広告運用をするうえで重要なのが商品理解です。お客さまの商品やサービスの特徴をはじめ、購入される理由や競合他社との違いなどを理解していれば、広告の戦略を考えたり運用をしたりするうえで役に立ちます。
しかし、自分がターゲットではない商品の場合、商品の需要やターゲットの属性などを理解するのが難しく、悩んでしまうことも多いのではと思います。
この記事では商品理解が重要な理由をはじめ、商品理解において陥りがちな落とし穴や、具体的な商品理解の方法について紹介します。お客さまの商品やサービスをより深く理解したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
商品理解とは、商品の素材や成分といった商品そのものだけでなく、商品の開発経緯やお客さまが保有しているブランドイメージ、商品のターゲット、市場からどのように評価されているのかなど、競合製品や他社サービスとの違いを多面的に分析し理解することです。
お客さまの商品を深く理解しておくことは、広告を含むマーケティング施策を実施するうえで非常に重要です。その理由を以下の2つに絞って解説します。
商品をよく知ることで、商品を購入したいと思うユーザーがどのような人なのか、仮説を立てられるようになります。特にニーズが似ているようで異なる商品の場合は、商品理解を十分におこなっていないと、ズレた訴求内容で商品を宣伝することになります。
例として、DVD と Blu-ray(ブルーレイ)を比べてみましょう。見た目や機能はほぼ同じように見えますが、厳密に言うと異なる性質を持っています。以下は DVD と Blu-ray の特徴をまとめたものです。
DVD | Blu-ray | |
---|---|---|
直径 | 12 cm | 12 cm |
容量(1~2層) | 4.7~8.5 GB | 25~50 GB |
画素数 | 35万画素 | 207万画素 |
耐久性* | 高い | 低い |
DVD と Blu-ray のニーズを同じものと理解していると、映像を残しておけることだけが訴求点になると思います。しかし、それだけでは2つの間に違いはなく、ユーザーが購入するきっかけにはなりません。
表で分けたように2つの違いを明らかにすると、DVD は容量や画素数の点では Blu-ray に劣る一方で耐久性が高いことが、Blu-ray は耐久性が比較的低いものの、容量や画素数の点では優れていることが違いとして分かります。
違いが明確になると、DVD を選ぶユーザーは長期間保存できるかどうかを気にして商品を選び、Blu-ray を選ぶユーザーは映像美や音質、容量の観点で商品を選ぶだろうと推測できます。その推測をもとに、耐久性を全面的に打ち出すアプローチか、映像美や音質、容量などを強調するのかなどを考えます。
ターゲットが明確になることで、最適な広告の種類や出稿するメディアも的確に判断できます。
商品理解を的確におこなうと、自社と競合の差異が明確になります。これによって、マーケティング施策や広告での訴求でオリジナリティを出すことができるだけでなく、ニーズを的確に突くクリエイティブ作成にも繋がります。既視感のない訴求は、ユーザーの興味を引くものとなるでしょう。
例えば大型家具の通販で、競合他社が追加で送料を設定しているのに対して、自社が送料無料で配送している場合、「送料無料」を全面的に押し出したマーケティング施策の実施や広告の配信に繋げることができます。「競合になくて自社にあるもの、こと」がオリジナリティに繋がると理解しておきましょう。
もしどこの企業も送料無料で届けていた場合は、ユーザーの間でそれが普通になっているので、差別化には繋がりません。
自社商品が持つ強みを見いだせない場合は、商品理解がまだ完全でない可能性があります。もしかするとターゲットユーザーに関するイメージが鮮明ではないのかもしれません。ユーザーがどんな点を評価しているのか、競合商品と明らかに異なる点は何かなどを、さまざまな視点で考えてみましょう。
商品理解を頑張っているのにもかかわらず、なかなか上手くいかないこともあります。商品理解が浅くなりがちな落とし穴を4つに分けてまとめてみたので、この落とし穴に自分がはまってしまっていないか確認してみてください。
素材や成分、製造方法など商品そのものをいくら深掘りしても、商品理解としては不十分です。商品のユーザーや商品が属している市場、競合他社の商品などの視点も取り入れて商品の特徴を探すことで、より詳しく理解できます。
