リスティング広告や SNS 広告を既に配信している広告運用者の中には、新たな施策として認知獲得に向けた施策をやってみたいという方も増えているのではないでしょうか。そこで注目したいのが、インターネット回線に接続でき、YouTube などの動画配信サービスが利用できる「コネクテッド TV」です。
2019年以降は市場での普及率も上がっており、家電量販店などで現在発売されている TV のほとんどがコネクテッド TV です。
今回は、コネクテッド TV の概要や特徴、コネクテッド TV 広告を配信するまでの流れについて解説します。
コネクテッド TV とはインターネット回線に接続されたテレビを指し、通常の地上波放送や衛星放送の番組視聴に加えて YouTube などの動画配信サービスが利用できる端末です。「スマートテレビ」や「ハイブリッド TV」とも呼ばれています。
テレビ自体がインターネット接続できるものもあれば、小型スティックのストリーミングデバイスを介して接続するもの、ブルーレイプレイヤーやゲーム機などを介して接続するものもあります。
コロナ禍で「おうち時間」の増加によって家での過ごし方にも変化が表れ、コネクテッド TV の利用も浸透していきました。ビデオリサーチ「ACR/ex」の調査結果にあるように、コネクテッド TV の普及率は2019年の37.7%から約20%上昇し、2022年には56.8%となりました。
Netflix や Amazon Prime Video、TVer などの動画配信サービスも視聴可能で、家電量販店でも多機能性をアピールして販売されています。
コネクテッド TV 広告とは、コネクテッド TV で視聴できる YouTube や有料動画配信サービス内に出稿できるデジタル広告を指します。主に動画フォーマットで、コンテンツの冒頭や中間などに配信されます。近年のコネクテッド TV の普及率上昇に伴って広告の価値も強まり、市場規模も拡大しています。
2022年に発表されたデジタルインファクトの調査によると、2025年にはコネクテッド TV 広告の市場規模は約1,700億円規模になると予測されています。インターネット広告費における構成比で考えると0.5%未満だった規模から5%まで成長することになるため、今後さらなる注目を集めることとなりそうです。
コネクテッド TV 広告には、以下の3つの特徴があります。
ここからは、それぞれの特徴について解説していきます。
コネクテッド TV はテレビで視聴するため、スマートフォンや PC などを操作しながら視聴するシチュエーションがかなり多いです。そのため、コネクテッド TV 広告で関心のある広告が表示されると、視聴者に検索してもらいやすい傾向にあります。検索を促したい語句を表示して認識させたり、QR コードを表示させたりすれば、意図したサイトへの流入促進も可能です。
スマートフォンやタブレットでコンテンツを視聴していると、関心のある広告が流れたとしても、視聴しているコンテンツを見終えてから検索などの行動を取ろうと考える人がほとんどです。その結果、コンテンツが終了する頃には考えていた行動を失念してしまい、何も行動を起こさないままになってしまうということもあります。
ユーザーに起こしてもらいたいアクションを上手く促すことで、検索行動やサイト流入などのエンゲージメント寄与が見込めるのは、コネクテッド TV ならではだといえるでしょう。
コネクテッド TV の特徴として、テレビを視聴しないユーザーへリーチできるというものもあります。
かつてテレビは「一家に一台」という言葉で表現されるように、全国的に普及していました。しかし現代では、スマートフォンの普及や居住の多様化によってテレビを持たない世帯も増えてきました。また、若年層においてはテレビを持っていてもテレビ番組を見ない「テレビ離れ」も発生しています。
日本民間放送連盟が運営している「民放 online」の調査によると、年齢層が低くなればなるほどテレビ利用率は低く、一方でネット動画利用率と YouTube 利用率は高いという傾向にあります。
コネクテッド TV 広告を利用すると、YouTube などの動画配信サービスを利用する人を狙って広告を配信できるため、リーチの最大化が図れます。企業やサービスの認知施策として第一想起されていた民放のテレビ CM が「テレビ離れ」によって視聴されにくくなった現代において、コネクテッド TV 広告は効果が見込めるといえるでしょう。
コネクテッド TV 広告は、テレビ CM のテストマーケティングとしても利用できます。
テレビ CM を配信するには最低でも数百万、高額で2億円から3億円の予算が必要です。企業の認知拡大を狙うとはいえ、いきなりテレビ CM の放映に舵を切るのは、費用対効果を考えるとリスクが大きいといえます。このような場合に、コネクテッド TV 広告をテストマーケティングとして活用することで、テレビ CM で効果が出そうか検討できます。
