Google や Yahoo! などの検索エンジンに入力される「検索キーワード」は、世の中の需要そのものといえます。
私が今から14年前の2006年に書いた本「1億稼ぐ『検索キーワード』の見つけ方」でも、「一度形成された市場は、そうそう簡単になくなったりはしない。市場はあなたが考えているよりも複雑で、チャンスにあふれているのである。」と主張していますが、この時から今日までの間、人々の検索需要の動き方はさほど変わっていないと感じています。
検索キーワードの需要を適切に捉えることができれば、検索広告などのマーケティング施策が成功する可能性がグッと高まります。今回は10年以上使える Googleトレンドをマーケティング観点でどう活用すればいいのかを5つのタイプと共に解説いたします。
Google トレンドとは、Google で検索されるキーワードの検索回数の推移がわかる、登録不要、無料で使えるツールです。
検索キーワードの検索回数が増加しているのか、減少しているのか、期間の指定をして調べることができるので、過去・現在・未来の市場調査をすることが可能です。
特徴は、情報の更新が早いことと、期間を過去1時間をはじめに、過去30日間、過去12ヶ月、過去5年間、2004年から現在といった区切り調べることができる点です。
Google トレンドのメニューは、2020年3月現在以下の4つです。時期によって入れ替わりがありますが「調べる」「急上昇ワード」「登録」の3つは基本的にあります。
調べるでは、一度に5つの検索キーワードを比較することができ、検索している国や2004年1月1日から今日までの好きな期間を指定して調べることが可能です。
日本以外の国の指定もできるので、海外の検索需要の動向も調べることができます。
Google トレンドのグラフ左側の縦軸は、最高値100とした検索総数に対する相対値を表しています。
例えば、数値が50の場合、そのキーワードの検索数は最も検索されたときの半分ということになります。数値が0の場合最高値の1%未満を表しています。
Google の他のサービス「キーワードプランナー」で出てくる、月間検索ボリュームとは違うのでご注意ください。
急上昇ワードは、毎日の検索トレンド、リアルタイムの検索トレンドのそれぞれを、国を指定して見ることができます。
毎日の検索トレンドでは、トラフィックが急上昇したキーワードとその関連記事が日別で表示され、リアルタイムの検索トレンドでは、過去24時間にトラフィックが急上昇したキーワードとその関連記事が表示されます。
Year in Search 検索で振り返るは、以前は「ランキング」と表示されていたものです。
先ほど紹介した「急上昇ワード」が時間単位だとしたら、こちらは年単位の急上昇ワードのまとめです。指定した年と前年を比較して、検索数が上昇したキーワードが表示される仕組みになっています。
2019年をしたところ、台風19号や社会現象と言われたドラマ「あなたの番です」やタピオカ、ペイペイとは?といったキーワードが多く検索され、2018年に比べ検索数が急上昇していたようです。
登録は、キーワードを指定しておくと、メールでそのキーワードの最新情報を送ってもらえるというものです。頻度は週1回もしくは月1回から選択できます。
冒頭でもお伝えしたとおり、「検索キーワード」は、世の中の需要そのものなので、マーケティングの企画立案や、広告運用の予算配分などで十分機能します。
以下の記事でも言われている通り、ユーザーは目的によって検索プラットホームを変えています。
しかしながら、まだまだ「知りたい」「調べたい」「探したい」「買いたい」といった行動がハッキリと決まっているときには、Google やYahoo! で検索する人が多いでしょう。
Google トレンドで知ることができる検索キーワード需要の推移ですが、大きく5つのタイプにわけることができます。昔から変わらないタイプもあれば、最近になって出てきた新しいタイプもあります。
タイプ別の検索需要の動きを把握し、応用することで未来を予測し、適切な投資から最大のリターンを得られるようになるはずです。それでは、どんなタイプがあるかを見ていきましょう。
主に5つ分類される Google トレンドのタイプを紹介していきます。
Googleトレンドの使い道として、一番わかりやすい例が「蟹」です。
検索キーワード「蟹」は、10月末など秋が深まるころに段々と需要が高まり、年末にピークとなります。
そして年末年始が終わるとがっくりと需要がなくなり、検索数は一気に下降傾向になります。
ここで大事なのが、一連の動きは「毎年必ず同じような動き」となるという点で、ほぼ確定未来なのです。
検索キーワード=人の需要なので、広告予算のかけ方を例に取りあげると、「需要期には最大に、閑散期には適切に」というように1年を通してバランス良く配分することで売上利益を最大化させることができます。
同様の動きをするキーワードとしては、「引越し」「花火」などの季節イベントがあります。
