「Web 広告の成果が順調だったのに、最近になって突然 CPA が急上昇してしまった」
「これまで通りの広告運用をしているのに、なぜか CPA が高くなっている」
「上司やクライアントから『CPA が上がっている原因は何?』と聞かれたが明確な答えが出せない」
この記事を読んでいる方の中には、こうした悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。早く原因を特定し改善できるかは、広告運用者の腕の見せどころといえますが、原因が分からなかったり適切な施策を判断できなかったりすることもあるでしょう。
この記事では、CPA が高騰するそもそもの理由やキーワードマーケティング独自の分析方法を解説します。記事の後半では CPA を改善した事例とキーワードマーケティングの運用者が CPA が高騰しないために日々意識していることを紹介します。
目次
そもそも CPA が高騰する原因は以下の2つの中に眠っています。
CPA は広告費をコンバージョン数で割ることで算出されますが、広告費とコンバージョン数をさらに分解すると、以下の式で表すことができます。
CPA = 広告費(クリック数 × CPC)/ コンバージョン数(クリック数 × CVR)
上記から分かるように CPA は、CPC を CVR で割ることで算出可能です。例えば、CPC が200円で CVR が1%、CPA が20,000円の広告配信で CPC と CVR の変化で CPA がどう変わるか見てみましょう。
元の成果 | CPA 20,000円 = CPC 200円 / CVR 1% |
CPC が50円高騰した場合 | CPA 25,000円 = CPC 250円 / CVR 1% |
CVR が0.5%低下した場合 | CPA 40,000円 = CPC 200円 / CVR 0.5% |
CPC と CVR は、新たなクリエイティブや配信戦略、ページ変更のような内部要因で変動することもあれば、季節や競合他社の出稿状況のような外部要因で変動することもあります。あるいは、その両方も考えられます。
先ほど紹介した計算式からも分かるように、CPA が高騰する理由は CPC か CVR にあります。CPC と CVR がどういう原因で悪化しているのか細分化して特定できると、有効な手が見つかります。
ここからはキーワードマーケティングが独自に活用している運用型広告の分析方法を2つ紹介します。特に分析に課題や苦手意識がある人は、これから紹介する2つを活用するだけでこれまでよりも分析がスムーズになるので、ぜひ参考にしてください。
まず自社の状況を冷静に把握し、仮説を立てるのが重要です。そのために使うのが「課題解決フローチャート」です。
CPA が高騰する理由は CPC か CVR の影響です。しかし、CPA を改善するためには CPC と CVR がどういう原因で悪化しているのかまで細分化して特定しなければ有効な手を打てません。
以下は CPC と CVR に影響を与える要素を細分化してまとめたフローチャートです。自社でコントロールできることと、コントロールが難しいが調整可能なこと、自社ではコントロールが難しいことの3つに色分けしています。
まずは、どのような要因で CPC あるいは CVR が悪化したのかを特定し、自社でコントロールできる赤色から着手していくとよいでしょう。
上記のほかにもコンバージョン数が減少したときのフローチャートもこちらの記事で公開していますので、あわせてご覧ください。
リスティング広告分析で新人がつまずく4つのポイントとCPA&コンバージョン改善フローチャート|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
新人が分析タスクでつまずく理由として、①比較対象の設定が甘い/されていない、②目に付いた部分だけ分析してしまう、③事実と仮説の切り分けができていない、④自分の一次情報を根拠にしてしまう、ということがあります。解決策と分析する上で知っておくべき細分化方法をまとめました。
ある程度、解決すべき課題が絞り込めたら、今度はその課題を精度高く分析します。そこで使うのが、「分析4原則」です。課題解決フローチャートで課題を全体的に認識し、その数字を細かく具体的に分析していきます。
分析4原則とは、誰でもできる分析の基本となるキーワードマーケティング独自の考え方です。4原則は「ざっくり把握」と「最小単位」、「比較」、「時系列」があります。
それぞれどのように活用するかを、運用型広告を例に解説します。
まず、全体像をとらえることから始めます。ざっくり把握で見るのは、媒体やキャンペーン単位といった最上位階層の数値です。
