新卒や業界未経験の中途社員は、広告運用はもちろんその先の「分析」も思うようにいかないことがあると思います。私も上司として教えることがありますが、どのように伝えたらわかりやすくなるか、悩むこともありました。
そこで今回の記事では、分析タスクの教育に悩む上司の方へ向けて、新人がつまずく4つのポイントと改善方法について紹介します。
新人に対して、分析でつまずくポイントを先に教えておくことで、最低水準をクリアした分析ができるようになり、フィードバックにかける時間や手間を減らすことができます。
また記事の最後には、CPA/コンバージョン数の悪化要因を突き止めるための細分化方法を表にしてまとめたので、教育の際にお役立てください。
分析タスクを新人にお願いする場合、こんな経験はありませんか。
意外なように思えますが、配属後にいきなり分析のタスクを振るというのはよく耳にします。なぜなら任せられるタスクが多くないためです。
配属されたばかりの新入社員ができることは少なく、上司も自分の仕事があるのでつきっきりで教えられるわけでもありません。
かと言って新入社員が何もしていない時間を作ってしまうのはよくないので、上司は常に新入社員に任せられるタスク、つまり緊急性が高くなく、ある程度一人で進められて、新入社員の教育になるタスクを依頼することになります。
分析は上記の条件を満たすタスクの1つなので、新入社員にいきなり分析をさせるケースは珍しくありません。
新入社員にいきなり分析のタスクを任せても完璧に仕上げることはできないですし、それに対して上司がフィードバックをするのも難しいと思います。というのも、分析方法の研修や教育フローが確立されていない場合が多いからだと思います。
リスティング広告を扱う広告代理店であれば、リスティング広告の仕組みや管理画面の使い方などは、研修内容に含まれていますよね。
一方で、分析方法の教育は体系化が難しいため、研修ではなく OJT で上司から教わる形をとっている会社がほとんどだと思います。
ですが、すべての上司が分析についてうまく言語化して説明したり、体系的に教えられたりするわけではありません。
この記事を読んでいる方の中には、新入社員から未熟な分析結果があがってきたときに、何から教えればいいのかわからず途方に暮れたことがある方もいるのではないでしょうか。
弊社が新入社員の教育をしてきた経験から見えてきた、新人が分析タスクでつまずくポイントは以下の4つです。
この4つについての解説とそれに対する解決策を紹介していきます。
例えば CPA が高いキャンペーンの分析を行うとき、「何と比べて高いのか」が不明確なまま分析に入ってしまうことがよくあります。
キャンペーン A の CPA は前月比では低いけど昨対比では高いかもしれないし、ほかキャンペーンよりは高いけど目標 CPA よりは低いかもしれません。
何を「良い」とするのかという基準点が不明確だと、何が「悪い」のか、どこを改善すればいいのかが的外れになってしまいます。また、比較対象の条件がそろっていないというのも、新人が失敗しやすい点です。
何を「良い」とするのかという基準点を定めることで、初めて何が「悪い」のか、どこを改善すればいいのかを判断できるようになります。
なので、最初に基準点や比較対象を明確に定めましょう(例:目標 CPA に対して〇%高い、昨対比で〇%高い)。また、正しい比較をするためには条件をそろえることが必要になります。
日数・キーワード・ターゲティング・ユーザー属性など、なるべく条件が同じになるように分析作業に入る前に確認しましょう。
どのキャンペーンやどのキーワードを分析するか決めるとき、CPA が一番高いものなど、目に付いたところを分析したくなりますが、これもよくあるつまずくポイントの1つです。
たとえば、キャンペーン A の CPA 悪化要因を分析するとき、そのキャンペーン内でキーワード a の CPA が一番高いとしても、キーワード a で使用している広告費がそのキャンペーン内で1割程度であれば、キャンペーン全体の CPA には大きく影響していないと考えられます。
キーワード a も悪化要因の1つではありますが、キーワード a を改善してもキャンペーン A の CPA はほとんど変わらないので、要因分析として十分だとは言えません。
CPA の話に限らず、影響が大きそうなところから分析することが必要になります。そのためには、まずは全体像を把握することが重要です。
キャンペーン A の CPA 悪化要因を分析するなら、キャンペーン内のキーワードを全体的に見て、影響が大きそう(=費用を多く使っている、CV を多く獲得している)なキーワードを把握します。そのうえで検索語句を見る、デバイス分割する、期間で分けるなどの細分化を行い、悪化要因を突き止めていきます。
