Web 広告の配信成果を確認しているときに、「同じユーザーばかりに広告が配信されている」と気付いて後悔した経験はありませんか?
Web 広告では「広告がどのくらいの頻度で出ているか」を正しく評価することが重要です。そこで役立つ指標が、1人のユーザーに何回広告が表示されたかを表した「フリークエンシー」です。
この記事ではフリークエンシーの意味や最適なフリークエンシーの考え方について解説します。後半では媒体別(Google広告・Yahoo! ディスプレイ広告・Meta 広告・X 広告・LINE 広告)の確認方法も紹介するので、自社で運用している媒体があれば記事を参考に確認してみましょう。
フリークエンシーは広告への接触頻度のことで、「1人のユーザーに何回広告が表示されたか」を表す指標です。広告が表示された合計回数(=インプレッション)を、広告を表示したユニークユーザー数(=リーチ)で割ることで求められます。
フリークエンシー = インプレッション数 / リーチ数
例えば、広告が合計500回表示されていても、実際に表示されたユーザーはたった10人しかいなかったとしましょう。この場合は以下のような計算式となり、フリークエンシーは50となります。
50(フリークエンシー)= 500(インプレッション数) / 10(リーチ数)
できるだけ多くのユーザーに広告を見せたかったのに、実際には一部のユーザーにしか表示されていなかった・・・ということがないよう、フリークエンシーを確認し本来の意図に合った配信ができるようにしましょう。
もしフリークエンシーが想定よりも高かった場合は、フリークエンシーキャップを設定することでユーザー1人あたりに表示させる広告の頻度を調整できます。
フリークエンシーキャップについてはこちらの記事でも解説しているので、あわせてご覧ください。
【回数別データ掲載】最適な広告の表示回数は?フリークエンシーキャップの仕組みと考え方、設定方法まとめ|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
1ユーザーあたりに広告を表示する回数を制限できる便利な機能「フリークエンシーキャップ」をご存知でしょうか?混同しやすいリーチ数との違いやフリークエンシーキャップの仕組みなどを図説を用いてわかりやすく解説しています。
フリークエンシー以外にも、Web 広告には似ている指標があります。ここでは、フリークエンシーに似ている指標として、「リーチ」と「リーセンシー」を紹介します。
Web 広告におけるリーチは、コンテンツや広告に接触したユーザー数やその割合を指します。「広告が何人のユーザーに表示されたか」を確認できる指標で、インプレッションをフリークエンシーで割ることで求められます。
できるだけ多くのユーザーに広告を表示させたい場合は、リーチを確認することで、実際にどのくらいの人数に広告が届いたかが分かります。
リーチについてはこちらの記事でも解説しているので、あわせてご覧ください。
リーセンシーは、広告が同じユーザーに表示される間隔を指します。フリークエンシーは「広告が同じユーザーに何回表示されたか」を表す指標なのに対して、リーセンシーは「広告に接触してから何日経過したか」を表す指標です。
また、一般的にはリーセンシーが短いほどコンバージョン率は高い傾向にあります。例えば「YouTube 広告で見た商品を、次の日に行った店で見かけて買ってしまった」というように、広告を見てから間もないほうがその商品やサービスへの認知度や購買意欲が高いため購買されやすいことが理由です。
フリークエンシーの適切な基準は、商材や広告の配信目的が認知目的なのかコンバージョン獲得目的なのかで変わります。
認知目的で、できるだけ多くのユーザーに広告を見せたい場合を例に考えてみましょう。この場合、同じユーザーに何度も繰り返し同じ広告を見せるよりも、フリークエンシーに上限を設けて広告を見せるユーザーの数を増やしたほうが目的に合った配信ができますよね。
しかし、広告を見せる頻度が少なすぎるとユーザーの記憶に残らなかったり、過度に同じ広告を表示すると「しつこい」と思われてしまったりと、フリークエンシーが適切でない場合は思った効果を得られない可能性もあります。
ここからはフリークエンシーの適切な基準を、以下の3つのパターンに分けて説明します。
まずはユーザー1人あたりのフリークエンシーの考え方を、「認知目的」の場合と「獲得目的」の場合に分けて説明します。
認知目的の場合は、基本的に4~5回のフリークエンシーが効率よく認知を獲得できるといえます。 それ以上に認知を高めたい場合は、最低でも8回以上のフリークエンシーを意識して配信するのがおすすめです。
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社が実施した「フリークエンシーと広告認知率の関係」の調査によると、フリークエンシー4回で広告を見たユーザーの約半数に認知され、5回目以降は大きく変わらず8回目以降で緩やかに認知率が上昇していく傾向にあります。
このように、認知獲得のためにはフリークエンシーを一定以上に保つのが効果的と考えられます。ただ、フリークエンシーが1回でも認知効果が全くないわけではありません。
以下は、YouTube 広告で認知目的の配信をした結果、フリークエンシーが約1回でもブランド認知効果がでた事例です。ここでは「認知が高まる」ことを、できるだけ多くのユーザーに広告を配信し、多くのユーザーにブランドを覚えてもらうことと定義しています。