目標としているコンバージョン数や CPA、広告費を中心に最低でも過去30日、違いが分からなければ過去3ヶ月、半年と期間を延ばしていってください。大まかに見ればいいので、細かい数値ではなく桁や傾向に注目しましょう。
ざっくり把握の良い例と悪い例は以下の通りです。太字で記載された箇所に着目して、良い例と悪い例を比較してみてください。
良い例 | キャンペーン A、B、C の3つのキャンペーン全てで CPA が上がっており、 最も予算を投下しているキャンペーン A から分析する |
悪い例 | キャンペーンA、B、C の3つのキャンペーン全てで CPA が上がっているが、 キャンペーン C しか確認せずに分析する |
最小単位とは、最も細かい粒度で情報を見ることです。検索広告であれば、キャンペーン単位でざっくり把握をしたら、次に見るのは広告グループやキーワードではなく、検索語句単位でのデータです。
明らかにターゲット外の検索語句での流入が増えていたなど、広告グループ単位では見落としてしまうような情報も、検索語句単位であればアカウントで何が起きているかが正確に分かります。
ざっくり把握だけで CPA 高騰の要因を解明するのはほぼ不可能です。最小単位でデータを見ることで、何が起きているか明らかになり、改善アクションが導けます。
比較は、あるものと別のものを並べて差を確認することです。実施するときは比較対象を同じ条件にすることを意識してください。例えば、1ヶ月間のデータを比較するときは比較対象のデータも必ず1ヶ月間にします。また、データに不備があると誤った分析結果になるのでデータの漏れやダブりには要注意です。
もう一つ比較で大切なことは数ではなく率で見ることです。数だけで見てしまうと悪化の要因を見誤ってしまう可能性があるため、純粋な比較をするためにも率で見ることを意識してください。
比較の良い例と悪い例は以下の通りです。太字で記載された箇所に着目して、良い例と悪い例を比較してみましょう。
良い例 | 同じ広告グループ内の広告 A と B のクリック率を同じ期間で比較する |
悪い例 | 固有名詞と一般名詞のコンバージョン率を比較する |
時間の流れにあわせてデータを並べてみることで発見できることもあります。例えば、日別のデータを並べてみると、毎週同じ曜日で成果が悪化していることがあるかもしれません。
時系列でデータを分析することで季節変動や曜日による変化などのパターンを発見でき、この先起こることを予測して施策を打つことができます。
時系列の良い例と悪い例は以下の通りです。こちらも太字で記載された箇所に着目してみてください。
良い例 | 過去3年間のデータをもとに昨対比を見て傾向を掴む |
悪い例 | 過去のデータがあるにもかかわらず、前月からのデータしか見ない |
このように、4原則を意識することで、広告運用におけるデータの分析精度が向上し、効果的な改善策を導き出すことが可能になります。
分析4原則はこちらの記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
Web広告の分析で身につけたい「分析4原則」とは?陥りがちなミスと分析の具体例を解説|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
未経験でも一定以上の質の分析ができる「分析4原則」は、ざっくり把握・最小単位・比較・時系列の4つがポイントです。
実際に CPA の高騰を改善できた事例を、高騰の原因と改善方法とともに紹介します。
広告配信の概要や媒体の情報は以下の通りです。
商材 | バックオフィス向け SaaS |
広告媒体 | Google、Yahoo!、Microsoft 検索広告 |
CPA 高騰の原因 | 自動入札で配信していたが、他社の toC 向けサービスとキーワードが競合してしまい、不必要に入札強化されクリック単価が高騰 |
打った施策 |
数値の変化は以下の通りです。
CPC | 広告費 | CV 数 | CVR | CPA | |
---|---|---|---|---|---|
施策前 | ¥136 | ¥752,666 | 28 | 0.50% | ¥26,977 |
施策後 | ¥94 | ¥687,561 | 40 | 0.54% | ¥17,363 |
結果として施策の前後で CPA を約1万円下げることに成功しただけでなく、クリック単価を約30%下げることにも成功しました。
今や自動入札がデフォルトの入札戦略が自動入札になっているなど、媒体からも自動入札が推奨されています。しかし、この事例のようにターゲット外のユーザーが同じキーワードで検索する可能性のあるサービスでは入札を細かくコントロールするために手動入札が向いているといえるでしょう。
広告配信の概要や媒体の情報は以下の通りです。
