運用型広告を始めて最初に配信を検討するのは、購買意欲が明確なユーザーにアプローチできて少額の予算で始められる検索広告やリマーケティング広告が多いと思います。
しかし、検索広告やリマーケティング広告は配信できるユーザー数に限度があり、配信を続けていると新規ユーザーへの配信数が減り、コンバージョンが獲得できなくなっていきます。
弊社が毎月おこなっている無料の Web 広告相談クリニックでも、検索広告やリマーケティング広告でのコンバージョン数が以前より減ったという相談を多く受けます。
今回は、検索広告やリマーケティング広告を配信していく中で、コンバージョン数の減少に悩んでいる方の次の一手となる 顧客獲得単価(CPA)を重視しながら新規ユーザーの獲得が狙える「ハイブリッド広告」の配信メニューの特徴やその設定方法を解説します。
ハイブリッド広告は、機械学習を活用し、認知と獲得の両面で効果のある広告施策です。「ハイブリッド広告」という広告媒体の配信メニューがあるわけではなく、認知と獲得を可能にする配信メニューの総称として弊社で名付けています。
弊社では、顧客獲得単価の高い順に広告施策を「認知」から、すぐに商品サービスを求めてる「今すぐ獲得」の5段階にわけて考えます。なぜなら、Web 広告は、顧客獲得単価(CPA)と市場規模(広告を出せる量)とのバランスを常に考える必要があるためです。
5段階の広告施策の中でもハイブリッド広告は、コンバージョン数か顧客獲得単価(CPA)を重視するかで2種類にわかれます。
まずは5種類の広告施策をそれぞれ説明します。代表的な広告媒体や配信メニュー、配信時の数値をもとにしたクリック単価の目安を紹介するので、広告施策でお悩みの際はぜひ参考にしてください。
ファネル図の一番上の「認知」を目的とした広告メニューは、動画視聴やバナー広告の視認によって認知向上を目指すものです。
多くの人に広告を見てもらい、企業名や商品・サービスを認知してもらうことができるため、企業名や商品・サービス名でキーワード登録する指名検索にもプラスの影響がある傾向です。
しかし、クリックが発生しにくいため、直接のコンバージョンは少なく、記憶に残るクリエイティブの作成が効果を大きく左右します。また、計測と評価が難しく、統計的に有意なデータを取得するには膨大な広告費用が必要になります。
代表的な広告媒体 | 代表的な配信メニュー | クリック単価の目安 |
---|---|---|
・Google ・Yahoo!など | ・YouTube (認知向けフォーマット) ・ディスプレイ広告 (予約型) | 3円以下/1視聴 (ターゲティングやクリエイティブによる) |
「クリック認知」は、低いクリック単価でサイト訪問をしてもらいつつ、潜在顧客との新規接点をつくり、中・長期で売上増加を狙います。
直接的なコンバージョンはほとんど発生しませんが、クリック数の閾値を超えるとさまざまな間接効果が期待できる配信メニューです。広告運用における閾値とは、「1つのコンバージョン」を獲得するために必要なある一定の配信量を指します。
クリック認知の広告施策をおこなうと、指名検索量の相対的な増加や、広告をクリックしたユーザーのリマーケティングリストの作成が可能です。その結果、指名検索からのコンバージョンやリマーケティングリストをもとに潜在的なニーズのあるユーザーへの広告配信量が増やせます。
代表的な広告媒体 | 代表的な配信メニュー | クリック単価の目安 |
---|---|---|
・Google ・Yahoo! ・Facebook 広告など | ・オーディエンスカテゴリ (アフィニティセグメント) ・ブロード (デモグラフィックのみ)など | 10円~30円 |
ファネル図の真ん中にあるハイブリッド広告が、コンバージョン数重視の配信メニューです。ターゲット設定をしつつ、機械学習を用いて狭めすぎずに認知と獲得両方に効果のある層への配信をします。
広告媒体のターゲティング精度が上がっていることから、ターゲットを比較的広く設定する Google 広告のオーディエンスカテゴリやプレースメントターゲティングなどでもコンバージョンが獲得できます。
代表的な広告媒体 | 代表的な配信メニュー | クリック単価の目安 |
---|---|---|
