことはもちろん、まだ世に出ていないサービス名や新たな一般名詞などを設定することも可能です。
特に、新しい言葉をキーワードに設定する場合は、読みやすさや覚えやすさ、検索のしやすさ(打ち込みやすさ)などを意識するようにしましょう。
一般論として、人が何かを認知するには短期間(1-3週間)に異なる4つのメディアで目にすることが必要と言われています。メルマガやSNS、ブログなど自社でコントロールできる面だけでなく、広告や第三者メディアなど、自社でアプローチできる面をなるべくすべて洗い出すようにしましょう。
実際に私たちが「検索創出型マーケティング」の認知を考える時に使用したマインドマップを公開しますので、こちらも参考にしてみてください。
2 の作業で洗い出したタッチポイントを整理しましょう。「短期間に4つのメディアで接触」と言っても、自社のメディアのみでは認知は広がりません。広告や第三者メディアへの出稿、メディアへのアプローチによるパブリシティ獲得など、なるべく多角的かつターゲットが被る面を網羅するようにしましょう。
基本的にはお金がかからない面から選定することになりますが、パブリシティ獲得に関しては不確実性が非常に高いため、掲載前提の計画は危険です。他の面でしっかりとタッチポイントをカバーしつつ、パブリシティ獲得はそのブーストとして捉え、「自社メディア > 運用型広告 > 第三者メディアへの有料掲載 > パブリシティ」の順で設計しましょう。
コスパ良く認知を高め、検索数を伸ばそうとする場合、第三者メディアの有料掲載をおすすめします。有料での掲載になりますので PR とは異なりますが、先述の通り第三者が編集権をもつメディアによる情報発信は良好な検索流入を生み出すため認知施策として非常に有効な手段となります。
メディアの選び方のコツとしては、以下の通りです。
プロダクトやサービスの打ち出し方が決まったら、その内容をもとに企画書を作成しメディアにアプローチを行いましょう。メディアはニュースとしての価値を重要視しますので、情報がまだどこにも出ていないことが求められます。情報解禁のタイミングより少し前にアプローチをしておくと良いでしょう。
もちろん、PR TIMES のようなサービスを活用し、プレスリリースを行うことも効果的です。
特に掲載をしたいメディアについては個別アプローチをしつつ、プレスリリース配信プラットフォームを使って、興味を持ってくれそうなメディアに効率よく広くアプローチを行いましょう。
ここが見落としがちかつ重要なポイントですが、SCM によって発生する検索に対して運用型広告をしっかりと準備しておきましょう。
検索創出型マーケティング(SCM)によって検索数が伸びるキーワードを検索広告でセットしておくのはもちろん、一度ページに流入した顧客を逃さないためにも、リマーケティング広告を設定しておくことをおすすめします。
これらの広告は基本的に検索されたり、サイト訪問されたりして初めて広告費が加算されていく PULL 型の広告ですので、必要最低限の広告費のみでアプローチが可能になります。
また、事前に広告を設定しておくことによって、検索創出型マーケティング(SCM)によってどのくらいの表示回数やクリック数が増えたか等のデータを取得することができますので、認知施策を実施する1週間前くらいから広告の配信を開始しておくと良いでしょう。
認知広告よりもかなり安価で、高い確度で認知を成功させ検索ボリュームを増やすことのできる画期的な手法がなぜこれまであまり注目されてこなかったのでしょうか。
その理由として、以下の点が考えられます。
検索創出型マーケティング(SCM)を成功させるには、PR や広報に関わる方々が当たり前に行っていることを、しっかりとマーケティングチームが把握し、マーケティング KPI と連動させることが重要です。
多くの企業では、次はいつリリースが出て、どんなメッセージが発信されるかをマーケティング部が把握していません。TV で放映されたのを後から知って急いで広告配信を強めるといったことは日常茶飯事です。
実は、検索創出型マーケティング(SCM)は創業社長であれば全部ひとりで当たり前にやっていることでもあります。自らのプロダクトを自ら広告し、自らメディアに売り込み、メディア掲載が決まればそれを広告 LP に掲載する。
