小売店や飲食店のようなお客様に来店してもらうビジネスの場合、Web 広告の成果が見にくく、広告配信が難しいという課題があります。
予約せずにコンビニや飲食店に行くことがあるように、店舗向けの広告は配信しても来店予約や申し込みがなければ、広告の成果を明確に認識できません。
そんな店舗ビジネス専用のキャンペーンとして、Google 広告には「ローカルキャンペーン」が用意されています。成果が見えづらいという課題を部分的に解消しつつ広告を配信できるので、店舗ビジネスを展開する事業者にとってメリットのあるキャンペーンです。
今回はローカルキャンペーンの概要やコンバージョンの定義、ローカル検索広告との違い、設定方法とその際の注意点まで詳しく説明します。
ローカルキャンペーンは店舗ビジネスを対象にした Google 広告の配信メニューで、ユーザーに来店を促す広告を配信できます。広告の配信先は、Google 検索ネットワークや Google マップ、YouTube、Gmail、Google ディスプレイネットワークなどがあります。
ローカルキャンペーンでは、地図などを使った広告で店舗の所在地をユーザーに伝え、知ってもらうことを目的とした広告配信ができます。
ローカルキャンペーンは店舗を持つビジネスのための広告配信メニューです。ユーザーは状況に合わせて、気分にあったお店を検索やマップで探すため、事前に予約せず来店するようなビジネスの広告配信手段として活用されます。
ホテルや高級レストランなどであれば事前に予約することがほとんどですが、普段利用する飲食店や小売店の場合、ユーザーは状況や気分に合わせて事前の予約なしで来店します。そのようなユーザーに、店舗の情報を知ってもらうために役立つのがローカルキャンペーンです。もちろん事前予約が必要なビジネスでも活用できます。
ローカルキャンペーンは Google 検索ネットワーク、Google マップ、YouTube、Google ディスプレイ ネットワークなど Google が持つ広告面に配信されます。ここからは、それぞれの配信面で広告がどのように表示されるかを解説します。
Google 検索ネットワークでは、登録している店舗にマッチした語句が検索されたときに広告が配信されます。語句の判断基準は公表されていません。広告は検索画面に表示されるマップの結果一覧に表示されます。
Google マップでは、登録している店舗に近い語句が店舗周辺で検索された際に広告が表示されます。検索結果画面にも表示され、マップ内にロゴや文字が表示されることもあります。
Google で取得している情報をもとに、店舗に来店しそうなユーザーに対して広告が配信されます。ローカルキャンペーンでは動画の設定も可能です。
Google ディスプレイネットワークの配信面に、設定している画像や店舗の地図情報が表示されます。ディスプレイ枠に地図情報を表示する形式は、ローカルキャンペーンと、実店舗関連の目標が設定されている P-MAX で利用可能です。
店舗系ビジネスの場合は、来店予約などをおこなわなければ広告の成果を確認することが難しいです。ローカルキャンペーンではこれを解決するために、独自のコンバージョンを用意しています。
ローカルキャンペーンにおいて、デフォルトで使用されるのは「店舗での販売」と「来店」の2つのコンバージョンです。どちらも実際の店舗のデータを紐づけて、コンバージョンとして計測します。
「店舗での販売」と「来店」は、Google アカウントにログインしている顧客が広告をクリックし来店・購入をした際に、アプリなどのポイントサービスの顧客情報と Google アカウントデータを紐づけることで、コンバージョンと判断します。Google マップの来店データやアンケートデータもコンバージョン判断に使用されます。
「店舗の販売」と「来店」コンバージョンを使用するには、アカウントの利用条件があります。
オフラインで多くの店舗内取引がある小売店やレストランである
引用元:店舗販売の測定について(小売店とレストラン向け)|Google 広告ヘルプ
現在、来店レポートを取得しており、過去90日間の来店数が約30万回に達している
関連するプライバシー基準を満たす、十分なアンケート データがある
利用条件を満たしていれば、コンバージョンとして「店舗での販売」が自動生成されます。全国展開しているチェーン店であれば利用要件を満たすことは容易ですが、個人店舗ではほぼ不可能です。その場合は「ローカルアクションのコンバージョン」が最適化に使用されます。