・Google ・Yahoo! ・Facebook 広告など | ・オーディエンスカテゴリ (ユーザーの属性、ライフイベント) ・スマートディスプレイ ・プレースメントなど | ・toB(SaaS):20円~30円 ・toC(EC):15円~20円 |
顧客獲得単価(CPA)を重視するハイブリッド広告のメニューもあります。先に紹介したコンバージョン数重視の配信メニューよりも高いコンバージョン率が期待できます。特に、資料ダウンロードや無料のセミナー参加などコンバージョンハードルが低いアクションと相性が良いのが特徴です。
しかし、 目標の顧客獲得単価(CPA)を達成には機械学習の期間が必要で、中長期的な戦略を立てて実施することが重要です。
代表的な広告媒体 | 代表的な配信メニュー | クリック単価の目安 |
---|---|---|
・Google ・Yahoo! ・Facebook 広告など | ・検索広告 (コンバージョン率が低い一般名詞) ・コンテンツターゲット ・カスタムセグメント ・サーチターゲティング ・コンテンツキーワードターゲティング ・類似ターゲティング ・興味、関心 ・ブロード | ・toB(SaaS):100円~800円 ・toC(EC):20円~500円 |
「今すぐ獲得」は、課題や欲求がすでに顕在化して検索をしているユーザーや、サイト訪問歴があり確度が高いユーザーに広告を配信するメニューです。具体的には、ブランドキーワード(商品・サービス名、会社名など)への検索広告や、自社サイトや商品ページを訪れたことのあるユーザーへのリマーケティングなどがあります。
コンバージョン率が高い傾向にある一方、競合他社も多く配信するためクリック単価が高い傾向にあります。また、検索広告やリマーケティング広告は広告配信できるユーザー数に限りがあるため、長期的に見ると新規ユーザーへの配信が次第に減っていきます。
代表的な広告媒体 | 代表的な配信メニュー | クリック単価の目安 |
---|---|---|
・Google ・Yahoo! ・Facebook 広告など | ・検索広告 (ブランドキーワード、コンバージョン率高い一般名詞) ・リマーケティング、リターゲティング(動的含む) ・類似ターゲティング ・カスタムセグメント | ・toB(SaaS):200円~800円 ・toC(EC):50円~200円 |
ニーズが顕在化しているユーザーへの広告配信で順調にコンバージョンを獲得をしていても、母数に限界があるので、次第に数字が伸び悩む傾向があります。打開策として、新規ユーザー獲得を目的とした認知施策が思い浮かぶ方も多いかと思います。
YouTube 広告や Yahoo! の予約型広告が代表的な Web 広告の認知施策として挙げられます。これら広告は、今まで接触できなかったユーザーに企業名や商品・サービスを認知してもらえる魅力がありますが、予算も期間も掛かってしまうので、すぐに手を出すのは難しいメニューでもあります。
そこで、いきなり YouTube 広告や Yahoo! の予約型広告を始めるのではなく、顧客獲得単価を重視してコンバージョンを獲得しつつ、未来のお客さんを増やすための認知施策も含む「ハイブリッド広告」がおすすめです。
今すぐ獲得の広告メニューを配信し、行き詰まったときに「ハイブリッド広告(顧客獲得単価重視)」を導入するべき理由を2つ紹介します。
顧客獲得単価を重視したハイブリッド広告には、検索広告(コンバージョン率が低い一般名詞)やコンテンツターゲット、サーチターゲティングなどがあります。これらは指名検索やリマーケティング広告と違い、デバイスや Web サイトの数だけ広告枠が存在するためクリック単価が安い傾向にあります。
今すぐ獲得の広告メニュー(ブランドキーワードの指名検索やリマーケティングなど)は、コンバージョン確度が高いターゲットを絞って配信するため、広告主の数が多ければ多いほどクリック単価が高くなります。その分、競合次第でクリック単価がつり上がってしまうことがあるのが難点です。
顧客獲得単価を重視したハイブリッド広告の場合、クリック単価を抑えてもコンバージョンが全く取れないということはなく、一定数のコンバージョン獲得は期待でき、且つ将来コンバージョンに繋がるユーザーへの配信が可能です。
