広告の AB テストにおいて、データの母数を揃えることは基本中の基本です。しかし、わかっていてもデフォルトの設定のままのGoogle 広告で配信すると、表示回数やクリック数に偏りが出てしまいます。広告表示を決めるオークションの回数をなるべく均等にするために、 Google 広告の「広告のローテーション」の設定を「最適化しない」にしてみましょう。
理論上「広告のローテーション」を「最適化しない」ことで、成果に左右されずに同じ頻度で表示されるようになり、AB テストが可能になります。
今回の記事では、「広告のローテーション」の役割から「最適化しない」を選ぶ際の注意点、実際の設定方法まで解説します。Google 広告で AB テストの実施を検討中の方の参考になれば幸いです。
※ なお Google 公式では、「最適化しない」の選択は推奨されていないため、設定する際は慎重に検討ください。
広告運用において、表示回数やクリック数などの数字を均等にして AB テストを実施することは難しい場合がほとんどです。広告運用のシステムが「あらゆるデータをもとに最適化したものを配信するため」といった理由が挙げられます。
しかし、Google 広告の「広告のローテーション」の設定で「最適化しない」を選択すると、無期限に同じ頻度で広告が表示されます。よって、実質的な広告の AB テストが可能になります。設定する際はよく検討しましょう。
広告のローテーションとは、1つの広告グループで、複数の広告を設定している場合の広告選出方法です。広告枠1つにつき表示される広告は1社のみで、広告アカウント1個につき表示される広告も1個です。そのため複数の広告がある場合、ローテーションでオークションにかけられます。
「広告のローテーション」は、Google 検索キャンペーンとディスプレイキャンペーンでのみ設定できる項目です。「最適化」と「最適化しない」の2種類あり、デフォルトでは「最適化」になっています。
成果が良くなるようオークションごとに適切な広告が選ばれる「最適化」と、広告がなるべく均等に選出される「最適化しない」があります。最適化に使用されるシグナルは、キーワードや検索語句、デバイス、地域などさまざまです。
ただし「最適化」でも、広告ごとの表示回数やクリック数などの配信実績がない場合、均等に選出されることもあります。どの広告で成果が良くなるのか分からないためです。
最適化における「成果」の意味は入札戦略によって変わります。「目標コンバージョン単価」や「コンバージョン数の最大化」などのスマート自動入札を使っていると、コンバージョンが成果と判断されます。スマート自動入札を使用していない場合は、コンバージョンではなくクリックが最適化対象になります。
広告の管理画面では、「最適化」と「最適化しない」の他に、「コンバージョン重視で最適化」と「均等にローテーション」もありますが、2017年9月までの旧式の選択肢です。現在はサポート対象外のため、新たに設定することはできません。
特別な理由がない限り、初期設定のまま「最適化」での配信がおすすめです。Google 広告の管理画面でも以下のように「ほとんどの場合推奨されません」と注意書きが表示されています。Google の公式ヘルプページでも非推奨です。
スマート自動入札を使用したキャンペーンで、広告のローテーションを「最適化」から「最適化しない」に変更すると、最適化対象がコンバージョンからクリックに変わります。コンバージョン数やコンバージョン単価が悪化する可能性があり、注意が必要です。成果が悪化すると広告主は出稿を控えるため、Google も推奨はしていません。
以上の前提を踏まえ、表示回数などの母数を揃えたいときには、広告の AB テストで「最適化しない」を選びましょう。
広告の AB テストをするために広告のローテーションを「最適化しない」ときは、以下3つに注意しましょう。
広告のローテーションで「最適化しない」を選択し配信したとき、均等になるのは表示回数やクリック数ではなくオークション回数です。表示回数が均等にならないのは、広告ランクという概念があるからです。
例えば、広告の品質が高い広告は検索結果の1ページ目など、より良い位置に掲載されます。一方で、品質が低いと2ページ目以降などに表示される可能性があります。
また、クリック数が均一にならない原因は、クリック率が広告によって異なるからです。クリックされやすい広告はクリック数が多くなり、クリック率が低いものは同じ表示回数でもクリック数が減ってしまいます。