前述の「蟹」のようにかなりはっきりとした変動はしないものの、ゆるやかな変化で毎年同じように動くものもあります。
検索キーワード「ワイン」は、ボジョレー・ヌーボーが話題になる秋の早い時期に需要が少し盛り上がり、年末へ向かうに連れて検索需要がピークとなります。
パーティや忘年会などが要因として考えることができます。一方で、真夏にはかなり落ち込んでいるのも見てわかります。
お酒を飲まない人からすると、ワインなんていつでも飲むものじゃないかと思われるかもしれないですが、毎年ゆるやかながら同じような変動があるんですよね。
明らかに需要が増える時期と、そうでない時期がハッキリとしているので、予算配分を上手に調整しながら投下することが可能になります。
いわゆる大ブームを巻き起こすようなタイプがこれにあたります。
検索キーワード「タピオカ」は、2018年の夏からだんだん盛り上がり、2019年1月から急上昇、夏前に何回か波があり、2019年のお盆頃をピークに急激に検索数が落ち込んでいます。
タピオカミルクティーはメディアにも大きく取り上げられ、社会現象のようにもなりましたよね。検索する需要としては、お店を探す、評判を見る、そもそも体にいいものなのかを調べるといったものでしょう。
ピーク時の検索キーワードがどれだけの莫大な量になっていたかは、ある程度予測することができます。
タピオカというキーワードを長い間人気のあるスポットである「ディズニーランド」と比較してみましょう。
検索キーワード「ディズニーランド」は、月間検索数が100万回を超える超ビッグキーワードです。
キーワード単体の月間検索数は、タピオカの方が少ないまでも、ピーク時には瞬間的にディズニーランドを超えるブームが巻き起こっていたということになります。
ただし、ピーク後の落ち込みは大きく、2020年2月には急降下し、前年2月とほとんど変わらない検索需要となっています。
これが来年も同じ動きをするかというと、ほとんどの場合はそう考えられません。
世の中を熱狂させるようなブームと言えるものは、一時的に検索需要があがり次第に落ち着き再燃することはなく、ブームの終了を迎えることになります。
タピオカのように既にブームが去ってしまったように見えるものは今後ビジネスチャンスはないのか?と思われがちですが、実はそうではなく、一度作られた市場(マーケット)はジワジワと長く存在します。
例えば、検索キーワード「太陽光発電」は、エコブームにじわじわと乗り、2011年の東北大震災の直後から、国の施策の影響もあり、需要が急上昇しました。
その後、2011年秋に急降下しますが、そこから10年近くは、太陽光発電を設置するビジネスは生き残っています。
需要がピークになる前に、新規ビジネスを起こしたり、広告運用への予算投資をした方がよいのですが、ピークが去った後も、以前ほどの勢いはないけれど、それを欲する需要というものは意外と長続きするものなのです。
多くの場合、急上昇したブーム(検索需要の急激な盛り上がり)は、同じようなスピード感で急降下していくことが一般的です。
Google トレンドのこのタイプの場合、市場参入や広告投資をしたいのなら急上昇しているうちがチャンスであり、一番利益を得ることができます。
しかし、ブームが去っても一定の検索数はあり、一度できた市場(マーケット)は簡単に消えてなくなることはないので、新規ビジネスのチャンスがないということではありません。
最近もっとも注目したい動きを見せているのが、この急上昇後にゆるやかに下降していくタイプです。
パズドラ(パズル&ドラゴンズ)は、アプリとして配信開始後1年ほど経過したのち、社会現象となるような大ブームとなりました。
検索キーワードにも需要が急激に上昇したことがはっきりとあらわれています。
検索需要としては、ピークを迎えた2014年3月以降、年々下がり続けているのですが2012年から8年以上も経過してもなお検索需要はピークの五分の一ながらしっかりと存在しています。
これは、アプリをアップデートし、イベントなどを開催することで、一定のアクティブユーザーを囲い込みつつ、出戻りユーザーも確保していることの表れなのではないかと考えることができます。
パズドラを運営する会社ガンホーの2019年12月期第3四半期連結累計期間の業績では、パズドラ好調の影響で前年同時期に比べ増収増益が2桁成長という報告があります。
参考:企業LOG|ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社の決算/売上/経常利益を調べ、IR情報を徹底調査
パズドラの事例は、マーケティングの常識が変わりつつあることの象徴だと考えられます。
今までであればタピオカのように「急激に上昇した需要は、急激に下がる」というのがマーケティングのセオリーでした。
ところが、最近は1つの商品やサービスが急激に大ブレイクした後、需要は下がり続けるものの、適切なアップデートをすることで、根強いファン層の支持し、ビジネスとしての売上利益を伸ばしていくケースが多くなっています。
