運用型広告

基本の入札単価の決め方を紹介。配信後の調整からディスプレイ広告での注意点まで

運用型広告では、媒体や配信メニューの選定、ターゲットの決定とクリエイティブの作成など、成果を出すために決めることは山ほどあります。入社した頃は広告配信の準備だけでも大変だったのを思い出します。

広告の表示の有無や順位は、広告ランク/オークションランクをもとにしたオークションで決まります。Google 広告の広告ランクは、入札単価や広告の品質、ユーザーの検索状況、広告表示オプションや他の広告フォーマットでの見込み効果に基づき、Yahoo!広告のオークションランクは、入札価格(=入札単価)と広告の品質で算出されます。

したがって、広告のオークションで優位に立つためには「入札単価(入札価格)」も重要なポイントの1つです。

しかし広告運用に慣れていない場合、いきなり入札単価を決めるのは難しいので、基本的な考え方と配信後の調整、ディスプレイ広告における調整の際の注意点をこの記事で理解しておきましょう。

「入札単価」が広告配信で成功するかの鍵を握る

広告配信の設定はいくつもありますが、その内の1つである「入札単価」はオークションの成果、広告の配信の結果を左右する重要な要素です。もちろん、入札単価を上げ下げしただけでは圧倒的な改善には繋がりませんが、広告運用者として常に頭の片隅で意識しておくべきでしょう。

単純に入札単価を競合よりも高く設定すれば、広告が表示される可能性は高まります。しかし限りある予算の中で自社の目標顧客獲得単価を割り出し、それ以下の入札単価を設定してコンバージョン数を最大化することを目指すのが一般的です。

限りある予算でコンバージョン数の最大化をするためには、市場や競合などを見極めた「入札単価」の設定や、コンバージョン確度が高いキーワードでの配信、クリエイティブの作成、遷移先のページ(ランディングページ)の調整などがあります。

しかし、デザイナーやサイト制作者など多くの人が関わるため、クリエイティブやページの作成、調整はすぐに実現するのが難しいかと思います。

そのため最初は、適切な入札単価の設定や、配信後の調整で費用対効果の高い運用を目指しましょう。基本的な考え方を覚えておくと応用も効くので、必ずおさえておきましょう。

配信開始時の入札単価の決め方

  • 配信開始時の入札単価 = 目標コンバージョン単価(目標 CPA)× 推定コンバージョン率

目標コンバージョン単価(目標 CPA)は広告費を目標とするコンバージョン数で割ることで算出でき、推定コンバージョン率は 、コンバージョン数をクリック数で割ることで算出できます。

  • 目標コンバージョン単価(目標 CPA)=広告費 ÷ 目標とするコンバージョン数
  • 推定コンバージョン率 = コンバージョン数 ÷ クリック数

しかし、実績がない配信開始時は何も参考にするものがないので、式に代入する数字もわからないのが正直なところでしょう。そのため、まずは自社の商品やサービスの単価と利益や経費から考えられる「目標コンバージョン単価」を求める考え方を紹介します。

目標コンバージョン単価(CPA)の考え方

目標コンバージョン単価(目標 CPA)は、限界 CPA(商品単価から原価を引いた金額)から確保したい利益と必要経費を引くことで求められます。

  • 目標コンバージョン単価(目標 CPA)= 限界 CPA - (確保したい利益 + 必要経費)

推定コンバージョン率の考え方

次に推定コンバージョンの考え方を紹介しますが、業界平均やコンバージョン確度が高いキーワードの傾向からアテをつけて運用し、徐々に調整していくことを前提に説明します。

推定コンバージョン率は、コンバージョン数 ÷ クリック数で求められますが、配信実績がない場合は見当がつきません。そのため、まずは自分の業界の平均的なコンバージョン率を把握するところから始めましょう。

ビジネスカテゴリGoogle 検索広告の平均 CVR
アート&エンターテインメント5.9%
動物とペット19.1%
アパレル/ファッション&ジュエリー3.6%
弁護士および法務サービス11.5%
自動車—販売中6.5%
自動車—修理、サービス、部品15.2%
美容&パーソナルケア7.7%
ビジネスサービス6.7%
キャリアと雇用5.3%
歯科医&歯科サービス13.8%
教育と指導6.1%
金融と保険5.5%
家具3.2%
ヘルス&フィットネス10.3%
ホーム&リノベーション13.2%
インダストリアル&コマーシャル9.3%
パーソナルサービス10.5%
医師と外科医19.15%
不動産3.9%
レストラン&フード6.8%
ショッピング、収集品、ギフト6.7%
スポーツ&レクリエーション6.1%
トラベル6.0%
参考:New Data! 2021 Paid Search Advertising Benchmarks for Every Industry|Word Stream

