Meta 広告ではさまざまな配信メニューが提供されており、Advantage+ ショッピングキャンペーン(ASC)というメニューもその一つです。
この記事では、Advantage+ ショッピングキャンペーン(ASC)について具体的なメリットや注意点に加え、向いている商材とそうでない商材も詳しく解説します。
また、記事の後半では Advantage+ ショッピングキャンペーンの始め方や、配信に際して知っておきたい最新機能についても紹介します。これから Advantage+ ショッピングキャンペーンを配信予定の方は、ぜひ参考にしてみてください!
目次
Advantage+ ショッピングキャンペーン(通称:ASC)は、Meta の広告自動化ツールセット「Advantage+」の一つとして、2022年10月にリリースされたキャンペーンです。
「Advantage+」は、Meta が保有するビッグデータに基づいて、最も成果が高いと考えられる配信先やクリエイティブを自動で組み合わせて、広告パフォーマンスを最大化してくれるものです。
Advantage+ ショッピングキャンペーンは当初、「Advantage+」の中でも売上成果の最大化に特化したメニューとしてリリースされていました。ただ、近年では法人向け商材などの配信でも成果が出ている事例があり、応用することで幅広い商材の配信に活用できるメニューとなっています。
なお、「Advantage+」に関する情報は以下の記事にもまとまっているので、併せてご確認ください。
広告自動化ツールセット「Meta Advantage」とは?機能と設定方法をわかりやすく解説|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
Meta Advantage/Advantage+ は、Meta 広告の自動プロダクトです。 Meta Advantage を活用すると、広告の成果の向上がみられる場合に、詳細ターゲットの拡大やキャンペーン予算の最適化、類似オーディエンスの拡大などが自動的におこなわれます。
通常のキャンペーンと Advantage+ ショッピングキャンペーンの大きな違いは、以下の3つです。
ここからは、それぞれの違いについて詳しく紹介します。
従来のキャンペーンでは一つのキャンペーン内に作成できる広告セットは最大5,000件まで作成が可能でしたが、Advantage+ ショッピングキャンペーンでは1つのキャンペーンにつき作成できる広告セットは原則1件のみです。
これは、全てのターゲティングを自動で最適化するため広告セットを分ける必要がないことや、データを分散させないようにすることが背景にあると考えられます。
なお2024年の5月頃から、テスト的に一部の Advantage+ ショッピングキャンペーンで複数の広告セットを作成できるようにもなっているそうです。ただ、2024年10月時点では全てのアカウントに適用されているわけではないため、今後の動向が注目されます。
一つのキャンペーン内に作成できる広告セット数が限られたことにより、広告セット1件あたりに設定できる広告数が最大150個に増えました。通常キャンペーンの場合は広告セット1件あたり最大50個までだったので、3倍に増えたことになります。
これにより、同じ広告セット内で従来よりも多くの広告をユーザーに合わせて出し分けできるようになり、最適化に使用できる広告材料が多くなりました。
そのため、入稿できるクリエイティブ件数が増えたメリットを活かすには可能な限り多くの広告を設定しておくことが有効といえます。
以下の表の黒い太字の箇所にもある通り、Advantage+ ショッピングキャンペーンは通常キャンペーンと比較して自動化された箇所や選択不要になった項目が増えています。
項目 | Advantage+ ショッピングキャンペーン | 通常キャンペーン |
---|---|---|
広告形式 | ||
入札方法 | 自動入札のみ | 自動入札・手動入札 |
最適化に 使用できるイベント | ||
ターゲティング | 自動ターゲティング ※国のみ設定可能 ※地域除外も可能 | 任意のオーディエンスを 手動で設定可能 |
配信面 | 自動配置 | 自動配置か手動配置 |
同一キャンペーン内での 新規ユーザーと既存ユーザー への予算の割り振り | 可能 | 広告セットを分ければ可能 |
Advantage+ ショッピングキャンペーンは自動最適化による成果向上が大きなメリットになるため、従来のキャンペーンのように手動で細かなターゲティング設定をおこなう必要がありません。
このように手動で設定する項目が減ったことで、有効な広告を配信できるハードルが下がったともいえそうです。
Advantage+ ショッピングキャンペーンは売上最大化に特化した配信メニューであるため、基本的には EC 商材の配信に向いています。特に「20代〜30代女性向けのアパレル」のように、ある程度広いターゲットの EC 商材が適しています。
ほかにも、以下のような商材では AI が季節性などから、需要のピークを考慮し効率的に最適化してくれるため向いているといえます。
また、最適化に使用できるイベントにカスタムイベントが追加され、「購入」を目的とした配信以外でも成果の出る配信を実施しやすくなりました。
実際にキーワードマーケティングでも、EC 商材以外の案件で Advantage+ ショッピングキャンペーンを使用し、成果が出た事例があります。
ここからは、Advantage+ ショッピングキャンペーンを配信するメリットと注意点をそれぞれ紹介していきます。
最初に紹介するのはメリットです。Advantage+ ショッピングキャンペーンのメリットは、大きく以下の3つに分けられます。
それぞれのメリットを把握して、実際に配信するときのイメージを固めていきましょう!
