Web マーケティングや Web 広告に携わる方なら「アドネットワーク」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。Google 広告や Yahoo!広告、SNS 広告などのディスプレイ広告でも使われているアドネットワークの仕組みや、代表的なアドネットワークを事前に知っておくだけで、クライアントワークや日々の運用に役立ちます。
ただ、「アドネットワーク」という言葉の説明や、DSP との違いが正確にわかる人は少ないかと思います。
そこで今回の記事では、アドネットワークの概要や仕組み、DSP との違い、よく使われる代表的なアドネットワークを紹介します。初心者の方はもちろん、ベテランの方もおさらいとして、ぜひチェックしてください。
アドネットワークとは、広告の掲載枠をもつ Web サイトやブログ、ソーシャルメディアなどを束ねた広告配信の仕組みです。アドネットワークを利用することによって、一つのプラットフォームからさまざまな Web サイトやアプリに広告を配信できるため、広告配信面の選定や入札、予算管理などの手間を省くことができ、業務の効率化が図れます。
例えば、Google ディスプレイネットワークでは、YouTube や Gmail など Google が提供するサービスの Web サイトはもちろん、livedoor や Ameba ブログ、BIGLOBE などの Web サイト、提携しているアプリなど数百万の Web サイトやアプリを取りまとめています。
かつてこれらのサイトやアプリの広告枠に広告を出稿するには、それぞれの広告枠に対して出稿手続きをしなければなりませんでした。しかし、Google がアドネットワークとして、これらのサイトやアプリを取りまとめてくれたおかげで、Google 広告を通して広告を配信できるようになりました。
アドネットワークはさまざまな広告枠を取りまとめており、一つのプラットフォームからこれらに広告を配信することができるため、広告出稿管理の工数を削減できます。また、課金形態が統一されており、広告枠ごとに個別購入をしなくていいので無駄な広告費がかかりません。
工数という時間面でも、広告費という金額面でも、あらゆるコストを削減できるのがアドネットワークの特徴です。
その反面、アドネットワークにも少なからずリスクが存在します。アドネットワークの登場で多くの広告枠に広告を出稿できるようになりましたが、個別の広告枠に出稿する形での管理ができなくなりました。そのため、出稿する広告と関連性の低い広告枠に配信されてしまったり、ブランドイメージを損なう広告枠に配信されてしまうことがあります。
しかし、全てのアドネットワークがこのような問題点を抱えているわけではありません。Google ディスプレイ広告や Yahoo!ディスプレイ広告のように、プレースメントターゲティングや除外設定などで広告枠を指定できるアドネットワークも存在します。
アドネットワークを通して広告が配信される仕組みは、とてもシンプルです。まず、広告主がアドネットワーク媒体へ広告クリエイティブとランディングページの URL を入稿します。その後、配信面や配信ユーザーの条件、入札金額などを設定します。
広告主側で広告クリエイティブの入稿と配信設定が完了したら、アドネットワーク媒体がターゲティング条件などに合致する Web サイトやアプリに広告を配信します。Web サイトやアプリごとに配信面のサイズが違うため、入稿されたクリエイティブを適宜組み合わせて配信されることもあります。
配信された広告の効果測定データ(表示回数、クリック数、費用、コンバージョン数など)は、約3~4時間程度のタイムラグはあるものの、ほぼリアルタイムで確認できます。
広告運用をしたことがある人なら、この仕組み自体に疑問をもたないかと思います。しかし、アドネットワークがなかった時代は、それぞれの Web サイトやアプリで広告の入稿規定や入札価格が異なるので、広告主側が一件一件交渉したり、広告クリエイティブを作成したりするなどの作業が必要でした。
さらに Web サイトやアプリによって課金形態や効果測定の可否も異なるため、これらを全て統一して運用するのはかなり難しかったと思います。
このような状況に比べて、クリエイティブ規定も課金形態も効果測定条件も全て統一されたアドネットワークという仕組みは、広告運用者の工数や運用効率を飛躍的に改善した発明といえるでしょう。
アドネットワークとよく混同されるのが「DSP」です。アドネットワークと DSP の違いは、取りまとめているものやターゲット、ターゲティング設定などです。
DSP(Demand-Side Platform)とは、広告枠の買い付けや配信・効果分析を自動でおこない、広告配信の最適化を図る広告配信プラットフォームです。各社が連携しているメディアの購買データを活用したターゲティングができたり、特定の業種に特化した面に集中して配信することができたり、中にはクリエイティブを自動で生成してくれる媒体もあります。
項目 | アドネットワーク | DSP |
---|---|---|
取りまとめているもの | ・Web サイト ・アプリ | ・Web サイト ・アプリ ・アドネットワーク |
主にターゲット | ・配信面 | ・配信ユーザー |
主なターゲティング設定 | ・トピック ・配信面 | ・年齢 ・性別 ・興味関心など |
課金形態 | ・インプレッション課金 ・クリック課金 | ・インプレッション課金 ・クリック課金 ※採用している DSP は少ない |
アドネットワークと非常に似た特徴を持つ DSP ですが、アドネットワークの登場以後に出てきたものです。アドネットワークの目的が、複雑な広告出稿条件を集約させ、少ない労力で多くの広告を配信することだとすると、 DSP の目的は、アドネットワークで集約されたデータを活用し、少ない労力で、効果の高い広告配信を実現することです。
