広告運用に18年以上携わり、2008年からキーワードマーケティングに在籍している小島です。
以前、「どう防ぐ?不正クリックと不正コンバージョン ベテランが教える確認方法と対策」という、不正コンバージョンについての記事を書きました。そのときにも強く感じたのですが、私が広告運用を始めた頃と比べて、最近はコンバージョン計測の重要性が増す一方で、計測の難易度は強烈に上昇しています。
とりわけ計測が難しいのが「電話番号タップ」の計測です。後述しますが、これは電話番号をミスタップした件数もコンバージョンとして計測されてしまうため、正確性に欠けるという問題があります。
とはいえ、架電数をコンバージョンとしている BtoB ビジネスや店舗ビジネスもあるでしょう。そこで、こうしたビジネスの広告運用者に向けて、「電話番号タップ」をコンバージョンとする際の注意点と、ある程度正確に架電数を把握できる「コールトラッキング」について紹介します。
電話の着信をコンバージョンとして計測したい場合、まず考えるのが「電話番号タップ」をコンバージョンとして計測する方法です。この方法では、特に有料のツールを導入する必要もなく、Google タグマネージャー(GTM)を使っていれば、簡単に設定できます。
ただこの方法、簡単に設定できる半面、実は正確性に問題があるのです。まずは、この正確性に関する問題点について解説します。
「電話番号タップ」のコンバージョンは、電話番号をタップしたらタグが発火する仕様です。そのため、実際に電話を発信した件数だけでなく、電話番号をミスタップした場合もコンバージョンとして計測されてしまいます。
実際、スマートフォンサイト上の電話番号は、PC 版サイトと比べてミスタップされやすい傾向にあります。とはいえ、サイト内の電話番号をタップしてもすぐに発信されるわけではありません。
以下のように、電話番号をタップした後「発信 ●●●●(電話番号)」と「キャンセル」を選択するメッセージがでます。
この段階で「キャンセル」をタップすれば、発信はされません。そのため、サイト内の電話番号をミスタップしたとしても、このメッセージで「キャンセル」をタップすれば、サイトを見ているユーザー視点では何事もなかったことになります。
問題は、この段階で「キャンセル」をタップしても、コンバージョンタグはすでに発火済みになってしまっている、という点です。これにより、本来は発信していない電話番号のタップも管理画面上ではコンバージョンとして記録されてしまうのです。
この「ミスタップ問題」、結構大きな影響があることが多いです。私が経験した例で言えば、管理画面上では50件以上の電話番号タップのコンバージョンが計測されているにもかかわらず、実際には1件も着信がなかった・・・なんてこともありました。
これだけ正確性に問題があるとすると、コンバージョン計測には使えません。どうしても「電話番号タップ」をコンバージョンとして使わざるを得ない場合には、そのための方法もありますが、現実的にはなかなか難しいのが現状です。
さらに言えば、単なる営業電話だったり間違い電話だったりした場合でも、「電話番号タップ」を設定している限りコンバージョンとして計測されてしまいます。
こういった限界を超えるために存在しているのが、外部ツール「コールトラッキングシステム」です。
コールトラッキングとは、広告の各媒体ごとに専用の計測用電話番号を割り当て、ユーザーからの発信をカウントする手法です。
例えば、Google 広告と Yahoo! 検索広告、Meta 広告を配信している場合は、以下のように計測用の電話番号を割り振って、各媒体の番号に対してどれくらいの電話問い合わせが来たかを計測します。
広告を配信する媒体 | 各媒体に割り当てる番号(例) |
---|---|
Google 広告 | 0120-123-XXXX |
Yahoo! 検索広告 | 0120-456-XXXX |
Meta 広告 | 0120-789-XXXX |
専用のツール導入に費用はかかりますが、電話番号タップ計測と違い、電話のコンバージョンに関して正確なデータが取れるので、着信が多い業種の場合は重宝するツールだと言えます。
コールトラッキングシステムの計測の仕組みは、大まかに説明すると以下の通りです。
1. 各広告媒体ごとに電話番号を割り振る
2. ユーザーから電話がかかってきたら、その情報を記録する
また、システムにもよりますが、管理画面でコンバージョンアクションを設定し、管理画面とシステムを連携させることで、データを広告管理画面にインポートすることも可能です。
さらに、クリック ID や UTM パラメータを組み合わせれば、詳細なトラッキングや自動入札の精度を上げることも可能になります。
Tips:「UTM パラメータ」とは?
