今やデフォルトの入札戦略が自動入札という広告媒体が増えてきています。そんな中で、「自動入札ってよく分からないけど、デフォルト設定になっているからとりあえず自動入札で配信している」という方もいるのではないでしょうか。
しかし、自動入札の仕組みや特徴を分かってないと、自動入札でうまく成果を出せなかったり、成果が悪化したときに改善できないなどの課題につまずくこともあります。
この記事では、これから広告運用を始める方や、「なんとなく自動入札を使ってるけど実はよく分かってない」という人向けに、自動入札の仕組みや長所短所、自動入札で成果を出す方法について解説します。
目次
自動入札とは、キャンペーンの目的や入札戦略に応じて、自動的に最適な価格で入札をおこなう機能です。入札戦略にはクリック数を最大化させるものや、コンバージョン数を最大化させるもの、上位の掲載位置を目指すものなどがあります。
自動入札と手動入札の主な違いは、入札価格の決定方法です。
手動入札では、広告グループ単位やキーワード単位で入札価格を指定します。同じキーワードで検索されれば、だれがどんなタイミングで検索しても基本的に同じ金額で入札されます。
対して自動入札は、設定した目標に合わせて入札価格がオークション毎に自動で調整されます。自動入札ではユーザーの属性や検索したタイミング、広告が表示されたタイミングなどを考慮したうえでオークション毎に入札価格を調整するので、同じキーワードで検索されても、入札価格は毎回同じとは限りません。
以下は、特定のキーワードで広告を配信する際に手動入札と自動入札それぞれを使用した場合の設定条件の違いと結果です。
入札方法 | 設定 | 内容 | どう入札されるか |
---|---|---|---|
手動入札 | 特定のキーワードで入札単価を設定 | 入札単価100円 | 検索したユーザーのデバイスや検索語句などに関わらず入札単価は100円で一定となる |
自動入札 | 目標コンバージョン単価の入札戦略 | 目標 CPA 1万円 | 検索したユーザーのデバイスや検索語句を考慮して、目標を達成するために50円や200円など自動で入札単価が調整される |
自動入札の入札戦略には、クリック数を最大化させるものや、コンバージョン数を最大化させるものなどさまざまな種類があり、媒体や配信メニューによっても使える種類が異なります。ここでは、特によく使われる入札戦略を紹介します。
自動入札の種類 | 目的 | 説明 |
---|---|---|
コンバージョン数の最大化 | コンバージョン数を増やす | 予算内でなるべく多くのコンバージョン数を獲得できるように入札単価が設定される |
目標コンバージョン単価 | 目標のコンバージョン単価を達成しつつコンバージョン数を増やす | 指定した目標コンバージョン単価でコンバージョンを最大限に獲得できるように入札単価が設定される |
コンバージョン値の最大化 | コンバージョン値(売上)を伸ばす | 予算内でなるべく多くの売上を獲得できるように入札単価が設定される |
目標広告費用対効果 | 目標の費用対効果(ROAS)を達成しつつコンバージョン値(売上)を伸ばす | 指定した目標広告費用対効果でコンバージョン値を最大化できるように、入札単価が設定される |
クリック数の最大化 | サイトアクセスを増やす | 予算内でなるべく多くのクリック数を獲得できるように入札単価が設定される |
目標インプレッションシェア | 視認性を高める | 検索結果ページの最上部、上部、または任意の場所に広告が表示されるように、入札単価が設定される |
オークションが発生して自動入札が入札価格を決定するときは、広告アカウントの過去の配信実績などのデータと、ユーザーのシグナルを考慮して調整します。
シグナルとは、個々のユーザーやオークション時の状況を特定できる属性(利用デバイスや地域、時間帯、過去の行動履歴など)のことです。シグナルを使うことで、そのユーザーにいくらで入札すれば目標を達成できるかをより高い精度で判別できるようになります。
自動入札で使われるシグナルには主に以下のようなものがあります。
シグナルの種類 | 説明 |
---|---|
デバイス | ユーザーの使用デバイス(PC、スマートフォン、タブレット) |
所在地 | ユーザーの所在地 |
地域への関心 | 検索キーワードに含まれる地域や、ユーザーが関心を持っていると思われる地域 |