機械学習の精度の向上によりターゲティングの自動化が進み、細かなターゲット設定なしでも、広告の配信目的を「コンバージョン獲得(重視)」にすることで、コンバージョン見込みが高いユーザーに配信できます。その結果、ターゲットの精度もよく、多くのクリックを獲得できるのが特徴です。
膨大なユーザーから効率よくコンバージョン獲得の見込みが高いユーザーをターゲティングすることでクリック単価を安く配信が可能になることが顧客獲得単価重視のハイブリッド広告です。
ハイブリッド広告の導入メリットが分かったところで、ここからは、様々な広告媒体、配信メニューがあるハイブリッド広告の設定方法を紹介していきます。
最初に紹介するのが Google ディスプレイ広告のコンテンツターゲットです。コンテンツターゲットは、ディスプレイ広告のターゲティングの1種で、任意のキーワードやトピックに基づいて、広告配信する先の Web サイトやアプリ、Web ページを媒体が選定し、広告を配信する方法です。
自社の商品やサービスに興味や関心がありそうなユーザーに関連したトピックやカテゴリーのサイトに絞って配信できるので、コンバージョン確度が高い効率的な配信が可能です。
設定方法は、広告グループを選択し、「コンテンツ」の中の「ディスプレイ/動画のキーワード」から、ターゲティングする対象を設定します。プラスマーク、または「+キーワード」から入力可能です。
キーワードを入力、入力欄の下の「キーワードの設定」では「コンテンツ ターゲティングのみ: これらのキーワードに関連するウェブページ、アプリ、動画のみに広告を表示する」を選択します。
また、関連する Web サイトの URL や商材を入力すると、自動的にキーワードの候補が表示されるので、キーワード選定で迷ったら利用してみるのもいいでしょう。
キーワードを設定すると、「ディスプレイ/動画のキーワード」で設定したキーワードが確認できます。設定したキーワードで配信されたら、配信結果は「ディスプレイ/動画のキーワード」で確認できます。
キーワードで掲載面を絞るGoogle広告の「コンテンツターゲット」とは?設定方法とキーワード選定のコツを紹介
コンテンツターゲット(Google 広告)/コンテンツキーワードターゲティング(Yahoo!広告)は、任意のキーワードやトピックに基づいて、広告配信する先の Web サイトやアプリ、Web ページを媒体が選定し、広告が配信できるディスプレイ広告のターゲティング方法です。GoogleとYahoo!で異なるのは、「設定できるキーワード」と「キーワードのインプレッション数の表示有無」の2つです。
2つ目に紹介するのは、Yahoo!ディスプレイ広告のコンテンツキーワードターゲティングです。Google ディスプレイ広告のコンテンツターゲットと違い、管理画面のコンテンツキーワードリストからキーワードツールを作成する必要があります。作成したキーワードツールを、設定したい広告グループに紐付けることで広告が配信できます。
まずは、作成するリスト名と説明(任意)を設定します。続いてコンテンツキーワードの欄に設定したいキーワードを入力して、「候補を表示」をクリックします。下にコンテンツキーワード候補が表示されるので、設定したいコンテンツキーワードを選択します。選択したコンテンツキーワードは右側に表示されます。
コンテンツキーワードリストが作成できたらキャンペーン一覧の画面に戻り、コンテンツキーワードターゲティングを設定したい広告グループを選択して、左側にあるメニューから「コンテンツキーワード」を選択します。「編集」のボタンを押して、コンテンツキーワードリストを設定します。
設定対象を「コンテンツキーワードリストを指定して配信」を選んで、作成したコンテンツキーワードリストを選択して設定します。このとき「配信」と「除外」を選択します。「除外」を選べばそのコンテンツキーワードリストで指定したコンテンツには配信しなくなります。
3つ目に紹介する Yahoo! サーチキーワードターゲティングは、指定したキーワードを検索したユーザーに対して配信できるディスプレイ広告です。
コンテンツキーワードターゲティングと似ていますが、サーチターゲティングは、検索した回数やどれぐらい前に検索したかの期間で絞り込み、より確度の高いユーザーのみを対象とすることが可能な配信メニューです。
設定方法は、まず管理画面のサーチキーワードリストからキーワードの設定をしてから、配信する広告グループに紐付けて設定をします。
