2024年は、年始から日本では能登半島の地震や航空機の火災事故と、災害による幕開けとなってしまい、波乱の年かと心配されましたね。国内では2023年を上回る円安となったり、世界でも中東紛争が再燃したり事前の予測に反してトランプ大統領が当選したりと、まさに予測不可能な時代を象徴するような年でした。
2025年も予測が難しい時代であることは間違いなさそうですが、そんな中でも「2024年と比較して3連休が少ないため消費に影響が起きる」など確定している未来もあります。
この記事では、そんな2025年のネット広告界で注目すべきトピックを6つ紹介します。これらの内容を意識しつつ、ピンチは最小に、機会を最大にしていきましょう。
目次
2025年も、日本のネット広告市場は堅調に拡大し、108〜110%程度に伸びていくと予想されます。
2023年の日本のネット広告費は、広告製作費を含めて3兆3,330億円となり、前年比107.8%となりました。2024年は同程度の成長と見込まれていますので、約3兆6千億円前後となるでしょう。
一方で、電通グループが公開した「世界の広告費成長率予測(2024〜2027)」のように、デジタル広告が二桁成長(10.7%増)に回帰するという予測もあります。
2024年の世界の広告費成長率予測は、前回2024年5月発表の予測から1.8ポイント上方修正の6.8%となり、市場規模は7, 724億米ドル(約116兆円※)となる見通しです。(中略)また、デジタル広告が二桁成長(10.7%増)に回帰し、全体に占める構成比が60.8%に達することや、世界的なスポーツ及び政治イベントの影響も反映された結果となりました。
電通グループ、「世界の広告費成長率予測(2024~2027)」を発表|株式会社電通グループ
加えて、ネット広告をグローバルにけん引する Google と Meta、マイクロソフトの2024年後半の決算はとてもよい内容でした。
広告プラットフォームの媒体運営をする会社の業績が良い場合、広告テクノロジーに投資がされやすくなりますので、2025年のネット広告の環境は明るいものになりそうです。
2025年にほぼ確定している未来の中でも、LINE 広告とヤフー広告のプラットフォーム統一は、日本のネット広告市場において目玉と言えるものでしょう。
この統合については LINE ヤフーの公式 X アカウントでも取り上げられていたほか、昨年11月に LINE ヤフーが開催したイベント「LINEヤフー BIZ Conference 2024」でも紹介されていたため、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
2025年のいつごろになるかはまだ明らかになってはいませんが、これまで別々の広告プラットフォームとして機能していた LINE 広告と Yahoo! 広告が統合されるとなると、コンバージョン獲得増加などに大きな期待が持てますね。
LINE と Yahoo! JAPAN を連携済みのアカウント数は現在2,600万以上にものぼるため、ターゲティング量(狙ったターゲット層への広告露出増加)および、その精度の向上が見込まれます。
例えば LINE の特定のユーザーのうち、Yahoo! で特定のキーワード検索したユーザーといった絞り込みも可能になるでしょう。
実は LINE 広告と Yahoo! 広告のプラットフォーム統合は、LINE ヤフーが目指しているビジネスプラットフォームである「Connect One 構想」のひとつです。
この「Connect One 構想」は、LINE ヤフーのあらゆるビジネスソリューションを連携させ、企業と生活者を「つなぐ」プラットフォームを作るといったもので、2023年に始まりました。
広告以外にも、Yahoo! ショッピングとの連携や LINE 公式アカウントの企業利用など、これまで以上に利用シーンが増加しそうですね。
▼参考
LINEヤフーが新たな進化! 新機能「Business Profile」「未認証ミニアプリ」など最新情報を公開|Web 担当者 Forum
以下の記事で紹介した Edge(ブラウザ提供元:Microsoft)の事例のように、2024年はサードパーティ Cookie 廃止の流れがより顕著になった年でした。
2024年1月からGoogle ChromeでサードパーティCookieが順次廃止に。広告への影響と運用者として意識することとは|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
2023年末、Google Japan はブラウザ「Chrome」でのサードパーティ Cookie を段階的に廃止すると発表しました。
大まかに言えば、サードパーティ Cookie 廃止によるネット広告への影響は「自社媒体以外のディスプレイ広告が出しにくくなること」といえます。これまでは Google のような大手広告プラットフォームの仕組みを使って自社サイトに広告を配信できていたのが、サードパーティ Cookie が廃止されるとできなくなるんですね。
ところが、このサードパーティ Cookie 廃止の流れから、新しい動きが同時に活発になりました。それが、リテールメディアなどサードパーティ Cookie に依存しないファーストパーティデータ(自社顧客データなど)を活用した広告事業の開始や拡充です。
