コンバージョンは広告の成果を測るための重要な指標です。しかし商品やサービスによっては、コンバージョンだけでは売上に大きな差が出てしまうなどの理由で、広告の成果を測ることが難しい場合があります。
このように、コンバージョンがすべて同じ価値ではない場合にビジネスへの貢献度を評価する値が「コンバージョン値」と呼ばれる指標です。
今回はコンバージョン値とコンバージョン数との違いや、向いている商材、設定方法なども紹介します。これからコンバージョン値を設定して広告を配信しようと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
コンバージョン値(CV 値)とは、ビジネスにおけるコンバージョンの価値を正確に把握するため、1件あたりのコンバージョンを金銭の値で測定する機能のことです。
Google のヘルプでは、コンバージョン値を活用することで、広告の成果を正確に把握し正しくパフォーマンスを評価できると記載があります。
コンバージョン値を使用すると、広告キャンペーンの実際のビジネス効果をより正確に測定し最適化できます。コンバージョンに価値を割り当てると、単に発生したコンバージョン数だけでなく、Google 広告がもたらしたビジネス上の価値全体を把握できるようになります。また、価値の高いコンバージョンを見極めて重点的に対応することもできます。
コンバージョン値について|Google 広告 ヘルプ
コンバージョン値とコンバージョン数はどちらも広告の成果を指す指標ですが、その内容には大きな違いがあります。以下の表にあるように、広告経由で発生した成果の「価値」か「回数」かという点が異なります。
コンバージョン値 | 広告経由で発生した成果によって得られた価値 |
コンバージョン数 | 広告経由で発生した成果の回数 |
コンバージョン値は広告経由で発生した成果によって得られた価値を指す指標ですが、コンバージョン数は広告経由で発生した成果の回数を示す指標です。
コンバージョン値はビジネスによってさまざまな活用方法があります。
その中でも特に活用することが多い2つのケースについて紹介します。
最もコンバージョン値が利用されている商材のひとつが EC サイトです。
EC サイトは商品ごとに単価が異なるケースや、1回の購入で複数の商品が購入されるケースが多く、コンバージョン1件あたりの売上にばらつきが生じやすい傾向があります。
こうした場合、購入時の金額を「コンバージョン値」として計測することで、ROAS(広告費用対効果)を指標にした効果測定ができるようになります。そのため、EC サイトの場合は購入金額をコンバージョン値として設定する運用が一般的です。
コンバージョン値の活用方法としてもう一つよく挙げられるのは、価値の重みが違う商品です。
例えば、Web サイト上で発生するコンバージョンの中には、重要度の異なるアクションが混在しているケースがあります。
▼Web サイト上で発生するコンバージョン |
広告管理画面上では、これらは全て同じ「1件のコンバージョン」としてカウントされますが、実際のビジネスへの貢献度は異なります。
このような場合は、それぞれのコンバージョンに対して適切な値を設定することで、「お問い合わせ」のような価値が高いコンバージョンを重視した入札調整や広告の最適化ができるようになります。
実際に入札戦略をコンバージョンからコンバージョン値を利用したものに変更した事例を紹介します。
▼商材
EC サイト
▼課題点
これまで CPA を目標に配信していた。
しかし、広告の成果はいいが実際の売上は比例しなかった。
▼入札戦略
変更前:目標コンバージョン単価制
変更後:コンバージョン値の最大化(目標広告費用対効果)で目標 ROAS を設定
▼対処法
コンバージョン値を計測し、ROAS を目標に再設定
変更前/変更後 | CV | CV率 | CPA | 売上 | ROAS |
---|---|---|---|---|---|
変更前 | 520 | 0.9% | ¥2,400 | – | – |
変更後 | 580 | 1.3% | ¥2,200 | ¥8,000,00 | 620.00% |
変更後の方がコンバージョン率が高く、CPA も良くなっています。元々 ROAS を計測していなかったためコンバージョン値や ROAS での比較はできませんが、ROAS での評価に変更してから、広告の実績と実際の売上の乖離は発生しなくなりました。
コンバージョン値は、広告の効果測定や入札戦略の最適化に直接影響するため、ビジネスの実態に即した「意味のある値」を設定することが重要です。そこで、代表的な2つの活用方法に分けて、適切なコンバージョン値の決め方を紹介します。
EC サイトでは、多くの場合「売上の最大化」のために広告を配信しているため、コンバージョン値としては「実際の売上金額」を設定するのが最も適切です。
商品ごとに単価が異なる場合でも、購入時点の金額を動的に取得する方法があるため、売上ベースでの効果測定ができます。
価値の重みが違う商材でコンバージョン値を決める場合は、最終的な成果への貢献度を基準に考えましょう。
具体的な値の設定にあたっては、最終的な成果への貢献度を基準に、各コンバージョンの相対的な価値を数値化することが重要です。
たとえば、「資料請求」と「お問い合わせ」の2種類のコンバージョンがある場合を考えましょう。
資料請求から問い合わせに進む割合が25%(4人に1人)である場合、資料請求4件でようやく1件の問い合わせと同等の価値があるということになります。
そのため、資料請求1件あたりの価値は「問い合わせの1/4」と考えることができ、コンバージョン値もそれに合わせて設定します。