商品の効果や効能だけをいくら学んでも、ユーザーの気持ちが分からなければ、効果的なマーケティング施策や広告クリエイティブは生み出せません。
また、市場全体の売上が低下しているのにも関わらず、商品の売上が減っている理由をいくら分析してみても、よい結果は得られないでしょう。
ホームページやパンフレットに書かれている情報も、もちろん大切です。しかし、あくまで誰かのフィルターを通した二次情報だということを理解しておきましょう。正しい商品理解には、なるべくフィルターがかかっていない一次情報(自分が体験したことや実際に見聞きした情報)で考える必要があります。
自社商品はどうしてもよく見えてしまい、ユーザーの視点で考えることが抜け落ちてしまいかねません。必ず一次情報をもとに商品を理解しましょう。
さらに、もし自分がターゲットとなりうるのであれば、ユーザーと同じフローで実際に商品を買ってみましょう。ユーザーと同じように購入することで、貴重な一次情報が得られるはずです。
そして購入の際には Twitter などの SNS や口コミ共有サイトで商品の評判を確認してみましょう。商品の配送や開封で気がついたこと、実際に商品を使用して感じたことなどは最高の一次情報になるので、メモ必須です。
せっかく多くの一次情報を集めて仮説を立てたとしても、それだけで終わってしまっては的確な商品理解に繋がりません。立てた仮説は必ず検証しましょう。
仮説は当たることもあれば、外れることもあります。当たっている仮説であればそのまま施策に繋げてよいのですが、もし仮説が外れていて、かつその仮説を検証していない場合は、誤った方向性の施策に繋がってしまい、効果が得られないという事態に陥るかもしれません。
検証をしていない仮説は、正しい商品理解に繋がりません。そのため、仮説を考えるのと同じぐらいの時間を使って検証と事実確認、調査をおこないましょう。
総務省などがまとめたデータや商品開発にあたっておこなった実験結果や、調査会社に依頼したレポートなど、数値化されているデータ(定量情報)だけでなく、数値化されない「お客さまの声」などの定性情報も確認しましょう。定性情報とは、お客様の声やお問い合わせ、口コミなどを指します。
定性情報は重要な気付きを与えてくれる、いわば宝の山です。普段定量的なデータばかり見ている場合は、一度定性情報を確認してみるとよいでしょう。数値化されたデータだけでは気づけない「何か」が見えてくるときがあるはずです。
例えば、弊社の広告運用代行サービスを利用している方にインタビューした際に、「新しいものは何でも試したい」と話してくれたことがありました。これをきっかけに、広告媒体の新しいキャンペーンや機能の話を多めにしたところ、紹介した新たな機能などの導入を前向きに考えてくれたことが何度もありました。
「新しいものは何でも試したい」という声は、数値化されたデータからは判明しません。そのため、定性情報も収集し、定期的に確認するようにしましょう。
商品理解はやり方さえ分かれば、時間をかけることで誰でもできるようになります。まずは以下の3つを意識して商品理解を進めてみてください。
商品理解で最初におこなうことは、対象の商品の理解ではなく、商品のターゲットが誰かを理解する「顧客理解」です。顧客理解には、属性調査とニーズの把握が重要です。
顧客理解で最初におこなうのは、ターゲットの属性を理解することです。調査するべき属性情報は、対象の商品によって異なります。属性情報は年齢や性別、現住所、家族構成、世帯収入など私生活に関する項目から、勤務地、所属企業、役職などの仕事に関する項目まで多岐にわたります。
どのような業界でも活用しやすい年齢と性別、住所は取得しやすいので、必ず調査しておきましょう。なお、住所は市区町村レベルまであると活用の幅が広がります。
顧客リストがあまりにも膨大で集計に時間がかかりすぎる場合は、直近の数百件または数十件だけでもよいのでまとめましょう。情報がまったくない状態でおこなう推測よりは精度を高められます。
ターゲットの属性を理解できたら、次はニーズを把握しましょう。ニーズを把握するには、ユーザーが抱える不安や不満と商品に期待することを調査します。調査方法は顧客インタビューがおすすめです。顧客インタビューが難しい場合は、身近にターゲットとなりうる人を探して、その人の意見を聞いてみましょう。
顧客インタビューでニーズを把握するコツは、「〜したい」という要望や願望に着目しないことです。「~したい」理由を知りたいので、なぜ「~したい」のかを質問で深掘りしましょう。
