「まだポケモン GO やっているの?」
石川です。
私は、ポケモン GO のリリース以降、毎日欠かさずプレイしているヘビーユーザーですが、いまだにポケモン GO をしていることを人にいうと10人中9人にこう言われます。
ポケモン GO がリリースされて早3年以上。たしかに、リリース当初と比べるとポケモン GO をプレイするユーザーは少なくなりました。
一方で、ポケモン GO をプレイしている「熱狂的ユーザー」もいます。たとえば、ポケモン GO の聖地ともいわれる日比谷公園には、今もこうして多くのユーザーが集まっているのです。
私も、ポケモン GO を愛するヘビーユーザーのひとりで、スマホを片手に、これまで約5,000km歩き、捕まえたポケモンの数は約35,000匹以上にもなります。毎週日曜日は、一番好きなポケモン「コイル」のTシャツを着て銀座周辺をウォーキングをすることが習慣となっています。
今回は実体験にもとづき、3年ものあいだポケモン GO が熱狂を生み続けている理由について説明したいと思います。
競争市場で勝つために考えたいのは、市場の期待に「自社の強み」で応えることです。実際、ポケモンGOも「収集・育成・交換・対戦」という強みをもってサービスを提供しています。
そんなポケモン GO は、一般的なアプリとは違いユーザーの課金要素が限定的です。それは、スポンサーからの広告料により収益化するビジネスモデルを実現しているからです。
ただ、もし収益性の面でインパクトがあっても、今後もポケモン GO はソーシャルゲームでよくあるガチャで課金をさせるような仕組みをアプリに取り入れることはしないでしょう。それは、ポケモン GO が自社の強みをもってヘビーユーザーの期待に応えるサービスを提供している、今の方針に背く行為になると考えるからです。
ポケモン GO の利用者数は、リリース当初と比べると半分以下に減りました。ただ、月間利用者数(MAU)は、あのツムツムに次ぐ2位を記録しています。
ヘビーユーザーは、私のようにリリース後からずっとプレイし続けている人だけではありません。一度ポケモン GO をやめて戻ってきたユーザーも多く含まれます。
2位はナイアンティックの「ポケモンGO」、2019年3月から7カ月連続で2位を獲得しました。App Apeによると、MAUのうちポケモンGOを20日以上起動するヘビーユーザーは前月比5.9%増えており、コアなユーザーを着実に捉えることで人気をさらに拡大しました。
ポケモン GO の利用について社内アンケートをとった結果、現在もポケモン GO をプレイしている12人のうち10人は出戻りユーザーでした。出戻りユーザーをうまく取り込むことで一定のユーザー数を維持していると考えられます。
現状の MAU はディズニーツムツムに劣っていますが、直近2年間で見てみると、一定の既存顧客数を維持し続けているのはポケモン GO です。
これは後に説明する既存ユーザーにも飽きさせない工夫が大きく影響していると考えられます。
※ここで言うリテンションとは、既存顧客維持の意味で用いています。
ポケモン GO は、配信初月でもっともダウンロードされたアプリのギネス記録をもっているので、すでに多くの人はプレイした経験があります。そのため、今後、未経験のユーザーを大量に増やすことは厳しいと考えられます。
これからポケモン GO をやめた人に戻ってきてもらうための取り組みをすることは、ポケモン GO の成功にはマストです。
では、ポケモン GO が既存のユーザーを維持するため、そして、出戻りユーザーを増加させるために何をしているのか?
リリース以来ポケモン GO をプレイしている私は、ポケモン GO がヘビーユーザー獲得のために意識していることは3つあると考えています。
それぞれについて詳しく解説していきます。
ポケモン GO は、老若男女とわず、普段ゲームをしない人でも楽しめるアプリです。リリースされてから多くの機能が実装されましたが、シンプルな画面と操作性は維持し続けています。
ポケモン GO のユーザー層は主に、20代から30代の若者世代かと思われがちですが、実は50代から60代のプレイヤーも多いのが現状です。
社内アンケートで「ポケモン GO を再開した理由」を聞いたのですが、出戻りユーザーの半分は「親(40~60代)がやっていた」ことが再開した理由でした。
実際にポケモン GO をプレイしている人を見ても、40代以上の方は目立ちます。高齢者の方を目にする機会も多くなりました。
2016年7月にリリースされて以来、およそ3年経つポケモンGO。リリース当初には約1,000億円を売り上げたポケモンGOも、2018年には800億円台まで減少。このまま、下火になってしまうのかと思いきや…今、人気が再燃してきています。
その立役者は、メインターゲットである子どもでも、20〜30代の若年層ではありません。一見、ゲームとは無縁というイメージがある50〜60代の高齢者です。実際、日本における50代以上のユーザーは全体のおよそ13%ともいわれています
株式会社ポケモンの事業紹介からも、こうした幅広いユーザーに受け入れられることを目的に開発されたアプリであることがわかります。これまでアプローチできていなかった層にもわかりやすく、手にとってもらえるような製品・サービスを作ろうとしている姿勢が見て取ることができます。
スマートフォンやタブレットに向けた、アプリ開発のプロジェクトを複数展開しています。これらのアプリでは、ゲームとはすこし違った面白さを提供することによって、これまでポケモンがアプローチできていなかった層にも幅広く受け入れられ、よりたくさんの人たちにポケモンの魅力をお伝えすることができました。
幅広く受け入れられるアプリにするためには、シンプルなインターフェースを実現しなければなりません。機能は、必要最低限にするのが望ましいです。
ポケモン GO は、「収集」と「育成」という必要最低限のシンプルな機能でスタートしました。これらを、簡単な操作でプレイできるアプリにしてリリースしたのです。結果、普段ゲームをしないような層にもアプローチすることができ、幅広いユーザーを獲得できました。
では次に、実際に何をしたのかを紹介しましょう。
「誰もが楽しめるゲーム」を前提に開発されたポケモン GO というアプリをどのように改良してきたのでしょうか?
