キーワードマーケティング代表の滝井です。この記事は、アドビ様の企画「みんなの資料作成」に参加させていただき、執筆しています。
2017年当時、弊社では非常に深刻な企業課題を抱えていました。それは、離職率です。当時の離職率は35%と高く、新卒社員を採用しても育成できずに次々と離職していく状況でした。
しかし、会社のルールやガイドラインの明文化や制度の見直し、管理部や広告運用事業部をまたいだ連携、マネジメントメンバーの協力などもあり、翌年から離職率は徐々に減少していきました。そして結果的に2020年には8%まで改善、現在でも10%前後で全国平均以下の水準を維持することができています。
西暦 | キーワードマーケティング(%) | 日本全国平均(%) |
---|---|---|
2017年 | 35.0 | 14.9 |
2018年 | 31.0 | 14.6 |
2019年 | 20.0 | 15.6 |
2020年 | 8.0 | 14.2 |
2021年 | 13.0 | 14.0 |
2022年 | 11.0 | 15.0 |
この記事では、当時弊社で起きていたことや、この課題に対しておこなったことを包み隠さずお伝えします。また、離職率を8%まで改善できた対策の一部である「社内 Wiki」について、作成のきっかけや作成と運用のポイント、おすすめのツールについて解説します。
当時弊社では、新人からの質問に「聞いたことがない」や「実は自分も知らない」と答える先輩社員が多く、コミュニケーションがうまくいっていない状況がありました。
そして、仕事をする上で生じるちょっとした疑問の解決策やルールが明文化されていないことで、不平等さを感じていた社員も多くいました。
結果として、当時のマネジメント層がほとんど辞めてしまい、組織崩壊に近い状況に陥りました。その原因となった退職した理由を紐解いてみると、弊社には大きく分けて3つの課題があることがわかりました。
当時は上司から部下に注意する基準が定められておらず、基本的な社会人としてのマナーを注意する上司もいれば、注意しない上司もいるなど、曖昧な状況でした。
例えば、5分遅刻した社員を叱る上司もいれば、叱らずに見逃す上司もいました。
現在は個人目標が定量で設定されていて、誰でも見られるようになっていますが、当時は上司と部下の間で目標を決めていたため、人によって目標が定量か定性なのかも違う状態でした。
その結果、同じ役職の A さんと B さんでも、片方は定性的な評価をされるが、片方は数値でしか判断されないため、混乱や誤解が生まれていました。
ルールがないことで責任の所在やタスク分担が曖昧となり、「誰かがやるだろう」とタスクが放置されてしまうこともありました。
例えば、以下のようなタスクは、責任の所在がわからずに放置されたり、平行線の話し合いが発生したりしていました。
崩壊状態の組織を立て直すために、ルールやガイドラインの整備をおこないました。その結果、社員同士の人間関係が改善し、離職率も徐々に下がり、2020年には8%まで低下しています。
ルールやガイドラインがある現在では、想像がつかないほど、当時は本当に壊滅的な状況でした。
そのため、マネジメント理論の「識学」を導入しました。識学(意識構造学)とは、1990年代後半に日本で研究が開始されたマネジメント理論で、経営者、マネージャー、部下を含むすべての社員が、無駄なストレスなく、自らの役割に集中できる組織を作り上げ、成果をあげる仕組みが体系化されています。
識学の導入段階でルールやガイドラインの整備と徹底を進め、目標を明確化し、それに沿った評価制度も作成しました。それらの決まった内容を「社内 Wiki」にすることで、いつでも、誰でも、どこでも見られるようにしました。
社内 Wiki とは、フリーの多言語インターネット百科事典である Wikipedia の社内版で、社内の情報やノウハウが集約されたものを指します。決められたルールを配布し、誰でも見られるという公平さを担保できるという利点が、社内 Wiki 導入の決め手になりました。
社内 Wiki を導入および運用していくためには、ツールの活用が欠かせません。ここからは、社内 Wiki を導入するためのツールの選定軸や、社内 Wiki を上手に運用し続けるポイントを紹介します。
社内 Wiki を導入するために、いくつかのツールを調べたときに分かった重要な選定軸を4つに絞って解説します。
1つ目の「インターフェースの見やすさ」は、ルールを整備して書き起こしても見やすくなければ使いにくく、社内に浸透しないため、必須の選定軸でした。また、編集しやすさも重要だと感じました。
2つ目は「名前の覚えやすさ」です。社内で使われるツールになるためにも、ツールの名称は覚えやすいものがよいと考えていました。
3つ目に「マークダウン記法に対応」していることです。マークダウン記法とは、ドキュメントの見出しや段落、テキストなどを簡単かつ自動的にデザインできる記法のことです。
マークダウン記法は、段落や見出しが揃うため統一感が出て、必要な項目をすぐ探すことができます。また、もし途中で他のツールへの乗り換えを検討する必要が出てきたときでも、端末やプラットフォーム、エディタを選ばず使えるため移行がしやすいというメリットもあります。
