リスティング広告の運用代行で、自分が担当する案件をもった際に、以下のようなことで困ってしまった経験はありませんか。
自分なりに頑張っているものの、クライアントと噛み合ってないな・・・と不安になってしまうかもしれません。しかし何もしないままでは状況は変わりません。
おそらく、クライアントとうまく噛み合っていないと感じる原因は、提案している施策の重要性や意図が十分に伝わっていないことにあるでしょう。提案した施策の重要性や意図を分かりやすく伝えるためには話の道筋、つまりストーリーを意識することが重要です。
この記事では、施策提案を円滑に進めるテクニックとして、「ストーリーを意識した伝え方」と説得力が増す3つのポイントを紹介します。施策提案がなかなか通らないと思っている方の参考になれば嬉しいです。
論理的な根拠をもって継続的に施策を提案しているものの、提案が通らなかったり、もっと PDCA を回したいと言われるといった悩みは、私自身も後輩や部下からよく相談されます。提案自体はよいのに、なぜこのような悩みを抱えるにいたったかを深掘りしてみると、おそらく提案している施策の重要性や実施する意図が、相手に十分に伝わっていないからではないかと感じることが多くありました。
施策の重要性や意図が相手に伝わっていないと、施策の重要性や優先度が低いと思われてしまい、提案が通らなかったり、ほかの施策の話題に変わってしまったりします。
具体的な CPA 改善の施策を提案したとしても、重要性や意図が相手に伝わらないと、抽象的な要望(もっと PDCA を回してほしい/媒体を広げたほうがいいのではないかなど)があがってくることもあります。施策の重要性や意図が伝わらない理由は数多くありますが、よくある要因は以下の3つです。
これらを解決するテクニックの一つとして「ストーリーを意識した提案」を紹介します。「ストーリーを意識した提案」とは、施策の必要性やその理由を、理解しやすいように構造化して説明する方法です。
ストーリーとは「前提条件」から「現状把握」や「課題分析」、「施策提案」まで筋道を立てて話すことです。
まず「前提条件」や「現状把握」をし、次に「課題」となっている部分の認識をすり合わせます。課題解決に向けた「施策提案」をおこなうまでの一連の流れが明確になっていれば、施策の重要性や意図が伝わりやすくなります。
ストーリーを意識した提案には、以下の項目を必ず入れましょう。クライアントへの資料作りの際も、この順番で情報をまとめると分かりやすくなります。
一番最初の「前提条件」では、本題へ入る前に状況整理をします。市場や業界全体のトレンド、競合の状況、競合に対する自社のポジショニングなどをまとめ、全体像を明確にします。次の「現状分析」では、前提条件を加味して、施策を行う目的と目標、現在の達成率を共有します。
「課題分析」では、目標達成に対して何が課題なのかを明らかにし、一番最後の「施策提案」で課題を解決できる打ち手を記載します。すべてが連動して、提案までの説明ができるとクライアントも納得してくれます。
その他にも提案後には、施策をおこなう上での細かいタスクのスケジュールや業務連絡、免責事項なども資料の最後に記載して伝えると良いでしょう。
中でも、ストーリーを意識した資料作りで重要なのは「現状把握」と「課題分析」、「施策提案」の3つです。それぞれの項目で、どのような内容をまとめればいいかをここから詳しく解説します。
まず、前提条件として競合や自社の状況整理をしたうえで、現状把握をおこないます。今回の提案施策で達成するべき目的(最終的に成し遂げたい事柄)と目標(目的を達成するための指標)を確認し、現在の達成率を明確にしましょう。
資料作成をするときには、特に目的や目標、現在の達成率についてクライアントとの間でギャップが生じないよう、認識をすり合わせることが重要です。
目的や目標に認識ずれがあると適切な提案ができないので、提案資料を作る前に必ず認識のすり合わせはしておくべきです。そのうえで、資料作成後も目的や目標を相手と都度確認し、共通のゴールに向かって話し合い(提案)を進めます。
また現在の達成率を記載して、目標と現状にどれだけギャップがあるのかも確認しておきましょう。
次に、目的や目標を達成するための課題を明確にします。STP 分析、3C 分析、SWOT 分析などのフレームワークを使ったり、実績データを分析したりして、どこに課題があるのかを論理的に説明しましょう。
