「2位じゃダメなんでしょうか?」
どうも、小島です。私は2008年からキーワードマーケティングに在籍し、以降10年以上広告運用に携わっています。弊社に勤めてちょうど1年ほど経ったころ、「2位じゃダメなんでしょうか?」発言が話題になりました。スーパーコンピューターの処理の速さを問う発言でしたが、今となっては懐かしさすら感じます。
運用型広告の世界でも、1位を強く求められることがありました。それが2019年に Google と Yahoo! の管理画面から消えたリスティング広告の「平均掲載順位」です。
当時を振り返ると、「平均掲載順位を隠して広告主を不安にさせ、入札価格をつり上げるのが目的だ」と、憤る方もいた記憶があります。これまで参考にしていた機能が停止され、クリック単価が一時的に高騰したキーワードもありましたが、特に大きな問題には発展せず落ち着きを取り戻しました。それは以下のような3つの要因があったためだと考えます。
この記事では、掲載順位が決まる仕組みや、平均掲載順位に代わって出来た指標「インプレッションシェア」について、さらには広告運用者と掲載順位のこれからの向き合い方を解説します。
掲載順位とは、検索結果に表示された広告の順位を表します。基本的には、掲載順位が高いほどクリック率が高く、流入が多く生まれるものとされています。
2014年の Search Engine Watch のデータでは、掲載順位が1位でクリック率が12.2%、2位になると一気に減って1.5%となっています。以降は順位の下降と比例して、クリック率が下がっていることがわかります。
上記のようにリスティング広告の成果に大きく影響の与える掲載順位は、各広告ごとにおこなわるオークションの結果によって決まります。
基本的にオークションは、広告ランクが基準となります。公式ヘルプページによると、広告ランクを決める要素は以下の6つです。
広告主のみで、6つの要素をコントロールすることは難しく、市場の状況やユーザーの行動、検索環境なども影響します。そのため、広告主はもちろん、媒体側も掲載順位を正確に操ることは不可能に近いです。
過去にあった平均掲載順位とは、読んで字の如く、広告が掲載されたときの順位(掲載順位)の平均値です。
管理画面で広告の表示1回ごとの掲載順位を確認できませんでした。管理画面上で1日を最小単位とする期間で、掲載の合計数や掲載順位の平均値は確認することはできました。しかし、冒頭で説明したとおり、平均掲載順位は、Google と Yahoo! で2019年に廃止されました。
参考:平均掲載順位が廃止されます|Google 広告ヘルプ
参考:【スポンサードサーチ】 パフォーマンスデータ一部指標提供終了のお知らせ|Yahoo!広告
「平均掲載順位」の代わりに、より正確に広告が表示された場所を把握できる「インプレッションシェア」が登場しました。
インプレッションシェアとは、実際に広告が表示された回数を、表示可能だった回数(推定値)で割ったものです。広告が表示可能だった回数は、ターゲット設定や広告の承認状況、品質などをもとに推定値が割り出されます。
インプレッション シェア(IS)は、広告が表示可能だった合計回数のうち、広告が実際に表示された回数が占める割合です。広告が表示可能だった回数は、ターゲット設定、承認状況、品質など、多くの要因を考慮して見積もられます。
引用元:インプレッション シェアについて | Google 広告ヘルプ
「1位表示をどれだけ獲得できたか」を示す指標として、インプレッションシェアの中でも「検索広告のページ最上部インプレッションシェア」を見ると、一応わかる仕組みになっています。
検索広告のページ最上部インプレッションシェアは、検索結果ページのオーガニック検索よりも上に表示される広告のうち、1番上に表示された広告の割合を示すものです。
ページ最上部インプレッションの割合は、オーガニック検索結果ページの上部で最初に表示された広告のインプレッションの割合です。
引用元:「検索結果ページの上部インプレッション」と「最上部インプレッション」指標 | Google 広告ヘルプ