こういったことも、Googleトレンドの検索需要から分析することが可能なので、新規参入などで市場調査が必要な際にぜひ活用したいツールです。
このタイプのGoogleトレンドの場合、パズドラがおこなったアップデートのニュース記事を検索し、Googleトレンドの動きがそれに伴って、どう動いているかを分析し、自身のビジネスに置き換えて考えてみるのがいいでしょう。
アプリでなくても、一つのプロダクトの寿命を限りなく伸ばすアイデアの参考になるはずです。
検索キーワード「眼鏡」は、需要が安定しているタイプで、実際の市場の動きともほぼ一致しています。
季節変動もなく、長期間に渡って安定した検索需要があることがわかります。
コンタクトレンズやレーシックといった代替手段が進化しているのにもかかわらず、眼鏡の市場規模も不思議とあまり落ちていません。
わざわざ市場調査をしなくても、Google トレンドで簡単な市場調査をおこなうことも可能です。
このタイプのGoogleトレンドは、ご自身がかかわるビジネスや業界を考えるときに、需要が落ちていないかのかを確認したり、逆にプレーヤーが減った中での残存利益を伸ばす方法を考えたりすることに使ってみるとよいでしょう。
Googleトレンドをマーケティングに活かす例として、検索キーワードの需要の変化に合わせて、年間予算計画をつくることができます。「2.ゆるやかな季節変動のタイプ」を例にして、順番に説明しましょう。
今回は、「自転車」というキーワードを基に具体的に説明します。自転車の通販をする場合の広告費をどのようにかければよいのでしょうか。自転車は、Google トレンドで検索してみると以下のような傾向が見れます。
季節変動がゆるやかではありますが、毎年顕著に波があらわれます。具体的には、4月から上昇し、5月に需要のピークを迎えます。そして必ず真夏の8月頃には一旦下がり、また9月に上昇し、寒くなる11月から下降していきます。
自転車というキーワード、つまりユーザーの自転車に対する需要というのははっきりと季節変動があることが確認できました。
例えば広告費を投下する場合も、「毎月の広告予算〇〇万円」と一律に決めるのではなく、下記の表のように需要期には多めの広告予算を投下し、閑散期には少なめにしたほうがよいわけです。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
予算投下割合 | 30% | 30% | 60% | 150% | 250% | 120% | 120% | 70% | 150% | 150% | 80% | 30% |
配分割合を決めたら、年間予算とそれを12か月で割った月あたりの月額広告予算を決めます。
年間の広告予算を300万円とすると、平均的に割り振ると月当たり25万円になります。しかし Google トレンドで見た需要の波にあった配分にすると以下の通りになります。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
予算投下割合 | 30% | 30% | 60% | 150% | 250% | 120% | 120% | 70% | 150% | 150% | 80% | 30% |
広告予算 | ¥75,000 | ¥75,000 | ¥150,000 | ¥375,000 | ¥625,000 | ¥300,000 | ¥300,000 | ¥175,000 | ¥375,000 | ¥375,000 | ¥200,000 | ¥75,000 |
上記の表をグラフにすると年間の配分が分かりやすいかと思います。需要の多くなる4月から5月には広告予算を増やし、反対に落ち着いてくる11月から3月は抑えめにしています。
季節変動がある商材の場合、閑散期に売上がほしいと考えるケースもあるのですが、一般的には、ユーザーの反応が薄いときに試行錯誤するよりも、反応が高いときに最大限の売上になるようにしたほうが、年間売上はあがりやすくなります。
また、繁忙期の一か月前に広告投資額を少し増やすと、より繁忙期での売上最大化につながるのでおすすめです。
マーケターにとってGoogleトレンドは、「検索キーワード」という人の需要、欲求、欲望といった心理がはっきり、しかも長期間にわたって簡単に可視化できる素晴らしいツールです。
広告投資の参考にしたり、市場規模を予測したり、あるいは新規ビジネスの参考にしたりと、多様な使い方が可能です。幅広い用途でぜひ使ってみてくださいね。
代表取締役会長
2003年、Googleアドワーズが日本でサービスを開始した直後より、検索キーワード広告とランディングページの実践・研究を行い、その成功理論を書籍『1億稼ぐ検索キーワードの見つけ方』で発表、5万部以上のベストセラーとなる。 キーワードマーケティングでは、設立時から延べ千社以上のアカウントを診断およびコンサルティングしており、現在は上場会社や成長率の高いベンチャー企業に対する広告運用代理事業を拡大している。
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