曜日、時間帯 | オークションが発生した曜日、時間帯 |
ターゲットリスト | 広告主が作成したターゲットリストをもとに、リストに登録されてからの経過時間などを考慮 |
広告の特性 | スマートフォン向けアプリかどうかなど、広告の特性ごとにコンバージョンに至る可能性の高さを考慮 |
ブラウザー、OS | ユーザーが利用しているブラウザー、OS |
実際の検索語句 | ユーザーが実際に利用した検索語句 |
検索ネットワークパートナー | 広告が掲載される検索パートナーサイト |
ウェブサイトのプレースメント | 広告が掲載されるサイトプレースメント |
サイトでの行動 | 閲覧したページ数や閲覧した商品の金額、コンバージョンプロセスにおける現在地、過去にアクセスした他のサイトなど、ユーザーのサイトでの行動 |
自動入札は便利な機能ですし、その精度は年々向上しているので、自動入札で成果を出すアカウントが増えてきています。
一方で、自動入札を使っておけば必ず成果が出るとは限らず、手動入札のほうが成果が出る場合もあります。ここからは、自動入札のメリットとデメリット、および手動入札との使い分け方について解説します。
自動入札を使うメリットは以下の3点です。
自動入札では機械学習アルゴリズムが、人の手では収集できないデータも含めたさまざまなデータをもとに入札価格を決定します。また、キーワード単位や広告単位よりもさらに細かい、オークション単位で入札価格が調整されます。
手動入札よりも多くのデータをもとに、手動入札よりも細かい単位で入札価格が調整されるため、理論上はより最適なユーザーに最適な入札価格で広告を配信できます。そのため、自動入札が能力を十分に発揮できれば、広告成果の改善が期待できます。
自動入札は、キーワードや広告単位の入札価格の設定が不要です。そのため、たくさんのキーワードの入札価格を頻繁に調整するような運用工数を削減できます。
目的に合わせた調整を自動でしてくれる点も、自動入札ならではのメリットです。
例えば「クリック数の最大化」であればクリック数をできるだけ多く獲得するように、「コンバージョン値の最大化」であれば売上が高くなるように入札価格を調整してくれます。
手動入札では目的を達成するために最適な入札価格がいくらなのか自分で考えて設定しなければなりませんが、自動入札ではその必要はありません。
自動入札のデメリットは以下の3点です。
自動入札が十分に能力を発揮するためには、一定のデータ量が必要です。例えば、Google 広告では過去30日間で30件以上のコンバージョン数が推奨されています。
推奨の件数に達していなくても成果が出るケースももちろんありますが、コンバージョン数が月に数件など極端に少ない場合は、自動入札が上手く働かず目標値を達成できない可能性が高くなります。
自動入札は、目標値を達成できるようになるまで2週間から4週間ほどの機械学習期間が必要で、学習期間中は成果が悪くなる傾向があります。
自動入札で成果を出すためには、一時的に成果が悪化することを理解して、2週間から4週間は目標値を達成できなくても耐えて配信を継続することが求められます。
自動入札は、配信設定や目標値に大幅な変更を加えると、再学習が発生し、成果が不安定になる場合があります。そのため、予算や目標値、広告クリエイティブ、リンク先などを大幅に変更することは推奨されません。
また、キーワードや広告単位では調整できず、媒体によっては地域や曜日、時間帯に対しての入札調整率も設定できません。一時的に特定のキーワードの配信を弱めたり、特定地域への配信を強化したりといったコントロールは自動入札では難しくなっています。
上記のメリットとデメリットを踏まえると、自動入札に向いているケースと、手動入札に向いているケースは以下のように整理できます。
入札戦略 | 向いているケース |
---|---|
自動入札 | |
手動入札 |
データ量が十分にあって、目標値や予算が短期間で変動しないアカウントでは自動入札にチャレンジするのがおすすめです。また、広告運用に時間をあまりかけられず、なるべく少ない工数で成果を出したい場合も自動入札が向いています。
データ量が少ない場合や、キーワードや地域、曜日時間帯などで細かく調整する必要がある場合は手動入札で運用することをおすすめします。また、自動入札はオンライン上で取得できない情報を考慮して調整することはできませんので、例えば成約率や来店率など、広告管理画面に反映されないデータも踏まえて調整する必要があるアカウントでは、手動入札が向いています。
