【図解あり】DSPとは？仕組みやメリット・デメリット、主要10媒体を紹介

広告運用をしているとアルファベット3つの単語をよく耳にしませんか？指標を表すものや関連用語など数多くあります。DSP や SSP もその1つでしょう。

耳にする機会は多いものの、それぞれが何の略称でどんな仕組みなのか、関係性まで理解して説明できる人はあまり多くないと思います。この記事では、DSP の概要から SSP との関係性、メリットとデメリット、主要な DSP を紹介します。

DSPとは？

DSP（Demand-Side Platform）とは、広告枠の買い付け・配信や効果分析を自動でおこない広告配信の最適化を図るプラットフォームの1種です。

DSP を提供する各社が連携しているメディアの購買データを活用したターゲティングや、特定の業種に特化した面に集中的に配信ができ、中にはクリエイティブを自動で生成してくれる媒体もあります。

SSP との関係性

DSP とセットでよく耳にするのが SSP です。SSP（Supply Side Platform） は、広告を掲載したいメディアが「掲載可能な業種」と「最低落札価格」、「広告枠」などを登録し、メディア側の広告収益を最大化するためのプラットフォームです。

そのため広告主側のツール DSP と、広告掲載媒体（メディア）側のツール SSP がセットで活用されます。DSP と SSP が作用しあって広告が配信される仕組みは以下のとおりです。

まず、ユーザーが広告枠のあるサイトを訪れます。次にサイトが訪問ユーザーの情報（性別・年代・興味・行動履歴など）をもとに SSP へ広告のリクエストをおこないます。

次に SSP から DSP に、訪問ユーザーの情報と広告の入札可能な額がいくらかというリクエストを送信します。その後、各 DSP でオークションがおこなわれ、一番入札額が高い DSP から SSP へ返事を出します。

SSP は最も入札額が高い DSP の広告を広告枠があるサイトへ伝えて、次にサイトから DSP に広告を配信するようにリクエストがおこなわれます。その後、DSP から広告が配信されてサイト上に表示される仕組みです。ユーザーがサイトに訪れるたびにこのやり取りがリアルタイムにおこなわれています。

DSP のメリット

自動で広告配信を最適化してくれる以外にも DSP には大きく分けて3つのメリットがあります。例を交えて説明します。

さまざまなデータを活用したターゲティング

DSP は、各社が持つユーザーの購買データや連携するメディア内の行動データ、企業のデータなどを用いてターゲティングします。

例えば「楽天 DSP」であれば、楽天会員が楽天トラベルで予約する頻度や、楽天ふるさと納税の注文総額をもとにターゲティングができる「カスタムセグメント_楽天サービスデータ」、楽天市場の商品の閲覧履歴や購買履歴をもとにターゲティングできる「ベーシックセグメント」が活用でき、さまざまな業種に特化した配信が可能です。

膨大な広告在庫を所有しているため多くのインターネットユーザーにリーチできる

DSP で言う「広告在庫」とは、将来の一定期間内に予想される広告の表示回数を指します。そのため、特定のメディアの面を買い切って広告を掲載する純広告や、オークションで勝ち検索結果表示されるリスティング広告と違い、膨大な広告在庫を所有しているため、より多くのユーザーに向けて広告配信できます。

例えばフリークアウト社が提供する DSP「Red」では、国内最大級の月間8,500億インプレッションを超える広告在庫を保有しています。

顕在層だけでなく、潜在層へ向けた配信も可能

顕在層だけでなく潜在層への広告配信ができることも、DSP のメリットです。顕在層向けの広告配信ができるリスティング広告やリマーケティング広告は潜在層への配信が難しいです。

一方で、DSP は自社や連携している会社が保有するサイト内の行動データや購買データをもとに、類似した属性を持っているインターネットユーザーに対して広告配信ができるため、まだサイトへ訪れていないような潜在層まで広告を届けることが可能です。

