運用型広告をはじめとするマーケティング業界では、たくさんの専門用語が出てきます。覚えてしまえば何てことないのですが、新入社員や初めてマーケティング業務をおこなう方にとっては最初の課題になるのではないでしょうか。
CPC や CVR などに比べると登場機会が少ない「CPM」ですが、成果を測るうえで大事な指標の1つです。今回の記事では CPM の解説と CPM と似ている用語との違い、そして CPM 課金制で配信できるメニューや注意点を紹介します。
CPM(Cost Per Mille)とは、Web 広告の1,000回表示あたりの費用のことです。Cost Per Mille の「Mille」は長さの単位の「マイル」ではなく、ラテン語で1,000を意味する「ミル」です。
流入数やコンバージョンを目的とせず、どれくらいたくさんの人に見られたか・知ってもらえたかなどの認知獲得を目的とした広告配信でよく使用される指標です。
CPM は、広告費を広告が表示された回数で割り、1表示あたりの広告費を出してから、1,000をかけて算出します。
CPM=広告費/広告の表示回数×1,000
例えば、ある広告が50万回表示され、その際の広告費が10万円だった場合は、計算式は以下のようになり、CPM は200円となります。
CPM=100,000/500,000×1,000=200
取り扱う商材や広告配信媒体によって、CPM の相場は異なります。以下の表は、弊社のこれまでの配信実績を参考に、1ヶ月間の CPM を商材や配信媒体ごとにまとめたものです。これから CPM 課金で広告を運用する予定の方はもちろん、既に運用を進めている方もぜひ参考にしてみてください。
業種や業界 | toB/toC | 広告媒体 | CPM |
---|---|---|---|
アルバイト関連事業 | toB | 2,000~2,500円 | |
EC 支援事業 | toB | 7,000円前後 | |
専門職育成事業 | toC | Google(YouTube) | 40円前後 |
特定業種の転職スカウトサービス | toC | Google(YouTube) | 600円前後 |
定期購入向け EC 通販 | toC | ロジカド | 100~200円 |
CPM は、似た名称の指標がいくつか存在します。これらは算出に用いる数値の指標や、表示回数何回あたりに対する指標なのかが CPM と異なるので注意が必要です。
今回はよく似た指標として、CPC と CPV、eCPM、vCPM の4つを、算出に用いる計算式とセットで紹介します。一つ一つの指標の意味合いを理解しつつ、覚えていきましょう。
CPC(Cost Per Click)は、1クリックにかかる費用を表し、検索広告などの課金方法としても用いられます。掛かった広告費を広告の表示回数で割って算出します。
CPC=広告費/広告の表示回数
CPC と CPM の違いは費用が掛かる対象です。表示回数に対しての費用が CPM、クリックに対しての費用が CPC と覚えておきましょう。
CPV(Cost Per View)は1視聴に対してかかる費用を表し、主に動画広告の指標として用いられます。掛かった広告費を動画広告の再生数で割って算出します。
CPV=広告費/動画広告の再生数
動画広告における視聴の定義は媒体によって異なりますが、Google 広告の視聴は30秒間(30秒未満の広告の場合は最後まで)視聴した場合、または動画に対して操作をおこなった場合のいずれかが「視聴」として定義されています。そのため視聴回数と表示回数はイコールになりません。
CPM は単純に広告表示にかかった費用、CPV は動画視聴1回に対しての費用と考えると、違いが分かりやすいです。
eCPM(effective Cost Per Mille)は、表示回数課金ではない課金方法で配信された Web 広告について、1,000回表示させるごとに発生した事実上の費用のことです。CPM と同様、掛かった広告費を広告の表示回数で割り、1表示あたりの広告費を出してから、1,000をかけて算出します。
eCPM=広告費/広告の表示回数×1,000
「表示回数課金ではない課金方法で配信された広告」には、クリック課金やインストール課金などが挙げられます。CPM 換算することで、表示回数に対してどれだけの費用が発生したかを確認できます。
このように、eCPM と CPM は配信している広告の課金方法によって使い分けますが、ほぼ同じ意味だと考えて問題ありません。