以下は、昨年ファーストパーティデータを活用した広告事業を始めた企業の一例です。JR 東日本やドコモ、住信 SBI ネット銀行など、多くの顧客データを持っている大手企業が参入してきたことが分かります。
サードパーティ Cookie 廃止の流れ以前は、「自分のデータを利用されるのはいやだ」というネガティブな反応が当然予想されたため、「顧客データを活用した広告事業をおこなう」と大手企業が打ち出せるような状況ではありませんでした。
しかし「ファーストパーティデータ(自社データ)であれば活用してもよい」という風潮が追い風となり、多くの顧客データを持つ企業が広告事業に積極的になっていったのです。
「ZOZOTOWN」で有名な ZOZO は以前より自社広告事業がありましたが、今期は前期比18.1%増の115億円まで拡大を目指しているそうです。
ファッション EC モール「ZOZOTOWN」を運営する ZOZO は、2018年9月に広告事業(リテールメディア)を本格スタートした。(中略)「ZOZOTOWN」で培ったデータの活用や広告メニューの拡充により、2025年3月期に広告事業の売上高を前期比18.1%増の115億円まで拡大することを目指す。
【リテールメディアの現在地は?】ZOZO 「データ活用やメニュー拡充で広告収入115億円へ」|日本ネット経済新聞
118%成長というのは、ネット広告全体の成長率よりも高い数値です。そのため、ネット広告全体の動きのひとつとして、今まで巨大な広告プラットフォームとして君臨していた Google や Meta、日本では LINE ヤフーなどの寡占状況が少し変化し、企業による広告出稿が2025年以降も確実に増えていくことが予測できます。
ネット広告におけるリテールメディアのシェア率はまだまだ小さいものではありますが、商材や業種によっては、確実にはまる媒体が今後出てくることでしょう。
2024年に驚いたことの一つに、「ネット広告は検索広告がとにかく強い」という事実が依然として継続していることがあります。
電通によって発表された「2023年 日本の広告費」でも、2023年のネット広告のうち、検索広告が約40%でシェア1位となっていることが分かります。
日本では2002年に登場した検索広告は、いわば旧型の広告手法です。SNS 広告や動画広告に首位の座を奪われ、縮小していくと思われましたが、ここ数年はむしろそのシェアを伸ばしているような状況です。
ネット広告は成長を続け、日本の広告の中でも「旧4マス」と呼ばれるテレビ CM や新聞広告、雑誌広告、ラジオ広告の総額を抜いて、3兆3300億円もの大きな市場となりました。
このように市場規模が毎年拡大しているのにもかかわらず、いまだに検索広告が4割を占めているのは驚きといえます。
広告費が拡大しているということは、前提としてその媒体のユーザーが増えるか、そのユーザーの媒体使用率が増加するか、その両方となります。
しかしこれだけスマホが普及した世の中で、Google や Yahoo! で検索する人が増えているとは考えにくく、SNS や動画が生活に浸透している中で検索回数が全体的に増加しているとも考えにくいです。
そうすると「検索広告による効果が、他の広告に比べて以前よりも高くなっている」と考えるのが自然でしょう。これは Google を中心に、機械学習や AI による自動化で、コンバージョンしそうになっているユーザーへ的確に広告を出すことがよりできるようになっているからだと考えられます。
この傾向が変化することは考えにくいため、2025年もネット広告は検索広告が中心で進んでいくことでしょう。
検索広告はあくまでもオークション形式の入札競争がある広告手法ですから、CPA が高騰していく傾向はどうしても避けられません。
キーワードマーケティングで広告運用をしている全ての検索広告のアカウントを確認しても、平均クリック単価が年々上がっているのが分かります。
2025年は、検索広告というコンバージョンを確実に獲得できる広告を最大限生かすためにも、認知広告や PR などで援護射撃し、クリック単価の低い自社名や自社サービス名などの固有名詞キーワードを増やしていくことがより求められていくでしょう。
▼PR に関する記事はこちら
PR施策とは?広告・プロモーションとの違い、具体的なPR施策例を徹底解説|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
PR(Public Relations:パブリックリレーションズ)とは、企業がそれを取り巻く個人や集団、社会との間に良好な関係を築いたり、維持したりするための考え方や活動を指します。ここで指す「良好な関係」とは、個人や集団、社会が共感したり、興味を持ったり、有益と思ったりすることなどが挙げられます。
検索広告は、原則としてユーザーが検索エンジンにキーワードを入力するのを待つしかありません。これを意図的に増加させようと取り入れられるのが、テレビ CM や YouTube 広告などの認知向け広告です。
しかし、テレビ CM のような認知向け広告で検索数を増やすには、1か月に最低でも数千万円の広告投下量が必要となります。このような予算をポンと出すことは、多くの企業では難しいですよね。
