近年、動画広告は認知だけでなくコンバージョン獲得の広告としても有効な配信メニューになってきています。YouTube 広告では、コンバージョンを自動最適化目標にして配信できるので、コンバージョン拡大施策として検討している方や、既に実施している方も多いのではないでしょうか。
ただ、動画広告のコンバージョン獲得の盛り上がりと同時に、管理画面のコンバージョン数と実際の販売数・問い合わせ数との乖離の問題も度々耳にするようになりました。これは、YouTube 動画広告の「コンバージョン」の定義が検索広告やディスプレイ広告と異なることが原因です。
この記事では、YouTube 動画広告のコンバージョン定義や、実際の販売数・問い合わせ数と乖離が起きる仕組み、管理画面のコンバージョンの分析方法について解説します。コンバージョンの乖離問題に頭を悩ませている人は、ぜひ参考にしてみてください。
Google のコンバージョン獲得目的のキャンペーンである「動画アクションキャンペーン」を配信した際に、実際の販売数・問い合わせ数よりも、Google の管理画面上のコンバージョンが大幅に多くなった経験はありませんか?
例えば、4月1か月間の問い合わせ件数は50件なのに、Google の管理画面上の数値は、動画アクションキャンペーンだけでコンバージョン数が100件になっているような状況です。
明らかに実績以上の件数がカウントされており、管理画面の計測が正しくできていないのではないかと不安になりますよね。このような場合、原因のほとんどはタグではなく、動画アクションキャンペーンのコンバージョン定義によるものだと考えられます。そのため、原因となっている動画アクションキャンペーンについて、まずは簡単に説明します。
Google の動画アクションキャンペーンとは、Google の動画広告キャンペーンの種類の1つで、コンバージョン獲得を目的として配信する動画広告です。
リーチ目的の動画キャンペーンと違う点は、入札戦略で「コンバージョン数の最大化」と「目標コンバージョン単価」を選択できる点です。
アクションでもリーチ目的でも Google の動画キャンペーンの「コンバージョン」列の数の定義は、検索キャンペーンやディスプレイキャンペーンと一部異なります。
検索キャンペーンやディスプレイキャンペーンは「クリックスルーコンバージョン」のみがコンバージョン列に含まれます。
しかし動画キャンペーンは「クリックスルーコンバージョン」と「エンゲージビューコンバージョン」の2つが含まれています。Google 公式ヘルプページではリリース情報で以下のように説明しています。
Google 広告のコンバージョン トラッキングで測定されるすべてのスキップ可能なインストリーム広告とフィードの動画フォーマットで、コンバージョンのアトリビューションを共通化することといたしました。現在の、ユーザー行動の促進を重視した動画フォーマットにおけるコンバージョンのアトリビューションに沿って、デフォルトのアトリビューション イベントとしてクリック数とエンゲージ ビュー(10 秒)が用いられます。
引用元:すべての動画キャンペーンでコンバージョンのアトリビューションを共通化します|Google 広告ヘルプ
クリックスルーコンバージョンとは、ユーザーが広告をクリックしてコンバージョンした数が純粋にカウントされます。ユーザーが動画広告をクリック後にコンバージョンが発生した場合にカウントされる仕組みです。
一方でエンゲージビューコンバージョンとは、広告をクリックしていなくても、ユーザーがスキップ可能な動画広告を10秒以上視聴し、自然検索など別の経路で流入してコンバージョンした場合でもカウントします。
上記を整理すると、検索キャンペーンやディスプレイキャンペーンのコンバージョンは「クリックスルーコンバージョン」だけなのに対し、動画アクションキャンペーンのコンバージョンは「クリックスルーコンバージョン+エンゲージビューコンバージョン」ということになります。
エンゲージビューコンバージョンは、クリックスルーコンバージョンと比べて重複コンバージョンが起こりやすいため、実際の販売数・問い合わせ数との乖離が問題になるケースが多くなっています。
重複コンバージョンとは、複数の流入経路を経由することで、1件の購入・問い合わせが管理画面上では複数のコンバージョンとしてカウントされる現象です。
例えば、あるユーザーが Google の検索広告をクリックし、そのあと Yahoo! のサイトリターゲティング広告をクリックしてコンバージョンした場合、Google の検索広告と Yahoo! のサイトリターゲティング広告にそれぞれ1件ずつコンバージョンが計測されます。
広告全体の合計コンバージョンは2件ですが、実際の購入・問い合わせは1件しか発生していません。これが重複コンバージョンが起こる仕組みです。
同じことが Google の動画広告でも起こります。あるユーザーが Google の動画広告を視聴し、そのあと Yahoo! のサイトリターゲティング広告をクリックしてコンバージョンした場合、Google の動画広告と Yahoo! のサイトリターゲティング広告にそれぞれ1件ずつコンバージョンが計測されます。
動画広告をクリックしていなくても、一定時間見ただけで、他の流入経路のコンバージョンと重複してカウントされてしまうのです。
検索広告とディスプレイ広告のクリックスルーコンバージョンはクリックしなければ重複が起こらないのに対して、動画広告のエンゲージビューは「動画を10秒以上視聴する」という比較的ハードルが低いアクションのため、検索広告・ディスプレイ広告のクリックスルーコンバージョンと比べて大幅な重複が起こりやすくなっています。これが Google の動画広告で、管理画面上のコンバージョンと実際の販売数・問い合わせ数の乖離が問題になりやすい1番の原因です。
つまり、大幅な乖離が起きる原因は、ハードルの低いアクション(動画を10秒以上視聴)がコンバージョンの要件に含まれるからです。
動画広告で管理画面上のコンバージョンは大幅に増えたけど、実際の販売数・問い合わせ数が増えていないなら、クリックスルーコンバージョンよりエンゲージビューコンバージョンの割合が多い可能性が高いと考えられます。