弊社の社内アンケートで「ポケモン GO をやめた理由」を聞くと、
という回答が多く、他のゲームと比べて物足りなさがあったと推測できました。普段ゲームをする人からすると、なおさらですね。
しかし、これは株式会社ポケモンからすると想定内であったと思います。なぜなら、リリース当初から、あれこれ機能を実装したアプリだと、普段ゲームをしない人や高齢者がプレイするハードルが高くなるからです。そのため、アプリをより充実させるのは、リリース後と考えていたのではないでしょうか。
ポケモン GO をより面白くするためのサービスや単なるルーティンで終わらせない機能の実装を、ポケモン GO はリリース後に続々とおこないました。
ポケモン GO は、ポケモンを捕まえたりバトルをして楽しむゲームです。ゲームの本質的なことは3年たった今も変わりません。ただ、リリース後にヘビーユーザーを楽しませるための機能を続々と実装してきました。
ここからは機能やサービスの一部を紹介していきたいと思います。
ヘビーユーザーを熱狂させる取り組みとして欠かせないことの一つに「色違いポケモン」を実装したことがあげられます。
先ほどの日比谷公園の写真は、毎月開催されるイベント「コミュニティデイ」の様子です。コミュニティデイとは、特定のポケモンが大量に発生し、色違いポケモンと出会う確率が高くなる日のことです。
国内ユーザーの調査結果によると、通常フィールドで色違いポケモンと出会う確率は517分の1とのことですが、コミュニティデイだと、2時間もプレイすれば色違いポケモンに1匹は出会えます。
参考:Game With:色違いポケモンの一覧と最新情報|確率や出し方について
コミュニティデイのような期間限定イベントをはじめたことは、ユーザーを楽しませるための取り組みとして大きいです。
イベントは、バレンタインやハロウィンなどの記念日向けのものから、鳥取や横浜などの地域限定のイベントまでさまざまです。実際、イベントの成功は数字も証明しています。
たとえば、鳥取砂丘で開催されたイベントは3日間で89,000人が訪れ、県の試算によると経済効果は約18億円とのことです。
参考:鳥取砂丘で「ポケモンGO」、経済効果は18億円 目標の4.5倍
また、単なるルーティンで終わらせないために追加された機能の一つが「フィールドリサーチ」です。
ポケストップと呼ばれるアイテムを獲得できる場で、フィールドリサーチという「タスク」を受け取ることができるようになりました。
タスクには、「こおりタイプのポケモンを3種類捕まえる」「天候ブーストを受けているポケモンを5匹捕まえる」などがあり、クリアするとアイテムなどの報酬をもらえます。
この機能により、単なるルーティーンで終わらず、ゲームをプレイする達成感をより味わうことができるようになりました。
出戻りユーザーを増加させた要因として大きいのは、「つながり」をもった機能を実装したことでしょう。ポケモン GO は、基本的にひとりで楽しむアプリでした。そこに「つながり」のある機能を実装し、プレイヤー同士で楽しめるアプリに改良したのです。
機能のひとつが、プレイヤー同士で友達になれる「フレンド機能」。ポケモン GO をプレイする人同士で友達になると、アイテムなどが入ったギフトを贈ったり、ポケモンを交換できるようになります。
また、協力プレイをして強いポケモンと戦う「レイドバトル」もつながりをもった機能です。
協力プレイなので、ポケモン GO をプレイするユーザーが、飲食店やドラッグストア、神社などに集まって戦うわけです。弊社のスタッフは、レイドバトルを目的に集まる人を見たのがきっかけで、ポケモン GO を久々に起動したようです。
ポケモン GO の進化はアプリの中だけにはおさまりません。2018年11月には Nintendo Switch と連携しました。
『ポケモン GO』からポケモンを送る方法をチェック!|『ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ』『ポケットモンスター Let’s Go! イーブイ』公式サイト
『ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ』『ポケットモンスター Let’s Go! イーブイ』公式サイト。Nintendo Switchソフトとして発売する『ポケットモンスター』シリーズ最新作!2018年11月16日(金)発売!