商材 | toC 向け一括見積もりサービス |
広告媒体 | Google、Yahoo!、Microsoft 検索広告 |
CPA 高騰の原因 | これまでコンバージョンを多く獲得できていた主力キーワードで「広告の関連性」が低いことによってクリック単価が高騰 |
打った施策 | キーワードを広告見出しと説明文に追加 |
数値の変化は以下の通りです。
CPC | 広告費 | CV 数 | CVR | CPA | |
---|---|---|---|---|---|
施策前 | ¥595 | ¥2,348,045 | 53 | 1.34% | ¥44,555 |
施策後 | ¥411 | ¥2,813,307 | 82 | 1.19% | ¥34,477 |
結果として施策の前後で CPA を1万円弱下げただけでなく、クリック単価を約30%良化させるのにも成功しました。
キーワードを広告見出しと説明文に追加するというアクションによって大きく改善できた事例だといえます。
広告配信の概要や媒体の情報は以下の通りです。
商材 | toC 向けスクール事業 |
広告媒体 | Google 検索広告 |
CPA 高騰の原因 | 同様のスクールの広告を配信している競合が多く、コンバージョン獲得のメインとなるキーワードのクリック単価が高い |
打った施策 | 地名を入れたキーワードの追加や、広告カスタマイザを用いて、地名を入れて検索された場合には対応する地名の入った広告文を配信 |
数値の変化は以下の通りです。
CPC | 広告費 | CV 数 | CVR | CPA | |
---|---|---|---|---|---|
施策前 | ¥437 | ¥678,660 | 8 | 0.49% | ¥88,714 |
施策後 | ¥439 | ¥701,021 | 14 | 0.90% | ¥48,514 |
結果として施策の前後で CPA を約4万円も改善できました。さらにコンバージョン率を約45%アップさせることにも成功しています。
この事例では、検索語句を確認したときに地名を入れた検索語句でのコンバージョン率が、地名を入れない検索語句にくらべて明らかに高いと気づき、改善のきっかけとなりました。地名を入れて検索するユーザーの方がサービスの利用を具体的に考えているのではという仮説のもと施策を実行し、成果につながった事例です。
最後に、キーワードマーケティングの運用メンバーが CPA が高騰しないように日々の広告運用で実施していることを2つ紹介します。
これは Web 広告を始めるときの前提にもなりますがキーワードマーケティングでは、基本的にはコンバージョン獲得目的の広告であれば CPA が低くコンバージョン獲得できる検索広告から始めています。検索広告で設定するキーワードは、サービスの利用を具体的に検討していると思われるキーワードから配信していきましょう。
ここで大切なのは CPA が低くコンバージョン獲得できているキーワードで最大限広告配信することです。インプレッションシェアを確認しながら予算内で可能な限り効率のいいキーワードで獲得することを意識してください。
インプレッションシェアについては、こちらでも詳しく解説しています。
インプレッションシェアと損失率を基礎から解説!広告の改善点探しに役立つ2つの指標とは|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
「インプレッションシェア」とは、広告が表示可能だった合計回数のうち、広告が実際に表示された回数が占める割合です。
広告を配信していると、CPA が低くコンバージョン獲得できる成果のいいキーワードや広告、年齢層、時間帯、デバイスがあると思います。この成果のいいところで予算を使えているか、逆に成果の悪いところで予算が使われてしまっていないかを監視するように意識してください。
例えば、BtoB のサービスであれば基本的にはモバイルよりも PC の方が CPA は低い傾向があるので PC に配信量が寄っているか、急激にモバイルに予算を使ってしまっていないかをチェックします。
人であれば知らないことを恐れるのは当たり前ですが、知ってしまえば不安は払しょくできます。基本を押さえていれば CPA の高騰も必要以上に恐れる必要はないでしょう。
まずは落ち着いて原因を確認して分析し、最適な施策を打てる広告運用者を目指しましょう。
編集部
モットーは、分かりにくいを分かりやすく。Web広告の知識に長けた編集陣が、リスティング広告やSNS広告などの運用型広告の最新情報、Webマーケティングのノウハウを分かりやすく解説します。
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