EC サイトの Web 広告に携わっている人であれば、一度は「Criteo(クリテオ)」という名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
年々進化を遂げ、今や大規模な EC サイト・商品点数が多い業種には欠かせない広告媒体です。2016年の時点で、日本の EC サイトの売上高上位50社のうち65%が Criteo を導入しています。
今回は「Criteo がいいって聞くけど何がいいの?」「要するに動的リマケでしょ?」という人のために、基本的な情報から実際の配信実績、最適化方法までまとめました。
Criteo とは、ユーザーの閲覧履歴をもとに興味を持ちそうな商品の広告(=ダイナミック広告)を配信できる広告媒体です。
以下のような形式で表示されます。1度は見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
Criteo で利用できるターゲティング方法は以下の通りです。サイトに来たことがあるユーザーはもちろん、まだ接触したことがない新規ユーザーにリーチできるターゲティング方法もあります。
今回の記事では、下記のターゲティングの中でも中核の機能である Criteo Dynamic Retargeting にフォーカスして説明していきます。
ファネル(行動の段階) | 検討 | 獲得 |
---|---|---|
目的 | サイト流入数の増加 | ・コンバージョン獲得 ・ROI 最適化 |
メニュー | Consideration | ・Criteo Dynamic Retargeting ・Criteo Customer Acquisition ・Audience Match |
以下2つの言葉は意味を混同しがちですので、この記事においての意味を定義しておきます。
動的リマーケティングを配信できる媒体はいろいろありますが、Criteo の強みは何といっても運用の手間がかからないのにパフォーマンスがいいことです。
Criteo はダイナミック広告に特化しているだけあって、他の媒体の動的リマーケティングと比べても成果がよくなる傾向が見られます。
では他媒体と何が違うのか、Criteo の動的リマーケティングの強みの理由を解説します。
Criteo の動的リマーケティングを配信するためには、以下の5種類のタグを適した場所に設置する必要があります。
そのうえで、各タグに商品の ID や個数、価格などを動的に反映させる必要があります。この設定をすることで、タグで様々な情報を収集できるようになり、ユーザー毎に最適な商品をレコメンドすることができるようになります。
Criteo は Google、Yahoo!、Facebook など、媒体を横断して豊富な広告枠を持っており、Criteo で配信するだけで多数の広告枠で動的リマーケティングを行うことができます。
日本の人口の92%以上にリーチすることができるという情報がありますので、Criteo で配信すればサイトに来たほとんどのユーザーをリマーケティングすることができるということになります。
また、Yahoo! の広告枠に第三者媒体として出稿できる唯一の媒体でもあります。
3つの構成要素(システム)による自動最適化が、他媒体と違う要素の1つであり、Criteo が成果を出せる理由でもあります。Criteo のシステムは、以下の3つから成り立っています。
予測入札エンジンでは、どの配信面に、どのユーザーに、いくらで入札するべきかを判断します。Criteo がタグによって取得しているビッグデータから得られた情報を元に、各ユーザーのコンバージョン確度を判断し、それによっていくらで入札するかを決定します。
レコメンドエンジンでは、どの商品を広告上に表示するべきかを判断します。Criteo が持っているビッグデータと、タグから得られたユーザーの行動履歴・閲覧履歴を元に、どのユーザーにどの商品を見せるかを決定します。
単純に閲覧した商品だけでなく、閲覧していないけど興味を持ちそうな商品も表示される仕組みとなっており、実際に50%以上のユーザーがサイト訪問時には閲覧しなかった商品のバナーから流入してコンバージョンに至っています。
クリエイティブエンジンでは、どのような見た目のバナーにするべきかを判断します。
RTCO(リアルタイムクリエイティブ最適化)という機能により、バナーの5つの要素(サイズ、テンプレート、レイアウト、カラーセット、アクションボタン)をかけ合わせて17兆以上のパターンのバナーを配信することができます。
また、1つの商品画像を大きく見せて強調するようなレイアウトではどの商品を強調するべきか、タイトル・価格・アクションボタンのどの要素を強調するべきかなども自動でテストされバナーの最適化を行ってくれます。
この3つのエンジン(システム)を使って、媒体をまたいだ広いネットワークに向けて広告を配信しています。それにより高いパフォーマンスを維持したまま大量のコンバージョンを獲得することを可能になっています。
管理画面上に表示される最適化エンジンは、目標や商材に合わせて、以下の5つの中から1つ選ぶことができます。
最適化エンジン | 詳細 |
---|---|
CVR 最適化(CRO エンジン) | コンバージョンするユーザーを予測するエンジン |
ROAS 最適化(COSO エンジン) | 客単価の高いユーザーを予測するエンジン |