こうした背景からも、予算が1,000万円以下でも検索数(特に固有名詞)が増加する方法として、PR はおすすめできます。PR 手法の種類と対応する施策の一例は、以下の通りです。
PR 手法 | 主な施策 |
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メディアパブリシティ |
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認知獲得型広告 |
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コンテンツメイキング |
|
SNS マーケティング |
|
ここに挙げた施策は、いずれもテレビ CM などのマス広告よりもかなり低い予算で、検索回数を増やす確率が高くなります。さらにこの PR 施策をネット広告に掛け合わせると、クリック率やコンバージョン率、既存のネット広告のコンバージョン数増加、CPA 良化なども見込めます。
キーワードマーケティングでは、この「検索広告 × PR 施策」の手法を SCM(検索創出型マーケティング)と定義して、事例を集めながら理論化をすすめています。SCM については以下の記事にもまとまっているので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。
▼SCM(検索創出型マーケティング)に関する紹介はこちら
検索創出型マーケティング(SCM)とは。先行事例の紹介やインハウスでも取り組める方法を解説|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
「検索創出型マーケティング(Search Creation Marketing)」とは、第三者による客観的な情報発信によって、コンバージョンにつながる検索流入を直接的に創出する手法です。 具体的には、PR による客観的な情報発信によってビジネスインパクトのあるキーワードでの検索を生み出し、検索広告の制約である「検索数やバリエーションの頭打ち」を解消することができます。
市場規模としての広告費において、ネット広告費がテレビ CM を上回った2019年あたりから、日本における媒体のトップはインターネットに移行しました。
その結果、ネット広告にかかわる市場は拡大し、多くのビジネスチャンスが増えた一方で、必然的にネット広告の規制もここ数年ずっと加速してきました。
薬機法や景表法(景品表示法)、個人情報保護法などでネット広告の法規制が起案され、景表法にひもづいたステルスマーケティング(ステマ)規制などが2023年に施行されたのは記憶に新しいでしょう。
▼改正景品表示法に関する記事はこちら
【24年10月施行】改正景品表示法の5つの変更点とは?代理店が押さえておきたいポイントを紹介|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
2024年10月に施行された改正景品表示法。この記事では「罰則規定の拡充」をはじめとした5つの改正内容を運用者目線で解説します。
▼ステルスマーケティング(ステマ)に関する記事はこちら
ステルスマーケティング(ステマ)とは?規制と事例から正しいプロモーション方法を知ろう|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
ステマ(ステルスマーケティング)とは、企業が一般消費者に対して広告であることを隠して商品やサービスの宣伝をおこなうことです。
とりわけ2024年は、芸能人のなりすまし広告が大きな問題として取り上げられましたね。
▼参考
“なりすまし偽広告” 詐欺被害など未然防止へ省庁連携を|NHK
2024年はこれまでの法規制に基づいて、監視や行政処分の制裁などの実行がしっかりおこなわれた1年となりました。ちなみに改善指導をされた153事業者のうち、約7割の商材が健康食品と化粧品です。
ネットがすでにマスメディア化している現状から、2025年以降も規制強化はもちろん、監視と行政処分もさらに進んでいくことでしょう。
一方で、以下の記事にあるように、広告規制を緩和する面白い動きも始まっています。
▼参考
治療アプリ、ネット広告解禁 成長分野で規制緩和【イブニングスクープ】|日本経済新聞
いままでは規制一辺倒だったネット広告業界で、規制緩和によってビジネス機会が拡大したり、消費者へのメリットとなったりするのであれば、歓迎したい動きですね。
2023年5月に「ChatGPT」が日本でもリリースされてから、デジタルマーケティングにおける生成 AI の影響は大きな議論となりました。
2024年は、生成 AI の話題もひと段落して、過剰な期待や不安は落ち着いた一年だったと思います。
生成 AI は議事録作成や要約、リアルタイム翻訳や AI チャット bot による問い合わせ工数削減といった「業務効率化」の分野では大きな成果を上げたといえます。一方、以下の記事でも少し触れている通り、マーケティングの成果を高いものにするクリエイティブ作成の分野ではまだ成果はあまり出ていないといえそうです。
生成AIは「優秀な部下」になる!広告運用における活用例と注意点を現役運用者が解説|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