媒体 | フリークエンシー | リーチ | 広告費 | 認知効果 | 認知効果のあった推定人数 |
---|---|---|---|---|---|
YouTube | 0.96 | 4,086,197 | ¥3,040,796 | +4.3% | 145,000人 |
この事例では、スキップ不可の広告を活用するなど YouTube 広告を最後まで見てもらうことを重視しました。また、動画広告の配信に合わせてブランドリフト調査(YouTube に表示される簡単なアンケート配信)もおこない、ブランド認知の効果を計測しました。
その結果、フリークエンシーは0.96と少ないながらも、認知効果のあった人数(推定)を約14万人に伸ばすことに成功しました。このことから、繰り返し広告を見せたほうが認知は高まりやすいが、見せ方を工夫することで少ないフリークエンシーでも一定の認知効果を得られることが分かります。
ブランドリフト調査についてはこちらの記事でも解説しているので、あわせてご覧ください。
コンバージョン獲得目的の場合は、CPA が悪化したときの要因の1つとして「フリークエンシーの上昇」を疑うといった考え方がおすすめです。
コンバージョン獲得を目的に配信する場合は、フリークエンシーが高すぎると CPA が悪化する傾向があります。仮説としては、何度も同じ広告を見たユーザーがうっとうしさを感じたり、ブランドに対する嫌悪感を抱いたりする可能性が考えられます。
ただ、一定のフリークエンシー基準があるわけではなく、現状のフリークエンシーよりも相対的に高くなることでクリック率が下がり、クリック単価や表示単価が上がることで CPA 悪化につながるといったケースが多いです。
1人のユーザーに対してあまりにも高頻度で同じ広告を見せていると、うっとうしさから広告をクリックしなくなります。そのため CPA が悪化したときに、フリークエンシーの変化を確認することで、広告疲れが起きていないかを特定できる場合があります。
商材やターゲットによっても成果の出やすいフリークエンシーは異なるため、「認知目的」の場合と異なり、フリークエンシーを基準に考えないようにしましょう。
媒体ごとに決まったフリークエンシーの基準はありません。
配信媒体のターゲティングや広告費によっても異なるため、フリークエンシーが現状より上がると広告成果がどのように変動するかを媒体ごとにモニタリングし、自社の広告配信形式にあった最適なフリークエンシーを見つけることが重要です。
次の事例は、「EC 商材の配信をしているアカウント A 」と「法人向け商材を配信しているアカウント B 」の、ある月の配信結果を媒体比較したものです。どちらも一度サイトへ訪問したユーザーへのリターゲティング配信をしています。
アカウント A ではフリークエンシーが少ない Yahoo! のほうが CPA が良いですが、アカウント B ではフリークエンシーが低い Google のほうが CPA が悪くなっています。
アカウント | 媒体 | フリークエンシー | コンバージョン | CPA |
---|---|---|---|---|
アカウント A | Yahoo! | 30.38 | 3 | ¥4,900 |
53.90 | 2 | ¥12,950 | ||
アカウント B | Yahoo! | 114.95 | 2 | ¥8,130 |
39.60 | 2 | ¥10,450 |
配信する商材や目的によって適したフリークエンシーは変わるため、媒体ごとに適したフリークエンシーの回数は一律で判断できないことがわかります。
複数の広告媒体(Google 広告、Yahoo! 広告、Meta 広告など)にまたがって同じ広告を配信する場合、同じユーザーに対して広告が過剰に表示されることで、広告の効果が低下したり、新鮮さが落ちたりしやすいことが考えられます。
媒体を横断したフリークエンシーは計測できないため管理が難しいですが、1人のユーザーに対して同じ広告が過剰に露出されネガティブな印象を与えることを防ぐために、次のような対策があります。
フリークエンシーを最適化させたい場合は、媒体ごとのフリークエンシーを管理するだけでなく、全体のフリークエンシーも考慮した設定をおこないましょう。
一方で、媒体を横断して広告を配信することでのメリットもあります。
さまざまな媒体に広告を配信することで、ユーザーが接触する媒体で漏れなく自社の広告を見せることができ、印象に残る可能性が高くなります。
ここで挙げたメリットとデメリットはいずれも広告を何回も見せることが前提になっているので、デメリットの影響が大きくならないよう、広告成果の動きを見て適切なフリークエンシーを把握することが重要です。
ここからは、広告管理画面でフリークエンシーを確認する方法について解説します。
Google広告・Yahoo! ディスプレイ広告・Meta 広告・X 広告・LINE 広告、それぞれの実際の管理画面の画像を使って説明するので、この記事を見ながら確認してみましょう。
まず、管理画面の「キャンペーン」から「表示項目」を選択します。
「表示項目の変更」をクリックし、表示項目の一覧から「リーチの指標」内の「平均表示頻度(ユーザーあたり)」を選択すると、管理画面にフリークエンシーの指標を追加できます。