コネクテッド TV 広告は主にインプレッション課金制(CPM 課金制)のため、テレビ CM より少ない予算で始めやすいのがメリットです。そのため複数の広告を並行して配信し、成果を比較することもできます。
結果をもとに、成果が良かった動画をテレビでも放映したり、ブラッシュアップした動画をテレビで放映したりという選択ができるのも、コネクテッド TV のよい特徴だといえるでしょう。
コネクテッド TV と比較対象に挙げられやすいものとして、テレビ CM と動画フォーマットを用いた運用型広告があります。それぞれと比較した際に、特徴を解説します。
テレビ CM とコネクテッド TV の違いとして、ターゲティングが可能かどうかが挙げられます。
コネクテッド TV 広告はユーザーの属性やカテゴリでターゲティング設定ができるため、見込み顧客を狙って広告を配信できます。
一方でテレビ CM はターゲティング設定ができないため、テレビを視聴する不特定多数の人が広告の配信先となります。多くの視聴者に対するアプローチ手法としては有効ですが、その反面、ターゲット外のユーザーも視聴するため非効率なアプローチとなる可能性も高いです。
動画フォーマットを用いた運用型広告である TikTok 広告とコネクテッド TV を比較してみましょう。この2つの違いとして挙げられるのは、広告をスキップできるかどうかです。
YouTube の一部の広告形式を除いて、コネクテッド TV 広告はスキップできません。テレビ CM と同様、コンテンツの前後や放映中に広告が挿入され、設定された広告枠分が終了するまで待つ必要があります。そのため広告を最後まで視聴してもらいやすい傾向があります。
一方、TikTok 広告はオーガニック投稿(ユーザーによる投稿)の間に配信されますが、いずれもスキップが可能です。関心がない広告をスキップできるため広告そのものが受け入れられやすい傾向はあるものの、実際に広告を必ず視聴してもらえるとは限りません。
コネクテッド TV 広告を配信できる媒体として代表的なものは TVer、Abema、YouTube、Twitch の4つです。
それぞれの媒体の特徴を以下に一つずつまとめているので、自社の商材やターゲット層などと照らし合わせながら確認してみましょう。
民放テレビ局の番組を視聴できるプラットフォームで、約750番組以上のコンテンツを無料で配信しています。MUB(月間ユニークブラウザ数)は3,129万にも及び、月間再生数3.9億回を記録しています。
TVer 広告の強みとして、広告をスキップできないため、最後まで視聴してもらいやすいことが挙げられます。配信先の番組カテゴリや36のサブジャンルを指定できる TVer 広告ならではのターゲティングも強みだといえるでしょう。
広告の長さは6秒から60秒の間で任意で設定でき、1週間以上放映できます。広告の課金形態は CPM 課金(固定単価形式)か CPCV 課金(オークション形式)を選べます。
▼TVer 広告の詳細な情報はこちらから
TVer広告とは?特徴やターゲティング方法、入稿規定から配信設定までを紹介|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
TVer 広告とは、テレビ番組の見逃し配信を無料で楽しめる動画サービス「TVer」に配信できる、6秒~60秒の動画広告です。
「全て無料のインターネットテレビ局」と称して、専門チャンネルも並行して多彩なジャンルの番組を配信しているサービスです。若年層を中心に幅広いユーザーにリーチできる点が特徴で、広告配信の最適化により、60秒以上の広告でも平均視聴完了率90%を誇っています。
広告の長さは15秒から180秒の間で媒体が指定した秒数を選べます。課金形態は CPM 課金のみです。広告メニューには予約型と CPM 課金型、番組と連動する企画の3タイプがあり、いずれも任意の期間で放映可能です。
Google が提供する世界最大の無料動画投稿サイトです。誰でも気軽に動画を投稿したり閲覧したりできる点が強みだといえます。企業や芸能人だけではなく、一般人も投稿主としてチャンネルを作成できます。
動画広告は動画の冒頭や途中に配信され、スキップできるものとできないものがあります。広告の長さは短いものであれば6秒、長いものは時間の指定なしと広告の種類によってさまざまです。課金形態も広告によって CPC 課金や CPV 課金などに分かれています。
▼YouTube 広告の詳細な情報はこちらから
【画像で解説】YouTube広告とは?動画の種類や配信方法をイチから紹介|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
YouTube 広告とは、動画プラットホーム YouTube のサイトトップ画面や、動画の再生前後、再生中に配信できる5秒から30秒ほどの動画広告です。