例えば、売りたいサービスが歯列矯正だとして、要望の「歯列矯正がしたい」で広告文を考えてしまうと、ユーザーの悩みや不安、期待に応えられず、成果がイマイチになってしまいます。
もし歯列矯正で広告文を作るなら、なぜ歯列矯正をしたいのかという理由に着目するとよいでしょう。歯列矯正をしたい理由には以下のようなことが考えられそうです。
こういった歯列矯正をしたい真の理由まで分かれば、それぞれの悩みや不安、期待に沿った広告文が作れます。
しかし、顧客インタビューは手配から実行までに手間がかかります。そのため、スケジュールやリソースの問題で顧客インタビューまで実施できないときには、Yahoo!知恵袋や X(旧 Twitter)、Amazon の商品レビュー、Google マップのコメントなどを参考にするとよいでしょう。情報を読み解くときには以下のポイントを意識してみてください。
ポイント | 理由 |
---|---|
状況や人を整理する | 書いている人や状況についての事実を知るため |
質問する理由を確認する | 不安や不満、期待が隠れているため (書かれていない場合は文章から補足する) |
情報を整理する | 不安や不満、期待が複数ある/関係していることが多いため 本人が悩んでいるポイントのことが多いため |
冒頭と末尾に書かれていることに注目する | 重要なことや本音が書かれていることが多いため |
不安や不満を推測する | 言語化できていない不安や不満、期待がある可能性が高いため |
属性調査とニーズの把握が終わり、余力があれば、おかれている業界の商流や歴史、最新動向などを浅くでよいので幅広く確認しておきましょう。前提となる知識があるだけで、マーケティング施策の考案や広告運用がスムーズに進みます。
競合比較では、表を作って値段や内容、オプション、アフターサービス、メーカー、実績などをさまざまな角度から比較します。比較表を作り、検索広告で発見した競合や調べて見つかった企業などを埋めてみれば、競合の弱みや自社の強みといえるポイントが出てくるはずです。客観的に強みや弱みを押さえることが重要となります。
競合との比較はやりすぎないように注意しましょう。ユーザーが商品を購入する際に、競合の商品すべてと比較するわけではありません。
みなさんが商品を購入したときのことを思い浮かべてみてください。しっかりと比較して購入したものはそこまで多くないと思います。結婚指輪などの取り返しがつかない商品や高額の商品を購入するときは比較する人も多いと思いますが、あまり高額でない商品の場合や購入を急いでいる場合にはいちいち比較しません。そのため、競合企業との比較やそれに対する施策をし続けるのではなく、ユーザーと向き合い、何が本当に求められているか理解するという軸がブレないようにしましょう。
想いや歴史、思い描く将来像の理解とは、商品やサービスができた背景や大切にしている想い、企業の歴史における大きな転換点や、現在思い描いている将来像を知ることです。
過去に出た新聞や雑誌、Web などのインタビュー記事を読むことが、これらについて理解する際の助けになります。もし創業者が書籍を出版している場合は必ず読みましょう。Web サイトには表れていない創業者の想いや、創業からの歴史やエピソードなど、得られるものがたくさんあります。可能な限りリアルタイムの情報を得られるように努力しましょう。
さらに時間の調整ができて、許諾が得られたら、本社や工場、店舗など実際の現場にも足を運びましょう。現場に赴くことで学べることもたくさんあるはずです。
マーケティングや広告運用に携わるときは、誰よりも商品やサービスに詳しくなるつもりで商品理解をおこなうことが重要です。その商品やサービスについて何を聞かれても答えられるような、専門家のような存在になれば、ユーザーにもその商品やサービスの魅力を的確に届けられるはずです。
広告事業部 マネージャー
2016年4月に新卒入社。入社10カ月で代表滝井直属の広告運用チームに異動。 入札調整や広告文作成から、サイト改善提案まで代表から直接指導を受ける。 toB/toC比率は半々で、アプリ広告も担当。特に好きな媒体はFacebook広告。 海外旅行が好きで、アメリカ横断経験あり。趣味は服映画ヨガアート猫もろもろ。
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