利用条件を満たしておらず「店舗の販売」と「来店」のコンバージョンを満たせない場合は、ローカルアクションのコンバージョンを使用します。
これは、Google のサービス上の来店に近い動きを自動的にコンバージョンとして定義するものです。ローカルアクションのコンバージョンには以下の6つがあります。
コンバージョン | 説明 |
---|---|
電話ボタンをクリック | Google の位置情報に基づく広告やサービスに表示される「電話」ボタンのクリック |
ローカルアクション経路 | Google の位置情報に基づく広告やサービスに表示される「経路」ボタンのクリック |
ローカルアクション ウェブサイトの訪問 | Google の位置情報に基づく広告やサービスに表示されるウェブサイトのリンクのクリック |
ローカルアクション その他のエンゲージメント | Google の位置情報に基づく広告やサービスで記録されたユーザー行動(現在地の共有や保存など)のクリック |
ローカルアクション注文 | Google の位置情報に基づく広告やサービスに表示される「注文」のクリック |
ローカルアクション メニューの表示 | Google の位置情報に基づく広告やサービスに表示されるメニューリンクのクリック |
ローカルアクションのコンバージョンは「店舗での販売」と「来店」のコンバージョンと比べると、来店・購入した可能性は低いです。あくまで最適化のための参考値として扱う方がいいでしょう。
ローカルキャンペーンは入札戦略「P-MAX」のみで配信可能です。P-MAX は入札・ターゲティング・配信先をキャンペーンの目標に合わせて自動設定してくれるキャンペーンです。
成果が最大化されるよう Google で自動的に調整されますが、複数ある配信面のどこに、どれくらい配信されたか確認できないので注意が必要です。詳細は以下のブログを確認してください。
ローカルキャンペーンと似たものに「ローカル検索広告」があります。ローカル検索広告は、ローカルキャンペーンのようにキャンペーン単位で設定されるものではなく、検索広告の住所アセットを設定すると配信されます。
ローカル検索広告を設定すると、Google マップに広告を配信できるようになります。ただし、ローカルキャンペーンのように YouTube やディスプレイ面には配信されません。
ここからは実際にローカルキャンペーンを設定する方法を説明します。検索広告やディスプレイ広告とほぼ同じ手順での入稿なので、特別難しい設定はありません。Google ビジネスプロフィールの設定をしていない場合は事前に準備しておきましょう。Google ビジネスプロフィールの設定は「Google ビジネス プロフィール – Google にビジネスを掲載」からできます。
まず、ビジネス名やビジネスカテゴリ、拠点(国名)、連絡先、住所などを入力する「ビジネス登録」をします。
次に「オーナー確認」を電話やハガキなどでおこない、最後に「ビジネスの詳細の登録」をして完了です。ビジネスの詳細の登録では、ビジネス登録で入力した情報に加え、営業時間などのより細かい情報も入力します。実際の画面のキャプチャや詳細な登録方法は以下にまとめているので、参考にしてください。
ベテランが解説!広告運用者でも知っておきたいGoogleビジネスプロフィール(Googleマイビジネス)の基本と広告での3つの活用術
Google ビジネスプロフィール(Google マイビジネス)とは、Google の検索結果に出てくる店舗や会社などの施設情報を無料で管理できるサービスです。Google 検索や Google マップの検索結果でのアピールや、レビュー(クチコミ)へ返信、「インサイト」からユーザー情報を分析できる点などのメリットがあるGoogle ビジネスプロフィールは、実店舗をもつ事業者にとって是非とも利用したいサービスです。
Google 広告の管理画面からキャンペーンを作成します。キャンペーン画面から「+」を選択し「新しいキャンペーンを作成」に進みます。
キャンペーンの目的を「来店数と店舗売上の向上」に設定すると、キャンペーンタイプが「P-MAX」に自動で設定されます。
キャンペーンタイプの下に使用できるコンバージョン目標が表示されるので確認しましょう。キャンペーンフィードでは、連携されているビジネスプロフィールマネージャーのアカウントが確認できます。
ビジネスプロフィールで設定している店舗が複数ある場合、広告を配信する地域を選択できます。ここまで設定したら「続行」を選択し、任意のキャンペーン名を追加します。