ざっくりと業界平均を理解したら、次はコンバージョン確度が高いキーワードの傾向を捉えると、推定コンバージョン率の検討をつけることができます。

一般的にユーザーはコンバージョン(購入や契約、資料請求、お問い合わせなど)に至るまでに何回か検索行動を取る傾向があります。みなさんも検索して商品を購入するときは、情報収集をし、類似商品と比較、オトクな購入方法がないかを吟味、公式サイトのキャンセル規定などを見て、最終的に購入するかと思います。

ユーザー心理と検索語句の関係は以下のようなものが考えられます。「シミュレーションゴルフ」に興味をもったユーザーが実際に店舗での予約をおこなうまでに、入力するであろう検索語句の例です。

ユーザー心理検索語句
興味があるシミュレーションゴルフ
興味があるシミュレーションゴルフ 値段
行くか検討中銀座 シミュレーションゴルフ
行くか検討中銀座 バグース シミュレーションゴルフ
行くか検討中銀座 バグース シミュレーションゴルフ 個室
行きたい銀座 バグース シミュレーションゴルフ 個室 予約
「シミュレーションゴルフ」に興味をもったユーザーの心理と入力するであろう検索語句の例

ユーザーは最初に、商品やサービスの一般名詞(シミュレーションゴルフ)を調べます。さらに詳しく知りたい場合は、値段や場所などの情報を得るために検索語句を追加します。その後、行くかどうか検討するにあたり、自分自身が重要視している点(個室があるか)を付け加え検索して調べます。最後に、行くと心に決めた段階で店舗名や特定の店舗に絞られる語句(銀座 バグース)と予約という単語のかけ合わせで検索すると考えられます。

上記はもちろん一例ですが、これよりも検索行動の時間が短かったり、長かったり、いきなり予約に進むなども考えられます。こういったユーザーの動きがあるので、一般名詞よりブランド名(指名)検索でのコンバージョン率が高い傾向にあります。

配信開始時は、業界平均や検索語句から推定コンバージョン率を割り出し運用を開始しますが、きちんと振り返りをして、適切な推定コンバージョン率を算出することが重要です。

配信後に入札単価を調整する場合の考え方

広告を配信後、全体の成果を見たときに成果が悪い場合、キーワードごとに入札単価の調整が必要になります。

その際は最初にキーワードごとのコンバージョン獲得の有無を確認しましょう。コンバージョンの有無が確認できたら、次は目標コンバージョン単価に対して、上回っているか下回っているかを見ます。この2つを見た上で、配信を強化するのか、抑えるのか、そのまま手を加えず様子を見るのかを判断します。

迷ったときには以下のフローチャートを参考に入札単価の調整をおこなってみましょう。

調整時の考え方におけるフローチャート

広告配信の最終目的は、限りある予算の中で目標コンバージョン単価以下でコンバージョン数を最大化することです。そのため無駄を削減するような配信を抑える取り組みよりも、機会損失を防ぐために目標コンバージョン単価以下のキーワードの調整のほうが成果に対するインパクトが大きくなります。

具体的にどんな状況で入札単価の調整を検討すればいいか、その結果どのような変化があらわれるかをいくつかまとめたので、調整を検討する際はお役立てください。

入札単価の調整を検討したいとき

入札単価を上げ下げする状況はいくつもありますが、前提条件や外部要因によって何が起こるかが変わってきます。いくつかのパターンを理解しておくことで、現在設定している入札単価が適切なのかの判断がつきます。いくつかの例をあげて説明します。

インプレッションシェア(予算)が低い場合

インプレッションシェアを上げられる余地あり=インプレッション増やせる余地あり==コンバージョン数も上げられる余地あり

インプレッションシェア(予算)が低い場合、相対的に成果が良くなる可能性が高いので入札単価はあげます。その結果、インプレッションシェアもインプレッション数が増え、クリック率が比例して増加します。