平均掲載順位は、検索結果の上部に広告が出ていないときに、下部で一番上の広告に出ていると、掲載順位1位としてカウントされました。そのため検索ユーザーの目には触れていない広告でも1位として計測され、平均掲載順位の計算に含まれてしまいます。そのため正確さには欠けるものでした。
しかし、新たにできた「インプレッションシェア」や「ページ最上部インプレッションシェア」は、「広告が表示された場所を把握できる」という点で平均掲載順位より優れていました。その結果、「平均掲載順位」は廃止されました。
インプレッションシェアでリスティング広告の掲載結果がより正確に把握できるようになり、「たとえ1位でも最終的な成果に繋がらないキーワードが多くある」ことが明らかになっていきます。
また、平均掲載順位を最重要視する広告主や広告運用者もいましたが、インプレッションシェアの登場によって認識が徐々に変わっていきました。
平均掲載順位が廃止されたものの、運用担当者の間で話題にならないのは「自動入札」が広告運用担当者の常識となってきたことも大きいでしょう。
自動入札は、検索ユーザーに応じて最適な広告を出し分けます。そのため広告運用者が調整して、無理やり掲載順位を上げてコンバージョン獲得を狙うより成果の良いケースも十分にあります。
もちろん、検索結果の最上位に広告が表示されるとコンバージョンしやすいのは、現在でも変わりありません。しかし、掲載順位だけを追う広告運用は本来の目的を見失ってしまいます。広告運用の最重要使命の1つは、「コンバージョン数を最大化させる」ことなのです。
ここで、広告運用に関わる人に「掲載順位1位が本当に正しいのか?」と問いと思います。
例えば、とある広告で全ての検索結果に対し、コンバージョン率5%で最上部1位表示を無理やりキープしたとします。しかし、これではコンバージョン率の最大値とは言い切れないですよね。
検索行動は、検索されるキーワードが全く同じでも、検索している側の検索意図によって、違った内容の検索結果が求められます。
検索行動の大半を占める「インフォメーショナルクエリ」は、検索したキーワード(以下、検索語句)に関する情報を求めることが多いです。
例えば、広告代理店が広告を出稿するとします。「インターネット広告 種類」という検索語句は、単に「インターネット広告にはどんな種類があるのかな?」という問いの説明を求めているだけの場合がほとんどで、広告代理店の売上に直接繋がることは稀です。
一方で、検索行動全体に対する割合は少ないですが、検索語句の分類の中でも、調べる前から検索ユーザーの行動が明確に決まっている「トランザクショナルクエリ」は売上に繋がりやすいです。
広告代理店の例だと、「インターネット広告 代行 都内」などがトランザクショナルクエリにあたります。これは「都内のインターネット広告代理店に広告運用代行をお願いしたい」という検索ユーザーの思いが表れた検索だと考えられます。
つまり、コンバージョンに繋がりやすい(=直接売上に繋がりやすい)トランザクショナルクエリ中心に広告を掲載できれば、コンバージョン率は「最上部1位表示キープ」よりも良くなります。
ご存じの通り、コンバージョン率は、コンバージョン数 ÷ クリック数で求められます。コンバージョンに繋がらない検索語句を排除しクリック数を抑えることで、計算式の分母を減らし、コンバージョン率を高くできます。
掲載順位で1位を取ることにこだわらず、「コンバージョンに繋がるか」を考えなければいけないのです。
インプレッションシェアの説明の時に、実際に広告が表示された回数を、表示可能だった回数(推定値)で割ったものと記載しました。これはヘルプでも記載のある通り、「実際にその検索語句が検索された回数」ではありません。
つまり、もし「検索広告のページ最上部インプレッション シェア」が100%でも、必ず1位ではないのです。何らかの理由でほとんど広告表示されていない可能性もあるかもしれません。インプレッションシェアを見て「最上位を死守しろ」という指示は意味がないのです。
ただ、ここまで読んでいただければ分かるように、掲載順位に関係なく効率良くコンバージョンを築くことはできます。リスティング広告を含めた運用型広告の目標は、効率的に反響を得ることにあります。