事業を大きく前に進めていくうえで当たり前に行うことが、組織が大きくなるにつれて各部署が独立した KPI を持ってしまう。本来、密接な関係にあるべき広報とマーケが分断してしまっていることで、SCM のような考え方が失われてしまうようです。
広告と異なり、PR は不確実性の高い施策です。PR によるパブリシティ獲得が非常に難しく、メディアの方々との信頼関係の構築やプロダクトやサービス自体のニュースバリュー、公益性、時流など、様々な要素が絡み自社でのコントロールはほぼ不可能と言えます。それは第三者メディアに有料掲載する場合も同様で、お金を払ったけど反響はイマイチだったということは少なくありません。SCM 最大の弱点はこの不確実性の高さですが、ポイントを押さえることで確度を上げることが可能です。
また、PR エージェンシーが持つメディアとのコネクションは、長年の信頼関係から蓄積されたものが多く、外部の方がいきなりメディアに連絡をして手に入れられるものではありません。そのサービスの特性上、あまり公には出にくい情報ではありますが、メディアとのコネクションを支援するサービスも提供されており、比較的安価で相談が可能です。
キーワードマーケティングは、アジア No.1* のPRエージェンシー、ベクトルの完全子会社でメディアプロモート活動のご支援も可能です。お気軽に お問い合わせ ください。
* Global Top 250 PR Agency Rankings2024(PRovoke)より
そもそも PR によるパブリシティ獲得については表に出にくい特性があります。
例えば、夕方のニュース番組でプロダクトに関する話題を取り上げてもらおうとする場合、その番組内への掲載料についてはもちろんかかりません。メディア側がニュースバリューおよび公益性があるかを判断して取り上げるため、公平性を担保するためにも当然の仕組みと言えます。
一方で、PR エージェンシーはメディアに対して企画書を作成し、「こんなプロダクトがあるが番組内で取り上げことは可能か」と依頼を行います。PR エージェンシーはこの依頼にかかる人件費や報酬額を顧客から受け取っています。
つまり「◯◯万円をA社(PR エージェンシー)に支払ったら、夕方のニュース番組に取り上げてもらえた」というのは事実ではなく、公にすることでメディア側が不利益を被る可能性があるため、PR エージェンシーは自社の実績としてそれをアピールできないという構造上のジレンマがあります。
こうした理由から、PR(特にパブリシティ獲得) によってこんなビジネスインパクトがあった、という情報は表に出てきにくいのです。
ここは誤解のないように特に強調してお伝えしたい部分ですが、SCM およびマーケティング施策としての PR 活動は、第三者の声を「捏造」するものはありません。そもそも、公益性の低いプロダクトやサービスがパブリシティ獲得をすることは難しく、有料掲載メディアに関してもいわゆるステルスマーケティングのような手法を推奨するものではありません。
顧客に求められ、しっかりと価値提供ができ、顧客が不利益を被るようなプロダクトやサービスでないことが大前提となります。価値のないものに価値を付加するものではないということは、十分にご留意ください。
長々と解説をしてきましたが、最後に改めて SCM を成功させるためのポイントをまとめます。
繰り返しになりますが、効果的な認知施策は、短期間で複数のメディアを横断して情報に触れることが重要となります。自分たちがコントロールし発信できる媒体には何があるかをよく考え洗い出すことが重要です。SNSやメルマガだけでなく、セールスメンバーのメール署名欄や毎月の報告書へのスライド追加、外部のパートナーへの個別連絡など、思っている以上に情報発信に使える場所があるはずです。まずは自社で発信に使える部分をしっかり抑えておきましょう。
そのうえで、足りない部分を補うために外部のメディアへの有料掲載やプレスリリースの発信などを考えていきましょう。