さらに、広告運用に充てられる時間が十分にあって、自分でデータを分析し、仮説をもって細かい調整や検証がしたい人にも手動入札のほうが適しているでしょう。
自動入札を使って成果を出すためには、機械学習がうまく働く環境作りが必要です。ここからは、自動入札で成果を出すためのアカウント構成や運用方法について以下の3つを解説します。
自動入札が十分に能力を発揮するためには、一定のデータ量が必要です。例えば、自動入札の「目標コンバージョン単価」の場合、各広告媒体で推奨のコンバージョン数が設定されています。
媒体 | 推奨コンバージョン数 |
---|---|
Google 広告 | アカウント単位で1か月に30件以上 ※目標広告費用対効果の場合は50件以上 |
Yahoo! 検索広告 | キャンペーン単位で1か月に30件以上 ※目標広告費用対効果の場合は50件以上 |
Yahoo! ディスプレイ広告 | 広告グループ単位で1か月に40件以上 |
Meta 広告 | 広告セット単位で1週間に50件以上 |
LINE 広告 | 広告グループ単位で40件以上(期間の記載はなし) |
必ずしも推奨コンバージョン数を超えていなければ成果が出せないというわけではありません。実際に、少ないコンバージョン数でも自動入札で成果を出した事例があります。
詳細はこちらの記事で解説しているので、併せて確認してください。
ただし、学習データが少ないほど成果が出しにくくなることは間違いありません。キャンペーンや広告グループを細かく分割するほど、成果を出すために必要な学習データも多くなるので、自動入札を使うときはなるべくキャンペーン、広告グループをまとめましょう。
自動入札は、目標値を達成できるようになるまで2週間から4週間ほどの機械学習期間が必要になります。学習期間にさまざまなユーザーにさまざまな広告を配信することで、どんな条件なら目標値を達成できるのかをテストして学習しているわけです。
この期間中に目標値や広告クリエイティブを大幅に変更すると一から学習し直しになってしまい、変更時点からまた2週間から4週間の学習期間が必要になります。
このように、学習期間中に大きな変更を加えると、学習期間がどんどん長くなります。学習期間中は成果が悪くなる傾向があるので、学習期間が長くなるということは成果が悪い期間が長くなるということです。
なるべく学習期間を短くするためにも、学習期間中に大きな変更を加えないようにしましょう。また、学習期間後であっても、大幅な変更を加えると再学習が必要になる場合があるので、大幅な変更はなるべく控えることをおすすめします。目安として、20%以上の変動があるものは大幅な変更をした方がよいです。
自動入札は、目標値を達成できるように、広告配信するユーザーや広告クリエイティブなどを自動で最適化します。ですが、対象ユーザーや広告クリエイティブの選択肢が少ないと、そもそも最適化できる余地がなくなってしまうので、自動入札がうまく能力を発揮できません。
例えば、ユーザーのニーズに応じて5つのテキストと5つの画像を登録した場合は、自動入札が25通りの組み合わせから最適な広告を見極めて配信します。そうすることでユーザーのニーズに合わせた広告に最適化され、成果を出しやすくなります。
対して1つのテキストと1つの画像しか登録しない場合、ユーザーのニーズに対して適切な広告を分けて配信できないため、成果が出せなかったり、配信量が少なくなったりします。
自動入札の最適化がうまく働くように、幅広いニーズに対応するクリエイティブをできるだけ多く登録しておきましょう。またターゲティングを絞りすぎて、ターゲットユーザーが少なくならないように注意しましょう。
最後に、自動入札を使って配信しているけど成果が出ない…という人のために、自動入札の広告の改善ポイントを解説します。前述の「自動入札で成果を出すための考え方」に沿って自動入札を導入しても成果が出ない場合は、以下の改善を実施してみてください。
自動入札で成果が出ない場合、まずは以下の観点でクリエイティブの見直しをおこなってみてください。
「自動入札で成果を出すための考え方」でも解説した通り、自動入札で獲得につながりそうなユーザーにリーチできたとしても、そのユーザーのニーズを満たすクリエイティブでないと、クリックやコンバージョン獲得にはつながりません。
