現代のアプリビジネスでは、アプリインストール時ではなくインストール後(アプリ内)に収益化するものが多くなってきており、具体的には大きく分けて下記2つの戦略が多く見られます。
アプリを無料でインストールして、無料で楽しんでもらい、その過程でもっと楽しみたいなら費用を払う。
アプリをメディア化して広告枠を設け、広告を表示させてあげる代わりに広告主には費用を請求する。ユーザーはインストールからアプリ利用まですべて無料で楽しめる。
こういった戦略で売上をあげていくには、新規ユーザーからのインストールを獲得することよりも、インストール後にユーザーがアプリ内でどのような動きをしているか、きちんと売上に繋がるようなユーザーを確保できているのか、といったことを把握することが重要です。
もし意図通りのユーザーの動きがないのであれば、その穴をきちんと塞いであげる必要があります。つまり、インストールした後(アプリ内)でのユーザーの動きを徹底的に追い効果測定することが成功の鍵となります。
ユーザーの動きを分析する際、ユーザー単位では見ずに、イベント単位だけで見てしまわないようにしましょう。どうしてユーザー単位でも見ていかないといけないのか、アプリ内で課金するゲームアプリを例にご説明します。
インストール数 | 会員登録回数 | 会員登録ユーザー数 | 会員登録率 | |
---|---|---|---|---|
パターンA | 10,000回 | 9,000回 | 9,000人 | 90% |
パターンB | 10,000回 | 9,000回 | 5,000人 | 50% |
パターンAでは、インストールしたユーザーのうち90%が会員登録をしています。対して、パターンBでは、ユーザー単位での会員登録率は50%ですので低い傾向です。このパターンBでは、ゲームアプリなどでよくある「リセマラ」の可能性が高いです。
新規ユーザーの獲得にインターネット広告を利用している場合、インストール数や会員登録数しか見ていないと、広告上ではパフォーマンスが良いのに、実際の会員登録ユーザー数は伸び悩むというズレが起こります。その理由がこのデータにより、1ユーザーが複数回会員登録していると分かるわけです。
しかし、ユーザー単位で計測していないと、以下のようになります。
インストール数 | 会員登録回数 | 会員登録ユーザー数 | 会員登録率 | |
---|---|---|---|---|
パターンA | 10,000回 | 9,000回 | 不明 | 不明 |
パターンB | 10,000回 | 9,000回 | 不明 | 不明 |
実際のユーザー数が分からないので、リセマラによる問題なのか、計測不良なのか、それかまた別の要因なのか分からなくなってしまうのです。
この他にも、ユーザーの課金率を見たり、1ユーザーあたりの広告表示回数が多すぎないかチェックしたりなど、アプリ内のユーザーの動きを明確するためには必須のデータですので、アプリ計測ではイベント単位だけでなくユーザー単位でも見ましょう。
「インストール」を例にとってお話しますと、「App Store」や「Google Play」などのアプリストアを経由するインストールでは、ユーザーが後でアプリを起動するかどうかに関わらず、アプリをダウンロードしてインストールすると記録されます。
対して、アプリ計測ツール大手のひとつ「Apps Flyer」では、アプリの初回起動時にのみ新しいインストールが記録されます。
そのため、アプリストア経由の「インストール」と「初回起動」は別になりますが、Apps Flyerにおいては「インストール」と「初回起動」は同義となります。
このように、計測ツールや効果測定の環境によって指標の定義が変わるため注意が必要です。
乖離 – App StoreやGoogle Playと比較した、AppsFlyerのインストールカウント方法とは? – AppsFlyer Support
はじめに モバイルアトリビューションエコシステムでは、すべてのプレーヤーが使用するアトリビューションモデルに固有の違いがあります。 AppsFlyerや主要アプリストア、iTunes App Store、Google Playにも同じことが言えます。…
ここでは一例として、とあるユーザーが「動画SNSアプリ」をインストールし、利用するまでの一連の流れで、どんなイベントが計測できるかをご紹介します。
デバイスにアプリがダウンロードし終わったタイミングで計測されます。インターネット広告やASO(アプリストア最適化)における成果指標もしくは中間KPIとして使われます。インストール以外のイベントもですが、オーガニックと広告は分けて確認することが可能です。
アプリをインストールした後、実際にアプリを初めて起動したときに計測されます。インストールと併せてみることで、初回起動率を算出することができます。
アプリの世界観を伝えるチュートリアルが完了したタイミングで計測されます。アプリの操作性や世界観を理解してくれたユーザー数が分かります。
動画や音楽、テレビ番組などの再生を計測します。再生時間はもちろんのこと、動画であればその言語まで分かります。人気なものが分かるため、コンテンツの改善にも活かせます。
登録が完了した時点で計測されます。初回起動と併せてみることで、新規ユーザーの定着率における中間KPIを確認できます。
この他に計測できるイベントを以下に一覧で記しておきますが、「旅行の予約」などアプリジャンル特有の計測イベントなどもありますので、詳しくは各アプリ計測ツールのヘルプページ等にてご確認ください。
※アプリ計測ツールは多数の国で開発されており、イベント名の日本語訳に各社で違いがあります。どういったイベントか分からない場合には英語表記も併せて確認してみてください。
アプリ計測のためには、専門のアプリ計測ツールを導入することをお勧めします。現在は様々な企業からアプリ計測ツールがリリースされていますが、この記事では以下3社をご紹介させていただきます。
各社の違いは、費用はもちろんのこと、計測できる指標やそのデータの見やすさ、イベント計測の設定方法、インターネット広告との連携のしやすさなど個性がありますので、気になるツール提供業者に問い合わせてみてください。いずれも日本にオフィスを構えておりますので、日本語でのサポートがきちんと受けられます。
Google社が提供するアプリ計測ツールがFirebase Analytics です。Google社提供ということで、Google広告などの他サービスとの親和性が高いです。また、Firebase の特徴として無料で利用することができることも挙げられます(その他、有料プランは2つあり。月額固定と従量制)。無料プランは趣味でアプリを開発している方などに向いています。
Firebase は、高品質のアプリを迅速に開発できる Google のモバイル プラットフォームで、ビジネスの成長に役立ちます。
イスラエル発のアプリ計測専門ツールです。Google広告やAppleSearchAds、Facebook広告、Twitter広告などの連携が簡単です。また、広告主と広告代理店とが連携しやすいようになっています。Firebase とは違って有料にはなりますが、計測できるものも多く、大企業ならず中小企業でも導入しやすい価格です。30日間の無料トライアルがあるので、企業でアプリ開発・運営をされている方はご検討してみてください。
AppsFlyer | Mobile App Measurement & Attribution
Mobile App Measurement & Attribution Analytics platform that helps App-Developers, Brands and Ad-Agencies measure and optimize their users’ acquisition funnel.