今後も、アプリ以外でもポケモン GO の世界は広がるかもしれませんね。
ポケモン GO がロケットスタートを切れたのは、30年の努力により蓄積されたブランドがあったからでしょう。しかし、圧倒的なブランドがあっても、長く愛され続ける製品にするには、製品を改良し続けなければなりません。
ポケモンの伝説がはじまったのは、1996年2月27日にリリースされたポケットモンスター 赤・緑からです。株式会社ポケモンの代表いわく、ポケモンの強みは「収集・育成・交換・対戦」というポケモンの普遍的な魅力にあるとのこと。
参考:The Pokémon Company 代表メッセージ
この強みをもって、ユーザーを熱狂させるためにアプリを改良していることは、ポケモン GO の成功要因といえるでしょう。これまでに紹介した機能、また、サービスは、どれをとっても「収集・育成・交換・対戦」に関連のあるものなのです。
アプリがリリースされたときに実装されていたのは、フィールドに出現するポケモンを「収集」する機能と卵を孵化させる「育成」に関する機能です。そのあと、プレイヤー同士でポケモンを「交換」する機能、プレイヤーやコンピュータと「対戦」する機能が追加されました。これらは、いまのポケモン GO を支える根源的な機能なのです。
「プレイヤーの期待に応えるためのアプリを、株式会社ポケモンの強みをもって応える方針」。これを自社の状況におきかえると、「顧客の期待に応えるための商材(商品、サービス)を、自社の強みをもって応える方針」になるでしょう。
顧客の期待に応えるためには、よい商材を用意しなければなりません。期待に応えて選ばれるとなると「自社の強みをもって商材改良すること」は考えたいところですね。
ただ、よい商材に改良できても、商材の良さの伝え方が適切でないと、伝えるべきことが伝わりません。すると、顧客に選ばれることが難しくなります。
もしポケモン GO が、コマンドの入力が必要なシステムだとしたらユーザー層は限定されていたでしょう。わかりやすいシステムであったからこそ、多くのユーザーに受け入れられるアプリになったわけです。
広告やランディングページを通して商材のよさを伝えるときは、「わかりやすく伝える」ことを意識しましょう。情報を伝える順番、伝えるときに使う言葉を、顧客の状況からして適切なものを採用し、判断に迷うときは、わかりやすい方を選ぶのがオススメです。
「顧客の期待に、自社の強みをもって応えられるように商材を改良する。そして、改良された商材を、顧客が理解できるように分かりやすく伝える」こと。これが、ポケモン GO に学ぶ競争市場の中で勝ち続けるために必要なことなのではないでしょうか。
まずは、自社と改めて向き合いましょう。自社がもつ武器はなにか?顧客にどんなことを提案できそうか?どんなサービスにして提供できるのか。自社にある資産を整理することは、これからの時代を勝ち抜くマーケティングにおいて大事な仕事になると考えます。
今回おこなったマーケティングトレースとは、黒澤 友貴さんが提唱しているマーケターのための筋トレと呼ばれるものです。
これは、企業の戦略・戦術を分析し、成功要因を言語化することで新しい戦略を立案するためにおこないます。詳しくは下記の note と note 内のリンクからマーケティングトレースのフレームワークも見ることができるので是非ご覧ください。
マーケティングトレース(マーケターにとっての筋トレ)とは何かについて|黒澤 友貴/ブランディングテクノロジー|note
デザイナーの方々は、UIトレースをしたり、観察スケッチをしたりと、模倣することでデザイン力を磨いている。 ヤマシタさんが提唱されている「デザインの筋トレ」=観察スケッチは、note,Twitterで賑わっています。 noteでデザイナーの方々はアウトプット⇄インプットを繰り返していて、このコミュニティは素晴らしいなと感じながら、自分もデザイン修行中なので、非デザイナーとして積極的にnoteを活用しています(主に観察スケッチをやっています。) ふと思ったのが・・・ マーケターにとっての筋トレって何だろう?・・・ あまりマーケターが毎日繰り返すトレーニングって聞かな
執行役員/インハウス支援室長
全国400社以上の研究会員の運用型広告・マーケティングコンサルティングを担当。養成講座では500人以上を教育。コンサル・講師・執筆業から、広告運用代行、ホームページ制作、システム開発まで担当。自社ビジネス成長のための製品開発、販売をする実践家でもある。自他ともに認める変わり者。徳島県出身。
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