掲載順位やインプレッション シェアはあくまで指標の1つであり、上位表示や広告が絶えず表示される状態を維持することが運用の目標ではありません。「広告が◯位に表示された!」と一喜一憂せずに、しっかりと効果的な広告運用を目指していきたいですね。
ここからはベテランの回顧録として、なぜ平均掲載順位が最重要だったのかを振り返っていければと思います。
なぜ「平均掲載順位」が運用上重要だったかというと、一般的に掲載順位が高いほどコンバージョン率が高いとされているからです。しかし、記事内でも説明したように「コンバージョンの最大化」が目的のため、「本当の目的を達成できているか」を基準とした判断が正となってきました。
過去に検証した結果、確かに掲載順位1位が最もコンバージョン率は高そうでした。複数のアカウント、複数のキーワードで、管理画面のルール(※)を用いて、掲載順位をコントロールし、掲載順位とコンバージョン率の関係を日別にデータを取り、散布図を作成したので、その広告では間違いないと思います。
いわゆる「ビックキーワード」ほど順位とコンバージョン率の相関係数も高く、また掲載順位とコンバージョン率の回帰直線の傾きの絶対値も大きいです。複合キーワードやキーワードがニッチになるほど、回帰直線の傾きの絶対値は小さくなる傾向がありました。
※ ルール(Yahoo! の場合は、自動運用ルール)とは、決められた条件で、自動的に入札価格を高くしたり低くしたりなどをするツールを指します。
以下のキャプチャは Google のもので、赤い感嘆符がついているものは既に廃止された「平均掲載順位」を条件に使ったルールで、現在は無効になっています。
また、検索行動が今ほど一般的ではなかった時期には、検索している方も慣れておらず、「1番上に表示されているからここが良いのだろう」と考える方が多かった印象があります。
テレビなどの他の媒体と比較してインターネット広告市場は小さかったため、売上規模を維持・拡大するには「取れるコンバージョンを取り尽くす」ことが主要命題でした。
「とにかく1位を死守して!」という、いわゆる「コンクエスト戦術(1位死守戦術)」といわれる方法がよく取られていてなおかつ合理性もありました。
「1位を取っていればとりあえず大丈夫だ!」という指示を運用担当者に出すのもシンプルで、運用担当者も1位が取れていれば免責になるという単純な状況でした。
しかし、2008年にリーマンショックが発生して以降、リスティング広告の状況にも変化が始まります。
今までテレビなどのメディアに大きな宣伝広告費を使っていた一部上場企業が、マスメディアへの広告投資を減らす一方で、こぞってリスティング広告に雪崩れ込んできたのです。
単純に競合が増えたため、コンバージョン率は低下します。さらに誰しもが知っている企業名は安心感からか、コンバージョン率も圧倒的で、1位をキープしているからといってそのキーワードを制覇していると必ずしもいえない状況になっていきます。
さらに平均クリック単価も高騰し始めます。大企業は体力があるため大きな予算で入札できるためです。キーワードによっては、2倍、3倍と上昇するものもありました。平均クリック単価の上昇により、たとえコンバージョン率が下がっていなくても、CPA で考えた時に採算が合わなくなってきました。
そして、記事内で述べた以下の3つの要因から平均掲載順位が廃止されたのです。
ここまでの背景を頭の片隅に入れておくと、今後の広告運用でいきることもあるかもしれません。ご一読ありがとうございました。
広告運用 コンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業。2008年からキーワードマーケティングに在籍、 以降10年以上、広告運用に携わる。離脱率の低さに定評があり2008年から 運用を続けているクライアントも多い。趣味は音楽、楽器演奏。依頼を受けて プロのバックを務めることもある。愛知県犬山市出身。
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