最初にお伝えすると、生成 AI はユーザーであるあなたの「部下」です。それも「ある程度優秀な、仕事が信じられないくらい速い部下」なのです。
多くの企業が、生成 AI をつかった商品づくりや企画、クリエイティブなどを発表しましたが、新しいものに挑戦している先駆者としての PR 側面や、効率化という面が強い印象です。
以下の記事で紹介されているように、生成 AI を用いたクリエイティブが批判を浴びた事例があることも考えると、集客数の増加や売り上げ増加につながるような効果はまだまだ出ていないのではないでしょうか。
▼参考
マクドナルド「AI広告の炎上」が示す嫌悪感の正体 「お~いお茶」や「AQUOS」は許されたのに、なぜ?|東洋経済 ONLINE
例えば、Google は Google 広告への生成 AI の導入を以前から告知していましたが、現状では自動アセット作成や画像生成といったレベルで落ち着いています。
Googleレスポンシブ検索広告に自動作成アセットが登場!メリットと注意点、設定方法を紹介|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
「自動作成アセット」は、ランディングページや既存の広告、広告グループのキーワードなどに基づいて、レスポンシブ検索広告の広告見出しや説明文を自動で追加する機能です。
「自動作成アセット」は、ランディングページや既存の広告、広告グループのキーワードなどに基づいて、それらの情報を引っ張ってきて、検索広告の広告見出しや説明文を自動で追加する機能です。
ただし、「自動作成」という名称は付いているものの、広告そのものは手動で設定する必要があります。あくまでも見出しや説明文の材料を拾ってきてくれるというものですね。
また、自動で出力された広告の材料も、ブランドイメージの観点から「ランディングページには書かざるを得ないが、広告にはあえて出したくない」というケースもよくあり、人間による判断が欠かせないことも多いでしょう。
Google も AI 開発はもちろん熱心におこなっており、強力な Gemini という生成 AI が常にアップグレードされています。しかし、コンバージョンを多く獲得できるクリエイティブをワンクリックで作成するにはほど遠い状況です。
生成 AI が得意なのは、誰からもつっこまれないような最大公約数的な正しい一般論をスピーディーに推測して出してくれるところです。ただ、ビジネスは競争なので、平均点をいくら出しても飛びぬけた成果を出すことは難しいですよね。
高い成果を出すには、最大公約数を飛び出したひらめきや奇抜なアイデアも時には必要なわけです。
バナー広告の画像のパターンを生成 AI で自動的に数百、数千個つくるといったことは、すでに実用化できているところですが、これはあくまでも業務効率化という側面に過ぎないでしょう。新しい価値をマーケティングのクリエイティブで生むためには、2025年以降も、人間の力がまだまだ必要そうです。
上記の予測を踏まえて考える「2025年に Web マーケティング業界で働く方々が心がけたいこと」は、新しい媒体や新しい広告プラットフォームに常に注意を配ることです。
LINE 広告とヤフー広告が統合された新たな広告プラットフォームももちろんですが、ファーストパーティデータ活用の流れから、顧客データを多く持っている企業が広告プラットフォームを今後も新規開発したり、事業拡大していくのは必須の流れです。新しい広告プラットフォームは競合が少なく、クリック単価も低いことが多いので、CPA をよい状態でコンバージョンを獲得できるチャンスとなります。
また、生成 AI の影響については、ネット広告に直接影響を与えることよりも、周辺の反動を考えていくと面白いでしょうね。
大局としては2025年も検索広告が圧倒的に強い状況は変わりませんので、従来の延長線上だけでなく、「検索数を増やす」という試みを多くの Web マーケターには挑戦してもらいたいところです。
2024年に起きたさまざまな出来事を振り返ると、2025年も予測不可能な一年となることが予想されます。
特にアメリカ経済の行方および国家紛争などの影響はグローバルに伝わります。必ず日本の経済や IT 業界、ネット広告業界にもありますので、このあたりは常にチェックしておくとよいでしょう。
話題になるニュースを追いつつも「今どうなっているか」や「過去どうだったのか」という事実を同時に考え、長期的に俯瞰してみると、見えてくる流れもたくさんあります。
先行き不透明な時代だからこそ、目の前の事実に着目して、今年も頑張っていきましょう。
代表取締役会長
2003年、Googleアドワーズが日本でサービスを開始した直後より、検索キーワード広告とランディングページの実践・研究を行い、その成功理論を書籍『1億稼ぐ検索キーワードの見つけ方』で発表、5万部以上のベストセラーとなる。 キーワードマーケティングでは、設立時から延べ千社以上のアカウントを診断およびコンサルティングしており、現在は上場会社や成長率の高いベンチャー企業に対する広告運用代理事業を拡大している。
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