アドネットワークの登場でより簡単に、より大量に広告を配信できるようになりました。DSP はアドネットワークによる大量データを活用してターゲティングをおこなったり、配信面を調整することで広告効果を最適化しています。
大量の購買データが必要になるため、DSP はアドネットワークと同じく複数の Web サイトやアプリを取りまとめているほか、複数のアドネットワークとも提携して DSP 経由でアドネットワークに広告配信できるようにもしています。
また、DSP はユーザーの購買データを活用するという特徴から、ユーザー(人)に対するアプローチを得意とし、アドネットワークは、プレースメント(面)へのアプローチを得意としているので、その点が最大の違いです。
ここからは、広告運用者が最低限知っておきたい、代表的なアドネットワークを紹介します。
Google ディスプレイネットワークはユーザー数も多く、精度の高いターゲティング機能や高性能な機械学習機能を利用することで、効果が出やすいアドネットワークです。
Google 広告はネット広告業界で10年以上にわたり収益シェア1位を誇っていることから、広告主からの信頼も厚く、もっとも有名なアドネットワークといっても過言ではないでしょう。
Google ディスプレイ ネットワークなら、ニュース サイト、ブログ、Gmail、YouTube など 200 万以上のさまざまなウェブサイトに広告を表示することができ、世界中のインターネット ユーザーの 90 % にリーチできます。
引用元:Google広告
日本国内では Google 広告に次いで収益をあげており、Google 広告と同様の信頼を得ているのが Yahoo! ディスプレイ広告(運用型)です。
Yahoo! JAPANトップページや Yahoo! ニュースといった自社サービスをはじめ、朝日新聞デジタルやクックパッド、食べログといった主要提携パートナーサイト内に、バナーや動画で広告を表示できます。
動画再生数、クリック数、コンバージョン数を増加させたいなど、配信目的に応じた運用が可能で、性別・年齢などターゲットに合わせた配信や、興味関心・購買意向、ライフイベントに合わせた配信(オーディエンスカテゴリーターゲティング)、サイトへの来訪履歴があるユーザーへの配信(サイトリターゲティング)など、さまざまなターゲティングが可能です。
Meta 広告を通じて配信できるのは Facebook アプリと Instagram アプリというイメージがありますが、アドネットワーク「Audience Network」を使うことで、Meta 社が提携しているアプリの広告面にも広告を配信できます。
Facebook の調査では、Facebook や Instagram、Audience Network で広告を見た利用者のコンバージョン率は、Facebook でのみ広告を見た利用者のコンバージョン率の8倍といわれています。そのため、単なる配信面の拡張ではなく、Facebook や Instagram と相互によい影響を与えあうためにも、Meta 広告配信時には設定しておくべきアドネットワークといえるでしょう。
広告キャンペーンに関するFacebookの調査では、FacebookやInstagram、Audience Networkで広告を見た利用者のコンバージョン率は、Facebookでのみ広告を見た利用者のコンバージョン率の8倍でした。
引用元:Metaビジネスヘルプセンター|Meta Audience Networkについて
LINE 広告では、 LINE 本体アプリのほかに 10,000を超える様々なアプリメディアに配信できる「LINE 広告ネットワーク」と呼ばれるアドネットワークがあります。
代表的なアプリカテゴリとして、電子書籍、ゲーム、SNS、ニュース・天気、カメラ、金融、健康、便利ツールなどがあげられ、多くのジャンルのメディアが網羅されています。また、月間アクティブユーザー約9,400万人の LINE のターゲティングデータを活用することもできるため、LINE アプリへの配信と同様のターゲティングをおこなうことができます。
楽天広告は、楽天グループが展開する70以上のサービスと提携サイトに広告を配信できるアドネットワークです。2022年12月時点で1億以上いる楽天会員からデータを収集しており、高いターゲティング精度で広告を配信できるため、費用対効果も高いです。
国内最大級のショッピングサイト楽天市場の購買データを元にしたターゲティング配信が可能で、楽天市場と相性がよいため、ECサイトを運営していたり、楽天ショッピングなどに出店している企業におすすめです。最低出稿金額は月額5,000円と安価なため、小規模店舗であっても始めることができます。
参考:Rakuten Marketing Platform navi
いまや、アドネットワークの存在は当たり前になりすぎて、その便利さを感じることもなくなっているように思います。実際、アドネットワークの仕組みなど知らなくても広告運用はできるでしょう。
しかし、アドネットワークの真の魅力は、広告配信の一元管理を実現したことによって業務を効率化できたこと、大量のデータを活用できるようになったことだと理解しておくことで、アドネットワークの本質を掴んでおけます。
アドネットワークは今もなお進化し続けています。新しい機能がどんどん増え、運用はより複雑になっていくことでしょう。それでも本質を見失わなければ、機能がどれだけ複雑になっても、運用の波を乗りこなすことができると思います。
広告運用 コンサルタント
2021年9月に中途入社。2019年からWebマーケティング業界に携わり、toB/toC問わず様々なサービス、商材の広告運用を担当。好きな広告媒体はGoogle広告。趣味は映画鑑賞、お笑い、深夜ラジオ。映画のサブスクを契約しすぎている。
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