コンバーション数で乖離が起こっている場合は、管理画面でクリックスルーコンバージョンとエンゲージビューコンバージョンの内訳を確認してみましょう。
管理画面のキャンペーン一覧画面に移動し、数値データの上のメニューから「分類」 をクリックし、「 コンバージョン」の中の「広告イベントタイプ」を選択します。
すると、「クリック数」と「エンゲージビュー」の2つのコンバージョン内訳が表示されます。数値が0の項目は表示されません。
クリック数がクリックスルーコンバーションを表し、エンゲージビューがエンゲージビューコンバーションを表します。
このアカウントでは、動画キャンペーンのコンバージョンのうち約半分がエンゲージビューコンバージョンでした。
ここまで説明してきた通り、Google 動画広告はコンバージョンの乖離が起こりやすいという課題がありますが、コンバージョン最大化のためにできれば配信は継続したい方もいるかと思います。
そんな時にエンゲージビューコンバージョンとクリックスルーコンバーションが発生するのを前提として、できる限りズレをおさえて Google 動画広告の成果を把握する方法を紹介します。設定を変えたりコンバージョンの計算方法を工夫したりすることで、管理画面のコンバージョン数を実際の販売数・問い合わせ数に近づけることができるので、参考にしてみてください。
エンゲージビューコンバージョンが多い場合の対処法の1つ目は、エンゲージメントの計測期間を短くすることです。
Google 動画広告のデフォルトの計測期間は動画を見たタイミングから3日ですが、管理画面から設定変更することで1日まで短くすることができます。
計測期間を3日から1日に変更すると、エンゲージビューコンバージョンにカウントする条件が厳しくなるため、エンゲージビューコンバージョンが少なくなります。
例えば、デフォルトの計測期間3日の設定では、あるユーザーが動画広告を見てから3日後に別経路で流入してコンバージョンした場合、エンゲージビューコンバージョンとしてカウントされます。
これを計測期間1日に変更すると、動画広告を見てから1日以上経過したユーザーが別経路で流入してコンバージョンしてもエンゲージビューコンバージョンにはカウントされません。動画広告を見てから1日以内にコンバージョンした場合のみカウントされます。
エンゲージメントの計測期間は、Google の管理画面から変更できます。まず右上メニューの「ツール設定」から「コンバージョン」をクリックします。
設定変更したいコンバージョンアクションを選択し、「設定を編集」をクリックして編集画面に移動します。
「エンゲージビューコンバージョンの計測期間」をクリックし、変更したい計測期間を選んで「完了」ボタンを押すと変更できます。
エンゲージメントの計測期間を変更してもエンゲージビューコンバージョンが多くなってしまう場合は、推定値を設定する方法があります。
動画広告のエンゲージビューがきっかけでコンバージョンした数をより正確に把握するために、エンゲージビューコンバージョンをクリックスルーコンバージョンに換算したときにどれくらい価値があるのかを推定し、それをもとに動画広告のパフォーマンスを判断する方法です。
例えば、エンゲージビューからコンバージョンに至ったユーザーのうち、5人に1人(20%)が動画広告がきっかけでコンバージョンしたユーザーと推定します。5件のエンゲージビューコンバージョンが1件のクリックスルーコンバージョンと同価値と見なすという考え方です。
実際にエンゲージビューが発生したユーザーのうち、何割のユーザーがエンゲージビューが理由でコンバージョンしたかを正確に把握することは難しいため、まずは推定値として仮置きします。この運用方法でコンバージョンの乖離がどれだけ少なくなったかを確認しながら、必要であればさらに推定値を調整しましょう。
動画広告キャンペーンのエンゲージビューコンバージョンが10件、クリックスルーコンバージョンが5件なら、(10÷5)+5=7 となり、このキャンペーンのコンバージョンは7件(推定値)になります。
管理画面の数値から手動で計算が必要になるので、成果の確認・管理は少し複雑になりますが、推定値をもとに目標 CPA を計算して設定することでより実態に近い広告配信ができるようになります。
これから、推定値を使った目標 CPA の算出方法を紹介します。
例えば、以下のようなパフォーマンスの動画広告キャンペーンがあり、エンゲージビューコンバージョンの割合が多いため、推定値を使って適正な目標 CPA を算出したいとします。
エンゲージビューコンバージョン160件に20% をかけると32なので、このキャンペーンの推定値のコンバージョン数は32+40=72件です。
推定値のコンバージョンは全コンバージョン数200件に対して36% となります(72÷200=0.36)。推定値の CPA も目標 CPA の36% となるので、目標 CPA 5,000円に36% をかけます。
5000×0.36=1800 なので、この動画広告キャンペーンの適正な CPA は1,800円となります。CPA 1,800円で配信できれば、エンゲージビューコンバージョンで他媒体と重複コンバージョンがあることを考慮しても目標 CPA を守った配信ができている、ということができます。
管理画面の数と実数の乖離は厄介な問題ですが、原因さえ分かれば対処することができます。「どうやら動画広告のコンバージョンは、実際の購入・問い合わせにはつながっていないらしいから配信は停止しよう」と諦める前に、乖離の原因を確認してみてください。
動画広告は、今後インターネット広告の主力の1つになっていくことは間違いないので、うまく使いこなすためにも成果を正しく評価できる方法を知っておきましょう。
広告事業部 マネージャー
2015年4月に新卒として入社。2019年にマネージャーに昇格。広告運用の仕事をメインに、現在はサイト改善提案やブログ執筆にも力を入れている。数値をもとにしたサイト改善提案が得意。趣味は動画を見ること、ゲームをすること。
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