2021年10月14日、Google より「ユーザー向けのモバイルデバイスでの検索結果の表示方法」に関する大型アップデートの発表がありました。
モバイルデバイスで Google の検索結果を下までスクロールすると、自動的に次ページが読み込まれ、約4ページ分の検索結果が表示されるというものです。
以下は Google 公式が Twitter に投稿した連続スクロールの様子です。
Beginning today, continuous scrolling is starting to roll out to Google Search for most English searches on mobile devices in the US. Learn more: https://t.co/ulPL0EaKV0 pic.twitter.com/W0iwL3fdy6
— Google SearchLiaison (@searchliaison) October 14, 2021
Google は、検索エンジンのサービスを提供し始めた1997年からずっと検索結果で10個分のページリンクといくつかの広告、いくつかの関連キーワードを表示する形を貫いてきました。しかし、今回の変更はそれを覆す創業以来初めての大きな変更です。
この記事では、モバイルデバイスで検索結果の表示が変わることによる検索広告への影響を解説します。
Google のモバイル検索結果における連続スクロールとは、検索結果から「もっと見る」ボタンが削除され、1ページ目の終わりまでスクロールすると、2ページ目が自動的に読み込まれる仕様です。自動で読み込みがされるのは4ページ目までで、そこで初めて「もっと見る」ボタンが出てきます。
現在適用されているのは米国のみなので、日本では位置情報を Unknown にして検索すると再現できます。また、現在のところキーワードによって連続スクロールになるケースとならないケースがあるようです。
アップデート前の検索結果は、1ページに10個のページリンクがあり、その上下にキーワードによって広告が挿入され、関連キーワードが表示されます。さらに、その下に次ページへ遷移するための「もっと見る」ボタンがある構成でした。おそらく皆さんもこの仕様には見覚えがあると思います。
連続スクロールが適用されても、検索広告(リスティング広告)の表示のされ方はほぼ変わりません。次ページへ遷移するための「もっと見る」ボタンがなくなり、関連キーワードの下に広告が挿入されています。
Google モバイル検索結果で歴史的な変更が起こり「なぜ?」と思うことが3つあります。これは私だけでなく、インターネット業界に関わる誰もが疑問に思うのではと考えています。
なぜ、元々の形を長年変えなかったのか。なぜ今変更するのかを経験を踏まえて説明していきます。
Google の検索結果は、誕生からずっと1ページにつき10個のオーガニックリンクでした。なぜ1ページに10個だったのでしょうか。それは Google 検索が誕生した時代背景と、分析のしやすさを優先したからではないかと考えています。
まず時代背景の側面から、Google 検索は PC での使用が前提であるため連続スクロールで流れるように情報を提供する必要がなかったからではないかと考えています。スマホで使用することが前提として始まった Twitter や Facebook とは前提条件が異なるので、当初の設計も違ったのではないか思います。
また、分析のしやすさについては、単純に1ページ10個のリンクの方が集計や傾向を見るのに適していたためだと思います。
Google 側は、検索ユーザーに対して、適切な検索結果を提供しているかに重きを置いてプロダクトの改善に努めています。分析結果を基に検索行為や結果のユーザー体験の向上を目指すわけです。
今でこそ、ユーザー体験における膨大なデータが集まっていますが、データが集まっていない中で連続スクロールを実装してしまうと、母数が多くなり、どこがクリックされているか、どんな情報がいいのかの分析がしづらくなってしまいます。そのため、Google はこれまで10リンクまでの表示にし、ユーザーの行動情報を集め、分析していたのではないかと思います。
スマホで Twitter や Instagram、Facebook などの SNS の投稿(コンテンツ)を見ていると、連続スクロールであることは当たり前のように感じますよね。
スマホが当たり前になったのは10年前からなので、もっと早く連続スクロールを取り入れてもよさそうですが、なぜ2021年に実施したのでしょうか。理由として、Google の収益源に関連があるのではないかと思っています。
現在の検索広告は、検索結果の10個のオーガニックリンクの上部に最大4つ、さらに下部にもいくつか広告が出る仕様になっています。
この仕様はスマホ版の Google の初期からまったく変化していません。つまり検索ユーザーにとってオーガニックのリンクも、広告のリンクもバランス良く情報が提供できている形として完成されているのです。売上のほとんどを広告が占めているので、この形を変更することは大きなリスクであり、かなり慎重になっていたのでしょう。
現在、検索広告の収入の割合は下がってはいるものの、いまだに主力商品(=メインの収益源)であることには違いがありません。
なお、画像検索やショッピング検索に関しては、先行して連続スクロールになっています。収益的にそれほど影響がないと判断されたためでしょう。
最後に、なぜモバイル検索結果のみに適応なのかを解説したいと思います。これは単純に、スマホを縦に持ち、指でスクロールさせながらコンテンツを次々に見ていくことが多い現在、ユーザビリティを考えての変更ではないかと考えています。
固有名詞と一般名詞で連続スクロールの適用に差があるのは、ユーザーが求めている情報に差があるためです。
もともと固有名詞(会社名やブランド名、商品名)は、求めている情報が明確なので、検索結果において1番上の公式サイトなどがクリックされ、2番目以降のリンクはクリックが生まれにくいのが一般的です。
一方で、一般名詞(銀座 おすすめ ランチなど)の検索は、検索結果の中に選択肢が豊富にあることから、ユーザビリティを考え、2ページ目以降も表示したほうが良いという判断があったのではないでしょうか。
今回確認した際に、固有名詞の検索結果は連続スクロールになっていないものが多く、一般名詞での検索結果のほうが連続スクロールが実装されてると感じました。あくまで肌感なので参考までにしてください。今後どのように変化してくるかが楽しみです。
最後に、検索広告(リスティング広告)および SEO へどのように影響があるかを解説します。Web マーケティングに関わる方々は、なんとなくでも良いので頭の片隅に覚えておくといいかもしれません。
Google 公式も発表しているように、検索広告(クリック数、コンバージョン数、平均クリック単価、平均コンバージョン単価など)への影響はほとんどないと推測されます。
今回の変更によってどのような影響がありますか?