Advantage+ ショッピングキャンペーンでは、ビッグデータを基に配信するターゲティングや広告クリエイティブが自動で選定されるため、広告クリエイティブを入稿し成果を検証したり、都度クリエイティブの入れ替えをしたりといった工数を削減できます。
以下はそれぞれのキャンペーンで広告を配信するまでに必要な作業数を比較したものです。Advantage+ ショッピングキャンペーンの広告配信までの手順が3つだけなのと比べて、通常のキャンペーンでは手順が1つ多くなっているのが分かります。
Advantage+ ショッピングキャンペーン | 通常のキャンペーン | |
---|---|---|
手順1 | キャンペーンを作成する | キャンペーンを作成する |
手順2 | 広告セットを作成し予算やスケジュールを設定する | 広告セットを複数作成する |
手順3 | 広告を入稿 | 広告セットごとに詳細なターゲティングや予算、スケジュールを設定する |
手順4 | 配信開始 | 広告セットごとに広告を入稿 |
手順5 | – | 配信開始 |
配信後 | 手動での調整は不要 | 適宜、広告の成果に応じた調整が必要 |
このような点を見ても、Advantage+ ショッピングキャンペーンは「Meta 広告を始めたいけどリソース不足で手が回らない」といった方でも手軽に広告効果の最大化を狙えるメニューといえそうです。
前述した通り、Advantage+ ショッピングキャンペーンではビッグデータを基に配信するターゲットを自動で最適化してくれます。
従来のキャンペーンでは、配信するターゲットごとに広告セットを分ける必要があったり、広告セットが分かれる分、1つの広告セットで学習するデータ量が少なく機械学習が進みにくかったりました。
しかし、Advantage+ ショッピングキャンペーンでは、1つのキャンペーン内で配信がおこなわれることで機械学習も進みやすく、さらにビッグデータを活用し自動で最適なターゲットへ配信されるため、常に多くのデータを学習しながら成果の最適化を進めることができる点もメリットです。
Advantage+ ショッピングキャンペーンでは「既存顧客の予算上限」を設定することで、新規ユーザーと既存ユーザーへの配信割合が調整できます。
先ほど、ターゲットは自動で最適化され配信されると説明しましたが、特に新規ユーザーと既存ユーザーにそれぞれどの程度配信するのかを調整できます。そのため、新規ユーザーを獲得したいのに既存ユーザーにばかり配信が出てしまうといったトラブルもありません。
新規ユーザーと既存ユーザーの定義は任意のものを設定できます。例えば過去にコンバージョンしたことのあるユーザーを「既存ユーザー」としてオーディエンスリストを作り、さらに既存ユーザーとして設定することで、過去にコンバージョン経験のあるユーザーとそうでない新規ユーザーの配信比率を調整することが可能です。
Advantage+ ショッピングキャンペーンには先ほど紹介したようなメリットがある一方で、以下のようなデメリットや注意点もあります。
ここからはデメリットに関する解説です。メリットだけでなくデメリットもあわせて理解し、意図しない配信にならないよう注意しましょう。
Advantage+ ショッピングキャンペーンでは広告クリエイティブやターゲットを手動で設定できないため、通常キャンペーンでできていたような細かい設定ができないというデメリットがあります。
例えば、特定の市場やニッチなターゲットを狙った商品の場合はあえて手動で細かくターゲットを設定することで意図したユーザーに広告を配信できますが、Advantage+ ショッピングキャンペーンでは細かな設定ができないためターゲットではないユーザーにも配信される可能性があります。
そのため、もともとターゲットが狭い商材の場合は Advantage+ ショッピングキャンペーンは不向きといえます。
Advantage+ ショッピングキャンペーンは自動最適化による設定範囲が大きい分、自動最適化のための機械学習が進んでいない配信開始後すぐは、広告成果が不安定になる可能性があります。