DSP のデメリット

ここまでメリットを紹介してきましたがデメリットもあります。配信を検討している場合、あらかじめ理解しておくといいでしょう。

細かい調整ができないため成果の改善が難しい

膨大なデータや機械学習によって最適化する DSP は、運用者が手動で調整できる範囲が少ないのがデメリットでもあります。

例えば EC 業界で使われることが多い「Criteo」は、フィードの情報から商品ごとにバナーとリンク先を AI が自動で作成し、運用も AI による自動運用です。運用者が調整できるのは予算と入札くらいです。

媒体によって出稿条件がある

DSP には最低出稿金額やサイトの UU 数、業種などの出稿条件が指定されている媒体も存在します。

例えば「Criteo」で配信対象とするサイトは、1日あたり1,500 UU 以上、もしくは直近1ヶ月間で4万 UU 以上が必要です。マイクロアド社が提供する「UNIVERSE Ads」では、最低出稿金額は無いものの、サードパーティーデータを活用した場合の配信には最低出稿金額が設定されています。

DSP での配信を検討している場合は、事前に出稿できるか条件を確認のうえ準備を進めましょう。

他の Web 広告との違い

次に、リスティング広告やアドネットワーク広告（ディスプレイ広告）のようなさまざまな種類がある Web 広告との違いを解説します。

他の Web 広告と違って DSP には、 「配信面の幅の広さ」や「豊富な広告在庫で多くのユーザーへリーチできること」、「独自のターゲティング」、「出稿条件」などの特徴があります。

例えば、リスティング広告の配信面は検索結果やネイティブアプリなどですが、アドネットワークと DSP はさまざまな Web サイトに配信されます。

また広告のクリック単価も、アドネットワークは数十円と低い傾向にあるものの、リスティング広告の場合、数百円から数千円になることもあります。

	配信面	広告枠の多さ	ターゲティング	クリック単価（クリック課金制の場合）	最低出稿金額
DSP	Web サイトの広告枠とネイティブアプリなど	多い	デモグラフィック以外にも、各社独自のターゲティングを使用可能	高め	媒体による
リスティング広告	検索エンジンの検索結果画面（検索パートナーなどの 特定の Web サイトも含む）	キーワードの検索数により異なる	キーワード・デモグラフィック	高め	なし
アドネットワーク	Web サイトの広告枠	多い	デモグラフィック・各媒体の定義する興味関心オーディエンスなど	低め	なし

10個の主要 DSP 

DSP にはさまざまな種類があります。各 DSP の特徴を理解した上で、自社のサービスに合っている DSP を選定して活用することが重要です。代表的なものを10個紹介します。

Criteo

フランスに本社を置くCRITEO 株式会社が提供する DSP の Criteo は、日本の EC サイトの売上上位100社のうち、85％以上の企業で使用されている DSP です。

Criteo エンジンによる機械学習と、Criteo が保有する膨大な消費者行動データを基にした配信ができる点が特徴です。

ユーザーの閲覧履歴をもとに、興味を持ちそうな商品の広告（＝ダイナミック広告）を配信できるため、総合通販や EC サイトを持っている企業、求人・転職、不動産、ホテルなどの業界で特に効果を発揮します。

Criteo での出稿には、最低出稿料金が50万円以上かつ月間の UU 数4万以上という2つの条件を満たす必要があります。

特徴的なターゲティングとして、サイト訪問者や購入履歴のあるユーザーに対して、閲覧履歴をもとに興味を持ちそうな商品を表示させる「ダイナミックリマーケティング」や、アカウントのデータを拡張して新規顧客向けにターゲティングができる「Similar」、コンバージョンデータや広告主が保有する顧客データをもとに直近の閲覧商品や購買行動を用いて類似性が最も高いユーザーへ配信できる 「Lookalike」があります。

Criteo では、広告主の目標に合わせた最適化のエンジンが複数用意されていたり、フィードのデータをもとに効果的なバナーを自動生成するなど、EC サイトに必須と言っても過言ではないくらい優れた DSP です。

▼ Criteo についてはこちら

Logicad

Logicad は、Logicad が独自開発した人工知能「VALIS-Engine」を用いて、リアルタイムでコンバージョンの可能性が高いユーザーを識別したうえで、広告配信ができる点が強みです。、特にサプリメントや健康食品、スキンケアなどの中高年から年配層向けダイレクトレスポンス領域が得意な DSP です。