課題分析の目的は、提案される側に課題点について納得してもらうことです。そのためにも、順序だてた論理的な説明を心がけましょう。
例えば、CPA が目標より高くなっている場合、まずは CPA が何によって高騰するのかを伝えます。次に CPA は、クリック単価÷コンバージョン率で求められるため、CPA が上昇するのは、クリック単価かコンバージョン率のどちらか、またはその両方が上がっていることが考えられると伝えます。
最後に、それぞれの指標が目標に対してどのくらい差があるかを割り出すことで、クライアントは納得感を持って課題が何かを理解してくれます。
一方で、CPA が目標よりも高いのはクリック単価が高いからという説明のみをすると、間で説明すべき内容(CPA を割り出す数式)が省かれているので、論理が飛躍しているように捉えられます。また、CPA の高騰にはコンバージョン率も関わってきますが、いきなり広告文に原因があると説明しても因果関係が分からず、納得感を得られないでしょう。
もし自分の提案が通らないときには、順序立てた説明ができているか、因果関係が成り立っているか、客観的な根拠になっているか、データの母数は十分な量かなどを見直して、論理的な説明になっているか確認しましょう。
納得感が薄かったり、課題感の認識にズレがあると、その後の施策提案も提案相手が満足できるものになりません。クライアントが課題を認識して、提案内容によって課題解決や目標達成ができるだろうと納得してくれるような分析と説明ができるようにしましょう。
最後は課題を解決するための施策提案です。課題解決に繋がる施策であることはもちろん、現在の目標の達成率を考慮し、目標に到達するために十分な効果のある施策を提案しましょう。
この項目での目的は、施策の内容と有効性を説明し、承認してもらうことです。施策提案では施策の概要や有効性の根拠、影響力、予算の4点をまとめると、分かりやすい説明になります。
施策提案で伝えたいこと | 詳細 |
---|---|
施策の概要 | 何をするのか |
有効性の根拠 | 課題に対してなぜこの施策が有効と考えられるのかの根拠 (課題と施策の連動性、他社事例など) |
影響力 | 施策によってどのような結果が得られるかの見込み (予測される変化やシミュレーションなど) |
予算 | 施策実施に必要な費用 |
弊社はリスティング広告の運用代行をおこなう広告代理店で、月に1回、広告主様(お客様)に対して結果を報告します。今回はその定例報告で、運用中の広告の改善施策を提案する場合に、どのようにストーリーを意識して「現状把握」と「課題分析」、「施策提案」をするか詳しく説明します。
まず初めに前提条件の整理では、自社の状況整理をおこないます。例えば、同じ商品の販売を昨年の同月も行っていた場合は、昨年の状況(数値データ)を記載し、同じ時期(条件)での結果を確認します。
もちろん昨年の商品販売数以外にも、自社の広告費の推移や競合の出向状況などの情報も、前提条件のすり合わせにあっても良いでしょう。
次に現状把握では、目的や目標、達成率の認識をすり合わせます。例えば、目的は「商品販売数の増加」で、目標は「リスティング広告経由での販売数を昨対比120%にする」だとすれば、現状把握として資料に記載する内容は以下のようになります。
次に目標が未達となっている原因を分析し、課題を明確にしてクライアントに説明します。コンバージョン数に影響する指標はクリック数とコンバージョン率なので、配信結果をもとにどちらに課題があるのか分析します。今回はクリック数が想定より少ないことが課題になっているとします。
CV 数 | CVR | クリック数 | |
---|---|---|---|
想定(目標) | 120 | 2.0% | 6,000 |
実績 | 94 | 2.2% | 4,364 |
上記の配信結果を踏まえた課題分析は以下のようになります。
実際の分析では、媒体ごとやキャンペーンごと、デバイスごとに分解してより詳細に分析しますが、今回は例なので分かりやすく簡素にしています。
ポイントは未達要因の分析と結論を分けて記載することです。課題の分析としては未達要因の分析だけで十分ですが、課題点を明確にし、施策提案に繋げるには不十分です。