Value 最適化(VO エンジン) | 収益率の高いユーザーを予測するエンジン |
目標 ROAS 自動最適化(ARO エンジン) | 目標 ROAS に向かって自動で最適化するエンジン |
目標 CPA 自動最適化(ACO エンジン) | 目標 CPA に向かって自動で最適化するエンジン |
2017年にリリースされた ARO エンジンとACO エンジンを合わせて AO エンジンと呼びます。
この2つが最新のエンジンとなっており、Criteo もこの2つのどちらかを利用することを推奨していますので、迷った場合はこの2つのどちらかを選択することをお勧めします。
広告の管理画面上では以下のように表示されています。デフォルトの設定では「CVR 最適化」になっています。
変更する際は媒体の担当者にメールで連絡し変更依頼をする必要があります。
ダイナミック広告での配信が前提となるので、商品点数が多い商材は相性がいい傾向があります。
商品のバリエーションが多いほど、レコメンドできる商品の幅が広がり、ユーザーひとりひとりにより最適な広告内容で配信することができるためです。
業種別の出稿数ではファッション通販がもっとも多く、次いで人材、不動産、通販全般となっています。
出稿する商品点数に下限はないので数点でも配信することはできますが、Criteo の強みを活かすために10点以上の商品点数で配信することが推奨されています。
ここからは、弊社が運用しているアカウントでの配信実績をご紹介します。2つのアカウントは Criteo で動的リマーケティングの配信をおこなっています。
1つ目に紹介するのは、ファッション系の商品を通販で扱うアカウントです。対 Google、Yahoo! のコンバージョン数比、コンバージョン率比、ROAS 比を以下の表にまとめました。
比較項目 | 対 Google | 対 Yahoo! |
---|---|---|
コンバージョン数比 | 4.6倍 | 8.0倍 |
コンバージョン率比 | 115.8% | 118.4% |
ROAS比 | 117.9% | 95.8% |
品数が多く、Criteo との相性も良いので Google、Yahoo! の動的リマーケティングに比べて、それぞれ4.6倍と8.0倍のコンバージョン数を獲得しています。ROAS に関してのみ Yahoo! よりも少し低い数値になっています。
2つ目に紹介するのは、化粧品通販をおこなっている企業のアカウントです。こちらは Google と Criteo のみ動的リマーケティングで広告の配信をおこなっています。
比較項目 | 対 Google |
---|---|
コンバージョン数比 | 2.9倍 |
コンバージョン率比 | 47.9% |
クリック単価比 | 1/5以下 |
こちらは Criteo で新規ユーザー獲得のメニューも配信しているのでコンバージョン率は Google と比べて47.9%と低いですが、その分クリック単価が Google と比べて1/5と大幅に低くなっています。結果的に獲得単価が Google と比べて半分以下まで低くなりました。
どちらのアカウントも先ほど説明した、商品点数が多く、ユーザーひとりひとりに合った広告を配信できたため成果をあげられたと考えられます。
Criteo には出稿条件があり、これを満たしていないと事前掲載可否の審査を通過することができません。事前に確認しておきましょう。
まず第一に、広告を出稿するサイトの直近30日間のユニークユーザー数が4万以上である必要があります。
事前掲載可否の審査で、Google Analytics や Similar web などでユニークユーザー数が確認できるデータ(キャプチャーなど)を送付する手順となっています。
ただし、季節変動などは考慮されないため、一時的にユニークユーザー数が増えているタイミングで事前掲載可否審査を依頼することも可能です。
また、申し込み時の最低出稿金額は50万円となっています。ある程度の予算を確保して、Criteo の導入を考えましょう。
ここからは出稿手順について簡単に説明します。全体的な流れは以下の通りです。
Criteo は配信までに媒体側とやり取りする回数が多く、またタグの実装方法が複雑なので、他の媒体と比べて実装までの期間が長くなることが多いです。流れを把握しておき、準備期間は3か月ほど見積もっておきましょう。
発注前に掲載可否確認を依頼します。サイト URL やユニークユーザー数のキャプチャーを共有し、掲載可となったら申込情報・事前ヒアリングシートを記入して発注に進みます。
発注が完了するとアカウントが作成され、タグと管理画面が発行されます。次にデータフィードの準備が求められるので、データフィードの作成とサーバーへのアップロードを行います。
データフィードの取り込みが完了したら、タグの実装とロゴの入稿を行います。タグ実装後には Criteo 側の実装確認が、ロゴ入稿後には Criteo 側のデモバナー作成と広告主側のバナー承認が必要になります。
EC 業種用と EC 以外の業種用のテンプレートが分かれています。入力必須の項目は商品 ID・商品名・画像 URL など、動的リマーケティングのデータフィードとしては一般的なものがほとんどです。
アップロード先のサーバーは自社サーバーか Criteo サーバーかを選ぶことができます。