サーチキーワードもコンテンツキーワードリストの作成と同様で、まずはリスト名を追加します。こちらも説明は任意なので記載しなくても問題ありません。
次に「サーチキーワード候補を探す」から「キーワードから探す」を選択します。指定したいキーワードを検索欄に入れて「候補を表示」を押すとサーチキーワードの候補が出てきます。候補の中から追加したいキーワードにチェックを入れて作成を押すと完成です。
注意点としては、使用できるキーワードは、選択肢の中からしか選べない点です。実際に選択できるキーワードか忘れずに確認しましょう。
検索履歴から広告を配信する「サーチターゲティング」とは?仕組みや掲載先・成果が出る5つの守るべきこと
Yahoo!広告の中でも、指定したキーワードを検索した人をターゲティングして配信できるディスプレイ広告であるサーチターゲティングについて說明します。実際に配信した事例やメリット・デメリット、キャプチャを用いた配信設定まですべてをお届けします。
4つ目に紹介する Facebook 広告の類似ターゲティングは、既存のコンバージョンユーザーなどのカスタムオーディエンスを使用して、そのオーディエンス内のユーザーと利用者層や興味関心・行動が類似するユーザーに配信できるメニューです。
設定方法は、まず類似ユーザーのリストを作成する必要があるので、Facebook 広告のビジネスマネージャのオーディエンスを選択します。
次に、画面左上のオーディエンスを作成し、「類似オーディエンス」を選択します。右上に出ているアカウント名が今回作成したい広告アカウントになっているかも確認しましょう。該当のアカウントかどうか確認したら、類似オーディエンスに使うピクセルを選択します。
その次にターゲットの地域を選択してオーディエンスのサイズを設定すると完成です。オーディエンスサイズが広すぎるとコンバージョン率の悪化に繋がることがあるので、迷ったら1%~5%の間での設定がおすすめです。
オーディエンスの作成が完了したら、設定したい広告セットのオーディエンスに紐付ければ配信ができます。
5つ目に紹介するのは Facebook の興味・関心ターゲティングです。 Facebook や Instagram のユーザーの利用者データ、クリックした広告や「いいね!」した情報などを元に各ユーザーの興味・関心情報を元に配信できるターゲティング方法です。
興味・関心ターゲティングは、設定したいキャンペーンもしくは、広告セットの中にある「詳細ターゲット設定」で「興味・関心」カテゴリを選ぶと配信できます。広告セットがない場合は、左上の「+作成」から新規作成しましょう。既に広告セットがある場合は、中央の「編集」をクリックします。
「詳細ターゲット設定」の検索窓から想定される興味・関心を設定しましょう。
最後に紹介するのは Facebook ブロード配信です。類似ターゲティングや興味・関心ターゲティング設定をせず、性別・年齢・地域の3つだけを設定して配信する方法です。
機械学習を最大限使用した配信方法のため、メリットとデメリットを考えたうえでの設定がおすすめです。配信設定はとてもシンプルで、広告セットの「編集」からカスタムオーディエンスの欄(地域と年齢、性別)を設定するだけで完了です。
ブロード配信とは?リマケ・興味関心ターゲティングよりも成果がでた事例から7つのコツを紹介
ブロード配信とは、性別・年齢・地域の3つだけをターゲティングして広告配信する手法です。ブロード配信をおこなう際におすすめの媒体は、ターゲティング精度が高いFacebook広告です。この記事では実際に配信した事例をもとに成果を出すコツを紹介しています。
ブランドキーワードの指名検索やリマーケティング/リターゲティングでのコンバージョンに伸び悩んだら、顧客獲得単価を重視したハイブリッド広告を考えてみてもいいかもしれません。Google や Yahoo!、Facebook でさまざまな配信方法があるので、気になるものがあれば、今回の記事を参考にぜひお試しください。
広告運用 コンサルタント
大阪の広告代理店で1年ほど勤務し、2021年1月に広告事業部に中途入社。SNS広告の運用が好き。趣味は読書とアウトドア好きな友達に連れて行ってもらうキャンプ。
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