最適化が完了するまでの期間は商材や広告費によって異なりますが、目安は1週間程度です。そのため、配信開始後すぐは広告費を少額に抑えたり、通常のキャンペーンも並行して配信したりして、成果が悪化した場合のリスクを分散させるのをおすすめします。
Advantage+ ショッピングキャンペーンは AI によってさまざまなパターンの広告クリエイティブ、ターゲットが自動で組み合わさって配信されるため、具体的にどのターゲットに対してどの広告が表示され、どのくらいの成果が出たかを確認できません。
通常のキャンペーンであれば、手動で設定したターゲットへの配信でクリエイティブごとの成果を確認できるため分析と仮説が立てやすいです。ただ、Advantage+ ショッピングキャンペーンでは詳細のオーディエンスを設定しないことでオーディエンスごとのクリック率やコンバージョン率が確認できないため、分析がしにくい傾向にあります。
そのため、オーディエンスごとの成果検証をおこないたい場合は通常のキャンペーンでの配信をおすすめします。配信した内容のデータを細かく知りたかったり、詳細に分析したかったりする場合は通常のキャンペーンを利用しましょう。
Advantage+ ショッピングキャンペーンの概要とメリットとデメリットを紹介してきましたが、読者の中には実際に配信した事例が気になる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、実際に Advantage+ ショッピングキャンペーンを配信した際の事例を2つ紹介します。
まず、女性向け EC 商材で配信した事例です。
この事例では、リターゲティングを用いた通常キャンペーンと Advantage+ ショッピングキャンペーンを並行して配信しており、Advantage+ ショッピングキャンペーンで成果が良い傾向にあります。
CV 率 | CPA | ROAS | |
---|---|---|---|
通常のキャンペーン | 5.17% | ¥1,128 | 614% |
Advantage+ ショッピングキャンペーン | 5.98% | ¥663 | 873% |
上記の表のように、Advantage+ ショッピングキャンペーンを活用することで、コンバージョン率と ROAS を上げ、CPA は約40%下げることに成功しました。
一度サイトに訪問したユーザーを対象に絞っているリターゲティングよりもコンバージョン率が高く配信できていることから「Advantage+」の強みである自動最適化が上手く機能していることが分かります。
次に、EC 以外での事例としてアプリのインストールを目的とした配信事例を紹介します。
広告費 | CV | CV 率 | CPO | |
---|---|---|---|---|
通常のキャンペーン | ¥338,500 | 15 | 0.62% | ¥22,567 |
Advantage+ ショッピングキャンペーン | ¥562,985 | 42 | 0.8% | ¥13,404 |
上記のように、通常のキャンペーンに比べて広告費が多くなったものの、その分コンバージョン数が2倍以上に、コンバージョン率が約1.3倍に上がっています。また、CPO は通常キャンペーンより40%少なく抑えることに成功しました。
このように、効率を改善しながら広告配信量を増やしコンバージョン数を増加させられている点からも、Advantage+ ショッピングキャンペーンが EC 商材以外の配信でも有効であると分かります。
ここまで紹介してきた Advantage+ ショッピングキャンペーンですが、実はリリース以降も機能がアップデートされ続けており、どんどん使いやすくなっています。
ここからは、配信する際に知っておきたい最新機能として、以下の3つを紹介します。
これから Advantage+ ショッピングキャンペーンを配信予定の方はもちろん、現在配信中の方も、この部分をしっかりと読み込んで理解を深めておきましょう!
