中小企業や小規模企業者、個人事業主が、新規顧客の獲得を目指して初めて広告を出すときの予算は、月に10万円以下の少ない金額がほとんどです。
少ない予算でいかに効果的に運用できるかを考えて、費用対効果を重視するかと思います。そのため広告の設定が、なるべく無駄を抑えたものになっていることがあります。
年度末や月末の予算消化や、自社の商品やサービスの露出が増えてチャンスになったときなどは「さらに売上を上げたい!」と思うでしょう。そんなときに、キャンペーンの予算をあげることがあるかと思います。
しかし、単純にキャンペーンの予算をあげるだけでは、期待しているほどコンバージョン数が増加しないかもしれません。それには既存キャンペーンの設定が絡んでいることが多くあります。
この記事では、コンバージョン数の増加を目指して運用するとき、既存キャンペーンのどこを見直し、どんな改善ができるのかについて解説します。
キャンペーンの中には広告グループがあり、それぞれでさまざまな設定をおこないます。キャンペーンで設定するのは地域や単価など、広告グループで設定できるのはキーワードや広告文の追加、マッチタイプや入札単価の設定などです。
広告配信を始めたばかりの頃は、無駄な配信を恐れて、必要最低限の設定から始める方が多いかと思います。実際、最初からガンガン強気で複数のキーワードや高めの単価で入札する人は居ないでしょう。
しかし、キャンペーンの各設定を適した形にしないと、単純にキャンペーンの予算を上げるだけではコンバージョン数が増えない可能性もあります。
予算を上げたとしても、そもそもの広告の表示(インプレッション)が増えていないことも大いにありえます。
キャンペーンにある何かの設定が原因で広告の配信が抑えられている可能性があるためです。この場合、予算を上げる対応だけではなく、他の設定も変えることが必要です。既存キャンペーンの絞った設定を広げることを考えましょう。
ここからは、コンバージョン数の増加のために既存キャンペーンで改善できることを、12個に絞って解説します。今回の記事では、運用型広告の基本でもあり、多くの方が配信している Google 検索広告をもとに説明します。
既存キャンペーンで初めに見直したいのは、予算を上げることです。基本的なことではありますが、目標 CPA(目標とするコンバージョンの獲得単価)以内でコンバージョンが獲得できている場合、まずは予算をあげられないかを考えてみましょう。
キャンペーンのステータスに「予算による制限」が出ている場合、Google 広告からの提案を参考に金額を変更することもできます。
ただ、提案に従って金額を設定する必要はありません。現在設定している金額と乖離がある場合もよくあります。
予算はいつでも変更できるので、Google 広告からの金額は参考情報とし、現実的な金額からはじめるとよいでしょう。
次に入札単価の設定で「手動入札(個別クリック単価制)」で運用している方は、入札単価を上げることを考えましょう。
金額を上げるときは、「推定入札単価(1ページ目)」と「推定入札単価(ページ上部)」を参考にするとよいです。
目標 CPA 以内でコンバージョンを獲得している実績があるキーワードは、広告をページ上部に出すことを目指しましょう。
自動入札で「コンバージョン数の最大化」を選び、「目標コンバージョン単価」を設定している方は、目標コンバージョン単価の金額を上げることを考えましょう。
金額を上げるとき、いきなり2倍のように大きく上げるのではなく、まずは、現在の目標コンバージョン単価の20%以内ほどで上げるのが無難です。
20%以内で変更したあとの掲載結果を確認し、目標や費用対効果の視点で問題なければ、さらに上げることを検討されるとよいです。
入札単価調整比は、地域やデバイス、ユーザー属性(性別、年齢など)や広告のスケジュールなどを対象に設定できます。
デバイスや地域別の結果を確認し、目標 CPA 以内でコンバージョンが獲得できている対象について、入札単価調整比を引き上げることを考えましょう。
入札単価調整比には引き上げする割合を入力しますが、いきなり100%、200%以上の割合を入力すると、費用対効果が見合わなくなる可能性があります。そのため、まずは100%以内の割合にするのが無難です。
次に特定のデバイスや地域、またユーザー属性(年齢、性別)を広告の配信対象に設定を広げることを考えましょう。広げることにより、これまで広告を出せていなかった人に広告を出すことができます。
入札単価調整比で引き下げ率を100%に設定している場合、該当するデバイスでは広告が表示されません。
サイトをスマホ閲覧に最適化していなかったなどの理由で、スマホへの配信を停止していたり、予算の関係でタブレットへの配信を停止していたりすることもあります。この場合、引き下げ率100%の割合を変更しましょう。
停止しているデバイスについて、少しずつ配信量を増やしたい場合は、引き下げ率の割合を0%ではなく50%のように設定するとよいです。引き下げ率が50%の場合、設定している入札単価の半分の単価で配信されます。
たとえば、タブレットの引き下げ率を50%にした場合、通常の入札単価が100円のとき、タブレットの入札単価は50円になります。
どの地域を対象に追加するかと迷うとき、現在の販売実績や来店データを参考にするとよいでしょう。
現在、広告を出す地域で対象にしているのが新宿区だけで、来店データを見たときに渋谷区も多ければ、渋谷区を追加することを考えましょう。
コンバージョンの見込みを考えるとき、性別や年齢に傾向があれば無理に再開する必要はありません。
ただ、予算などの事情により、迷って特定の性別や年齢への配信を停止している場合は、再開することを考えましょう。
「不明」をオフにしている場合、不明の再開から考えるとよいです。不明に分類される表示は多いので、不明からのクリック、そしてコンバージョンの獲得が期待できるかもしれません。
特定の曜日や時間帯への広告配信を停止している場合は、開始することを考えましょう。
コンバージョンの見込みを考えるとき、明らかに曜日や時間帯に傾向がある場合は別ですが、停止している曜日や時間帯でのコンバージョンも考えられそうであれば開始を検討できます。