ゲーム配信に特化した動画配信用プラットフォームで、ゲーム用の拡張機能が搭載されています。e スポーツなどに関わるプロゲーマーを中心に利用されており、1日のサイト訪問者数は平均約3,500万人を超えます。
ライブ配信の前、または最中に最大30秒の動画広告を配信でき、視聴者は広告が表示されている間もクリエイターの映像を視聴できます。
YouTube を除いた他のコネクテッド TV 広告は、運用型広告のように自社でアカウントを作って配信できるものではなく、コネクテッド TV を提供している媒体各社を通じて配信しなければなりません。
ここからは、実際にコネクテッド TV 広告を配信するまでに必要なステップを3つに分けて解説します。
コネクテッド TV 広告は、コネクテッド TV を提供している媒体社に依頼して配信します。媒体によって強みや特長は異なり、使用できるターゲティングや課金形態も異なります。
広告メニューも媒体によって独自のものがあり、認知効果やテレビ CM との重複効果に関するレポート出力などのオプションもあるため、媒体資料に記載されている広告メニューやオプションなどを踏まえて検討しましょう。
媒体を選定したら、次に広告に使用する動画の作成に取り掛かりましょう。既に運用型広告などで使用した動画があればそのまま使用できる可能性がありますが、新たに動画施策を実施する場合は制作しなければなりません。
配信媒体の入稿規定をクリアしていれば既存クリエイティブを使用できるため、事前に規定を確認しておきましょう。
動画を作成するには、まず動画内容のストーリーとなる台本を作成します。動画を通じて視聴者の態度変容を促すためには、コンテンツの流れであるストーリーが重要です。いくつかのストーリー案で検討して、1つか2つの台本を選びましょう。
次に、台本をもとにした絵コンテを作成します。絵コンテとは、動画のざっくりとした流れがわかる各シーンのラフ案を指します。絵コンテを作成しながら、登場する人物像や背景を具体的にしていきます。
そして、実際の動画を撮影して素材を集めます。コネクテッド TV 広告に限らず媒体には入稿規定があるため、今回制作する動画を使用したいメディアの規定は事前に確認したうえで撮影しましょう。
最後に編集をおこなって動画の完成です。出来上がった動画は細部まで入念にチェックして、微調整を入れたり素材を差し替えたりなど対応しましょう。完成したら媒体に入稿を依頼します。
動画が用意できてもすぐに広告を配信できるわけではありません。コネクテッド TV を提供している媒体に対して、審査や申請が必要です。
審査や申請は媒体によって内容やかかる日数が異なるため、事前に規定を確認しておくことをおすすめします。
以下の表は、TVer と Abema の審査や手続きの項目とその内容、各種審査や手続きに必要な日数および締切をまとめたものです。
▼TVer の場合
項目 | 詳細 | 必要日数 |
---|---|---|
業態考査 | 各局担当が広告主を審査 | 5営業日程度 |
お申し込み | 広告主がTVer 広告専用プラットフォームで申し込む | 合計で10営業日程度 ※素材考査には5営業日程度要する |
素材考査依頼 | アカウント開設及び、ID 発行 | |
素材考査 | 各局担当が素材を審査 | |
配信開始 | 開始 |
▼Abema(CPM 課金型における通常配信)の場合
項目 | 詳細 | 締切 |
---|---|---|
掲載可否の審査 | テレビ CM の基準に準拠しつつ、Abema 独自の基準として以下の点も加味しつつ審査をおこなう。
・Abema のブランド保護/競合観点 (金融、パチンコ/他の動画サービス) ・テレビ朝日の競合観点 ・Web 広告のガイドライン観点 |
配信開始10営業日前 ※15営業日前推奨 |
広告配信の申し込み、広告データ入稿 | データの入稿をおこなう。 申し込み、入稿いずれも Abema のビジネスマネージャーから可能 |
配信開始7営業日前正午 |
広告配信 | 広告の配信が開始される | – |
動画を活用した広告はリーチ数の拡大が狙えるため、認知獲得にはうってつけの手法で第一想起されるのはテレビ CM でしょう。ただ、テレビ CM は出稿費用が高く断念してしまいがちです。
コネクテッド TV 広告は、動画配信サービスなどを活用してテレビ画面に広告を配信できます。コネクテッド TV の普及率が上がっている今だからこそ、新しい広告チャネルの選択肢として配信を検討してみるのはいかがでしょうか。
マーケティング
2019年4月に新卒で入社後、研修を経て運用チームに配属。toB、toC等の案件を担当した後、セールスチームに異動となる。趣味はお笑いと観賞(研究?)と謎解き。特に好きな芸人は東京03とバナナマン。
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