第三者のメディアにコンテンツを掲載する場合は、枠を買うのではなく「良質な編集コンテンツを買う」と考えると良いでしょう。ターゲットとする顧客にリーチができ、質の高いコンテンツを提供しているメディアを選定するようにしてください。
第三者の声の重要性をお伝えしてきましたが、そもそも自己 PR がしっかりとできていることが重要です。SCM によってあなたのWeb サイトに訪問した方が、不安なくお問い合わせや購入ができるように、広告や LPを設計しておく必要があります。
広告 LP の考え方については、以下の記事も参考にしてみてください。
10年教えてわかった、あなたのランディングページがコンバージョンしない5つの理由
ランディングページでコンバージョンが発生しない理由として、①ファーストビューで何屋なのか伝わらない、②わかりにくい、③信用に値する根拠が書かれていない、④メッセージに納得感がない、⑤心地の良いユーザー体験が提供できていない、が挙げられます。10年間講師として様々なランディングページを見てきた筆者が解説します。
「検索創出型マーケティング(SCM)」自体は新しい言葉ではありますが、マーケティングとPR、広報をうまく連動させていくというのは、ビジネスを進めていくうえである意味当たり前のことと言えます。
ネットのマス化が進んだことによって、工夫次第でマスメディアを使わずとも効率のよい方法で認知施策ができるようになり、さらには、広報や PR の成果がデジタルマーケティングの KPI でしっかりと評価できるようになっています。
これらの変化に気づき、戦略的に行っている企業はまだ多くはありません。まずは、マーケティングと広報がお互いの目標を共有し、どのようにシナジーを生み出せるか一緒に考えていくことで、ライバル企業に大きく差をつけることができるようになります。
キーワードマーケティングでは、様々な施策から貴社の実現したいゴールに合わせた施策の組み合わせをご提案することができます。PR 施策の効果がデジタルマーケティングに及ぼす効果をシミュレーションするツール「カチダス」も開発しました。
目標の共有はしたものの、「まず何を始めたらいいのか」と悩むことがありましたら、まずはお気軽に お問い合わせ ください。
先日、押山清高監督のアニメーション映画『ルックバック』を観ました。本当に素晴らしい作品でした。
『チェンソーマン』や『ファイアパンチ』で知られる藤本タツキの読み切り短編『ルックバック』を原作としたアニメーション映画で、”クラスでいちばん絵のうまい” 藤野と、同級生で “学校に行かず絵の練習をしていた” 京本が偶然出逢い、それぞれの人生の歯車が大きく動き出すところから始まります。
ネタバレを避けるためストーリーには触れませんが、原作をかなり忠実に(ほぼそのまま)映像化した作品にもかかわらず「あえて映画にしなきゃいけない」理由が明確にある作品でした。行間ならぬ “コマ間” の補完がこれ以上ないくらいに完璧でした。作画や動画を担当したアニメーターさんもどこか、描くことに命を削り燃やす藤野や京本に重なる瞬間があったのだろうと想像させられる、作り手の気迫に圧倒されるものすごい映像体験でした。「なぜ描くのか?」は「なぜ働くのか?なぜ生きるのか?」と同じ問いであり、粉骨砕身で日々を生きているすべての人を勇気づけてくれる素晴らしい作品でした。
―― と、いきなり映画の感想をなぜ書き殴っているのかというと、この素晴らしい映画をたくさんの人に見てほしい心から思ったからです。素晴らしい作品のもつエネルギーが「感動」を生み、熱量の高い「感想」に姿を変え、ついに周りの人々を動かすエネルギーに変換されていく。本記事でお伝えしたいのはそんな「客観的なメッセージ」のもつ力のお話でした。
代表取締役社長
1989年生。愛知県名古屋市出身。2016年7月よりキーワードマーケティングに入社。ニアショア拠点である九州佐賀支社の立ち上げに携わり、広告運用のオペレーションセンターの立ち上げを成功させる。オウンドメディアを立ち上げ、年間350件以上のお問い合わせを生むメディアへと成長させる。2019年4月に取締役COOとして組織運営に参画、2024年3月より代表取締役社長に就任。
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