事実とは、データや実際に起こっていることを指します。一方で、仮説は個人の憶測です。
たとえば「ほとんどの日本人がスマホを持っている」というのは、確からしいですが、まだ仮説の段階です。これをデータをもとにして事実に落とし込むと「日本人の77%がスマホを持っている」となります。
先ほどの仮説を述べた人、あるいはそれを聞いた人は、「ほとんど」をどれくらいだと想定していたでしょうか?70%くらいと思った人もいれば、90%くらいと考えた人もいると思います。
このように、仮説はその精度が人や経験によって変わりますし、場合によっては事実と大きく違っているかもしれません。
仮説を分析の判断材料にしてしまうとその分析も精度が下がったり、間違ったりしてしまう恐れがあります。特に新人がいきなり精度の高い仮説を出すのは難しいので、注意が必要です。
正確な分析をするためには、分析の判断材料は仮説ではなく事実にするべきです。仮説を持つのが悪いということではありません。
まず自分が持っている情報が仮説か事実かを判断し、仮説ならそれを仮説にしたまま分析に入らず、事実を確認する癖をつけましょう。
「自分がこうだったからこうだと思う」「自分の周りの人がこう言っていた」など、自分の一次情報だけでは論理的根拠とは言えません。要因を結論付けるときは、誰もが納得できる事実や客観的根拠が必要になります。
たとえば、シートマスクを販売しているアカウントの 広告費が増え、CPA が高騰している要因を「コロナの影響でマスクを探している人が流入してしまっているからではないか」と考えたとします。
「自分もマスクを探していた時に間違ってシートマスクの広告をクリックしてしまった」などの自分の一次情報を根拠にしても、それは大勢いるユーザーのうちのたった一人の意見なので、聞き手は他のユーザーも同様なのか判断できません。
シートマスクの例であれば、広告管理画面の検索語句タブで、「マスク 不織布」などシートマスクではないマスクを探している検索語句からの流入が増えているか確認します。
パフォーマンスに影響を与えるほど流入が増え、広告費を使ってしまっているのなら論理的根拠になりえます。
「パフォーマンスに影響を与えている」ということも、数値で論理的に示す必要があります。リスティング広告は様々な情報が数値で確認できることがマス広告と違った強みの1つなので、それを最大限活かして分析しましょう。
ここからは、よく分析対象になる CPA とコンバージョン数の細分化手順をご紹介します。この表を把握してもらえれば、分析の手順を可視化でき、次に必要なアクションを理解しやすくなります。
まず、CPA の代表的な細分化方法は以下の通りです。自社でコントロールができることと、コントロールが難しいが調整可能なこと、自社ではコントロールが難しいことの3つに色分けてしてまとめました。まずは、自社でコントロールできる赤枠から着手しましょう。
CPA を数式で表すと CPA = クリック単価 ÷ コンバージョン率 となりますので、CPA が悪化するのは以下のパターンと考えられます。
1なら CPA 悪化の要因はクリック単価ですので、クリック単価にかかわる部分をさらに細分化していくことで要因を特定できます。
2ならコンバージョン率が要因ですので、コンバージョン率にかかわる部分をさらに細分化していくことで要因を特定できます。
3の場合は、クリック単価とコンバージョン率の両方を細分化する必要があります。
このように、順を追って細分化と要因の特定を行っていくことで、論理的に要因を突き止めることができます。
次は、コンバージョン数の代表的な細分化方法です。コンバージョン数も自社でコントロールできることと、コントロールは難しいが調整可能なこと、自社のみではコントロールが難しいことに分けました。
コンバージョン数を数式で表すと コンバージョン数 = クリック数 × コンバージョン率 となりますので、コンバージョン数が減少するのは以下のパターンと考えられます。
CPA の分析と同じように、細分化と要因の特定を行っていくことで、論理的に要因を突き止めることができます。
新人の最初の2年間は、スキルを身につけるのにとても重要な期間です。
分析タスクに限らず、この2年間で身につけたスキルや習慣、考え方がその後の仕事の土台になります。
上司の方はその重要な期間を任されているということなので、「この新人の今後を左右する」という気持ちで仕事を教えてあげてほしいと思います。
広告事業部 マネージャー
2015年4月に新卒として入社。2019年にマネージャーに昇格。広告運用の仕事をメインに、現在はサイト改善提案やブログ執筆にも力を入れている。数値をもとにしたサイト改善提案が得意。趣味は動画を見ること、ゲームをすること。
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