2024年5月頃のアップデートで、Advantage+ ショッピングキャンペーンの最適化に使用するコンバージョンイベントにカスタムイベントが設定できるようになりました。
従来は Meta 側で用意された標準イベントのみ最適化に使えましたが、自分でコンバージョン条件を設定し作成するカスタムイベントも最適化に利用できるようになりました。
これによって EC 商材の購入イベントだけでなく、法人向けサービス資料請求やセミナー集客など幅広いコンバージョンを最適化の対象にできます。
Advantage+ ショッピングキャンペーンでは、広告単位で配信スケジュールの設定が可能になりました。
広告単位でスケジュール設定できるようになったことで、例えば Advantage+ ショッピングキャンペーンにあるセール用広告などの一部だけを特定期間に開始、停止するといったこともできるようになりました。
これまでは、新規顧客と既存顧客の2つのみ配信の内訳がレポーティング可能でしたが、「エンゲージメントの高い顧客」も内訳に追加されました。
これにより、コンバージョンしたことがないユーザーを新規顧客や過去にコンバージョンしたことがあるユーザーを既存顧客、広告をクリックや保存したことがあるユーザーをエンゲージメントの高い顧客として定義することで、細かなユーザー属性ごとに広告成果を確認でき分析しやすくなります。
Advantage+ ショッピングキャンペーンの設定手順は、大きく以下の3ステップに分かれています。
最後に、それぞれのステップについて、実際の管理画面の画像を用いて解説します。どのステップも複雑な作業はないため、しっかりと確認し不備なく設定できるようにしましょう。
まず、広告マネージャでキャンペーンタブの「作成」からキャンペーンの目的「売上」を選択します。
「売上」を選択し「次へ」をクリックすると作成するキャンペーンの種類を選べます。
キャンペーン目的を「売上」に選択した場合に作成できるキャンペーンは、Advantage+ ショッピングキャンペーンと通常のキャンペーンの2つのみです。
デフォルトで Advantage+ ショッピングキャンペーンが選択されているためそのまま「次へ」をクリックしましょう。
通常のキャンペーンを作成したい場合は「手動作成の売上キャンペーン」を選択することで次の設定に進めます。
以下のようなキャンペーンの詳細設定に移ったら、まず「パフォーマンスの目標」と「ピクセル」を任意のものに設定しましょう。Meta ピクセルの設定がされていない場合は画像のように表示されるので、「ピクセルを作成」から作成したうえで設定が必要です。
Meta ピクセルの設置方法はこちらの記事で詳しく解説しているので、併せてご覧ください。
【初心者必見】Meta(Facebook)ピクセルとは?設置方法と動作確認まで徹底解説|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
Meta ピクセル(旧:Facebook ピクセル)とは、商品の購入や問い合わせのような Web サイト内でユーザーが取った行動を計測するため、サイトに設置する JavaScript コードです。
Meta ピクセルを設定すると以下のように「コンバージョンイベント」を設定できるようになります。
法人向けサービスで資料請求などのイベントで最適化を図りたい場合は、ここで「コンバージョンイベント」から購入イベント以外のイベントに変更しましょう。
広告を配信する地域や除外したい地域は、「オーディエンスの地域」から設定できます。広告を配信したい、またはしたくない地域がある場合はここで設定しておきましょう。
既存顧客と新規顧客でレポートを分けたい場合は「レポート」項目にある「オーディエンスセグメント」から既存顧客の条件と新規顧客の条件を設定しましょう。
コンバージョンの設定と配信地域の設定が完了したら予算と配信スケジュールの設定をおこないます。通常のキャンペーンと同じく、1日あたりで投下する予算設定か特定の期間の通算予算設定かを選びましょう。
既存顧客への配信を除外したい場合は「既存顧客の予算上限」にチェックを入れ、0円に設定することで除外ができます。既存顧客の予算上限を0円で設定していないと既存顧客にも配信されてしまうため、意図しない配信がされないよう確認しておきましょう。
ここまで入力が完了したらキャンペーンの設定は完了です。
キャンペーンの設定が完了したら広告セットが自動で作成されるため、次に広告セットに入稿する広告の作成画面に移ります。
広告の入稿内容は通常のキャンペーンと同じです。Facebook ページ、広告フォーマット、クリエイティブ画像、テキスト、リンク先 URL を設定すれば、Advantage+ ショッピングキャンペーンの作成は完了となります。
広告セットの作成と内部の細かい設定は以下の記事に記載されているので、併せてご確認ください。
【画像で解説】Facebook広告のやり方・始め方。初心者向けの便利なノウハウも紹介|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
初心者の方のために、Facebook広告(Meta広告)の便利な設定方法を紹介。最低限理解しておきたい言葉の意味や、入札戦略の詳細、広告作成時に参考になる広告ライブラリの紹介なども記載しています。
Advantage+ ショッピングキャンペーンには従来のキャンペーンとは違った仕様やメリットが多くあり、広告効果の最大化に貢献してくれるメニューです。
この記事で紹介したメリットや注意点が、自社で Advantage+ ショッピングキャンペーンを配信するかの判断に役立てば幸いです。配信する場合は、記事内で紹介した設定方法をぜひ活用してみてください。
Meta 広告には、Advantage+ ショッピングキャンペーン以外にもさまざまなメニューがあり、自社の商材にあった配信方法を適切に選び配信することで広告効果を最大化できるため、適切な配信メニューの実施をおすすめします。
Advantage+ ショッピングキャンペーンの特徴や設定方法をしっかりと理解し、広告の売上最大化を目指しましょう!
広告運用 コンサルタント
2020入社。大学でマーケティングを専攻→キーマケに入社し広告事業部に配属される。配属後2ヶ月で動画広告作成に携わる等、検索やディスプレイ広告以外も勉強中。趣味はギターと温泉。特に冬の露天風呂は至高。
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