インプレッション数があがったことによって、ユーザーが広告を目にする機会も増えるのでクリック数もあがります。CVR に変化がないことを前提にして考えると、コンバージョン数も増えることが予想されます。最終的な広告費はあがりますが、獲得効率を維持したまま広告運用ができます。

CPA が達成できている場合

CPA が達成できている場合もさらに広告配信を強めて、コンバージョンの獲得を狙うべきなので、入札単価を上げて競合よりも掲載順位やインプレッションシェアが高い状況を作り出します。

掲載順位やインプレッションシェアが高まった結果、インプレッションとクリック数が増えてコンバージョン数の増加が見込めます。

掲載順位が低い場合

掲載順位が低い場合は、まず入札単価をあげることで競合よりも順位をあげられることがあります。

競合やその他の外部要因を加味しない場合、入札単価をあげたときに、オークションで競合に勝ち、競合よりも高い順位で広告を掲載できます。掲載順位が高いとクリック率が比例して高まり、その結果クリック数が増えます。CVR が一定であればコンバージョンも増加が期待できます。

CPA が高い場合

CPA が高い場合、目標となる数値に近づけつつコンバージョンの獲得を目指すので、まずは目標から大幅に超えているキーワードから順に入札単価を下げます。その結果、掲載順位は下がってしまいますが、クリック単価自体もおさえられます。もちろん全体的なコンバージョン数は、下落傾向になるかもしれませんが、CPA は下がります。

広告費を削減するときや、理想の配信ペースではない場合も同様に目標から大幅に超えているキーワードから順に入札単価を下げます。

調整時に心に留めておきたいこと

  1. 入札単価を調整しても変わるものと変わらないものがある
  2. ディスプレイ広告は3つの特性を理解しておく必要あり
  3. 入札単価の調整は「サービス理解」と「データドリブンの思考」が重要

1. 入札単価を調整しても変わるものと変わらないものがある

入札単価を調整しても、変わるものと変わらないものがあります。入札単価を上下させた場合、結果的に掲載順位が変動し、それに伴ってクリック率も変化します。もちろん良い意味でも悪い意味でもどちらの動きにもなる可能性があり、掲載順位が上昇したのに、クリック率が下がるなんてこともあり得ます。

変化する項目がある一方、コンバージョン率は入札単価の調整をおこなっても原則変わりません。コンバージョン率は、コンバージョン数からクリック数を割り算出した数値なので、最終的にコンバージョンするか否かはサイトの質にも左右されるためです。

ただし、水道トラブルや鍵のトラブルなど急を要するサービスの場合は、ユーザーはできるだけ早く問い合わせたいため、緊急度の高いユーザーは目につきやすい検索結果上位に表示される広告をクリックします。つまり掲載順位が高くなると、確度の高いユーザーが流入し、コンバージョン率があがるケースもあります。

例外はあるものの、入札調整による コンバージョン率の変化は基本的に無い点を覚えておきましょう。

2. ディスプレイ広告は3つの特性を理解しておく必要あり

検索広告もディスプレイ広告も、入札単価の上下によって広告の掲載順位が変動するロジックは同じです。ただし、ディスプレイ広告の調整をおこなう際は、3つの特性を理解しておく必要があります。

  1. 表示回数の増加に伴って、成果が悪化する可能性がある
  2. 表示回数が爆発的に伸びて、想定以上の広告費が投下される可能性がある
  3. 配信量を増やしても同一ユーザーに何度も表示される可能性がある

まず、1点目は表示回数の増加に伴って、成果が悪化する可能性がある点です。入札単価をあげると配信量が多くなり、従って表示回数も増加します。ただ、表示回数の中には視認できない表示もカウントされます。例えば、ページ下部に表示されてもデバイスの画面内になければユーザーの目には届きません。

ディスプレイ広告の掲載枠はページ上部と下部にある場合があり、どちらに掲載されても表示回数は1件とカウントされます。つまり、システム上は表示されていても、実際にはユーザーに見てもらえていない可能性があります。したがって、当然クリックもされず、コンバージョンにもなりません。

つまり入札単価を上げて露出が増えても、成果があがりにくい可能性があります。表示回数が増えてもクリックが増えない状況ではクリック率は低下し、広告パフォーマンスは悪化してしまいます。