vCPM(viewable Cost Per Mille)は、広告費を「Web 広告で実際に閲覧者に視認できる範囲に表示された回数」で割った指標です。掛かった広告費を「広告の視認範囲の表示回数」で割って、1,000をかけて算出します。
vCPM=広告費/広告の視認範囲の表示回数(ビューアブルインプレッション数)×1,000
CPM との違いは、表示回数のカウント方法です。CPM の算出で用いる表示回数がユーザーから見えない部分に広告が表示された場合でも1回としてカウントするものであるのに対し、vCPM で用いる表示回数は実際にユーザーが視認できる範囲に広告が表示された場合のみ表示回数としてカウントするものとなっています。
この「実際に閲覧者が視認できる範囲に広告が表示された場合」は、Google、Yahoo! それぞれで以下のように定義されています。
上記の定義からも、vCPM はユーザーが「実際に広告を閲覧した状態」により近い表示回数をもとにCPMを算出していることが分かるかと思います。
算出に用いた、広告の視認範囲の表示回数(ビューアブルインプレッション数)」については、以下の記事に詳細な説明があるので、参考にしてください。
▼ ビューアーブルインプレッションの詳細はこちら
ビューアブルインプレッションとは?各媒体の定義を正しく理解し、分析と改善提案に活用しよう
ビューアブルインプレッションとは、ディスプレイ広告の表示回数に関する指標で、ユーザーの目に見える範囲に表示されたインプレッションを意味します。GoogleとYahoo!での定義の違い、確認方法、活用方法までをわかりやすくまとめました。
クリックされない限り課金されない CPC 課金の広告と異なり、CPM 課金の場合は表示されるだけで費用が発生します。しかし、目的によっては CPM 課金の方が KPI 達成に近づけるケースもあります。
CPM 課金を使うと CPC 課金や CPV 課金に比べて、より広くリーチして配信できます。
一般的にバナーを使った広告のクリック率は0.1%から高くても5%程度です。CPC 課金だと、その数%のユーザーに対して配信面も絞って配信することになるので、広告を見てもらえる母数が少なくなってしまうことは想像できると思います。
一方、設定したターゲットになるべく多く広告を見せることが目的の CPM 課金の場合は、クリックされるかは考慮されずに配信されるので、設定したターゲットを必要以上に限定することなく、多くの人に広告を表示できます。
表示回数に対して課金される CPM 課金は、何回クリックされても課金額は一定です。クリック率が高ければ高いほど、クリック単価は安価になっていきます。
さらに、広いリーチで配信できるため、CPC 課金に比べて CPM が下がる傾向もあります。以上の理由で、結果的に CPC 課金よりもクリック単価が安価になるというケースもあります。
CPM 課金のメリットについて紹介してきましたが、配信には注意点もあります。
CPM 課金の場合、競合の多さや競合の予算の増減によって、自社の CPM が大きく左右されます。
例えば年度末は、予算消化のために各社広告費用を増やす傾向があったり、年末年始やゴールデンウイーク、お盆などの大型連休も各社セールなどのキャンペーンを用意するため、CPM が高騰する傾向にあります。
もちろん CPC 課金の場合も競合の影響を受けますが、クリックの有無に関わらず表示のたびに費用が発生する CPM 課金の方が受ける影響は大きくなります。
さらに、競合状況による CPM の増減は運用で介入できることが、ほとんどないことも注意が必要です。季節要因や競合状況を見極めながら予算配分を決定していく必要があります。
クリックされたときに費用が発生する CPC 課金と違い、表示されるだけで費用が発生するため、全くクリックされなくても費用が発生します。
サイト流入やその先のコンバージョンを目的としている場合、クリック率によっては想定以上にクリック単価が高くなり、効率が合わなくなる可能性があります。
また、Google ディスプレイ広告や Yahoo! ディスプレイ広告では、バナーが視認範囲に表示されたら課金になり、多くの場合ブログなどのコンテンツの間にバナーが入ります。
ユーザーはコンテンツの情報を読んでいる最中なので、表示されても視界に入らない可能性もあります。そのような場合でも視認範囲に表示されているため、CPM 課金では費用が発生します。
CPM 課金を使用する場合には、まずは「広告を多く見せること」が目的であることを明確にし、注意点を理解したうえで配信を進めていく必要があります。