上記でも説明した5種類のタグを適したページに設置します。その際、商品 ID や商品の価格などの情報をタグが取得できるように設定する必要があります。
また、商品 ID はカタログフィードの商品 ID と一致している必要があります。フィードとタグの不一致率が20%以上になると広告配信を開始することができません。
入稿できるファイル形式を表にまとめました。アップロード時の参考にしてください。
項目 | 詳細 |
---|---|
形式 | JPG/PNG |
容量 | 5MB |
サイズ | 縦横800から1200px以内 ※600から1200px推奨 |
ここまで完了したら、Criteo にプレローンチを依頼します。プレローンチチェックでフィード・タグ・バナー、その他一致率など設定に問題がないことが確認されたら、配信開始希望日に配信が開始されます。
以上まで、基本的な情報や出稿方法についてお話ししてきました。ここからは応用編として、Criteo で成果を最大化するためのテクニックをいくつかご紹介します。
Criteo の成果を最大化するためには、最適化エンジンに十分なデータ量と学習期間を与える必要があります。
配信後最初の1週間はデータ収集期間なのでパフォーマンスが悪くなることが多いですが、そこから徐々に目標数値に近づいていきます。データ収集期間中に頻繁に入札価格や目標数値の変更をしてしまうと、データ収集の邪魔をしてしまうことになります。
少なくとも最初の1週間は変更を加えず、その後の調整も週に1回程度にし、1回の調整は±20%の範囲内に収めることをおすすめします。また、最適化エンジンは過去60日分の学習データで動いているため、配信を停止するとその期間だけデータが少ない状態での配信となりパフォーマンスが低下してしまいます。
たとえば、月末に予算が足りなくなり月後半の数日から十数日は配信を停止する、というような配信を繰り返してしまうと、常に学習データが足りない状態での配信となり、いつまでたっても最適化された状態で配信することができません。
十分な予算を確保して、継続的な配信ができるように準備しましょう。目安としては、ユニークユーザー数が4万から10万のアカウントでは、月の広告費は20万から100万円程度になります。
フィードの質には「最新情報になっているか」と「情報量が十分か」の2つの面があります。
ユーザーに最適な商品を届けるためには、データフィードの情報を常に最新にしておくことが必要になります。例えば在庫情報が最新でないと、在庫がない商品のページにユーザーを誘導してしまい、コンバージョン率の低下につながります。
新しい商品がフィードに反映されていないと、せっかくの新商品をユーザーにアピールすることができません。
また、タグが設置されているサイトとデータフィードの情報がずれるとフィードの不一致率が上昇し、上記でも説明した通りこれが20%以上になると広告が配信できなくなります。
商品点数が膨大で手動での更新が難しい場合は、フィード管理ツールを利用して自動化することをおすすめします。
データフィードには必須項目のほかに、「size」「color」などの任意項目があります。データフィードの情報量が多いほどレコメンド精度が向上しますので、入力できる情報はすべて入力しましょう。
オプション機能を使うことで、プラスアルファの情報をバナーに追加することができます。クリック率やコンバージョン率を上げるのに効果的な機能ですので、以下の表でオプション内容を確認して是非ご活用ください。
オプション名称 | 詳細 |
---|---|
ディスカウントバッジ | 割引率を表示してくれるバッジです。 |
スターレイティングバッジ | 商品評価を表示してくれるバッジです。星以外のデザインパターンも選ぶことができます。 |
エクストラバッジ | 画像素材を入稿することで、バッジとして表示させることができます。 |
クーポン | ロゴエリアもしくはバナーサイズ全面に、任意の画像をローテーションで表示することができます。 |
Criteo は導入ハードルは高いものの、一度配信を開始すれば調整の手間がかからず大きな成果を獲得することができる媒体です。
Criteo 1つで複数のネットワークに配信できるという強みもありますので、動的リマーケティングを導入していない EC 業種の方は Criteo を導入するだけで獲得数・獲得単価が大きく良化する可能性が高いです。ぜひ検討してみてください。
また、ここでは動的リマーケティングを中心に解説しましたが、Criteo は2018年から動的リマーケティング以外にも力を入れており、ダイナミック広告特化の特徴を活かしつつ新規ユーザーにもリーチできるプロスペクティング配信のメニューが増えてきています。
今までは訪問ユーザーにだけリーチできる媒体でしたが、今では新規客にリーチし、訪問ユーザーを増やすというところまでできるようになりました。今後も注目の媒体ですので、最新情報を見逃さないようにしておきましょう。
広告事業部 マネージャー
2015年4月に新卒として入社。2019年にマネージャーに昇格。広告運用の仕事をメインに、現在はサイト改善提案やブログ執筆にも力を入れている。数値をもとにしたサイト改善提案が得意。趣味は動画を見ること、ゲームをすること。
あなたの広告アカウントを無料診断します
広告アカウント診断詳細なお見積りをご希望の方はこちら
お問い合わせ支援事例などをまとめたサービス紹介資料はこちら
サービス資料のダウンロードはこちら