クリエイティブの種類が少ない場合や、特定のニーズに対する訴求が多くなっている場合は、新しい訴求のクリエイティブの追加や入れ替えを検討しましょう。
クリエイティブがたくさん登録されていても、ターゲットユーザーのニーズとずれた訴求になっていると、クリックにつながらなかったり、顧客属性から外れたユーザーからクリックが多くなり成果が悪くなります。
ターゲットユーザーのニーズを改めて整理して、どんなクリエイティブならニーズを満たせるのかを見直してみましょう。
キーマケのブログでは広告クリエイティブ作成に関するナレッジをたくさん公開しているので、こちらも併せてご覧ください。
広告クリエイティブ|キーマケのブログ|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
広告クリエイティブ作成で重要になるのは、顧客と準顧客の一次情報です。
自動入札に限った話ではありませんが、成果が出ないときはターゲットやキーワードを見直すのも効果的です。ただし、自動入札を使っているキャンペーンや広告グループでターゲットやキーワードを大幅に変更してしまうと、再学習が必要になり学習期間が発生して成果が悪化する可能性があります。
自動入札を使っているときは、まずは「成果が悪い部分を除外する」という考え方で見直しましょう。一部を除外するやり方であれば、大幅な変更になりにくく、学習期間を発生させずに配信を効率化できます。具体的には、成果が悪い検索語句やオーディエンス、ユーザー属性を配信対象から除外するなどのアクションが考えられます。
成果の悪いターゲット、キーワードの除外を実施しても成果が良化しないときは、除外ではなく変更も検討しましょう。
学習データが少ないアカウントでは自動入札で成果を出すのが難しいですが、短期間でコンバージョン数を増やすのは現実的ではありません。そんなときは、マイクロコンバージョンの設定を検討してみましょう。
ここでのマイクロコンバージョンとは、購入や問い合わせなどを最終的なゴール(=コンバージョン)としたときの、その前に起こる中間ゴール(=特定のユーザー行動)のことを指します。例えば「問い合わせ」をコンバージョンに設定している場合、マイクロコンバージョンは問い合わせ完了の手前の「問い合わせフォームへの到達」などが考えられます。
問い合わせは月に数件しか発生しなくても、問い合わせフォームへの到達であれば、月に数十件から数百件ほど発生するケースがほとんどです。マイクロコンバージョンを自動入札の目標地点とすることで学習データが増えて、自動入札がうまく働くようになる可能性が高くなります。
ただし、マイクロコンバージョンを使って運用する場合、マイクロコンバージョンだけでなく最終的なゴール(=コンバージョン)もきちんと獲得できているかを忘れずに確認しましょう。
マイクロコンバージョンについてはこちらの記事で解説しているので、併せて確認してください。
10年教えてわかった、マイクロコンバージョンを設定する時に大事な4つの思考|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
マイクロコンバージョンを設定するときに考えるべきことは、①取りたいコンバージョンと相関のあるマイクロコンバージョンを設定する、②ユーザーの行動を予測してマイクロコンバージョンを考える、③サイトでの行動データを参考にマイクロコンバージョンを選ぶ、④マイクロコンバージョンとコンバージョンのデータは、分けて分析するの4つです。具体例を用いて説明しているので、マイクロコンバージョンの設定でお困りの際は参考にしてください。
自動入札は、うまく働く環境であれば、広告運用の手間を削減しながら成果を出せる便利な機能です。一方で、自動入札ではできないこともあり、また成果を出すまでのハードルもあるので、全てのアカウントで自動入札を導入するのが正解ということではありません。
自動入札の特性やメリット、デメリットを理解して自分のアカウントに適した入札方法を選択できるようになることが重要です。
広告事業部 マネージャー
2015年4月に新卒として入社。2019年にマネージャーに昇格。広告運用の仕事をメインに、現在はサイト改善提案やブログ執筆にも力を入れている。数値をもとにしたサイト改善提案が得意。趣味は動画を見ること、ゲームをすること。
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