CPM 課金を使用する配信メニューを紹介します。SNS 広告を始めとしたバナーや動画を使った広告が CPM 課金を選択できる傾向にあります。また目的によっては CPM 課金のみで配信可能なこともあります。
CPM 課金の場合はどれだけクリックされても表示回数が増えなければ金額は一定です。そのためクリック率が高ければ高いほど、安価にサイトへ流入させることができます。一方で、クリック率が低いと、クリック単価が高くなるという注意点もあります。
ほとんどの SNS 広告媒体では、目的によって CPM 課金を選択できます。具体的には以下の媒体で使用できます。なお、Meta 広告(Facebook 広告と Instagram 広告)のみ、キャンペーン目的を選ぶ前に、購入タイプを選択するので別々にまとめています。
媒体名 | キャンペーン目的 |
---|---|
LINE 広告 | ・ウェブサイトへのアクセス(手動) ・ウェブサイトコンバージョン(手動) ・ウェブサイトコンバージョン(自動) ・アプリインストール(手動) ・アプリインストール(自動) ・アプリのエンゲージメント(手動) ・アプリのエンゲージメント(自動) ・動画の再生(手動) ・動画の再生(自動) ・友だちの追加(手動) ・商品フィードから販売(自動) ・リーチ(手動) ・リーチ(自動) |
Meta 広告 (オークション) | ・認知度 ・リーチ ・ブランドの認知度アップ ・動画の再生数アップ ・店舗所在地の認知度 ・トラフィック(クリック課金も可) ・リンクのクリック ・ランディングページビュー ・Messenger と WhatsApp ・通話 ・エンゲージメント(ThruPlay課金も可) ・リンクのクリック ・ランディングページビュー ・Messenger と WhatsApp ・通話 ・リード ・インスタントフォーム ・Messenger ・コンバージョン ・通話 ・アプリの宣伝(クリック課金も可) ・アプリのインストール ・アプリイベント ・売上 ・コンバージョン ・カタログ販売 ・Messenger、Instagram、WhatsApp ・通話 |
Meta 広告 (リーチ&フリークエンシー) | ・認知度 ・リーチ ・ブランドの認知度アップ ・動画の再生数アップ ・店舗所在地の認知度 ・トラフィック(クリック課金も可) ・リンクのクリック ・エンゲージメント ・動画の再生数アップ ・投稿のエンゲージメント |
Twitter 広告 | ・ブランド認知度の向上 |
Pinterest 広告 | ・ブランド認知度 |
TikTok 広告 | ・リーチ ・コンバージョン ・アプリのインストール ・リード生成 ・コミュニティインタラクション |
Facebook 広告では、コンバージョン目的で配信する場合に CPM 課金を選択するため、効率よく獲得するためには、クリック率の改善が重要です。
Google ディスプレイ広告や Yahoo! ディスプレイ広告でも CPM 課金を選択できます。広告のクリック数よりも表示回数が KPI になっている場合に CPM 課金を選択します。一般的に CPC 課金で配信をおこなうよりも CPM(eCPM)が安価になる場合が多いです。
また、Google 動画広告(YouTube 広告)でも CPM 課金を選択できます。 CPC 課金や CPV 課金よりも CPM を安価におさえることができ、予算制限があるときや動画をより多く見てもらいたいときに使用します。
CPM 課金はより多くの人に広告を見せたい場合や、バナー・動画そのものを認知してもらいたいという目的においては有効です。
一方で、広告配信の目的がクリック以降のコンバージョンである場合、CPM 課金以外を選べない Facebook 広告などの媒体を除き、CPM 課金の選択には注意が必要です。
課金方法を選択するとき以外にも共通しますが、広告を配信する際にはまずはその目的を明確にし、それに合わせてターゲットやクリエイティブ、課金方法を始めとした配信方法を選択していくことが重要です。まずは目的を明確にした上で、上手に CPM 課金を活用していきましょう。
広告運用 コンサルタント
2020年1月に広告運用コンサルタントとして入社。新卒で入社した不動産会社向けシステム会社で、気づいたらマーケティング担当になっていて、サイト運営や広告運用などいろいろ携わった元”なんでも屋のぼっちマーケター” 広告運用以外だとGoogleAnalyticsとZapierが好き。鈴木愛理とハロプロに支えられ、毎日楽しく広告運用してます。
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