Logicad は初期設定費用もランニングコストもかからないため、導入しやすい点もポイントです。

DSP には、自分で運用するケースと、各 DSP を提供している会社に運用を任せるケースがあります。Logicad は専任の運用担当者が付いてくれるため、ターゲットの選定から配信先の調整、効率改善に向けた施策立案などをおこなってくれます。そのため、工数の削減にも期待ができます。

Logicad の特徴的なターゲティングには「VALIS 類似」と「テレビ CM リアルタイム連動型広告」の2つがあります。

「VALIS 類似」は、コンバージョンしたユーザーのデーターをもとに「VALIS-Engine」がリアルタイムで類似度を判別して広告を配信する方法です。「テレビ CM リアルタイム連動型広告」は、広告主の CM が放映された情報をリアルタイムに検知し、放映後3～8分以内に地域・性別等がセグメントされた視聴者の PC・スマートフォンなどに対して広告を配信する方法です。

▼ Logicad についてはこちら

RMP – Display Ads（楽天 DSP）

RMP – Display Ads は楽天が提供する DSP で、1億以上の楽天会員とそのユーザー ID に基づくデータからターゲティング配信をおこなえるのが1番の特徴です。

楽天市場だけではなく、楽天トラベル、楽天ビューティー、楽天ふるさと納税といった各サービス上の閲覧データや購買データも使えるため、コスメ、ファッション、グルメ、ペットなど、楽天市場でよく購入されるもの以外にも、楽天が展開しているサービスに関連のある旅行・ホテルなど、さまざまな業種で効果が期待できます。

RMP では最低出稿金額が設定されており、会員情報や購買データを活用するベーシックセグメントは、1つのターゲティングにつき最低50万円から配信ができ、購買データや購入までの期間や頻度の掛け合わせできるカスタムセグメントでは、1つのターゲティングにつき最低100万円から配信できます。

RMP の特徴的なターゲティングは、「ベーシックセグメント」や「カスタムセグメント_楽天サービスデータ」、「カスタムセグメント_楽天サービスデータ」の3つです。

「ベーシックセグメント」では、楽天市場での閲覧・購買履歴をもとにターゲティングできます。「カスタムセグメント_楽天サービスデータ」では、楽天トラベルや楽天ビューティーといったサービスの利用履歴や利用金額などをもとにターゲティングができ、「カスタムセグメント_楽天サービスデータ」では、楽天のポイントカードをもとにしたオフラインでの購買データをもとにターゲティングできます。

Amazon DSP

Amazon DSP は、大手ショッピングサイトの Amazon が提供する DSP で、Amazon 内外問わず広告配信ができ、Amazon.co.jp 内に掲載できる唯一の DSP です。Amazon が保有する膨大な購買データを活用したターゲティングができ、Amazon で商品を販売していなくても広告配信できる点も特徴です。

Amazon に広告運用をお願いするマネージドサービスを利用する場合の最低出稿金額は、ひと月あたり300万円です。この金額を下回る場合でも、代理店にて運用するセルフサービスが存在するため、配信を考えている場合は、取扱のある各代理店にお問い合わせするといいでしょう。

Amazon DSP の特徴的なターゲティングには、「ホットカスタマー」や「ライフスタイル」、「ASINリターゲティング」があります。

「ホットカスタマー」は、過去30日の間に指定したカテゴリに属する商品ページを閲覧したユーザーに広告配信ができ、「ライフスタイル」では特定のライフスタイルに関連した複数の商品カテゴリに関心を持つユーザーに広告配信ができます。

また、「ASIN リターゲティング」では、Amazon 内での行動をもとに、商品やブランドに興味のあるユーザーや類似するユーザーに広告を配信できます。

UNIVERSE Ads

UNIVERSE Ads は、Ponta カードの利用データ、セゾンカードの購買データ、各専門メディアのデータ（地球の歩き方、マイナビニュース）などのデータを活用して広告配信ができる DSP です。

就職、結婚、出産などライフイベントに関するデータや、自動車、旅行、エンタメビジネス関連などの専門メディアのデータなど200以上のデータ連携をしているため、ここに記載している業種以外でも効果が期待できる DSP です。