コンバージョンが電話発信の場合、電話対応ができないことを理由に特定の時間帯を停止していることがあります。この場合、転送電話サービスを導入することも考えられるとよいです。
キーワードを一時停止した理由が、予算や効率の視点であれば、キーワードの再開を考えましょう。
再開することによりコンバージョン数が増えることを期待できるかもしれません。
再開したあとは、他のキーワードの入札単価や推定入札単価(1ページ目)を参考に、入札単価を低めにして開始するのが無難です。再開したあとの掲載結果を見て、少しずつ入札単価を上げることを検討しましょう。
目標 CPA 以内でコンバージョンを獲得できているキーワードを対象に、マッチタイプの異なるキーワードを追加することを考えましょう。
マッチタイプには完全一致、フレーズ一致、部分一致の3つがありますが、いまのキーワードに設定しているマッチタイプより少し広がるマッチタイプを選ぶのがよいです。
いまのキーワードのマッチタイプが完全一致であればフレーズ一致に、いまのキーワードがフレーズ一致であれば部分一致にしましょう。
部分一致は、関連ある検索語句でも広く広告が出るマッチタイプです。広く出ることによりコンバージョン数が増える可能性があります。
一方で、効率が悪い検索語句や無駄に思える検索語句に広告が出る可能性もあるので、部分一致のキーワードを追加したあとは、広告管理画面の検索語句から掲載結果を必ず確認し、あまり成果が見込めないような語句は配信を続けるのか検討しましょう。
キーワードを言葉の意味だけであれこれ除外している場合は、必要以上に除外している可能性があります。そのため、除外キーワードを見直しましょう。
除外キーワードを見直し、取捨に迷うときは、除外キーワードを解除(削除)することを考えましょう。
迷うときは、頭の中に「コンバージョンする可能性」があるかもしれません。コンバージョンの増加を目指すときは、「除外の判断をする基準」を広げることを考えましょう。たとえば、これまで「格安や激安のような安さに関する語句」を除外する対象にしていた場合、コンバージョンの増加を狙うときは許容することを考えます。
レスポンシブ検索広告の結果が悪く、一時停止している場合は、再開することも検討してみましょう。
2022年6月30日に、拡張テキスト広告の作成および編集ができなくなりました。そのため現在ではレスポンシブ検索広告が中心になります。
レスポンシブ検索広告は、最大15個の見出しと4個の説明文を使い、検索ユーザーに関連性の高いメッセージを表示することを目指す広告です。
検索ユーザーに関連性の高いメッセージを配信することを目指す形式の広告ですが、組み合わせが自動的におこなわれるため「どんな広告文になるのか心配」という不安ある方もいるかもしれません。そんな方は、特定の見出しを固定することを考えてみてください。
特定の見出しや説明文を固定すると、固定した特定の位置だけに表示されるようになります。どの見出しを固定するかで迷うときは、拡張テキスト広告の配信結果を参考にするとよいでしょう。
予算や成果の事情で一時停止している広告グループがあれば再開を検討しましょう。
一時停止している広告グループが、既存の広告グループとは別のターゲットを狙う広告グループであったり、既存の広告グループと狙うターゲットは同じでも、異なるデバイスを対象に配信している広告グループであれば再開を考えます。
広告配信する対象のネットワークで、予算の理由から検索パートナーへの配信をオフにしていることがあります。
検索パートナーは、Google と提携している広告を掲載できるサイトです。パートナーサイトには BIGLOBE や goo などがあります。検索パートナーへの配信をオンにすると、これらパートナーサイトの検索結果にも広告を出せます。検索パートナーからのコンバージョンも見込める可能性があるので、オンにすることを考えましょう。
キャンペーンの中で設定できることはさまざまです。「絞っている中で、どこから広げるか?」を決めるにあたって、まずは、各設定に関する実績を確認しましょう。
キーワードや地域、デバイス別などの結果を確認します。絞った設定の中で、コンバージョンに貢献しているものがあれば、まずはそこから改善するとよいです。既存キャンペーンの実績を参考に、どこから優先して改善するかを考えましょう。
絞っている設定のすべてを一度に広げるのではなく、少しずつ広げるのがオススメです。少しずつ改善をし、設定変更後の広告配信結果を見ながら、その他に絞り込んでいる対象をさらに広げる対応の流れで進めましょう。
広告の設定を見直すと、無駄だと思っていたことが実際は無駄ではなかったこともあります。
効率が悪くなることを恐れてマッチタイプを絞ったり、必要以上に除外キーワードを登録したり、配信する地域を限定したりと、広告主の主観により絞っている中には、無駄ではなくコンバージョンにつながるものもあったりします。
無駄を考えて取り組んだことで、結果的に機会損失の発生につながっているかもしれません。そのため、コンバージョン数を増やすことを目指すとき、いまのアカウントの見直しをしましょう。何ごとも改善するときは見直しが大事です。ぜひ、広告アカウントの見直しにも挑戦してみてください!
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最新&実用的な運用型広告のノウハウを学び、実践する研究会です。相談、コンサルティングも対応。広告の問題やマーケティングの悩みを電話やZoomで相談できます。
執行役員/インハウス支援室長
全国400社以上の研究会員の運用型広告・マーケティングコンサルティングを担当。養成講座では500人以上を教育。コンサル・講師・執筆業から、広告運用代行、ホームページ制作、システム開発まで担当。自社ビジネス成長のための製品開発、販売をする実践家でもある。自他ともに認める変わり者。徳島県出身。
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