例:資料請求をおこなった人の4人に1人がお問い合わせに進む場合 → 資料請求4件 ≒ お問い合わせ1件 → 資料請求1件:1、問い合わせ1件:4という比率で設定 |
この場合、「お問い合わせ」に対して「資料請求」より高いコンバージョン値を設定することで、より受注に近いアクションである「お問い合わせ」に広告配信の最適化が向くようになります。
このように、各コンバージョンの「次のステップへの遷移率」をもとに価値の比重を調整することで、重要なアクションに対して、より高い精度で広告配信を最適化できます。
Google 広告と Yahoo! 広告、Microsoft 広告では、コンバージョン数の最大化だけではなく、コンバージョン値の最大化を目的とした入札戦略が提供されています。
以下の表はコンバージョン値の最大化とコンバージョン値の最大化(目標広告費用対効果)の目的の違いをまとめた表です。ここからはどういったシーンで活用するとよいかもあわせて紹介します。
入札戦略 | 目的 |
---|---|
コンバージョン値の最大化 | 指定した予算の範囲内でコンバージョン値を最大化する |
コンバージョン値の最大化 (目標広告費用対効果) |
自動入札でコンバージョン値の最大化を選択した際に目標 ROAS を設定することができる |
指定した予算の範囲内でコンバージョン値を最大化することを目的とした自動入札戦略です。
「コンバージョン値の最大化」は、EC サイトや明確な価値指標が存在する BtoB サービスなどにおいて、売上や受注金額の最大化を狙いたいケースで特に有効です。
ただし、デマンドジェネレーションキャンペーンでこの入札戦略を利用する場合は、事前に以下の要件を満たしている必要があります。
・値の設定されたデマンド ジェネレーションのコンバージョンを過去 35 日間に 50 件以上獲得している(過去 7 日間に獲得した、値の設定された 10 件以上のコンバージョンを含む)。
「コンバージョン値の最大化」入札戦略について|Google 広告 ヘルプ
・すべてのデマンド ジェネレーション キャンペーンにおいて、値の設定されたコンバージョンを過去 35 日間に 100 件以上獲得している。
そのため、新たにデマンドジェネレーションキャンペーンを開始する際は、最初から「コンバージョン値の最大化」を利用できない点に注意が必要です。
自動入札でコンバージョン値の最大化を選択した際に、目標 ROAS を設定できる入札戦略です。
あらかじめ「広告費に対してこれくらいの売上を得たい」という目標が明確にある場合、目標 ROAS に基づいて広告配信が最適化されます。
たとえば、目標 ROAS を400%に設定した場合、1万円の広告費に対して4万円以上の売上が見込める配信に注力します。指定した ROAS で着地するように調整されるため、目標 ROAS が明確に設定されている場合は、コンバージョン値の最大化(目標広告費用対効果)を選ぶとよいでしょう。
目標 ROAS については以下の記事で解説しているので、こちらも参考にしてみてください。
▼記事はこちら
ECサイトで取り入れたい指標「ROAS」とは?CPAとの違いや適切な目標値の考え方|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
ROAS(Return On Advertising Spend)とは、かけた広告費に対して得ることができた売上を表したものです。広告管理画面上でのROASやCPAとの違い、目標ROASを設定する方法や向いている/向いていない商材を紹介します!
コンバージョン値はパフォーマンスを正しく評価することができる指標ですが、扱いには注意が必要です。
すべてのコンバージョンに対して同じ価値を置いた場合でも、コンバージョン値の計測自体はできますが、重要度の高いコンバージョンが過小評価されてしまう点に注意しましょう。
例えば、以下の表の「NG 例」のように各コンバージョンに同じ価値を割り当てると、今回の場合は高価値である「購入」が過小評価されてしまい、効率的に広告配信ができない可能性があります。そのため「OK例」のようにコンバージョンの重要度によってコンバージョン値を設定しましょう。
コンバージョン | NG 例 | OK 例 |
---|---|---|
購入 | ¥10,000 | ¥10,000 |
資料請求 | ¥10,000 | ¥5,000 |
メルマガ登録 | ¥10,000 | ¥1,000 |
例えば EC サイトのように「コンバージョン1件ごとに発生する売上金額」をコンバージョン値として設定する場合、コンバージョンを計測する際に、そのコンバージョンで発生した売上も取得する設定が必要です。
このような場合、サイト上の購入データの取得や送信が必要となりますが、設定には Web サイトのコードやタグの編集などの技術的な対応が必要で、知識がない人が一から設定するのは簡単ではありません。
専門的な知識がなく一から自社で対応するのには難易度が高い場合は、広告代理店に依頼するか、経験のあるエンジニアのサポートを受けながら実装を進めましょう。
広告管理画面でコンバージョン値を確認したい場合は、表示項目の設定からコンバージョン値を選択することで、コンバージョン値を管理画面で確認できます。
まずはキャンペーンの画面で「表示項目」を選択し、さらに「表示項目を変更」を押しましょう。
表示項目を変更する際に、コンバージョン値と一緒に ROAS も確認しておきたいので、「コンバージョン値 / 費用」の項目もあわせて表示させることで、最適な予算配分や改善施策の判断材料として活用しやすくなります。