「最適化」よりも「最適化しない」を選んだときの方が表示回数やクリック数は同じぐらいになりやすいです。しかし、まったく同じにはならないことを理解しておきましょう。
AB テストするクリエイティブが一部のユーザーにフォーカスした訴求の場合、広告のローテーションを「最適化」しないと、訴求したいユーザーに広告が表示されにくくなります。したがって、「最適化にしない」を選ぶと、意図していないユーザーへの配信が増え、本来のポテンシャルを発揮できません。
例えば、スニーカーの通販サイトで Google 検索広告を出すとします。「早く届き、かつ安く購入できる」という見出しを、「A:全国どこでも最短即日発送」と「B:送料無料で安く購入できる」という2つの細分化によってクリック率が良くなるかを AB テストします。
「最適化しない」と「最適化」にしたときに、どれほど結果が変わるかシミュレーションしてみました。
見出し(ニーズ) | 表示回数 | クリック数 | クリック率(%) |
---|---|---|---|
見出し A (早く届いてほしい) | 10,000 | 20 | 0.20 |
見出し B (安く手に入れたい) | 10,000 | 500 | 5.00 |
合計 | 20,000 | 520 | 2.60 |
広告(ニーズ) | 表示回数 | クリック数 | クリック率(%) |
---|---|---|---|
見出し A (早く届いてほしい) | 1,000 | 2 | 0.20 |
見出し B (安く手に入れたい) | 19,000 | 950 | 5.00 |
合計 | 20,000 | 952 | 4.76 |
「最適化しない」場合、結果的に訴求と不一致のユーザーにも均等に配信されてしまい、「最適化」にしていれば本来獲得できたクリックを獲得し損ねてしまいました。
公式ヘルプに記載がなく、広告の管理画面にのみ記載されている仕様ですが、「目標コンバージョン単価」や「コンバージョン数の最大化」といったスマート自動入札を使っている場合、広告のローテーションを「最適化しない」に変更しても、コンバージョン成果が最も出ている広告が優先的に配信されてしまいます。そのため、広告ごとのオークション回数は均等になりません。
実際に弊社の広告で配信した結果を、下記に掲載しました。
従来は広告のローテーションを「最適化」し配信していて、広告グループ全体での表示回数は275回で、うち約88%が1番上の広告でした。「最適化しない」に変更してからも、表示回数176回のうち約92%が、引き続き1番上の広告になっています。
広告のローテーションの設定内容を確認する方法と、変更手順を説明します。
まずは Google 広告にログインして、キャンペーンの一覧を表示します。表示されているキャンペーンの中から、設定を確認したいキャンペーンをクリックします。
該当のキャンペーンをクリックしたら、画面左カラムを下にスクロールして「設定」を選びます。
「設定」をクリックし開かれた画面では、広告のローテーションは表示されていません。下にスクロールしたところにある「その他の設定」をクリックすると表示されます。
「その他の設定」からでも、広告のローテーションを変更できます。
「最適化しない」にすると、成果が悪化することもあります。テストの精度を優先してこのような結果を招くことを避けたい場合は、「最適化」のままにしておきましょう。
運用型のインターネット広告では、表示される広告がオークション形式で決まります。その広告オークションは広告枠ごとにおこなわれます。オークション1回につき広告枠はたった1つ、つまり表示される広告は1つだけです。
競合の広告主に負けず、限られた枠をしっかり勝ち取るためには、自社のクリエイティブの中でも特に優秀な広告に参加してほしいですよね。その選抜試験が、広告のローテーション「最適化」機能です。軽視せず慎重に設定を選びましょう。
広告事業部 マネージャー
2016年4月に新卒入社。入社10カ月で代表滝井直属の広告運用チームに異動。 入札調整や広告文作成から、サイト改善提案まで代表から直接指導を受ける。 toB/toC比率は半々で、アプリ広告も担当。特に好きな媒体はFacebook広告。 海外旅行が好きで、アメリカ横断経験あり。趣味は服映画ヨガアート猫もろもろ。
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