結論を明記することで、どこが改善されれば目標達成できるのかという課題点を明確にして、施策提案に繋げられるようにしています。
最後に、課題を解決するための施策を提案します。今回はクリック数を増やすために、配信キーワードの増加を提案します。施策提案の内容は以下のようになります。
クライアントに見せる提案資料では、施策の概要や有効性の根拠、影響力、予算を網羅してまとめます。有効性の根拠やシミュレーションを記載し、具体的な見込みを提示することで、現状把握や課題分析で示した未達のコンバージョン数、クリック数を十分に達成できるというイメージが持てるので、提案が通りやすくなります。
有効性の根拠がないと、納得感のない施策になってしまうので注意しましょう。施策の説明やシミュレーションだけだと、提案相手は本当にシミュレーションの数値を達成できるのか判断できず、承認しづらくなります。提案する側は、なぜこの施策が有効か分かっているはずなので、相手もそれを理解できるように言語化する必要があります。
最後に施策提案をより通しやすくする3つのポイントを紹介します。少しの工夫で提案が通りやすくなることもあるので、資料作成時や打ち合わせ時に意識してみてください。
抽象的な話を具体的にすることで、提案が通りやすくなることがあります。
例えば、40代向け化粧品の SNS 広告の運用代行の提案だと「興味関心ターゲティングで御社の商品に興味を持ちそうなユーザーをターゲティングします」と説明するより、「興味関心ターゲティングで御社の商品に興味を持ちそうな、『エイジングケア』や『フェイシャルエステ』などの興味関心を持つユーザーをターゲティングします」と説明するほうが、成功するイメージがわきやすく提案に対してポジティブな印象を持ってもらえます。
なるべく具体例や具体案を合わせて提案するようにしましょう。
ほとんどの場合、提案相手は自分の仕事で忙しいので、数週間前や数か月前に提案した内容や、現在実施中の施策をどんな背景で実施したかなどは覚えていないことが多いです。そして、覚えていない状態で話しても前向きに進まないことが多く、提案が却下されてしまうことがあります。
そのため、過去に説明した内容や提案であっても、時間が空いたら再度同じ説明をしましょう。例えば、過去に施策提案した相手に対して実施可否をリマインドするとき、口頭で「先月ご提案した〇〇の件はいかがですか?」と連絡するよりも、提案時の資料を見せながら「☓☓の解決のために〇〇を提案していましたが、いかがですか?」と確認するほうが、施策の意図を思い出してもらえるので、承認してもらえる可能性が上がります。
過去の説明資料を再掲するだけで施策が通りやすくなるので、習慣化しておきましょう。
前提として、提案をされる側は忙しく、難しい仕組みの話や複雑な背景の話を覚えていられません。前に説明したから理解しているだろうと思って説明を省略するのはよくありません。提案をされる側が理解できないまま話が進んでしまうと、提案が却下される原因になります。
例えば、リスティング広告の運用代行で、CPA 改善のためにクリック単価を良化させる施策を提案する場合は、CPA はクリック単価 ÷ コンバージョン率で計算できるという説明を忘れずに記載します。
前回の定例報告で同じ説明をしていたとしても、時間が空いたら相手は忘れていると思って、何回でも説明しましょう。
自分が理解することと、相手が理解できるように説明することは似て非なるもので、まったく別のスキルが必要になります。論理的な根拠を持って提案しているのに提案が通らないという課題があるときは、提案内容を改善することも大事ですが、分かりやすく伝えられているかも見直しましょう。
自分の提案資料はストーリーを意識したものになっているか、確認してみてください。分かりやすさや伝わりやすさは自分だけで改善するのは難しいので、説明を誰かに聞いてもらってフィードバックをもらう方法もおすすめです。
広告事業部 マネージャー
2015年4月に新卒として入社。2019年にマネージャーに昇格。広告運用の仕事をメインに、現在はサイト改善提案やブログ執筆にも力を入れている。数値をもとにしたサイト改善提案が得意。趣味は動画を見ること、ゲームをすること。
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