2点目は、表示回数が爆発的に伸びて、想定以上の広告費が投下される可能性があることです。ディスプレイ広告は、配信面が膨大なため、検索広告と同じように入札価格を数十円〜数百円変更すると、大幅に配信量が伸びてクリック数が増加し、想定以上の広告費が必要になる可能性があります。

結果として広告予算を超過してしまう恐れがあるため、ディスプレイ広告の入札価格調整は、5円〜10円程度など振れ幅を小さくおこないましょう。

3点目は、配信量を増やしても同一ユーザーに何度も表示される可能性があることです。検索広告は検索されると表示される配信形式ですが、ディスプレイ広告は設定された入札価格と予算設定で配信可能な分だけ配信されます。

つまり入札単価をあげて配信量を強めても、リーチできる人数が増えずに同一ユーザーに複数回広告が表示されるケースもあります。必ずしも、配信量の増加がリーチできる人数に比例しません。1人のユーザーが同じ広告を見た頻度を示すフリークエンシーの設定が適切か、ターゲティング設定が狭すぎていないか確認しておきましょう。

▼ 広告の配信量をユーザーごとに調整する「フリークエンシーキャップ」についてはこちら

【回数別データ掲載】最適な広告の表示回数は?フリークエンシーキャップの仕組みと考え方、設定方法まとめ

1ユーザーあたりに広告を表示する回数を制限できる便利な機能「フリークエンシーキャップ」をご存知でしょうか?混同しやすいリーチ数との違いやフリークエンシーキャップの仕組みなどを図説を用いてわかりやすく解説しています。

3. 入札単価の調整は「サービス理解」と「データドリブンの思考」が重要

入札単価の調整には、「サービス理解」と「データドリブンの思考」が重要になります。サービス理解とは、商品やサービスの理解はもちろん、競合他社の商品やサービス、ターゲットが抱える悩みや不安、期待を把握することなどを指します。サービス理解が不十分であると、キーワードの優先度付けを誤ってしまい、適切な調整ができません。

例えば、ペットボトル入り飲料水の広告配信をする場合、ペットボトル入りの飲料水を求めているユーザーが検索すると思われるキーワードに注力して配信するべきです。そのため、「飲料水 英語」や「飲料水 作り方」といったコンバージョンの可能性が低いキーワードは、安い入札価格を設定したりキーワードを停止したり配信量を抑えるように対応します。

また、成果を出すためには過去の経験や勘ではなく、根拠を示せるようにデータドリブンで何ごとも判断しなければいけません。一つひとつの行動に責任を持ち、全てなぜおこなったのかの説明をできるようにしましょう。

仮説を立て、動きを確認し、自分が立てた仮説と比較して、調整の妥当性を精査していくという流れを繰り返すことで、入札調整の精度を上げていきます。

入札調整の経験を積んでいくと、媒体ごとの特性を掴めるようになり、各媒体の各配信メニューでどの程度の調整幅で調整するべきか想定しやすくなります。また、新規商材の広告を配信することになっても、似た商材の広告配信の経験があれば、実際の経験を活かした調整ができます。

ただ、あくまでも経験を根拠としており、必ずしも想定通りになる保証はありません。根拠となるデータをもとに調整する基本的な考え方は持ちつつ、新人もベテランも調整後のチェックは怠らずにおこなっていきましょう。

予測、調整、振り返りの反復が上達への道

入札単価の決め方や調整の考え方はシンプルで、成果が良い部分の配信量を伸ばし、成果が悪い部分は配信量を抑えるというものです。ただ、考え方は理解できていても、理想通りの結果にすることが難しいです。

理想の結果に近づけるためには、調整前の予測の精度を上げなければいけません。そのためには調整後の振り返りが必要不可欠で、意図通りになっているかを確認し、予測とのズレを修正するために再び調整します。予測、調整、振り返りのサイクルを回していきながら調整の精度を上げていき、意図通りの入札調整を実践できるように反復を重ねていきましょう。

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記事を書いた人

秋元 航平
秋元 航平

マーケティング

2019年4月に新卒で入社後、研修を経て運用チームに配属。toB、toC等の案件を担当した後、セールスチームに異動となる。趣味はお笑いと観賞(研究?)と謎解き。特に好きな芸人は東京03とバナナマン。

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