参考:URLパラメータとは?設定前に知っておくべき2つのことと媒体別の設定方法|株式会社キーワードマーケティング
URL の末尾に追加する「?utm_source=twitter&…」といった文字列のこと。
主にユーザーの流入経路の判別のために設定される「パッシブパラメータ」の一つ。
企業への問い合わせ番号を知る機会にはさまざまなものがあります。Google や Yahoo! の自然検索からの流入や広告経由のサイト流入はもちろん、各種 SNS やネット記事、DM に記載した URL など、数えればきりがありません。
そのため「何をみて発信されているのか」をしっかり把握できるのは、それぞれの媒体の効果を知るうえで非常に重要です。
一般的にコールトラッキングシステムでは各媒体別に電話番号を発行するため、それを記録することで、どの媒体からの発信であったかを把握できます。
コールトラッキングシステムを利用するには、システムの利用料の他に、通話料がかかるケースがあります。どのような場合に通話料がかかるかは、以下の通りです。
通話料がかかる場合 |
電話番号が以下のいずれかで始まるもの
0800、0078、0120 |
通話料がかからない (発信者負担である)場合 |
電話番号が「050」で始まるもの |
このほかに、各システムが提供しているさまざまなオプションにより追加で料金が必要になる場合もあります。
電話でのコンバージョンの計測は多くの広告主が困っている課題であるためか、コールトラッキングシステムも数多く存在しています。
ここでは、私が実際に触れたことがある3つのシステムをご紹介しようと思います。ここに挙げたものは、いずれも広告管理画面と連動してコンバージョン計測できるものです。
なお、各料金などの詳細は2025年1月現在のもののため、実際の費用などは各システムのサイトにてご確認ください。
CallTracker(コールトラッカー)は、株式会社コムスクエアが提供しているコールトラッキングシステムです。
通話の録音、音声ガイダンスの再生、着電をメールにて通知する機能など、別途費用がかかるものの、さまざまな機能を有しています。
以下の表のように、基本利用料はプランによって異なります。
プラン | 利用料金 | 利用可能な番号数 |
---|---|---|
050番号プラン | 10,000円 | 100番号まで追加料金なしで使用可能 |
0078番号プラン | 20,000円 | 無制限で利用可能 |
0800番号プラン | 10,000円 | 3番号まで利用可能(3番号以上は追加料金あり) |
0120番号プラン | 20,000円 | 3番号まで利用可能(3番号以上は追加料金あり) |
AdSiP(アドシップ)はフリービット株式会社が提供しているコールトラッキングシステムです。
機能などに応じてさまざまなプランがあり、コールトラッキングツールとして基本的な機能は網羅されています。
基本的なコールトラッキング機能を備えた「0120ライトプラン」と「基本プラン」の料金は以下の通りです。
プラン | 利用料金 | 利用できる電話番号 |
---|---|---|
0120ライトプラン | 1番号につき 初期費用2,000円、月額3,000円 |
— |
基本プラン | 初期費用50,000円 +番号取得料、システム基本料 (月額50,000円) |
無制限で利用可能 |
Call Data Bank(コールデータバンク)は株式会社ログラフが提供しているコールトラッキングシステムです。
多機能で精度も安定したコールトラッキングシステムです。入電に至ったキーワードを確認できたり、さまざまなツールとの連携ができるよう API を提供していたりもします。
提供されているプランのうち、「キーワードトラッキング」と「オフライントラッキング」、「メディアトラッキング」の料金は以下の通りです。
プラン | 利用料金 |
---|---|
キーワードトラッキング |
1,500セッションまで
|
オフライントラッキング メディアトラッキング |
|
基本的に、コールトラッキングシステムは発信した際の電話番号で計測しているので、電話発信する直前のサイト流入経路しかデータを取れません。そのため、いわゆる「広告の間接効果」を計測できないのです。
例えば、以下のようなユーザーアクションを経てコンバージョンが1件発生したとします。
Google 広告 A をクリック ⇒ Google 広告 B をクリック ⇒ 自社固有名詞の自然検索をクリックし電話を発信 |
この場合、事実に即した形で「広告の間接効果」をカウントすると、電話の発信までに以下の3つのアクションが発生しているといえますよね。
ところが、コールトラッキングを使うと発信前の「Google 広告」の2クリックは無視され、コンバージョンに対して何も貢献していない、ということになってしまうのです。
発生したアクション | コールトラッキングの認識の有無 |
---|---|
Google 広告 A をクリック | ×(認識されない) |
Google 広告 B をクリック | ×(認識されない) |
自社固有名詞の自然検索をクリックし電話を発信 | ◎(これのみ認識される) |
また、広告運用において、コールトラッキングツールは UTM パラメータや媒体ごとに割り振られるクリック ID(例:Google クリック ID)など、各種パラメータと組み合わせることで真価を発揮します。
しかし、サイトに流入したうえで画面遷移して数日経過すると、この UTM パラメータが失われてしまい、システムで計測できなくなる可能性があるのです。
さらに媒体ごとのクリック ID にも有効期間があり、それを超えると計測できなくなります。そのため、いわゆる YMYL(Your Money or Your Life:金融や健康・安全にかかわるもの)に含まれる、検討期間が長いビジネスの場合は注意が必要です。
実は私も、実際の問い合わせ数や予約数といった「実際の成果数」と管理画面上のコンバージョン数のギャップに「もうコンバージョン計測しても意味がないじゃないか」と挫けることがありました。
記事内でも紹介した通り、「実際の成果数」に近いコンバージョン数の計測はどんどん難しくなってきています。cookie 規制の強化や不正コンバージョンの増加など、計測を乱す要因は増える一方です。
ですが、やはり運用担当者たるもの、挫けても挫けても「実際の成果数」の把握と「実際の成果数」に近いコンバージョン数の計測のどちらにもこだわるべきだと私は思っています。我々が実際に何か手を打てるフィールドは、管理画面の中だけですから。
「クライアントの利益増加」という最終目的を果たすため、「実際の成果」に近いコンバージョン数を増加させ、ひいてはクライアントの利益を増加させる。そのために、管理画面の中という限られたフィールドで、仮説を立てて検証していく。こうした私たち運用者の使命を果たすには、ひたすら愚直に、誠実に「実際の成果数」に近いコンバージョンを追い求める姿勢が重要ではないでしょうか。
広告運用 コンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業。2008年からキーワードマーケティングに在籍、 以降10年以上、広告運用に携わる。離脱率の低さに定評があり2008年から 運用を続けているクライアントも多い。趣味は音楽、楽器演奏。依頼を受けて プロのバックを務めることもある。愛知県犬山市出身。
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