ドイツ発のモバイルマーケティング分析プラットフォームです。各広告媒体との連携がとりやすく、基本的に即日対応のサポート体制で日本語ドキュメント完備しています。特長として、多くのデータを一覧化して表示できる管理画面が便利です。また、クラウドサーバーを利用しない為、第三者にデータを預けない自社管理でセキュリティリスクを軽減し、オープンソース開発の為透明性が高く、安心してSDK実装を行えます。
The Mobile Measurement Company | Adjust
Adjust is the Mobile Measurement Company: we unify all your marketing activities into one powerful platform, giving you the insights you need to scale your bus
10年ほど前、世の中がガラケーからスマホにシフトしていき、アプリというものが身近になってきた当時は「アプリのインストールは無料」という概念は、現代ほど一般的ではありませんでした。そのため、できるだけ早い段階でマネタイズしていくために、インストール時に課金してもらうのを狙う企業様が多く見受けられました。ユーザー側も、アプリのインストールに数百円~数千円払うことにためらいがなく、実際に私も当時はいろんなアプリを、有料でもためらうことなくインストールしていました。
この当時のアプリ計測は、アプリをインストールするまで(アプリ外)のユーザーの動きを追うことに重点が置かれていました。
しかし、それから様々な企業がアプリ市場に参入し、世の中のアプリ量は増えていきます。以下は総務省のデータですが、ご覧の通りアプリのダウンロード数(インストール数と同義)も年々増え続けている状況です。
アプリ市場の拡大に伴い、競合性が高まってきたため、各企業がより良いアプリ開発に日々奮闘するようになり、10年前と比べるとアプリ全体の質は高くなりました。その中には Candy Crush Saga などのゲームや Facebook などのSNSも含まれます。こういったクオリティの高いアプリを、無料でインストールできるように提供している企業が増えてきた現代では、ユーザーの心理にも変化が現れます。下記のデータにあるように、80.4%のスマホユーザーが有料アプリはインストールしなくなりました。
こういった市場の変化に伴い、企業がアプリで収益化する方法にも変化が現れます。
先述の通り「ユーザー課金型」や「広告メディア型」といった、アプリのインストール時は費用が発生しないタイプのアプリが多くなってきました。もちろん今でも「有料インストール型」のアプリはありますが、インストール無料で十分に楽しめるアプリが多く、そういうユーザーが多い現代では、インストール時に費用が発生するアプリは苦しい状況かと思います。私も昔ほどはインストール有料のアプリはあまり利用しなくなり、ストアにおいても無料のタブだけを見ることが多くなりました。
こういった現代において重要なのは、アプリをインストールした後、アプリ内での動きになります。アプリ内でどのような動きをしているか、きちんと売上に繋がるようなユーザーを確保できているのかが分からなければ、アプリで売上を立ちません。
そのため、アプリ内でのユーザーの動きを徹底的に追うことに、アプリ計測の重点が置かれるようになってきています。
これからアプリビジネスも、デバイスに合わせてトレンドが大きく変わってくるかもしれません。しかし、どんなことになっても正確に計測すること、またその計測結果から施策を立案し、実施していくことの価値や方法は変わりませんので、ぜひこの記事を参考に、みなさんがアプリ計測を正しく行っていただければと思います。
ちなみに、弊社では、AppsFlyer をはじめとするアプリ計測ツールを使った、アプリ広告の運用や分析~施策立案・実施などもおこなっておりますので、お困りの方はお気軽にお問合せください。
広告事業部 マネージャー
2016年4月に新卒入社。入社10カ月で代表滝井直属の広告運用チームに異動。 入札調整や広告文作成から、サイト改善提案まで代表から直接指導を受ける。 toB/toC比率は半々で、アプリ広告も担当。特に好きな媒体はFacebook広告。 海外旅行が好きで、アメリカ横断経験あり。趣味は服映画ヨガアート猫もろもろ。
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