管理画面でコンバージョン値を設定する場合は、コンバージョンを作成しましょう。
「目標」から「概要」に進み、「コンバージョンアクションを作成」という青いボタンをクリックします。
その後は以下の画像の指示に沿って、コンバージョンアクションの作成を進めていきましょう。
▼詳しいコンバージョンアクションの設定方法はこちらから
Google広告の初心者必見!コンバージョン設定の基礎から手順までの完全ガイド|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
Google 広告における「コンバージョン設定」とは、Google広告の管理画面で、広告の目標とする特定の行動(コンバージョン)を登録する操作のことを指します。設定をおこなうことでコンバージョンが計測され始めます。
コンバージョン名の入力や「アクションの最適化」のカテゴリの選択が完了すると、値を選択する項目があります。
ここでは「すべてのコンバージョンに同一の価値を割り当てる」、「コンバージョンごとに異なる価値を割り当てる」、「このコンバージョン アクションでは値は使用しない」という3つの選択肢が表示されます。
どの方法で設定するかは、自分が設定したい内容に合わせて選択しましょう。
目的 | 選択肢 |
---|---|
コンバージョン値を利用する | 以下のどちらか ・すべてのコンバージョンに同一の価値を割り当てる ・コンバージョンごとに異なる価値を割り当てる |
動的にコンバージョン値を取得したい | コンバージョンごとに異なる価値を割り当てる |
重み付けをしたいコンバージョン値が固定で決まっている | ①すべてのコンバージョンに同一の価値を割り当てる ②コンバージョン値を直接入力 |
「すべてのコンバージョンに同一の価値を割り当てる」を選択した場合、Google タグマネージャーの設定は通常のコンバージョン設定と変わりません。
ただ、「コンバージョンごとに異なる価値を割り当てる」を選択した場合、コンバージョンタグが発火したときに売上金額を取得する設定が必要になります。
まず、Google タグマネージャー側で売上金額を取得するための変数を作成します。
ユーザー定義変数を新規作成し、変数タイプで「データレイヤーの変数」を選択します。変数名やデータレイヤーの変数名は自由に決めて問題ありませんが、この後の設定で利用するため、分かりやすい名前にしておくのがおすすめです。
今回は変数名を「売上総計税抜き」、データレイヤーの変数名を「valueNoTax」とします。
次に、コンバージョンで発生した売上を取得し、Google タグマネージャーに受け渡すためのデータレイヤーが必要になります。データレイヤーとは、Google タグマネージャーに対して Web ページ上の情報(購入金額や商品 ID など)を受け渡すための仕組みです。
もし Web サイト側でデータレイヤーが設定されていない場合は、まずこの設定をしておきましょう。
データレイヤーでは、下記のようにデータレイヤーの変数名に入れた文字列(今回の場合は「valueNoTax」)と、カートシステム側で用意されている購入金額を取得する変数を入力します。
<script>
window.dataLayer = window.dataLayer || [];
dataLayer.push({‘データレイヤーの変数’: ‘購入金額を取得する変数’});
</script>
購入金額を取得する変数は、カートシステムや EC プラットフォームによって名称や仕様が異なります。
そのため、どの変数を使えば購入金額を正しく取得できるかを確認するには、カートシステムに詳しい担当者や開発者と連携しておく必要があります。
データレイヤーを注文完了ページに埋め込んだら、今度は Google タグマネージャー上でコンバージョンタグに売上金額を受け渡す設定をします。
新しいタグを作成し、通常通りタグの種類やコンバージョンID、コンバージョンラベルの設定をしたら、コンバージョン値に変数名を入力します。
ここで入力するのは、売上金額を取得するための変数で使った変数名です。先ほど「売上総計税抜き」という名前で変数を作成したため、同じ名前をコンバージョン値の部分に入力します。また、このときに変数名を波括弧でくくり{{変数名}}になるように入力しましょう。
コンバージョン値に変数を設定したら、あとは通常のコンバージョンタグと同じようにトリガーを設定すれば完了です。これで、コンバージョン発生時に売上金額が動的に取得され、コンバージョン値として広告側に正しく送信されるようになります。
コンバージョン値の設定は、商材によって向き不向きはあります。しかしコンバージョン値を設定することで広告のパフォーマンスをより正確に把握できるので重要です。
特に EC サイトのように売上を重視する場合は、必ず設定しておきましょう。売上拡大を目的として広告を運用するのであれば、適切なコンバージョン値の設定は欠かせません。
また、コンバージョン値をもとに広告効果を定量的に評価することで、より効果的な予算配分や入札戦略につなげることができます。
広告の成果を最大化できるよう、ぜひコンバージョン値の活用を検討してみてください。
広告運用 コンサルタント
2020年4月に新卒入社。5月末から広告運用事業部に配属。就職して初めてPhotoshopをさわってから、広告画像を作るのが特に好き。趣味はUSJに行くことと推しを推すこと。
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