Yahoo! ディスプレイ広告でフリークエンシーを確認するためにはレポートを作成する必要があります。
管理画面の右上「レポート」タブから「+レポート・テンプレート作成」をクリックします。
作成するレポートの種類が一覧で表示され、下方の「リーチレポート」を選択するとフリークエンシーの値を含んだレポートが作成できます。
広告マネージャでフリークエンシーを確認したいキャンペーンを選択したら、「列:パフォーマンス」から「列をカスタマイズ」をクリックしてください。
「列をカスタマイズ」の画面が出てきたら「パフォーマンス」内の「フリークエンシー」を選択して実行で完了です。
管理画面内の「データ」をクリックし「データセット」にある「リーチとフリークエンシー」を選択すると管理画面にフリークエンシー数が表示され確認できます。
LINE 広告では、キャンペーン目的を「リーチ」に設定している場合のみ数値が確認できます。
広告マネージャー左上の「MENU」から「パフォーマンスレポート」をクリックします。
「レポートを作成」の画面に移ったら、「レポート形式」内の「階層」を「広告グループ」か「広告」に設定することで、フリークエンシーの数値を確認できます。
目的を「リーチ」に設定していないキャンペーンでフリークエンシーを確認したい場合は、自身でフリークエンシーの値を計算する必要があります。
フリークエンシーの値は、「インプレッション / リーチ」で算出できます。
フリークエンシーが多いと判断する基準は広告の目的や商材、同時に配信するクリエイティブのパターン数などによって異なることが分かったものの、運用者の中には以下のような疑問を持つ方もいるのではと思います。
そこで、最後にこの2つについて、事例をもとに回答していきます。
1つ目に紹介するのは、「フリークエンシーが多すぎてはダメなのか」という疑問です。これについては以下のように回答できます。
【回答】
フリークエンシーが多すぎるのが、必ずしも悪いとは限らない。
配信する商材や目的ごとに成果の良いフリークエンシーは異なるため、現在の成果推移とフリークエンシーの変化を把握したうえで分析することが重要。
以下は法人向け商材でクリック増加を目的にした配信結果です。このケースでは、Yahoo! の方がフリークエンシーが多いですが、その分クリック数も多く、クリック率も Google を上回りました。
媒体 | フリークエンシー | 広告費 | クリック率 | クリック |
---|---|---|---|---|
Yahoo! | 3.37 | ¥1,200,000 | 0.35% | 59,000 |
2.02 | ¥1,290,000 | 0.23% | 26,300 |
同じく法人向け商材ですがこちらはコンバージョン獲得を目的にした配信結果です。このケースでも、Yahoo! の方がフリークエンシーが多いですが、CPA を抑えて成果を出せました。
媒体 | フリークエンシー | 広告費 | コンバージョン | CPA |
---|---|---|---|---|
Yahoo! | 114.95 | ¥16,260 | 2 | ¥8,130 |
39.60 | ¥20,900 | 2 | ¥10,450 |
このように、フリークエンシーが多すぎるからといって成果が出ないとも限らないのです。現在の成果推移とフリークエンシーの変化を把握したうえで、成果分析をおこないましょう。
2つ目に紹介する疑問は、「フリークエンシーが多すぎると何がいけないのか」です。これについては以下のように回答できます。
【回答】
ユーザーの広告疲れやネガティブなブランド認識に繋がるため、ブランド毀損のリスクが高まる。
広告成果に応じてフリークエンシーを調整することがおすすめ。
フリークエンシーが多すぎるということは、ユーザーにとって「何度も同じ広告を見せられる」ということです。これはユーザーの広告疲れや、自社やブランドに対する「しつこい」といったネガティブなブランド認識に繋がります。場合によっては SNS などでネガティブな意見を書かれてしまうかもしれません。
このようにフリークエンシーが多すぎることでユーザーにネガティブなイメージを抱かれた結果、ブランド毀損のリスクが高まるといえます。意図せず自社の評判を下げてしまわないよう、広告成果に応じてフリークエンシーを調整し対策しましょう。
フリークエンシーは広告の成果を分析する際に見るべき指標の1つです。そのため「CPA が悪化したらフリークエンシーを調整すれば解決する」などとは考えずに、ほかの指標も含めて分析することが重要です。
また、商材や広告の目的によって現在のフリークエンシーが適切なのかの評価が変わってくるため、現在のフリークエンシーの数値だけでなく、配信目的にあったフリークエンシーを把握することで、適切な広告施策の立案に繋がります。
フリークエンシーについて正しく理解し、広告成果の改善を図りましょう!
広告運用 コンサルタント
2020入社。大学でマーケティングを専攻→キーマケに入社し広告事業部に配属される。配属後2ヶ月で動画広告作成に携わる等、検索やディスプレイ広告以外も勉強中。趣味はギターと温泉。特に冬の露天風呂は至高。
あなたの広告アカウントを無料診断します
広告アカウント診断詳細なお見積りをご希望の方はこちら
お問い合わせ支援事例などをまとめたサービス紹介資料はこちら
サービス資料のダウンロードはこちら