引用元:モバイル検索結果への最新の変更についての詳細|Google 広告 ヘルプ
英語(米国)のクエリで広告を配信する検索キャンペーン、ショッピング キャンペーン、ローカル キャンペーンでは、モバイルでのインプレッション数が増える場合があるため、クリック率の低下につながることがあります。クリック数、コンバージョン数、平均クリック単価、平均コンバージョン単価は、横ばいの状態となることが見込まれます。
あえて挙げるなら、連続スクロール実装前後で同条件で比較できなくなるくらいでしょう。また「上部のインプレッション数増加」や「下部のインプレッション数低下」は、影響が出たかわかりづらいのが正直なところです。
実際の表示を見てみると、検索環境によっては「下部広告」が1個しか表示されないのが確認できました。このような表示のされ方が多くなると、上部の4つの広告のインプレッション数やクリック数が増加し、下部広告の表示は減少するかもしれません。
ただし、スマホの検索結果における検索広告の下部のクリック率はそもそもとても低いので、これも大きな影響とはいえないかもしれないですね。
いずれにせよ、前述の通りで少なくとも、Google 自ら検索広告の売上げを下げるような変更になることは考えにくいので、広告のクリック数が減る心配は不要でしょう。
SEOへの影響(=オーガニックの検索結果への影響)は、当然2ページ目以降の11位からその下の順位のリンクのクリック率は上がると考えられます。これにより1ページ目、特に5位から10位のサイトは検索流入数が減る可能性が考えられますが、軽微なものかと思われます。
また、今までは1ページ目に入っていた9位や10位のサイトよりも、条件によっては11位以降のサイトの方がクリックされるかもしれません。こちらについては「海外SEO情報ブログ」を運営する鈴木謙一さんからもコメントをいただきました。
あくまでも推測ですが、下位でも特に9位や10位(のサイト)は下がる可能性が考えられそうです。タイトルリンクやスニペットによっては、11位や12位の方がユーザーが求める情報にマッチしていれば、そちらに食われるかもしれません。
今回の Google の変更は、歴史的なものとはいえますが、大事なのはまず連続スクロールの仕組みを理解することです。連続スクロールされている検索結果を自分のスマホで冷静に操作してみれば、広告への影響はほぼないことはすぐにわかるはずです。
しかし連続スクロールの仕様変更前後の配信結果は、同条件ではありません。クライアントや決裁者にレポートをする場合などは、その注釈は必要となるでしょう。
連続スクロールに影響が出るのは、広告よりもオーガニックの流入(SEO)にありそうですが、広告運用者としても、このような大事な変化は情報感度を高く保ちしっかりと最新の情報を取りに行きましょう。
最後に記事内で参考にした Google 公式からの発表を下記にまとめておきます。
参考:Continuous scrolling comes to Search on mobile|Google The Keyword
参考:モバイル検索結果への最新の変更についての詳細|Google 広告 ヘルプ
参考:Google 公式|Twitter
代表取締役会長
2003年、Googleアドワーズが日本でサービスを開始した直後より、検索キーワード広告とランディングページの実践・研究を行い、その成功理論を書籍『1億稼ぐ検索キーワードの見つけ方』で発表、5万部以上のベストセラーとなる。 キーワードマーケティングでは、設立時から延べ千社以上のアカウントを診断およびコンサルティングしており、現在は上場会社や成長率の高いベンチャー企業に対する広告運用代理事業を拡大している。
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