次に単価設定をおこないます。「重視している要素」では「コンバージョン」と「コンバージョン値」を設定できます。店舗の販売コンバージョンを設定できる場合はコンバージョン値を設定し、必要であれば目標コンバージョン単価を設定しましょう。設定できない場合は「コンバージョン」にするといいでしょう。
次にキャンペーン設定をします。言語の指定や「自動的に作成されたアセット」を使用するかどうかの選択は、ここでおこないます。
「自動的に作成されたアセット」とは、ランディングページや広告を使用して、広告見出しなどが自動生成される機能です。動的検索広告のようなものと考えてもらえば分かりやすいかと思います。
ランディングページのコンテンツや見出しと、アップロードしたアセットを組み合わせる「テキストアセット」と、関連性が高い URL に遷移させる「最終ページ URL」の使用を選択できます。指定したアセットや URL 以外の広告表示をしたくない場合にはチェックを外しましょう。
最後に「その他の設定」で開始日と終了日、パラメータなど「キャンペーン URL のオプション」を設定します。内容に問題がなければ「次へ」で進みましょう。
次にアセットグループを設定します。アセットグループとは広告の画像や動画、見出しのセットのことです。
管理画面に合わせて最終ページ URL、画像(20枚まで)、ロゴ(5枚まで)、動画(5本まで)、広告見出し、長い見出し、説明文、会社名、行動を促すフレーズを入力します。
次に、P-MAX で設定を推奨されている「オーディエンスシグナル」を設定します。オーディエンスシグナルでユーザー属性や興味関心などのオーディエンスを設定すると、最適なオーディエンスにすばやくリーチでき、ターゲティング精度を向上させることができます。
最後に予算を設定し、「概要」の画面で内容に誤りがないか確認したら設定完了です。
配信前にキャンペーン内容を見直し、エリア設定などが正確かどうかを確認してから配信を始めましょう。
ローカル キャンペーンの設定や運用は特に難しい点はありませんが、注意点もあります。
ローカルキャンペーンを配信する際には地域設定を必ず確認しましょう。店舗ビジネスはユーザーが店舗に行ける距離、つまり商圏が決まっています。
地域設定を誤り、商圏外の地域を設定に含んでいると、見込み顧客ではないユーザーに広告が配信されてしまい、広告費が無駄になってしまいます。
例えば、東京都新宿区に店舗がある場合、大阪府に広告を配信しても来店の可能性は限りなく低いです。広告費を有効に活用するためにも、地域設定は必ず確認しましょう。
「店舗での販売」のコンバージョンを計測できている場合を除き、配信しているローカルキャンペーンが来店や売上に本当につながっているのかは分かりません。
参考値としてのコンバージョンは計測できますが、広告効果が来店に直接つながっているとは断言できません。
Web 上でコンバージョン計測できるメニューと異なり、広告配信の効果が見えにくいため、Web から離れた効果の確認が必要です。例えば店舗スタッフに来店者数の変化を確認したり、長い目で見て来店数が増えているかチェックするなど、店舗で直接計測できるデータを取得する必要があります。
ローカルキャンペーンは現在 P-MAX のみの配信なので、レポーティングや成果分析には注意が必要です。
P-MAX の特性上、広告の配信面ごとの調整や、成果の確認ができません。データが確認できず成果の分析が難しいため、上司やクライアントへのレポーティングや説明の際にはそうしたキャンペーンの性質を理解してもらう必要があります。また、成果が悪化した場合の手の打ち方が、ほかのメニューと比べると少ないことにも注意しましょう。
店舗ビジネスでの広告配信は成果の確認が難しいことが課題ですが、逆に言えば参入障壁が高く、成果が出る商材や地域であれば競合と差をつけることができます。注意点をよく理解したうえで配信を検討してみてはいかがでしょうか。
広告運用 コンサルタント
2020年1月に広告運用コンサルタントとして入社。新卒で入社した不動産会社向けシステム会社で、気づいたらマーケティング担当になっていて、サイト運営や広告運用などいろいろ携わった元”なんでも屋のぼっちマーケター” 広告運用以外だとGoogleAnalyticsとZapierが好き。鈴木愛理とハロプロに支えられ、毎日楽しく広告運用してます。
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