リターゲティングのみの配信に最低出稿金額はかかりませんが、サードパーティーデータを活用した配信は、データを提供しているベンダーによって最低出稿金額が異なります。

UNIVERSE Ads の特徴的なターゲティング「サイコグラフィックターゲティング」を使用すると、ユーザーの Web 行動履歴を用いて独自に分析した2,500以上の興味関心カテゴリを指定したり、200社以上の企業のオンライン・オフライン行動データや、業界・業種に特化した消費行動分析を活用できます。

Red

株式会社フリークアウトが提供する DSP の Red は、 モバイル・PC・コネクテッドテレビなど、多様なフォーマットの広告在庫を保有しています。国内最大級の位置情報データや豊富なセカンドパーティーデータ（Ponta、StudyPlus など）を活用できるため、学校・クリニックや小売店など店舗型のビジネスで効果が期待できます。

動画配信サービス「Red プレミアム動画配信」内にインストリーム動画広告を配信する場合のみ、50万円の最低出稿金額が設定されています。

Red プレミアム動画配信では TVer・GYAO!・DAZN といった有名動画配信サービスの広告枠に広告を配信できます。

特徴的なターゲティングとして、家計簿アプリのデータを使った購買データの拡張、事前のアンケート情報を使った配信が可能です。

Bypass

Bypass は、マルチデバイスに対応した DSP で複雑化した広告の仕入、運用を一元管理できます。

アカウント発行・システム利用料が無料で、Bypass を利用して配信した広告費のみの請求となるため、導入しやすい点がメリットです。

また、シンプルな管理画面を用いており、画面一つで操作が可能となっています。設定方法もシンプルで、最短即日で広告配信が可能な面も強みです。これまで運用をしたことがない場合でも始めやすく、まず試してみたいというケースではおすすめです。

ScaleOut

ScaleOut は、独自開発の広告配信用 ID を用いたターゲティング配信ができる DSP です。独自開発の広告配信用 ID を用いることで、プライバシーに配慮した広告配信ができます。最低出稿料金は50万円となっています。

ScaleOut の特徴として、ブランド毀損やアドフラウドのリスクを排除した広告配信にも力をいれており、広告主のイメージ低下を招くようなサイトに配信されていないか検証するための「アドベリフィケーションツール」をデフォルトで搭載しています。アドベリフィケーション事業を専門とするグループ会社モメンタム社と協業している点からも、透明性の高い健全な広告配信を強化していることが伺えます。

ADMATRIX DSP

ADMATRIX DSP は、国内最多の IP データ量と特許出願技術による独自のデータを使って配信可能な DSP です。IP データをもとにして、選定した企業単位でのターゲティングができるため、BtoB サービスでの効果が期待できます。初期費用はかからず、最低出稿金額は30万円です。

特徴的なターゲティングとして、動的 IP を判別して企業単位でターゲティングが可能な「オフィスターゲティング」や、気象庁のデータベースと連携をして、天気と連動したターゲティングが可能な「Weather（天気連動）配信」があります。

KANADE DSP

KANADE DSP は、独自のユーザ行動履歴解析技術を使った DSP です。独自のユーザー行動履歴解析技術や画像解析 AI を用いることで、ユーザーのサイト上の閲覧履歴や商品のデザイン傾向を解析し、最適な関連商品を広告として配信できます。

そのため、総合通販やアパレル、求人、賃貸のポータルサイトなどで効果が期待できます。最低出稿金額は30万円です。

特徴的なターゲティングとして、優良顧客の行動履歴を分析し対象のサイトで類似した行動をとるユーザに広告を配信できる「オーディエンス拡張」や、サイト訪問ユーザのコンバージョンを促進する「パーソナライズリターゲティング」といったターゲティングがあります。

売上最大化の選択肢の一つとして

Web 広告といえば、リスティング広告を最初に検討して実施するケースが多いと思います。しかし、自社のサービスや商品に合った DSP を活用することで売上の最大化につながることもあります。サービスの拡大を検討している場合や売上をもっと伸ばしたいと考えているのであれば、選択肢の一つとしてぜひ検討してみてください。