最後は「共有のしやすさ」です。チャットなどの非同期コミュニケーション下でも使えるように、URL で共有できるものを探しました。
弊社では上に挙げた4つの選定ポイントを満たしていた Kibela を導入しました。Kibela とは、株式会社ビットジャーニーが提供しているナレッジマネジメントツールで、誰でも使えるシンプルな操作性とインターフェースが強みです。
弊社がとくに便利だと感じた機能を以下に紹介します。
また、私自身も社内ルールの告知にはなくてはならないと感じるほど、 Kibela の便利さや重要性を痛感しています。さらには、ルールやガイドラインを Kibela でドキュメント化することを「Kibela 化しよう!」というほどまでになっています。
導入後は社内 Wiki が形骸化せずに運用が続くよう、以下のことを意識しました。
それぞれ、弊社の実際の事例を紹介しながら解説します。
例えば、広告運用をおこなっているクライアントから、広告の追加とキーワードの入札額の指示があったとしましょう。クライアントからの依頼で広告の追加や変更はおこなうことは、社内ルール上問題ありません。しかし同時に、「キーワードの入札額の変更は受けつけられない」という社内ルールも存在し、クライアントにも案内をしています。そのため、クライアントからの依頼で「広告の追加」は対応しましたが、「キーワードの入札額の変更」はしなくて良いという判断を下すことができました。
このように、社内 Wiki に細かいルールを記載しておくことで、社員がイレギュラーに対して迷わずに早く対処できるようになりました。また、ルールを定義付けすることで、何をルールとして社内 Wiki にすべきか明確になりました。以下は、記述ルールの一部です。
そして、ルールを整理するだけでなく、「社内 Wiki への記述もルール化」しました。どのように記述するかを決めておくことで、誰でも作成と編集ができ、社内 Wiki に統一感が出て常に見やすい状態となりました。
次に「社内 Wiki の管理者」を決めました。管理者を決めておかないと、作ったルールが勝手に編集されてしまったり、判断に困ることがあるにもかかわらず、誰もルールを作成しなかったりします。先に管理者を決めておくことで、編集権限が誰にあるかわからず相談に時間がかかるといったことや、ルールが存在しないといった事態を未然に防いでいます。
最後に、「社内 Wiki を見ながらコミュニケーションする」ことの重要性について解説します。社内 Wiki 化されたルールを見ながらコミュニケーションを取ると、解釈に差が出ずにやりとりできるようになります。結果として、上司も部下も関係なく社内全体で共通認識を持ちながら仕事ができるようになったことで、不要なコミュニケーションが生まれなくなり、仕事の効率化につながりました。
さらに、社内 Wiki を見せながらコミュニケーションを継続的におこなうことで、誰もが活用できるようになり、社内 Wiki の重要性が増しました。
社内 Wiki を作成するためのポイントがわかったところで、実際に活用するときに使ってもらいたいツールを紹介します。弊社では社内 Wiki を Kibela で管理していますが、社内 Wiki の作成や更新の際に、PDF を画像に変換したり、PDF の編集、圧縮や回転、ページの削除などが必要な場面があります。そんなときに便利なのが、オンライン上で利用できる Adobe Acrobat オンラインツールです。
ツールを立ち上げる必要もなくブラウザ上で簡単に素早く作業できる点がメリットです。
例えば、社内 Wiki に PDF の一部を載せたい場合は、PDF のページ削除が使えますし、PDF のサイズが大きくてアップロードできない場合には、PDF の圧縮ができます。
Adobe Acrobat オンラインツールを使うことで作業時間の短縮につながり、誰でも社内 Wiki を更新しやすくなりました。このようにツールを駆使して、更新の手間をできるだけ省くことも、社内 Wiki 運用を続けていくための重要なポイントです。
今回の弊社の経験からも社内 Wiki の作成にはツールが欠かせないと言えるでしょう。自社に合ったツールを見つけ、ツールで解決できる部分は存分に活用していくことが重要と考えます。この記事が、離職率の改善や組織の課題解決の一助になれば幸いです。
代表取締役会長
2003年、Googleアドワーズが日本でサービスを開始した直後より、検索キーワード広告とランディングページの実践・研究を行い、その成功理論を書籍『1億稼ぐ検索キーワードの見つけ方』で発表、5万部以上のベストセラーとなる。 キーワードマーケティングでは、設立時から延べ千社以上のアカウントを診断およびコンサルティングしており、現在は上場会社や成長率の高いベンチャー企業に対する広告運用代理事業を拡大している。
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